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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y3539
管理番号 1399468 
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-07-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-12-22 
確定日 2023-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4773039号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4773039号商標(以下「本件商標」という。)は、「ユニーグループ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成15年8月19日に登録出願、第35類「販売促進のためのクイズの応募に関する情報の提供,販売促進のためのクイズの実施に関する情報の提供,無線または有線の通信ネットワークの運用に関する事業経営の指導及び助言その他の経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,店舗棚割り分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,インターネットによる商品の売買契約の取次ぎ,販売促進に関する助言」及び第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,鉄道輸送・車両輸送・船舶輸送・航空輸送に関する情報の提供,貨物のこん包,物品の仕分け及び荷造り,宅配便の取次ぎ,引越しの取次ぎその他の貨物の輸送の取次ぎ又は媒介,貨物の積卸し,寄託を受けた物品の倉庫における保管,コインロッカーによる他人の携帯品の一時預かりその他の他人の携帯品の一時預かり,鉄道車両の貸与,コインロッカーの貸与,スーツケース・トランク・その他の旅行用品の貸与,荷捌場の提供,荷捌施設の提供」を含む第35類ないし第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同16年4月7日に登録査定、同年5月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、令和3年1月13日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の平成30年1月13日から令和3年1月12日までを以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、登録第4773039号商標の指定役務中、第35類「販売促進のためのクイズの応募に関する情報の提供,販売促進のためのクイズの実施に関する情報の提供,無線または有線の通信ネットワークの運用に関する事業経営の指導及び助言その他の経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,店舗棚割り分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,インターネットによる商品の売買契約の取次ぎ,販売促進に関する助言」及び第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,鉄道輸送・車両輸送・船舶輸送・航空輸送に関する情報の提供,貨物のこん包,物品の仕分け及び荷造り,宅配便の取次ぎ,引越しの取次ぎその他の貨物の輸送の取次ぎ又は媒介,貨物の積卸し,寄託を受けた物品の倉庫における保管,コインロッカーによる他人の携帯品の一時預かりその他の他人の携帯品の一時預かり,鉄道車両の貸与,コインロッカーの貸与,スーツケース・トランク・その他の旅行用品の貸与,荷捌場の提供,荷捌施設の提供」(以下「請求に係る指定役務」という。)について登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、請求に係る指定役務について、継続して3年以上日本国内において本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)ア 被請求人は、「本件商標は、本件商標の通常使用権者である加藤産業株式会社(以下「加藤産業」という。)によって本件審判の請求登録前に本件商標の指定役務に属する「物流センター事業の運営及び管理」に使用した事実があります。」と答弁するが、請求に係る指定役務は「物流センター事業の運営及び管理」なる役務を含んでいない。よって、仮に被請求人又は加藤産業が役務「物流センター事業の運営及び管理」について本件商標を使用していたとしても、請求に係る指定役務について本件商標の使用を立証するものではない。
