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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W41 |
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管理番号 | 1399745 |
総通号数 | 19 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-07-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-08-12 |
確定日 | 2023-06-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6566081号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6566081号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6566081号商標(以下「本件商標」という。)は、「日本ユニバーサルモルック協会」の文字及び「Universal Molkky Association Japan」(「Molkky」の「o」には、ウムラウトが付されている。以下同じ。)の欧文字を上下二段に書してなり、令和3年9月13日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,スポーツ指導員の育成のための教育・研修,スポーツ指導員の資格認定試験の実施と資格認定,幼児教育,特別支援教育,セミナーの企画・運営又は開催,スポーツに関する講演会及び研修会の企画・運営又は開催,スポーツの普及・育成・促進のためのセミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制作,定期刊行物の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,スポーツ競技会の企画・運営又は開催,スポーツイベントの企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,運動用具の貸与,運動用特殊衣服及び運動用特殊靴の貸与,おもちゃの貸与,遊戯用器具の貸与,写真の撮影」を指定役務として、同4年5月10日に登録査定、同年6月3日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 (1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、一般社団法人日本モルック協会の使用に係る「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Associaition」の文字(「Molkky」の「o」には、ウムラウトが付されている。)(以下「使用商標」という。)からなるものである。 (2)申立人が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第6244011号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和元年12月26日に登録出願し、第35類「スポンサー探し,広告場所の貸与,商業又は広告のための展示会の企画・運営,商品・役務の買い手及び売り手のためのオンライン市場の提供,人材募集,コンピュータデータベースへの情報編集,トレーディングスタンプの発行,求人情報の提供,競売の運営,広告業,広告用具の貸与,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供,職業のあっせん,新聞記事情報の提供」及び第41類「教育又は娯楽に関する競技会の企画・運営,スポーツの興行の企画・運営又は開催,セミナーの企画・運営又は開催,運動施設の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,技芸・スポーツ又は知識の教授,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),書籍の制作,図書の貸与,図書及び記録の供覧,電子出版物の提供,オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。)」を指定役務として、同2年4月8日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第63号証を提出した。 (1)「モルック(Molkky)」の語が申立人の出所識別標識として周知著名であること 申立人は、フィンランドを拠点とする会社で、戦術的な娯楽ゲームのメーカーとして知られる。現在、申立人商品は、世界の70カ国以上に輸出されており、主要商品は、ボードゲームや屋外ゲーム、そして子供向けおもちゃである。その中でも、「モルック(MOLKKY)」(「MOLKKY」の「O」には、ウムラウトが付されている。以下同じ。)という名の投擲ゲームは、人気の高い商品の一つである(甲4)。 「モルック(MOLKKY)」は、もともとは、1996年に「Lahden Paikka」というフィンランドの会社(前身は「TuoterengasOy」社)が考案した投擲ゲームである。申立人は、モルックを考案した会社(Lahden Paikka社)の下で、「モルック(MOLKKY)」の販売業者として国内外におけるゲームの販売を担っていたが、2016年に、申立人は、Lahden Paikka社から「モルック(MOLKKY)」ゲームの製造販売に係るあらゆる権利を譲り受け、現在に至るまで継続して当該ゲームの製造販売を行っている(甲6〜甲8)。