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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W3541 |
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管理番号 | 1399573 |
総通号数 | 19 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2023-07-28 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2022-02-09 |
確定日 | 2023-05-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6005265号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6005265号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成29年3月15日に登録出願、「農業経営の診断及び指導,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供」を含む第35類、第41類「農業に関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,植物の供覧,電子出版物の提供」並びに第6類、第37類、第38類、第42類及び第44類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年12月15日に設定登録されたものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年2月24日である。 なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成31年(2019年)2月24日から令和4年(2022年)2月23日までを、以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 1 請求人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第35類「農業経営の診断及び指導,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供」及び第41類「農業に関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」についての登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書において、その理由を要旨次のように述べ、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第35類「農業経営の診断及び指導,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供」及び第41類「農業に関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」(以下「請求に係る役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。 2 なお、請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して、何ら弁駁していない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 答弁の理由 被請求人(商標権者)は、要証期間内に日本国内において、請求に係る役務について、本件商標の使用をしているものであるから、本件商標の登録は商標法第50条の規定により取り消すことはできない。 2 理由の詳細 (1)ア 本件商標は、被請求人(商標権者)が、「日本の農業の競争力向上や将来の食料問題に対し、環境制御、省エネ、IT化等の技術により、農業生産の効率化と農産物の安心・安定供給に貢献する。」という目的のもとに立ち上げた農業関連事業のブランドであり、種苗販売会社「トヨタネ株式会社」と温室・ビニールハウス・採光建築メーカー「株式会社大仙」の協力を得て農業支援サービスを展開している(乙1〜乙3)。 イ 本件商標のもとに提供される基幹サービスは、農業用ハウス内外の環境要因をリアルタイムに計測し、実装された制御プログラムに基づいてハウス設備・空調設備をコントロールする環境制御装置(ProfarmController/プロファームコントローラー)をベースとして、ハウス内の最適な環境をユーザに提供するものである(乙1〜乙4)。なお、乙第4号証は、被請求人が作成及び頒布するカタログであり、当該カタログの内容は要証期間内である2021年4月現在のものである。 ウ 具体的には、ハウス内外に設置された各種センサーを利用して環境状況を計測し、プロファームコントローラーにより湿温度やCO2濃度を自動制御することにより、農作物の光合成に最適な環境をハウス内に実現させる。また、プロファームコントローラーにより、ハウス内の環境状況がスマートフォンやPCによりリアルタイムで可視化されるとともに、ハウス内の環境状況に関するデータや栽培データを保存・管理することも可能である。これを「環境制御」サービスと称して提供している(乙1、乙5)。なお、乙第5号証は、被請求人ウェブサイト中の「Profarm Monitor/プロファームモニター)」に関する製品紹介抜粋であり、乙第5号証の2は、当該ウェブページが要証期間内の2020年9月25日に公開されていたことを示すインターネット上のアーカイブ検索サイトによる抜粋である。 エ 被請求人は、ユーザとの間で、環境制御装置(ProfarmController/プロファームコントローラー)のレンタルを中心とした年払い又は月払いの「プロファームモニターサービス契約」を締結することにより、ユーザに当該サービスを提供している(乙6)。 オ 本件商標のもとに提供されるサービスには、専門スタッフによるユーザのハウスヘの定期的な訪問も含まれ、専門スタッフは、栽培データと実際の農作物を比較検討することにより、改善内容をユーザに提案する。また、サポートセンターにおいて、農作物の栽培方法や各種機器の操作方法等に関するユーザからの相談内容について電話で対応している。また、ユーザが実際に農業に従事する前の就農前研修制度も設けており、農業に関する基本研修や特定の作物の栽培に関する知識を短期間で提供する専門研修を、「栽培相談」サービスと称して提供している(乙1、乙2)。上記「栽培相談」サービスは、請求に係る役務中、第41類「農業に関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」に該当し、乙第1号証には、当該サービス内容とともに、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が表示されている(乙1)。 カ 乙第1号証を用いたセミナーは、特定非営利活動法人東海地域生物系先端技術研究会(以下「NPO東海生研」という。)により平成29年11月21日に開催されており、乙第1号証はNPO東海生研のウェブサイト上で要証期間及び現在も公開されている(乙7)。 キ また、被請求人(商標権者)は、2019年6月にProfarm(プロファーム)サービスに使用するシステムが変更される際に、ユーザに新しいソフトウェアの機能に関する説明会を開催している(乙8)。 (2)まとめ ア 以上よりすれば、被請求人(商標権者)は、日本国内において要証期間内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を請求に係る役務中、第41類「農業に関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」に関する広告、価格表若しくは取引書類に付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に付して電磁的方法により提供しているから、商標法第2条第3項第8号に該当する。 イ また、本件商標のもとに提供されるサービスには、ユーザが行っている農作業や人員管理に対する農業経営的な側面からの指導や助言も含まれ、これを「作業改善」サービスと称している(乙1、乙2)。当該サービスは、請求に係る役務中、第35類「農業経営の診断及び指導,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供」に該当する。そして、乙第1号証及び乙第2号証に本件商標と社会通念上同一と認められる商標とともに、「作業改善」のサービス概要が紹介されているから(乙2)、商標法第2条第3項第8号に該当する。 ウ 上記「栽培相談」及び「作業改善」サービスには、顧客サポート用ウェブサイト(以下「PSS」という。)によっても提供される。ユーザ専用のPSSにアクセスすることで、様々な情報や資料を入手でき、チャットポット機能でリアルタイムに質問の回答を得ることができる(乙9、乙10)。乙第11号証は、当該ユーザに対して「栽培相談」及び「作業改善」についてコンサルティングを行った際の資料である。 エ そうすると、被請求人(商標権者)は、日本国内において要証期間内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、請求に係る役務中、第35類「農業経営の診断及び指導」等及び第41類「農業に関する知識の教授,電子出版物の提供」等に関し、電磁的方法により行う映像面を介した上記役務の提供にあたりその映像面に本件商標を表示して本件役務を提供し、あるいは、本件役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に本件商標を付して展示し若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供しているから、商標法第2条第3項第7号及び同項第8号に該当する。 3 以上のとおりであるから、本件商標が本件審判の取消請求に係る指定役務について予告登録前3年以内に商標権者(被請求人)によって使用されていたことは客観的に証明されたから、本件商標の登録の取消は免れることができるものである。 第4 当審の判断 1 被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。 (1)被請求人は、本件商標に係る商標権者であり、トヨタネ株式会社及び株式会社大仙の協力のもと、「プロファーム」と称する農業に関する支援サービス(以下「本件サービス」という。)を提供している(乙1〜乙3)。 (2)「統合環境システムと栽培相談、作業改善の取組紹介」の表題とする本件サービスの内容を説明する資料(乙1、以下「本件資料」という。)の1枚目には、商標権者の名称が記載されており、その2枚目下スライドには別掲2の構成態様からなる商標(以下「使用商標」という場合がある。)が表示されている。 本件資料の2枚目下スライドには、使用商標のもと「環境制御装置」、「作業改善」、「栽培相談」の表示がある。 (3)本件資料の7枚目の上スライドには、「栽培相談」の見出しのもと、「就農前研修制度」の表示があり、8枚目下スライドには、「就農前研修制度」の内容として「自社農場を活用し、40年以上受け入れ実績がある研修」、「基本研修 将来役に立つ農業経験の提供」「研修期間:1年」、「プログラム:研究農場の計画に合わせてOJT(一部座学あり)「専門研修 短期間で一連の基本知識の提供」「研修期間:4カ月」「プログラム:専用プログラム(座学と現場実習)」等の記載がある。 (4)NPO東海生研のウェブサイト上で、本件資料が商標権者の了解のもと2020年2月14日、2021年4月18日に公開(インターネット上のアーカイブ検索サイト「Wayback Machine」により記録保存)されているのが確認できる(乙7)。 2 上記1において認定した事実及び被請求人の主張によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用役務について 本件資料において、使用商標のもとに「栽培相談」が行われており、当該「栽培相談」には「就農前研修制度」が含まれているものと認められるところ、当該制度に係る研修は、農業に係る知識を教授するためのものと認められる。 そうすると、当該「就農前研修制度」に係る研修(以下「使用役務」という。)は、請求に係る役務に含まれる「農業に関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授」の範ちゅうに属する役務とみて差し支えのないものである。 (2)使用商標について 本件商標は、別掲1のとおりの構成からなり、使用商標は別掲2のとおりの構成からなるところ、本件商標と使用商標とでは、図案化された「f」(色彩)及び片仮名の位置が若干異なるものの、文字の書体及び構成を同一にするものである。 したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。 (3)使用時期について 本件資料がウェブサイトにおいて公開された日付け「2020年2月14日」及び「2021年4月18日」は、いずれも要証期間内である。 (4)使用及び使用者について 本件資料は、使用役務を含む本件サービスの説明資料であって、NPO東海生研のウェブサイト上で公開されており、当該公開は、使用商標を付した本件資料が電磁的方法により提供される行為であると認められる。そして、当該公開を行ったのは、NPO東海生研であるところ、商標権者の了解のもとに公開されたものであり、また、本件資料の作成者は商標権者である。 そうすると、本件商標の使用者は、商標権者とみて差し支えない。 (5)小括 上記(1)ないし(4)によれば、本件商標の商標権者は、要証期間内にその請求に係る指定役務(請求に係る役務)中の「農業に関する知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授」の範ちゅうに含まれる使用役務に関する広告(本件資料)に使用商標を付して電磁的方法により提供したものと認めることができ、これは商標法第2条第3項第8号に該当する商標の使用ということができる。 また、当該公開は日本国内で行われていること、明らかである。 3 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者がその請求に係る指定役務について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したといえる。 したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標(色彩は原本参照。)![]() 別掲2 使用商標(色彩は乙第1号証を参照。) ![]() (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
審理終結日 | 2023-03-02 |
結審通知日 | 2023-03-07 |
審決日 | 2023-03-30 |
出願番号 | 2017034625 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(W3541)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
大橋 良成 大森 友子 |
登録日 | 2017-12-15 |
登録番号 | 6005265 |
商標の称呼 | プロファーム |
代理人 | 大橋 啓輔 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 外川 奈美 |