イ さらに、被請求人は「本件商標の通用使用権者である加藤産業によって」本件商標を使用した事実がある旨を主張するが、加藤産業が本件商標の「通常使用権者」である旨の主張は、適切な証拠を提示することもなく、何ら立証されていない。
ウ また、「「物流センター事業の運営及び管理」」に使用した事実があります。」と述べるが、かかる本件商標の使用が要証期間に使用されている事実も何ら立証していない。
(2)ア 被請求人は、「加藤産業との間で被請求人の物流業務及びこれに付帯する業務を加藤産業に業務委託する契約を平成28年1月25日に締結しました」と答弁し、乙第1号証の1及び乙第1号証の2を提出する。
しかしながら、これら書証が示す契約書は、被請求人が加藤産業に「物流業務及びこれに付帯する業務」を委託する合意であり、本件商標を加藤産業に使用許諾する契約書ではない。
また、加藤産業が実施する「物流業務」は、乙第1号証の1及び乙第1号証の2によれば、商標権者の手足となり、商標権者が自ら実施するべき「物流業務」の委託を受け、被請求人及び商標権者であるユニー株式会社の利益のために遂行する業務である。
そして、商標権者であるユニー株式会社は大手商品流通チェーン企業であるところ、主たる業務は「商品の小売」である。かかる「商品の小売」を業務とする被請求人においては、「物流業務」は商品の集積場から各地にある自社の店舗に供給する業務であり、あくまでも「商品の小売」という自社の業務を遂行するため実施する「付随的」な業務である。
即ち、「物流業務」は他者の利益に資するために行うのではない。これは、被請求人との業務委託契約により、加藤産業が被請求人の手足となり「物流業務」を遂行する場合においても同様である。
よって、仮に加藤産業が、本件商標の使用許諾を受けていたとしても、加藤産業が実施している「物流センター事業の運営及び管理」は他者の利益のために実施する役務ではない。被請求人が本来行うべき業務を被請求人より業務の委託を受け、実施している「付随的」業務にすぎず、かかる「付随的」業務に本件商標を使用していたとしても、かかる「付随的」業務に関する本件商標の使用は、取消しを免れることができる使用には相当しない。
イ 被請求人は、「加藤産業は上記契約に基づき、被請求人の物流業務を埼玉県久喜市菖蒲町三箇字錺面6201−3所在の関東北物流センターにおいて行っています。そして、加藤産業は同センターの表札に本件商標を標記して使用しています」と述べ、乙第2号証の1及び乙第2号証の2を書証として提出する。
そもそも、「物流センター事業の運営及び管理」は本件取消請求の対象役務に該当しないものであるが、仮に「物流センター事業の運営及び管理」が取消対象に含まれるとしても、乙第2号証の1及び乙第2号証の2の写真が示す表札における「ユニーグループ」の表示が、取消対象である役務「物流センター事業の運営及び管理」に関する商標の使用であるとは、これらの書証から断定はできない。
乙第2号証の1及び乙第2号証の2の写真は、比較的広大な土地による区画があり、商品倉庫と思しき建屋があり、また、荷役作業中と思われるトラックが停泊し、また、荷役作業を終えたトラックがかかる区画から退出する情景を示している。
そして、かかる情景が進行している区画の入退場口の道路面に接した壁面にある表札の表示「ユニーグループ」が、被請求人が商標を使用していると主張する「物流センター事業の運営及び管理」の商標であるとは需要者が認識することはできない。
通常、乙第2号証の1及び乙第2号証の2の写真が示す施設の表示は、かかる区画における施設の「管理運営主体」を表示するものであり、「物流センター事業の運営及び管理」という特定の役務を他者と区別するために表示するものではない。また、かかる表札における表示の使用は、施設の所在地の表示でもある。
また、本件商標が流通大手チェーンの商標として著名な「ユニー」を含むことから、かかる表札の表示「ユニーグループ」を看た需要者は、当該施設が「ユニー」の各店舗に商品を配送する機能を担う施設の表示、即ち、施設の目的機能の表示として理解することが普通である。
表札における「ユニーグループ」の表示をして、需要者が「物流センター事業の運営及び管理」の役務の商標、即ち、「物流センター事業の運営及び管理」という個別具体的な「ブランド」であると認識することは到底理解できない。
精々、当該施設の目的、機能が「ユニーグループ」の商品配送に関するということを理解するに止まる。「物流センター事業の運営及び管理」を指し示し、他者が提供する「物流センター事業の運営及び管理」業務と区別する商標とは、到底認識できない。
したがって、乙第2号証の1及び乙第2号証の2の書証が示す「ユニーグループ」の表札表示をもって、「物流センター事業の運営及び管理」に関する本件商標の使用であると認定することはできず、乙第2号証の1及び乙第2号証の2の書証は、本件商標の維持に必要な商標使用を何ら検証することはできない書証である。よって、直ちに却下されるべきである。