また、申立人は、我が国において、「モルック(MOLKKY)」に係る商標登録・出願を所有している(甲11〜甲15)。 「モルック(MOLKKY)」の文字は、申立人の提供する投擲ゲームの出所識別標識として長年にわたって継続して使用されており、申立人及び「日本モルック協会」を始めとする世界各国のモルック連盟・協会のたゆまぬ周知活動、営業努力により、申立人商標「モルック(MOLKKY)」は、申立人商品の出所を示すものとして、我が国及び外国の取引者及び需要者の間において、広く知られている(甲16〜甲27)。 (2)申立人とモルック連盟・協会の関係 申立人の投擲ゲーム「モルック(MOLKKY)」の普及・振興を目的に、各種大会の運営を始め、周知広告活動を行っている国際的な団体として「国際モルック連盟(IMO)」がある。 そして、「国際モルック連盟」を始め、傘下のモルック連盟・協会が主催する大会では、申立人の製造・販売する「モルック(MOLKKY)」ゲームを唯一の正規品としており、正規品のみが大会で使用されている(甲31、甲32)。 (3)「日本モルック協会(JMA)」について ア 現在の代表理事(八ッ賀氏)が2011年に「日本モルック協会」を創設するとともに「フィンランド国際モルック協会」(「国際モルック連盟」の前身)に加盟した。2014年には、初の日本大会を主催し、世界5カ国からの参加があった。以後、「日本モルック協会」は、各種大会を継続して主催している。「フィンランド国際モルック協会」の加盟国の増加に伴い、世界大会の主催団体は、2016年に「国際モルック連盟」へと変更された。2020年、「日本モルック協会」は、「一般社団法人日本モルック協会」となり、「国際モルック連盟」の加盟団体として我が国を代表し、「モルック(MOLKKY)」の普及と様々な目標達成に向け活動を続けている(甲33)。 イ 以下は、「日本モルック協会」による「モルック(MOLKKY)」の普及活動等の一例である。 (ア)団体会員制度(公認・友好団体)(甲34、甲35) (イ)「モルック(MOLKKY)」公式大会・公認大会(甲36〜甲38) (ウ)体験会・練習会の開催(甲39) (エ)モルック指導員制度の創設(甲40〜甲42) (オ)日本モルック協会学生連盟の創設(甲44、甲45) (カ)テレビ番組等メディアにおける普及活動(甲43、甲46〜甲52) (キ)情報誌の発行(甲53〜甲57) (ク)近年のモルック人気(甲57〜甲59) ウ 「一般社団法人日本モルック協会」に係る使用商標が需要者に広く認識されていること 上記イのとおり、「一般社団法人日本モルック協会」は、我が国において、申立人の製造・販売する投擲ゲーム「モルック(MOLKKY)」の普及のため、略称である「日本モルック協会」及びその英語表記を使用し、様々な周知広告活動を行っている。 以上を総合すると、使用商標は、本件商標の登録出願時において、「モルック(MOLKKY)に関する技芸・知識の教授、モルック(MOLKKY)に関する競技会・イベントの企画・運営・開催、モルック(MOLKKY)に関する講演会・研修会の企画・運営・開催、モルック(MOLKKY)指導員の育成のための教育・研修、モルック(MOLKKY)の普及・育成・促進のためのセミナーの企画・運営・開催、モルック(MOLKKY)に関する電子出版物の提供」等を中心とする役務の取引者、需要者の間に広く認識されていたというべきであり、その周知著名性は、現在においても継続している。 (4)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 「一般社団法人日本モルック協会」に係る使用商標の周知著名性及び独創性の程度について 上記(3)のとおり、使用商標は、「一般社団法人日本モルック協会」の略称及びその英語表記として、本件商標の登録出願時において、モルック(MOLKKY)に関する役務の取引者、需要者の間に広く認識されていたものである。そして、その周知著名性は、現在においても継続している。 また、「モルック(MOLKKY)」の文字は、申立人の製造・販売する投擲ゲームを指称するものとして、強い識別力を発揮する語であるので、「モルック(Molkky)」の文字を含む「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」は、独創性も高いといえる。 イ 本件商標と使用商標の類似性の程度 本件商標の構成文字中、「ユニバーサル」の語は、「普遍的、全般的、一般的」を意味する語であるが(甲61)、上段の「日本ユニバーサルモルック協会」の文字全体において、「ユニバーサル」の語は、その語義により、識別力がないか、非常に弱い。なぜなら、「日本ユニバーサルモルック協会」の語は、「ユニバーサル」を除いた語頭の「日本」の文字及び語尾の「モルック協会」の文字が「一般社団法人日本モルック協会」の略称として、モルック(MOLKKY)に関する役務の取引者、需要者の間に広く認識されている「日本モルック協会」の構成文字をすべて含み、「ユニバーサル」の語は、周知著名な「日本モルック協会」の文字を「全般的な、一般的な」程の意味で形容するにすぎないからである。 下段の「Universal Molkky Association Japan」についてみると、上段の「日本ユニバーサルモルック協会」の英語表記であることが明らかである。したがって、周知著名な「Japan Molkky Association」の構成文字を全て含み、語頭の「Universal」の文字は、周知著名な「Japan Molkky Association」の文字を「全般的な、一般的な」程の意味で形容するにすぎない。 