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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35
管理番号 1397349 
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-08-08 
確定日 2023-04-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第6563752号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6563752号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6563752号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和3年7月28日に登録出願、「録音・録画済の記録媒体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,コンピュータ周辺機器及び付属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,書籍の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物及び出版物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同4年5月6日に登録査定され、同月31日に設定登録されたものである。

第2 引用商標等
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標及び標章は、同人の主張から合議体は次のとおりと判断する。
1 引用商標
(1)登録第6043653号商標(以下「引用商標1」という。)は、「17LIVE」の文字を標準文字で表してなり、平成29年8月16日登録出願、第9類「電子計算機用プログラム,ダウンロード可能な映像・画像・音楽・音声・文字、音声・画像・映像・文字情報を記憶させた記録媒体」並びに第41類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定商品及び指定役務として、同30年5月18日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
(2)登録第6043654号商標(以下「引用商標2」という。)は、「17LIVER」の文字を標準文字で表してなり、平成29年8月16日登録出願、第9類「電子計算機用プログラム,ダウンロード可能な映像・画像・音楽・音声・文字、音声・画像・映像・文字情報を記憶させた記録媒体」並びに第41類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定商品及び指定役務として、同30年5月18日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。
2 引用標章
申立人が、オンラインによるライブ動画の提供(以下「ライブ配信サービス」という。)について使用し、取引者、需要者の間に広く知られていると主張する標章は、別掲2のとおりの構成からなる標章(以下「引用標章1」という。)、「17LIVE」の文字からなる標章(以下「引用標章2」という。)及び「17LIVER」の文字からなる標章(以下「引用標章3」という。)である。
以下、引用標章1ないし引用標章3をまとめていうときは、「引用標章」という。
また、引用商標と引用標章をまとめていうときは、「引用商標等」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第57号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標等の周知著名性について
(1)申立人サービス「17LIVE」について
申立人は、ライブ配信サービス「17LIVE」(以下「申立人サービス」という。)を運営する企業であり、申立人サービスは、ライブ配信に機能を特化した専用プラットフォームであって、スマートフォンのアプリやパソコンを通じて、誰でもどこからでも動画をライブ配信し、視聴することができる(甲5の1)。申立人サービスでは、「ライブの配信者」(以下「ライバー」という。)に対し、視聴者が「ギフト」と呼ばれる無料又は有料のアイテムを配信中のライバーに贈ることで、ライバーは収入を得ることができる「投げ銭型」のサービスであり、申立人サービス用のライブ配信アプリ(以下「申立人サービス用アプリ」という。)もある(甲5の1、甲5の2)。
申立人サービスは、2015年6月に台湾で最初にサービスが開始されたのち、2017年9月にわが国での運営が開始された。申立人は現在、東京等世界6か所に拠点を置き申立人サービスを展開している(甲5の1)。本件商標の登録出願前の2020年10月時点のわが国における申立人サービス用アプリの累計ダウンロード(以下「DL」と表す場合がある。)数は1000万DLにのぼり、申立人と直接契約するライバーである「認証ライバー」(甲25)の数は2万5000人に達し、2021年9月の時点では、申立人サービス用アプリの累計DL数は1500万DL、全世界の登録ユーザー数は5000万人以上、認証ライバーの数は5万4000人に達する(甲6)。