(3)以上のとおり、答弁書は、取消しを免れるために本件商標を使用していたことを何ら立証していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標は、その通常使用権者である加藤産業によって本件審判の請求登録前に本件商標の指定役務に属する「物流センター事業の運営及び管理」に使用した事実がある。
2 被請求人は、加藤産業との間で被請求人の物流業務及びこれに付帯する業務を加藤産業に業務委託する契約を平成28年1月25日に締結した(乙1の1、乙1の2)。
加藤産業は上記契約に基づき、被請求人の物流業務を埼玉県久喜市菖蒲町三箇字錺面6201−3所在の関東北物流センターにおいて行っている。そして、加藤産業は同センターの表札に本件商標を表記して使用している(乙2の1、乙2の2)。
乙第2号証はGoogle Mapのストリートビューから引用した関東北物流センターの全景画像と表札の拡大画像で、2019年6月に撮影されたものである。

第4 審尋
1 令和3年7月21日付け審尋(1回目)
当審より被請求人に対し、「被請求人が主張する使用役務「物流センター事業の運営及び管理」は、請求に係る指定役務の範ちゅうに含まれない。そのため、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る指定役務について本件商標を使用したことを証明したものと認めることができない。」旨の合議体の暫定的見解及び請求人が提出した令和3年5月19日付けの弁駁書に対する意見を求めた。
2 令和3年11月25日付け審尋(2回目)
当審より被請求人に対し、以下の(1)ないし(3)の合議体の暫定的見解に対する意見を求めた。
(1)入庫受領証明書<ベンダー控え>及び送り状の写真、商品「烏龍茶」の1L容量のペットボトル12本が入っていると思われる段ボール箱の側面に貼付された出荷ラベルの写真(乙4の1、乙4の2、乙4の3)からは、株式会社伊藤園が、株式会社トーウン・群馬センターを利用して、2021年8月21日に烏龍茶240ケースを株式会社日本アクセスに発送、同月23日に入庫し、おそらくは株式会社日本アクセスが、2021年8月25日に当該烏龍茶(常温)のうち何ケースかをファミリーマートTKS錦二丁目店に届けたものと考えられる。
しかしながら、そもそも当該取引書類は、要証期間のものではないので、採用することができない。
また、株式会社日本アクセスは、住所こそユニーグループ関東北物流センターと同じであるが、被請求人(商標権者)、加藤産業、ユニーグループ関東北物流センター等との関係については説明もなく、不明である。
さらに、入庫受領証明書<ベンダー控え>及び送り状(乙4の1、乙4の3)には、「ユニーグループ」のものと思しき受領印(受付印)があるが、この受領印(受付印)と株式会社日本アクセス、被請求人(商標権者)、加藤産業、ユニーグループ関東北物流センター等との関係についてもまた不明である。
なお、出荷前の様子を示す写真(乙4の4)には、乙第4号証の2及び乙第4号証の3に表示された商品「烏龍茶」の段ボール箱は見当たらない。
(2)乙第5号証の1枚目は、2020年11月27日付けの西濃運輸の発送伝票控であり、荷送人:ユニーG関東北物流センターから、届先:株式会社美羽美創へ、品名:A新ガタ西930(1)、A長岡852(1)の輸送に係る取引書類であって、そもそも倉庫の保管や物品の仕分け・荷造りに係る取引書類ではなく、本件商標の表示もない。
また、乙第5号証の2枚目及び3枚目は、2020年11月27日及び同28日付けの東武運輸の貨物受取書であり、荷送人:ユニーグループ関東北物流センターから、届先:ユニー弥富物流センターへ、品名:弥富オリコン、海津オリコン、海津返品、リサイクルハンガー等の輸送に係る取引書類であるが、同じユニーの配送センター間の輸送に係る取引書類であって、かつ、倉庫の保管や物品の仕分け・荷造りに係る取引書類でもなく、また本件商標の表示もない。
(3)したがって、被請求人は、要証期間に、加藤産業が、請求に係る指定役務中、第39類「寄託を受けた物品の倉庫における保管,物品の仕分け及び荷造り」について本件商標を使用したことを証明したものと認めることができない。

第5 審尋に対する回答
1 令和3年7月21日付け審尋(1回目)に対する回答
被請求人は、令和3年8月27日付けの回答書及び証拠説明書において、審尋(1回目)に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第3号証ないし乙第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)合議体の暫定的見解に対する意見
役務「物流センター事業の運営及び管理」が請求に係る指定役務の範ちゅうに含まれない点については認める。
(2)令和3年5月19日付けの弁駁書に対する意見
