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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W293235
管理番号 1398565 
総通号数 18 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-08-22 
確定日 2023-05-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第6572238号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6572238号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6572238号商標(以下「本件商標」という。)は、「KINI」の文字を標準文字で表してなり、令和3年12月7日に登録出願、第29類ないし第33類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同4年5月18日に登録査定され、同年6月15日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下のとおりの登録商標であり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
1 登録第1912007号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:昭和58年9月26日
設定登録日:昭和61年11月27日
書換登録日:平成18年11月1日
指定商品:第29類「乳製品」
2 登録第5125235号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「キリ」(標準文字)
登録出願日:平成18年9月11日
設定登録日:平成20年4月4日
指定商品:第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
3 国際登録第1198048号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
国際登録出願日:2013年(平成25年)11月26日
設定登録日:2015年(平成27年)9月18日
指定商品:第30類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品
4 国際登録第1302832号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
国際登録出願日:2016年(平成28年)2月12日
設定登録日:2017年(平成29年)6月30日
指定商品:第29類及び第30類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)商品の類否
本件商標の指定商品及び指定役務には、申立人が所有する商標登録(甲2、甲5)の指定商品と同一又は類似の商品又は役務(以下「申立対象商品等」という。」を含むものであり、商標審査においても類似の商品又は役務として取り扱われている。
(2)商標の類否
ア 商標の称呼・外観・観念からの検討
本件商標と申立人商標との類否を、外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、本件商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあるか否かにより検討すれば、本件商標の要部「KINI」と申立人商標の要部「KIRI」及び「キリ」とは類似と判断すべきものである。
本件商標からは、「キニ」の称呼を、申立人商標からは、「キリ」の称呼が生じる。これらの称呼は、第二音において相違はするものの、共に母音が「イ」で共通し、語尾に配置されることや共通の語頭音「キ」に続き発せられることと相まって、「キニ」と「キリ」は相互に極めて相紛らわしく、聴別を誤るおそれのある関係にある。よって、本件商標と申立人商標のそれぞれを一連に称呼するときは、全体の語調、語感が相紛らわしく、これらの商標より生じる称呼は相互に類似する。
また、本件商標「KINI」と申立人商標「KIRI」とは、一見すると外観において相紛らわしい。
そして、申立対象商品等及び申立人商標の指定商品とは、日常的に購入される飲食料品であり、その価格帯も比較的に低額である。そのような性格の商品等について当該商品・役務の需要者・取引者は、商標の内容・具体的構成について殊更大きな注意を払うことはなく商標に接する。よって、本件商標と申立人商標との称呼や外観において、出所について混同するおそれは十分に生じ得る。
イ 取引実情
申立人商標は、1966年にフランスにて乳製品についての使用が開始され、以来、当該商品の販売国を広げ、約50年以上に渡り継続的に使用されている。我が国においては、1983年より販売が開始され、現在もなお売上規模を拡大しながら継続して提供されている(甲6)。売上高としては、2014年の情報ではあるが当時で70億円程度を記録する人気商品である(甲7)。
このような取引実情からすると、我が国において約40年に渡り申立人商標が実際に使用される「乳製品」やこれと組み合わせて食べられることも多くある菓子などの飲食料品の分野において、本件商標が使用される場合には、商品や商標の共通性や申立人商標の周知性に鑑みれば、申立人の取扱いに係る商品と、商品の出所について混同を生じるおそれがある。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)狭義の混同について
申立人商標は、「乳製品」を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されている商標である。申立人は、フランス国シュレンヌに本社を置くベルは、約150年にわたるチーズ製造の歴史を持ち、世界130ヶ国以上の国々、約4億人の消費者に乳製品を継続して販売されている(甲8)。また、申立人商標は、申立人の日本法人であるベルジャポン株式会社が当該商品を国内に輸入し、伊藤ハム株式会社より販売されている(甲9)。
また、申立対象商品等及び異議申立人商標の指定商品は、同一又は類似であって、これら商品の内容や価格帯、提供場所は一般的におおよそ共通する。よって、両商標が使用される商品は競合関係にあり、その需要者・取引者も共通する。
申立人商標のこれまでの使用の実績(甲10、甲11)、本件商標と申立人商標の類似性、両商標が使用される具体的商品の内容や価格帯の共通性、商品の取引チャネル、商品自体の競合性などからすれば、本件商標を申立対象商品等について使用した場合には、需要者・取引者は、本件商標が表示する商品は申立人の業務に係る商品であるとして「直接的に」混同するおそれ、すなわち、「狭義の混同」を生じるおそれがある。
(2)広義の混同について
需要者・取引者が、本件商標の指定商品は、申立人の取扱いに係る商品であるとして「直接的に」混同するおそれはないとしても、上述のとおり、申立人商標が少なくとも「乳製品」について需要者の間に広く認識されている商標であることに鑑みれば、本件商標のその指定商品への使用は、申立人の子会社若しくは関連会社の提供に係る商品であるとの緊密な営業上の関係、又は同一の表示による展開事業を営むグループに属する関係にあると誤信されるおそれ、すなわち、「広義の混同」を生じるおそれがある。
(3)混同を生ずるおそれの有無について
申立人商標は、本件商標の出願日である令和3(2021)年12月7日の時点において、日本全国津々浦々におけるその使用の実績に鑑みれば「乳製品」の商標として広く認識されていた。また、本件商標を申立対象商品等について使用する行為は、周知な申立人商標の顧客吸引力、すなわち、グッドウィルを薄める(希釈する)行為(dilution)に他ならない。また、申立対象商品等と申立人商標の指定商品とは、同一又は類似の関係にあり、それら商品の内容や価格帯、商品の取引チャネル、需要者・取引者等は共通する。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、申立人は、1966年にフランスにて乳製品について製造して以来、世界130国で販売されており、我が国においては、1983年より販売が開始され以来、現在もなお継続して販売されている(甲6)。