以上のとおり、「一般社団法人日本モルック協会」の使用に係る使用商標は、モルック(MOLKKY)に関する役務等の取引者、需要者の間で広く認識されていること、そして、「一般社団法人日本モルック協会」は、我が国を代表して「国際モルック連盟」に加盟し、我が国におけるモルック(MOLKKY)の普及活動を統括する立場にあること、さらに、使用商標から容易に「(公式的に)日本を代表するモルック協会」であることが示唆されていると認識・把握するであろうことに鑑みると、「全般的な、一般的な」程を意味し、識別力がないか、弱い「ユニバーサル(Universal)」の文字の有無は、取引者、需要者にほとんど有意な印象、記憶の差異を与えることはなく、本件商標に接した取引者、需要者においては、本件商標の構成中の「日本(Japan)」及び「モルック協会(Molkky Association)」の文字部分から、「一般社団法人日本モルック協会」の略称としての「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」を容易に連想、想起し得るものであるから、高い類似性を有する。 ウ 本件の指定役務と「一般社団法人日本モルック協会」の業務に係る役務との関連性の程度及び需要者の共通性 「一般社団法人日本モルック協会」の業務に係る役務は、その役務の性質や目的において密接な関連性を有する役務であり、取引者、需要者も共通する。また、これらの役務の需要者は、ともに一般消費者であって、役務の提供を受ける際に払われる注意力は、それほど高いものではない。 エ 混同を生ずるおそれについて 「一般社団法人日本モルック協会」の略称及びその英語表記として、本件商標の登録出願時において、モルックに関する役務の取引者、需要者の間に広く認識され、独創性の程度も高く、本件商標と使用商標は、高い類似性を有すること、本件の指定役務は、「一般社団法人日本モルック協会」の業務に係る役務と密接な関連性を有するとともに、取引者、需要者が共通すること、需要者の注意力は特に高くないこと、取引の実情として、我が国においては、「一般社団法人日本モルック協会」がモルックに関する普及活動を統括する立場にあり、その略称もそのような公式的な立場を看者に認識・把握させる文字構成となっていること等を総合的に考慮すれば、本件商標をその指定役務に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、周知著名な「日本モルック協会(Japan Molkky Association)」を連想、想起し、当該役務を「一般社団法人日本モルック協会」あるいは、当該協会と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。 (5)商標法第4条第1項第10号該当性について 以上のとおり、本件商標は、「一般社団法人日本モルック協会」の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている使用商標に類似する商標であって、その役務に類似する役務について使用するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 引用商標は、その構成中、上部図形部分と下部文字部分とは、視覚的に分離しており、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的には結合していない。また、上部図形部分と下部文字部分とは、観念的に密接な関連性を有しているとまではいえず、一連一体となって何らかの称呼が生じるものでもないから、上部図形部分と下部文字部分は、それぞれが独立して自他役務の識別標識として機能し得るものである。 また、引用商標の文字部分中、「日本モルック協会」と「Japan Molkky Association」は、日本語の名称とその英語表記という関係にあり、本件商標も、その構成文字である、「日本ユニバーサルモルック協会」と「Universal Molkky Association Japan」が同様の関係にあるので、引用商標から、日本語及び英語のそれぞれの部分を要部として抽出し、当該文字部分のみを本件商標の日本語及び英語の文字部分とそれぞれ比較して、類否判断することが許される。 イ 本件商標と引用商標の類否 上記(4)イで検討したとおり、本件商標中上段の「日本ユニバーサルモルック協会」と引用商標中、「日本モルック協会」の文字は、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等が近似したものであり、同一・類似の役務に使用された場合、その役務の出所につき誤認混同を生じるおそれがある。 また、同様に、本件商標の下段の「Universal Molkky Association Japan」と引用商標中、「Japan Molkky Association」の文字とは、相紛れるおそれがある。 本件商標の上段と下段は、単に、日本語名称とそれに対応する英語表記である関係なので、商標全体で比較した場合、本件商標と引用商標の要部として抽出し得る文字部分とが類似の関係にあるので、本件商標と引用商標とは、全体として類似の商標である。 ウ 指定役務の類否 本件商標の指定役務と、引用商標の第41類の全指定役務が同一・類似の関係にある。 エ 小括 以上より、本件商標は、その登録出願日前に出願された引用商標に類似する商標であって、その指定役務に類似する役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (7)商標法第4条第1項第8号該当性について 上記のとおり、「一般社団法人日本モルック協会」の略称及びその英語表記として、本件商標の登録出願時において、モルックに関する役務の取引者、需要者の間に広く認識されている。 本件商標は、その構成中に「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」の構成文字を全て含むものである。 