被請求人は、2019年1月までユニー・ファミリーマートホールディングス(現株式会社ファミリーマート)傘下の連結子会社であったところ、現在はパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの完全子会社となっている。かかる経緯の中、かつて資本関係のあった株式会社ファミリーマートを始めとする複数の企業に対し役務「寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び「物品の仕分け及び荷造り」の提供を行っている。
ア 乙第3号証は、乙第2号証の1及び乙第2号証の2で示す「ユニーグループ関東北物流センター」のサイト内にある「TC入荷受付所」の写真である。「TC」とは「トランスファーセンター」の略であり、入荷された商品を仕分け、次に納入先へと送る施設である。この「TC入荷受付所」の表示にも本件商標「ユニーグループ」の使用がなされている。なお、乙第1号証の2の「覚書」第1条における「1.DC物流委託業務」の「DC」とは「ディストリビューションセンター」の略であり、在庫を前提とした物流センターであり、商品の一時保管サービスも提供している。
イ 乙第4号証の1は、入荷された商品の入庫受領証明書及び送り状であり、乙第4号証の2は、その対応する商品(ペットボトル入り烏龍茶)であり、乙第4号証の3はその相互の関係性を示したものであり、乙第4号証の4はその出荷前の様子を示す写真である。入庫した商品は商品コードにて管理され出荷まで保管される。乙第4号証の4に示すように、物流センター内において出荷先に応じて仕分けされキャスタにひとまとめに荷造りされる。乙第4号証の1の入庫受領証明書及び送り状に本件商標「ユニーグループ」の文字が押印されている。「ユニーグループ関東北物流センター」においてはかかる業務をユニー・ファミリーマートホールディングス傘下の時期から現在に至るまで継続的に行ってきている。乙第4号証の1で示されている受領日(受付日)は2021年(令和3年)8月23日のものであり要証期間以降のものではあるが、乙第1号証の1及び乙第1号証の2に示すように、通常使用権者である加藤産業は、平成28年1月25日から同業務に従事しているものである。また乙第2号証に示しているように、「ユニーグループ関東北物流センター」は遅くとも2019年(令和元年)6月には事業を実施しており、それ以降継続的に同場所にて本件商標を役務の提供場所に掲示し「寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び「物品の仕分け及び荷造り」の役務をグループ内外の企業に提供している。
ウ なお、乙第5号証はユニーグループ関東北物流センターから「株式会社美羽美創」への発送伝票控えである。これは事情により保管していた商品の返品が発生した際の控えであるが、この受付日は2020年(令和2年)11月27日である。遅くともこの時点では同物流センターにおいて「寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び「物品の仕分け及び荷造り」の役務を行っていたことを示すものである。
エ 上記アないしウのとおり、まず、乙第2号証の1ないし乙第2号証の2に示すように、「ユニーグループ関東北物流センター」の表示が同センターの入口に掲示されている。「寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び「物品の仕分け及び荷造り」の役務を提供するにあたっては、その地理的条件、倉庫の容量、保管能力等が重要であり、対象となる物品が確実に予定されている時期に予定されている場所に送致されることが役務の質を左右するものであるところ、役務の提供主体を役務の提供場所の入口に掲示することは所期の質の役務の提供を受けられることを需要者に示すものであり、商標の使用に該当するものである(商標法第2条第3項第5号)。これはいわば小売店舗や飲食店の外看板に商標を表示する行為と同じである。この点請求人は「表札における「ユニーグループ」の表示をして、需要者が・・・個別具体的な「ブランド」であると認識することは到底理解できない」旨述べるが、本表示は役務の提供主体を如実に示すものであり、需要者、即ち倉庫における保管や物品の仕分けというサービスの提供を受ける者に対して出所表示、品質保証の機能を発揮するものであって、失当というほかない。
オ 以上のとおり、通常使用権者である加藤産業が、要証期間も含め現在に至るまで、本件商標を使用して「寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び「物品の仕分け及び荷造り」の役務を提供していたことは明らかである。
2 令和3年11月25日付け審尋(2回目)に対する回答
被請求人は、令和3年12月28日付けの回答書及び証拠説明書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第6号証ないし乙第12号証を提出した。
(1)各取引先との役務の提供との関係及び登録商標の使用主体