また、2014年の日本経済新聞(ウェブ版)によれば、「よつ葉乳業(札幌市)の工場に設備を導入、生産を委託し、全国で販売を広げるとし、2014年時点の売上高は、70億円程度とされる(甲7)。
そうすると、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「乳製品」について使用する商標として、取引者、需要者間に一定程度認識されているものといえる。
2 本件商標と引用商標の類似性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「KINI」の文字よりなるから、その構成文字に相応し、「キニ」の称呼を生じるものであり、当該文字は、辞書等に載録されている成語ではなく、ただちに何らかの意味合いを理解させるものではないから、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標1及び3は、別掲1及び2に記載のとおり、やや肉太で「KIRI」の欧文字を書してなり、引用商標2は、「キリ」の片仮名を書してなり、引用商標4は、別掲3に記載のとおり、線で縁取りされた丸みを帯びた青色肉太の「kiri」の欧文字よりなるものであり、いずれも、その構成文字に相応し、「キリ」の称呼を生じるものである。
また、「KIRI」、「kiri」及び「キリ」の各文字は、辞書等に載録されている成語ではないものの、上記1のとおり、申立人の業務に係る「乳製品」について使用する商標として、取引者、需要者間に一定程度認識されているものであるから、申立人の乳製品ブランドの観念が生じるものである。
よって、引用商標は、「キリ」の称呼及び申立人の乳製品ブランドの観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標と引用商標1及び3の類似性について
(ア)外観について
本件商標は、「KINI」の欧文字を標準文字で表してなり、他方、引用商標1及び3は、やや肉太で「KIRI」の欧文字を書してなるところ、本件商標と引用商標1及び3とは、文字の太さが異なり、また、3文字目において、「N」と「R」の違いを有するが、「N」と「R」は、それぞれ字形が大きく異なり、また、両者は、4文字からなる少ない文字構成も相まって、全体として、明らかに異なる印象を受けるものである。
そうすると、本件商標と引用商標1及び3とは、外観上、相紛れることのない、別異のものとして認識し、把握されるというべきである。
(イ)称呼について
本件商標から生じる「キニ」の称呼と引用商標1及び3から生じる「キリ」の称呼とは、末尾において「ニ」と「リ」の音に相違を有するが、両者は共に2音と極めて短い音数にして、末尾の音自体は、比較的印象に残りやすく、明瞭に聴別できることから、全体の語調語感は相違したものとなり、互いに紛れるおそれはない。
(ウ)観念について
本件商標は、特定の観念を生じないものであり、引用商標1及び3は、申立人の乳製品ブランドの観念が生じるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念において相紛れるおそれはない。
イ 本件商標と引用商標2の類似性について
(ア)外観について
本件商標は、「KINI」の欧文字を標準文字で表してなり、他方、引用商標2は、「キリ」の片仮名を書してなるものであり、本件商標と引用商標2とは、文字の種類の相違から、外観上、相紛れることのない、別異のものとして認識し、把握されるというべきである。
(イ)称呼について
本件商標から生じる「キニ」の称呼と引用商標2から生じる「キリ」の称呼とは、末尾において「ニ」と「リ」の音に相違を有するが、両者は共に2音と極めて短い音数にして、末尾の音自体は、比較的印象に残りやすく、明瞭に聴別できることから、全体の語調語感は相違したものとなり、互いに紛れるおそれはない。
(ウ)観念について
本件商標は、特定の観念を生じないものであり、引用商標2は、申立人の乳製品ブランドの観念が生じるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念において相紛れるおそれはない。
ウ 本件商標と引用商標4の類似性について
(ア)外観について
本件商標は、「KINI」の欧文字を標準文字で表してなり、他方、引用商標4は、線で縁取りされた丸みを帯びた青色肉太の「kiri」の欧文字よりなるものであり、本件商標と引用商標4とは、その全体の構成態様が異なるから、外観上、相紛れることのない、別異のものとして認識し、把握されるというべきである。
(イ)称呼について
本件商標から生じる「キニ」の称呼と引用商標4から生じる「キリ」の称呼とは、末尾において「ニ」と「リ」の音に相違を有するが、両者は共に2音と極めて短い音数にして、末尾の音自体は、比較的印象に残りやすく、明瞭に聴別できることから、全体の語調語感は相違したものとなり、互いに紛れるおそれはない。
(ウ)観念について
本件商標は、特定の観念を生じないものであり、引用商標4は、申立人の乳製品ブランドの観念が生じるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念において相紛れるおそれはない。
エ 小括
以上から、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼において相違し、観念において相紛れるおそれはないものであるから、これらを総合して判断すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき特段の事情は見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
3 商標法第4条第1項第11号について
上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品が類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、乳製品のブランド名を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間において、一定程度認識されているといい得るものであるとしても、上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であり、別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、需要者において、申立人の取り扱う商品及び役務を連想、想起するということはできず、よって、その商品及び役務が申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標とはいえない。
その他、本件商標が混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、その指定商品及び指定役務が申立人の業務に係る商品と同一又は類似であるとしても、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(引用商標1)


別掲2(引用商標3)


別掲3(引用商標4)(色彩は原本参照)


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異議決定日 2023-05-16 
出願番号 2021152185 
審決分類 T 1 652・ 26- Y (W293235)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 馬場 秀敏
大橋 良成
登録日 2022-06-15 
登録番号 6572238 
権利者 株式会社韓国広場
商標の称呼 キニ 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 朝倉 美知 
代理人 鈴木 利明 
代理人 本田 彩香 
代理人 中村 知公 
代理人 前田 大輔 

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