商標法第4条第1項第8号の規定の趣旨は、肖像、氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあると解されるところ、我が国においては、「一般社団法人日本モルック協会」が「国際モルック連盟」のもと、モルックに関する普及活動を公式的に統括する立場にあり、国際的には、我が国の代表団体として対外的なプレゼンスを発揮し、国内的には、傘下にある多くの加盟団体をまとめ、各種大会や講習会の開催、インストラクターや審判員の認定制度の制定や認定等を先頭に立って主導している状況で、「一般社団法人日本モルック協会」の略称及びその英語表記と紛らわしい本件商標が、その指定役務について使用されれば、創設以来築かれてきた「一般社団法人日本モルック協会」の社会的地位に伴う名誉、信用等の人格的利益が損なわれるおそれがあることに鑑みれば、「一般社団法人日本モルック協会」の人格的利益を保護するにあたり、「日本モルック協会」又は「Japan Molkky Association」の文字をそのまま含むか否かは、同号適用の適否に大きな影響を与えるものではない。むしろ、同号の趣旨に鑑み、そのような字面上の判断を超えた判断がなされるべきである。 以上より、本件商標は、他人である「一般社団法人日本モルック協会」の名称又は著名な略称を含む商標であるので、商標法第4条第1項第8号に該当する。 (8)商標法第4条第1項第19号該当性について 上述のとおり、「一般社団法人日本モルック協会」及びその業務は、申立人の提供に係る投擲ゲーム「モルック」に関する分野、業界において、我が国において広く認識されており、「一般社団法人日本モルック協会」と同様に、モルックに関わる業務を行う本件商標権者は(甲63)、本件商標の登録出願前より、「一般社団法人日本モルック協会」の使用に係る「日本モルック協会」又は「Japan Molkky Association」を知悉していたことは明らかである。 このように、本件商標権者が周知著名商標「日本モルック協会」又は「Japan Molkky Association」の顧客吸引力を利用し、「一般社団法人日本モルック協会」が継続して使用する商標と酷似する商標を自己の業務に使用する行為は、当該周知著名商標に化体した信用、名声等の毀損を招来させるものである。 そこで、「公式的な」程の観念を生じ得る、あるいは、そのような観念と親和性が高いといえる「ユニバーサル」の語を、周知著名な「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」に付加して本件商標を使用する行為は、当該周知著名商標の顧客吸引力を利用するものであることは明らかである。 以上のとおり、本件商標権者は、周知著名商標の顧客吸引力を利用することを意図して、本件商標を取得したことは明らかであって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (9)商標法第4条第1項第7号該当性について 上述のとおり、「一般社団法人日本モルック協会」及びその業務は、申立人の提供に係る投擲ゲーム「モルック(MOLKKY)」に関する分野、業界において、我が国において広く認識されており、本件商標は、「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」と相紛れるおそれのある商標である。 このような商標を、「一般社団法人日本モルック協会」と何ら関係を有しない本件商標権者が、モルックに関する分野で使用することは、本来自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、第三者の周知著名商標の著名性にただ乗りすることにより得ようとすることにほかならず、価値を希釈させるおそれがある。 そして、「公式的な」程の観念を生じ得る、あるいは、そのような観念と親和性が高いといえる「ユニバーサル」の語を、周知著名な「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」に付加して本件商標を使用する行為は、悪質であり、このような行為は、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものであるし、商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるというべきである。 したがって、このような出願は、商標法の予定する秩序に反し、商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 当審の判断 (1)使用商標の周知性について ア 申立人の提出に係る証拠及び申立人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、フィンランドを拠点とする娯楽ゲームメーカーであり(甲4)、申立人は、「モルック(MOLKKY)」を考案した会社(LahdenPaikka)から、モルックゲームの製造販売に係るあらゆる権利を譲り受けており(申立人主張)、現在に至るまで継続してモルックゲームの製造販売を行っている(甲6〜甲8)。 (イ)一般社団法人「日本モルック協会」のホームページには、現在の代表理事(八ツ賀氏)が2011年に「日本モルック協会」を創設するとともに「フィンランド国際モルック協会」(「国際モルック連盟」の前身)に加盟した。そして、2014年には、初の日本大会を主催し、世界5カ国からの参加があり、以後、「日本モルック協会」は、各種大会を継続して主催し、2020年、「日本モルック協会」は、「一般社団法人日本モルック協会」となって、「国際モルック連盟」の加盟団体として我が国を代表し、全国のモルック団体とともに「モルック(MOLKKY)」の普及を続けている(甲33〜甲35、甲43)。 