乙第6号証は、商標権者と「株式会社トーカン」との間で締結されている「物流センター使用に関する覚書」の写しである。ここに明らかなように、株式会社トーカンは、商標権者が発注した商品を指定の物流センターを利用して納品している。
同覚書の第2条に明らかなとおり、商品の所有権は、商標権者が発注した商品をセンターで仕分け、出荷検品終了時をもって乙(株式会社トーカン)から移転する。すなわち、商標権者は、「寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び「物品の仕分け及び荷造り」の役務を、株式会社トーカンに対して提供している。なお、その役務の提供にあたって、本件商標を提供場所の入口に表示していることは、乙第2号証の1及び乙第2号証の2で既に示したとおりである。
なお、覚書冒頭の「甲の指定する物流センター」について、乙第7号証を提示する。乙第7号証は、「ユニーグループ関東物流センター/お取引様向け運用説明資料」で、2015年に作成されたものであり、これに基づき説明会を実施している。この第4頁に、「ユニーグループ関東北物流センター」が掲載されており、各取引先が同センターを利用して納品していることが分かる。
同資料の第18頁から第19頁に、「対象お取引様一覧」が掲載されている。ここに株式会社トーカンが「お取引先様」として掲載されている。同様に、「株式会社日本アクセス」も掲載されている。なお、乙第4号証の1で提示した取引書類は、いわゆる「帳合」(ここでは、商標権者であるユニー株式会社の直接の取引相手の意味)である「株式会社日本アクセス」が、メーカーである株式会社伊藤園から直接「ユニーグループ関東北物流センター」に送付された商品を、取引書類上及び帳簿上現地で一旦受取り、これを物流センターに納品する、という商品の流れを示したものである。したがって、商標権者がサービスを提供している相手は「株式会社日本アクセス」である。
なお、乙第1号証の1及び乙第1号証の2にて既に示しているように、「加藤産業株式会社」は商標権者の委託に応じ、「ユニーグループ関東北物流センター」における商品の受入れ、仕分けを行う(第3条(業務の委託)参照)。この点、令和3年8月27日付け回答書において「加藤産業株式会社」が「通常使用権者」として本件商標の使用をしている旨述べたが、物流センター内での実際のオペレーションは加藤産業が行っているものの、取引先(納入企業)との条件調整などフロントに立って取引を行っているのは商標権者自身でもある。したがって、「加藤産業株式会社」は乙第2号証の1及び乙第2号証の2に示すように登録商標が掲示された現場において、取引先に実際の労務便益を提供しており、通常使用権者として商標の使用を行っている主体であるが、これとともに商標権者である「ユニー株式会社」もまた、登録商標が掲示された現場のオペレーション管理をしつつ取引先との折衝を行っており、「寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び「物品の仕分け及び荷造り」の役務の提供において商標の使用をしている。
(2)各取引先との決済態様
乙第6号証の第3条に記載のとおり、商標権者は各取引先との関係において提供した役務「寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び「物品の仕分け及び荷造り」の対価を、「センター利用料金」として受け取っている。この対価の決済は実際には納品を受けた物品の対価との相殺決済となっている。
乙第8号証は2020年11月30日締めの取引明細であり、ここでは第4頁及び第5頁に相殺決済の対象となる「センター使用料」が明示されている。なお店舗名が「A稲沢」と表示されているのはグループ内システムの都合上のものであり、「関東北物流センター」でのサービス提供がこのように表示される。乙第8号証の第5頁の表の最下段2行において、「センター使用料」が2段に分かれているが、このうち下段のものは手書き伝票でやりとりがされているものである。これは、商品がセンターから出荷された段階で伝票計上を確認し、別途センター利用料清算書を作成し、支払明細書に入力される。乙第9号証は、「手書納品分 業務委託料・センターフィー清算」であり、乙第8号証の一部金額に相当する。
なお、同様の役務の提供及び決済態様を、他の取引先とも同様に行っている。乙第10号証は「株式会社日本アクセス」との覚書であり、その内容は「株式会社トーカン」との覚書と実質的に同一である。「株式会社日本アクセス」との取引においても同様に相殺決済で倉庫保管および荷物仕分けの役務を提供し、相殺決済により対価を得ている。乙第11号証及び乙第12号証は、2020年11月締めの株式会社日本アクセスとの取引の支払明細書であり、前者は商品カテゴリ「デイリー」のもの、後者は商品カテゴリ「PB」のものである。いずれも株式会社トーカン同様、納品した商品対価との相殺決済のかたちで商標権者は「センター使用料」すなわち役務「寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び「物品の仕分け及び荷造り」の対価を受領している。