(2)引用標章1の使用状況及び広告宣伝について
申立人の前身企業は、2020年6月18日の申立人サービスのブランドリニューアルに伴い、引用標章1を新たなロゴとして採用し、使用を開始した(甲7)。
同社は、申立人サービスの広告宣伝の一環として、引用標章1を用いたテレビCMを2020年10月及び2021年6月にそれぞれ全国地域で放送した(甲8、甲9)。CM好感度調査によると、2021年6月20日から2021年7月19日の間に東京キー5局で放送されたCMのうち、申立人サービスについてのCMの出稿回数が580回を数え、全オンエア2575銘柄中第8位であった(甲10)。
テレビCMには、画面中央に引用標章1が目立つように表示され(甲11、甲12)、テレビCM放送後にあたる2021年冬季に、若年層(15歳から24歳)の男女800人を対象に行われた調査(甲13)によると、申立人サービス用アプリの認知率は56.1%であり、同種の9つのライブ配信アプリのうち2番目に高い数字であった。
2020年10月には、わが国における申立人サービス用のアプリのDL数が累計1000万DLであったところ、2021年9月には累計1500万DLを突破し、併せて、認証ライバー数も2020年10月の2万5000人から2021年9月の5万4000人へと倍増した(甲6、甲14)。
(3)コロナ禍における申立人サービスの市場の拡大
2017年9月の申立人サービス開始後1年ほどで、報酬を支払うライバー数が約7000人に達し(甲15)、申立人サービスは2018年9月から2019年9月にかけて約300%の成長率を遂げ(甲16)、さらに2020年春以降のコロナ禍においては、申立人サービスの認証ライバー数は2019年の1万7000人から2020年の3万2000人へと急増し、2020年の年間合計配信時間は前年比200%に達するなど、その規模をさらに拡大させた(甲17)。
コロナ禍においては、一般人だけでなく、プロのアーティストやイベント主催者も積極的に申立人サービスを活用してライブ配信を行うケースが増え、無観客でのライブ配信コンサートやスポーツの試合中継を行うようになった(甲18〜甲20)。
(4)申立人サービスを活用したマーケティング支援やライブコマースの展開
申立人は、2020年8月に「17LIVER PASSPORT」というサービスを開始した(甲21)。これは、さまざまな企業と提携して商品やサービスの購入代金の割引をライバーに提供するという、業界初のライバー向け優待サービスであり、自社商品・サービスのプロモーションを行いたい企業とライバーたちとを申立人が仲介する役割を果たしている。
また、申立人サービスで活躍する人気ライバーたちの集客力・発信力に着目した企業が、自社の商品・サービスのプロモーションを目的として申立人とコラボし、申立人サービスでの配信を通じて視聴者に商品やサービスを広告宣伝するイベントを実施するケースも増えている(甲28、甲29)。コロナ禍以降は、インターネット通販、中でもインターネットによる中継を通じて商品を販売する「ライブコマース」は、徐々にその活用が広がり(甲30)、申立人は、企業向けに申立人サービスを活用したライブコマース支援を行っている(甲31〜甲37)。
(5)小括
以上のとおり、引用商標等は、本件商標の登録出願時以前から申立人が運営する申立人サービス(ライブ配信サービス「17LIVE」)について使用された結果、申立人の業務を表すものとしてわが国の取引者・需要者において広く知られるに至っていた著名商標であり、本件商標の登録査定時においても、わが国における引用商標等の著名性が一貫して継続していたことは明らかである。
したがって、引用商標等は、本件商標の登録出願時には、申立人の業務に係る商品・役務を表す商標として、わが国の取引者・需要者において広く認識されていた著名商標であって、かつ、その登録査定時にもその著名性は継続していたものであり、加えて、その著名性の程度は極めて高いものである。
2 本件商標と引用商標等の対比
(1)本件商標と引用標章1の対比
本件商標の構成中、左側に配された図形と、引用標章1の構成中、左側に配された図形とは、いずれも複数色のグラデーションを施した略角丸正方形輪郭内の中央付近に、動物の顔を模したと思しき両目、鼻及び口元を配してなるという点において共通する。そして、本件商標の構成中、右側の「18LIVER」の文字及び「イチハチ」の片仮名文字を上下二段に配してなる部分と、引用標章1の構成中、右側の「17LIVE」の文字及び「イチナナ」の片仮名文字を上下二段に配してなる部分とは、使用されているフォント及び構成態様が酷似しているうえ、構成文字についても、2桁の数字部分の1桁目が「8」であるか「7」であるか、アルファベット文字部分が「LIVER」であるか「LIVE」であるか、カタカナ文字部分が「イチハチ」であるか「イチナナ」であるかの違いにとどまるものである。前述した左側の図形の共通性に加え、「8」(ハチ)が「7」(ナナ)に次ぐ数字であることに照らせば、両者の類似性の程度の高さは疑いようがなく、本件商標は引用標章1に依拠して採択されたものであることは明白である。