同ホームページの第8回モルック日本大会及び学生連盟(甲36、甲45)は、本件商標の登録出願後のものであり、大会情報、体験会情報及びJMAからのお知らせ(甲37〜甲39、甲59)は、本件商標の登録査定後のものである。また、モルック指導員及び講師派遣(甲40、甲41)は、掲載日が不明であり、過去のお知らせとして、本件商標の登録出願前に「第1回難波モルック大会」の生配信がされ(甲46)、本件商標の登録出願前後にテレビ番組でモルックの紹介(甲47、甲48、甲50〜甲52)がされているとしても、係る放送内容からは、「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」についての紹介や広告宣伝等がされたか否かについてはうかがい知ることができない。 (ウ)「The Molkky Times」(VOL.1 2021/08/30)及び同号外(2022/04)が、日本モルック協会により発行されている(甲53、甲54)。同2号、3号、号外(2022/08)は、本件商標の登録査定後のものである(甲55〜甲57)。 (エ)「2.5ジゲン!!」のウェブサイトには、「さらば・森田哲矢&植田圭輔、日本モルック協会初の年間アンバサダーに」の見出しとするニュース(2021年7月1日)がある(甲58)。 イ 上記アによれば、一般社団法人日本モルック協会は、本件商標の登録出願前に創設され、モルックの普及活動が行われていることは認められるとしても、申立人の提出に係る証拠は、本件商標の登録出願後及び登録査定後のものが多く、また、「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」を使用して、広い範囲を対象に広告している状況が見いだせない。 また、我が国における営業収益や広告宣伝費といった、使用商標の販売実績や広告実績を定量的に確認できる客観的な資料の提出はされていない。 そうすると、使用商標は、一般社団法人日本モルック協会の業務に係る役務について使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標 本件商標は、前記1のとおり、「日本ユニバーサルモルック協会」の文字及び「Universal Molkky Association Japan」の欧文字を上下二段に書してなり、下段の欧文字は、上段の英語表記であると看取されるといえる。 そして、本件商標は、上段及び下段ともに同じ書体、同じ大きさ、等間隔にまとまりよく一体に表してなるものである。 ところで、申立人は、「ユニバーサル」及び「Universal」の文字について、「普遍的。全般的。一般的。」の意味を有し(甲61)、その語義により、識別力がないか、弱い旨主張している。 しかしながら、「ユニバーサル」及び「Universal」の語について、本件指定役務との関係においては、識別力がないとか、弱いとする特段の事情は見いだせず、また、上記(1)のとおり、引用商標を構成する「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」の各文字について、需要者の間に広く認識されているとはいえず、強く支配的な印象を与えるとはいえないことからすると、まとまりよく表されている本件商標の構成より、上段及び下段に書された各文字は、それぞれ一体のものと看取されるというべきである。 そうすると、本件商標において、「ユニバーサル」及び「Universal」を捨象して取引に資される特段の事情は見いだせないから、全体の構成文字に相応して、「ニホンユニバーサルモルックキョウカイ」及び「ユニバーサルモルックアソシエーションジャパン」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に載録がされていない造語といえるから、特定の観念は生じない。 イ 引用商標 引用商標は、別掲のとおり、上段に図形を配し、その下に「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」の文字を二段に書してなり、その構成中、図形部分と文字部分とは視覚的に分離して看取され、文字部分においては、欧文字が、その上段の「日本モルック協会」の英語表記であると認識されるというべきである。 そうすると、引用商標は、上段及び下段の構成文字に相応して、「ニホンモルックキョウカイ」及び「ジャパンモルックアソシエーション」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に載録がされていない造語といえるから、特定の観念は生じない。 ウ 本件商標と引用商標の類否 本件商標は、「日本ユニバーサルモルック協会」の文字及び「Universal Molkky Association Japan」の欧文字からなり、一方、引用商標は、図形部分と「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」の文字からなるから、図形及び「ユニバーサル」及び「Universal」の文字の有無に加え、欧文字部分においては、文字の配列に差異を有し、外観上明らかに相違する。 また、本件商標から生じる「ニホンユニバーサルモルックキョウカイ」及び「ユニバーサルモルックアソシエーションジャパン」の称呼と引用商標から生じる「ニホンモルックキョウカイ」及び「ジャパンモルックアソシエーション」の称呼は、「ユニバーサル」の音の有無に差異を有し、構成音数において明らかに相違し、加えて、欧文字部分より生じる称呼は、その文字の配列が明らかに相違してその文字に相応した異なる称呼が生じるものであるから、それぞれを一連に称呼しても、全体の語調、語感が相違し、称呼上類似しない。 さらに、観念においては、本件商標及び引用商標は、ともに特定の観念は生じないというべきであるから、両者は、観念において比較することができない。 