(3)まとめ
以上のとおり、商標権者及び通常使用権者である加藤産業が要証期間も含め現在に至るまで、本件商標を使用して「寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び「物品の仕分け及び荷造り」の役務を提供していることは明らかである。

第6 当審の判断
1 事実認定
被請求人の提出した証拠及び主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)被請求人(ユニー株式会社)と加藤産業が平成28年1月25日に締結した「業務委託契約書」(乙1の1)に基づき、加藤産業は、ユニーグループ関東北物流センター(埼玉県久喜市菖蒲町三箇字錺面6201−3)において行う「商品の荷受・検品及び保管業務」、「仕分・出荷業務」及びそれらに「付帯する一式業務」等の業務(乙1の2の覚書第1条)を、被請求人から受託した。同契約の有効期間は、平成28年1月25日より平成35年1月24日までの7年間(業務委託契約書第16条)である。
(2)令和元年6月撮影とされるGoogleMapストリートビューの画像(乙2)には大きな倉庫風の建物の門からトラックが出て行く様子などが写されており、左手の門に「加藤産業株式会社 久喜センター」の表札及び「ユニーグループ 関東北物流センター」(「ユニーグループ」の文字はやや細字の書体で表されている。)の表札が掲示されている。
(3)被請求人(ユニー株式会社)と株式会社トーカンが平成24年3月に締結した「物流センター使用に関する覚書」(乙6)は、被請求人が発注した商品を株式会社トーカンが被請求人の指定する物流センターを利用して納品することに関するものである。その第1条には、被請求人が物流センターで行う業務として、「商品の荷受・検品及び保管業務」、「仕分・出荷業務」及びそれらに「付帯する業務」等があるとされている。また、第3条には、物流センターの利用代金の支払は、毎月20日締めとし、被請求人が株式会社トーカンに支払う商品代金から相殺するものとされている。さらに、第8条には、同覚書の有効期間は平成24年3月21日より平成25年3月20日までであるが、期間満了の3か月前までに両者のいずれからも書面による格段の意思表示がない場合は、更に1年間契約期間を延長し、以降も同様とされており、下記(5)の事実を踏まえると、少なくとも令和2年11月頃までは毎年自動更新されているものと認められる。
(4)ユニーグループ関東物流センター/お取引様向け運用説明資料(乙7)には、第4頁に「2.物流センター所在地」として、センター名称「ユニーグループ関東北物流センター」、所在地「埼玉県久喜市菖蒲町三箇字錺面6201−3」、「2015年10月初旬稼動予定」との記載がある。また、第19頁には、「12.対象お取引先様一覧」として、「(株)トーカン」及び「(株)日本アクセス」の記載がある。
(5)被請求人から株式会社トーカン宛ての2020年(令和2年)11月30日締の支払明細書(掛)(乙8)には、第3頁の店舗名「A稲沢」の項目においてのみ、相殺金額として「−67,196,441(円)」と記載されており、第5頁によれば、当該相殺金額のうち、センター使用料は「−65,910,727(円)」及び「−4,864(円)」(詳細は乙9)の合計と認められる。また、支払日は、「2021/01/04」(2021年(令和3年)1月4日)である。
(6)被請求人(ユニー株式会社)と株式会社日本アクセスが平成25年9月に締結した「物流センター使用に関する覚書」(乙10)は、被請求人が発注した商品を株式会社日本アクセスが被請求人の指定するドライ物流センターを利用して納品することに関するものである。その第1条には、被請求人が物流センターで行う業務として、「商品の荷受・検品および保管業務」、「仕分・出荷業務」及びそれらに「付帯する業務」等があるとされている。また、第3条には、物流センターの利用代金の支払は、被請求人が株式会社日本アクセスに支払う商品代金から相殺するものとされている。さらに、第8条には、同覚書の有効期間は平成25年9月21日より平成26年9月20日までであるが、期間満了の3か月前までに両者のいずれからも書面による意思表示がない場合は、更に1年延長し、その後も同様とされており、下記(7)の事実を踏まえると、少なくとも令和2年11月頃までは毎年自動更新されているものと認められる。
(7)被請求人から株式会社日本アクセス宛ての2020年(令和2年)11月30日締の支払明細書(掛)(乙11)には、第3頁の店舗名「A稲沢」の項目においてのみ、相殺金額として「−17,571,276(円)」と記載されており、第5頁によれば、当該相殺金額のうち、センター使用料は「−17,145,753(円)」と認められ、支払日は、「2021/01/04」(2021年(令和3年)1月4日)である。また、被請求人から株式会社日本アクセス宛ての2020年(令和2年)11月30日締の支払明細書(掛)(乙12)には、第3頁の店舗名「A稲沢」の項目においてのみ、相殺金額として「−1,128,617(円)」と記載されており、第5頁によれば、当該相殺金額のうち、センター使用料は「−1,094,904(円)」と認められる。また、支払日は、「2021/01/04」(2021年(令和3年)1月4日)である。
2 判断
上記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)商標権者による使用について
ア 使用商標
ユニーグループ関東北物流センター(埼玉県久喜市菖蒲町三箇字錺面6201−3、乙1の1)入口の表札(乙2の1及び乙2の2)に表示された「ユニーグループ」の文字は、やや細字の書体で表してなる商標(以下「使用商標」という。)であるのに対し、本件商標は、「ユニーグループ」の片仮名を標準文字で表してなる商標であるから、本件商標と使用商標とは、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であり、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
イ 使用者及び使用役務
被請求人(ユニー株式会社)が、株式会社トーカン及び株式会社日本アクセスと締結した「物流センター使用に関する覚書」(乙6、乙10)の第1条には、被請求人が、自らが指定する物流センターで行う業務として、「商品の荷受・検品及び保管業務」、「仕分・出荷業務」及びそれらに「付帯する業務」等とあり、当該物流センターには本件商標が使用されているユニーグループ関東北物流センターも含まれるものと推認されるから(乙7等)、本件商標の使用者は、被請求人、すなわち商標権者であり、また、本件商標の使用に係る役務は、「商品の荷受・検品及び保管業務」、「商品の仕分・出荷業務」等(以下「使用役務」という。)と認められるところ、当該役務は、請求に係る指定役務中、第39類「寄託を受けた物品の倉庫における保管,物品の仕分け及び荷造り」に該当するものである。
ウ 使用時期及び使用場所
被請求人から株式会社トーカン及び株式会社日本アクセス宛ての2020年(令和2年)11月30日締の支払明細書(掛)には、相殺金額中にセンター使用料として、約6,600万円(乙8、乙9)並びに約1,700万円(乙11)及び約1,100万円(乙12)が計上され、いずれも2021年(令和3年)1月4日を支払日としているところ、被請求人がユニーグループ関東北物流センター等で、センター業務を行った(使用役務を提供した)のは、要証期間内である2020年(令和2年)11月頃と認められる。
エ 使用行為
ユニーグループ関東北物流センター入口の表札(乙2の1及び乙2の2)での使用商標の使用は、「使用役務に関する広告に標章を付して展示する行為」(商標法第2条第3項第8号)が行われたものと認められる。
オ 小括
上記アないしエで判断したとおり、本件商標の商標権者は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中、第39類「寄託を受けた物品の倉庫における保管,物品の仕分け及び荷造り」に関する広告(表札)に本件商標と社会通念上同一の商標を付して展示する行為(商標法第2条第3項第8号)をしていたものと認められる。
(2)通常使用権者による使用について
ア 使用商標
上記(1)アのとおり、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
イ 使用者及び使用役務
被請求人(ユニー株式会社)と加藤産業が締結した「業務委託契約書」(乙1の1)に基づき、加藤産業が被請求人から受託したユニーグループ関東北物流センターで行う業務の内容は、「商品の荷受・検品及び保管業務」、「仕分・出荷業務」及びそれらに「付帯する一式業務」等(上記使用役務と同じ)であるから(乙1の2)、本件商標の使用者は、商標権者のほか、加藤産業でもあると認められる。そして、両者は業務上緊密な関係が認められる上、被請求人(本件商標権者)は、加藤産業によって使用商標が使用されていることについて異議を述べていないことなどを総合判断すれば、被請求人(本件商標権者)は、加藤産業が本件商標を使用することについて黙示の許諾を与えているものと推認できる。そうすると本件商標の使用者である加藤産業は、本件商標の通常使用権者と認められる。
また、上記(1)イのとおり、使用役務は、請求に係る指定役務中、第39類「寄託を受けた物品の倉庫における保管,物品の仕分け及び荷造り」に該当するものである。
ウ 使用時期及び使用場所
上記(1)ウによれば、被請求人から委託を受けた加藤産業が、ユニーグループ関東北物流センターで、センター業務を行った(使用役務を提供した)のは、要証期間内である2020年(令和2年)11月頃と認められる。
エ 使用行為