以上からすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれがないから非類似の商標というべきである。 したがって、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第8号該当性について 使用商標(「日本モルック協会」)は、一般社団法人日本モルック協会の略称と認められるところ、上記(1)のとおり、同協会の業務に係る役務について使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。 そうすると、本件商標は、他人(一般社団法人日本モルック協会)の著名な略称を含む商標とはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第10号該当性について 使用商標は、上記(1)のとおり、一般社団法人日本モルック協会の業務に係る役務について使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。 また、使用商標は、前記2(1)のとおり、一般社団法人日本モルック協会の使用に係る「日本モルック協会」及び「Japan Molkky Association」の文字よりなるものであるから、本件商標と使用商標とは、上記(2)のとおり、引用商標と同様に、相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 (5)商標法第4条第1項第15号該当性について 使用商標は、上記(1)のとおり、一般社団法人日本モルック協会の業務に係る役務について使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。 また、本件商標と使用商標とは、上記(4)のとおり、非類似の商標である。 そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者が、使用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(一般社団法人日本モルック協会)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (6)商標法第4条第1項第19号該当性について 使用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で、一般社団法人日本モルック協会の業務に係る役務を表示するものとして、広く認識されていたとは認められないものである。 また、本件商標と使用商標とは、上記(4)のとおり、非類似の商標である。 そうすると、本件商標権者が、モルックに関わる業務を行っているとしても、使用商標の顧客吸引力を利用することを意図して、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであると認めるに足りる具体的事実は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (7)商標法第4条第1項第7号該当性について 使用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で、一般社団法人日本モルック協会の業務に係る役務を表示するものとして、広く認識されていたとは認められないものである。 そうすると、本件商標は、使用商標の著名性にただ乗りするといい難く、商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くともいえない。 また、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり、又は社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見当たらない。 さらに、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくは国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。 してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗害するおそれのある商標に該当するとはいえないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (8)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2023-06-08 |
出願番号 | 2021113691 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W41)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
冨澤 武志 |
特許庁審判官 |
小林 裕子 大橋 良成 |
登録日 | 2022-06-03 |
登録番号 | 6566081 |
権利者 | 山口 順 |
商標の称呼 | ニッポンユニバーサルモルックキョーカイ、ニッポンユニバーサルモルック、ニホンユニバーサルモルックキョーカイ、ニホンユニバーサルモルック、ユニバーサルモルックキョーカイ、ユニバーサルモルック、ユニバーサル、モルック、ユニバーサルモルックアソシエーションジャパン、ユニバーサルモルックアソシエーション、ユニバーサルモルッキー、モルッキー |
代理人 | 門田 尚也 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 長嶺 晴佳 |
代理人 | 杉村 光嗣 |