ユニーグループ関東北物流センター入口の表札(乙2の1及び乙2の2)での使用商標の使用は、「使用役務に関する広告に標章を付して展示する行為」(商標法第2条第3項第8号)が行われたものと認められる。
オ 小括
上記アないしエで判断したとおり、本件商標の通常使用権者は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中、第39類「寄託を受けた物品の倉庫における保管,物品の仕分け及び荷造り」に関する広告(表札)に本件商標と社会通念上同一の商標を付して展示する行為(商標法第2条第3項第8号)をしていたものと認められる。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、業務委託契約書等(乙1)は、被請求人が加藤産業に「物流業務及びこれに付帯する業務」を委託する合意であり、本件商標を加藤産業に使用許諾する契約書ではないから、加藤産業が、本件商標の使用許諾を受けていたということはできない旨主張する。
しかしながら、上記2(2)イのとおり、加藤産業と被請求人とは業務上緊密な関係が認められる上、被請求人(本件商標権者)は、加藤産業によって使用商標が使用されていることについて異議を述べていないことなどを総合判断すれば、被請求人(本件商標権者)は、加藤産業が本件商標を使用することについて黙示の許諾を与えているものと推認できる。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(2)請求人は、加藤産業が実施する「物流業務」は、商標権者から委託を受けて、商標権者の利益のために遂行する業務であって、他者の利益のために実施する役務ではなく、かつ、商標権者の主たる業務である「商品の小売」のための「付随的」な業務にすぎないから、かかる付随的な業務に本件商標を使用していたとしても、取消しを免れることができる使用には当たらない旨主張している。
しかしながら、上記1(5)及び(7)のとおり、取引先である株式会社トーカン及び株式会社日本アクセスは、被請求人(現場では、委託を受けた通常使用権者である加藤産業)が物流センターで行う「商品の荷受・検品及び保管業務」、「仕分・出荷業務」等の使用役務について、物流センターの利用代金として支払を行っているものと認められるから、単なる付随的な業務とみることはできない。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(3)請求人は、乙第2号証の写真が示す施設の表札表示(「ユニーグループ」の使用商標)は、当該施設の管理運営主体の表示、当該施設の所在地の表示、当該施設の目的機能の表示(当該施設が「ユニー」の各店舗に商品を配送する目的、機能を担う旨の表示)として理解されるのが普通であって、「物流センター事業の運営及び管理」(審決注:請求に係る指定役務を指すものと理解する)についての商標であると需要者に認識されることはない旨主張する。
しかしながら、乙第2号証の写真が示す施設の表札表示(「ユニーグループ」の使用商標)は、請求人指摘の意味合いとして理解される場合があるとしても、上記2のとおり、「商品の荷受・検品及び保管業務」、「仕分・出荷業務」等の使用役務についての使用とみることもできるものである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標の商標権者及び通常使用権者が、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中、第39類「寄託を受けた物品の倉庫における保管,物品の仕分け及び荷造り」について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていたことを証明したと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。

審判長 岩崎 安子
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2022-12-08 
結審通知日 2022-12-12 
審決日 2022-12-26 
出願番号 2003070214 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y3539)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 板谷 玲子
森山 啓
登録日 2004-05-21 
登録番号 4773039 
商標の称呼 ユニーグループ、ユニー 
代理人 前田 大輔 
代理人 三宅 始 
代理人 朝倉 美知 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 中村 知公 
代理人 中山 俊彦 

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