したがって、両者は極めて互いに相紛らわしい類似の商標として認識されるというべきである。
(2)本件商標と引用標章2及び引用商標1の対比
本件商標の構成中、「18LIVER」の文字と、引用標章2及び引用商標1とは、「LIVE」の欧文字を共通にし、末尾の「R」の文字の有無及び2桁の数字部分の1桁目において「8」と「7」との違いがあるものの、「8」が「7」に次ぐ数字であることに加え、「配信」を意味する「ライブ」(LIVE)に「〜する人」を意味する接尾辞「ER」を付加した「LIVER」(ライバー)との語が「ライブの配信者」を意味する語として使用されているとの取引の実情に照らせば、「LIVER」と「LIVE」の文字からは、ライブ配信者ないしライブ配信という互いに似通った観念が生じるものであり、上記2のとおり、「17LIVE」の文字が申立人の業務に係るライブ配信サービスの名称としてわが国の取引者・需要者において著名であるとの事実も併せ考えれば、「18LIVER」の文字に接した取引者・需要者は、申立人の著名なライブ配信サービス「17LIVE」で配信活動をするライバーを連想・想起するといえる。
したがって、両者は極めて互いに相紛らわしい類似の商標として認識されるというべきである。
(3)本件商標と引用標章3及び引用商標2の対比
本件商標の構成中、「18LIVER」の文字と、引用標章3及び引用商標2とは、2桁の数字部分の2桁目の「1」及び「LIVER」の欧文字部分を共通にし、数字部分の1桁目のみが「8」と「7」とで異なるものの、「8」が「7」に次ぐ数字であることに照らせば、両者は外観上類似するものである。また、本件商標から生じる「イチハチライバー」又は「ジュウハチライバー」の称呼と、引用標章3及び引用商標2から生じる「イチナナライバー」又は「ジュウナナライバー」の称呼は、中間に位置する「ハチ」と「ナナ」の音のみ異なり、両者を構成する8音のうち6音が共通する上、両者の音調も同一であることから、両者は称呼上も類似する。さらに、上記(3)のとおり、「17LIVE」が申立人の業務に係るライブ配信サービスの名称として著名であり、「17LIVER」の文字から「『17LIVE』で配信者として活動するライバー」との観念が生じることから、「18LIVER」の文字に接した取引者・需要者は、上記観念を連想・想起するといえる。
したがって、両者は極めて互いに相紛らわしい類似の商標として認識されるというべきである。
3 本件商標の指定役務と引用商標等の指定商品及び指定役務並びに使用役務の対比
(1)本件商標の指定役務と引用標章の使用役務の対比
本件商標の指定役務は、第35類に属する商標登録原簿記載の役務(甲1の2)である。他方、引用標章は、上記1(4)のとおり、マーケティングや販売促進、オンラインショッピングを主とする小売業について使用されており、本件商標の指定役務のいずれとも関連性が高く、その需要者を共通にするものである。したがって、本件商標の指定役務と引用標章の使用役務は互いに同一又は類似するものである。
(2)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務の対比
本件商標の指定役務中、「録音・録画済の記録媒体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、コンピュータ周辺機器及び付属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、書籍の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、印刷物及び出版物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標の指定商品及び指定役務中、第9類「電子計算機用プログラム、ダウンロード可能な映像・画像・音楽・音声・文字、音声・画像・映像・文字情報を記憶させた記録媒体」に類似するものである。
4 商標法第4条第1項第10号該当性について
上記1のとおり、引用商標等は、申立人の業務を表す著名商標である。また、上記2のとおり、本件商標と引用商標等とは類似するものである。さらに、上記3のとおり、本件商標の指定役務と引用商標等の指定商品及び指定役務並びに使用役務は、同一又は類似するものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
5 商標法第4条第1項第11号該当性について
上記1のとおり、本件商標と引用商標とは類似するものである。また、上記3(2)のとおり、本件商標の指定役務には、引用商標の指定商品及び指定役務と類似するものが含まれる。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
6 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標等の周知著名性及び独創性の程度
上記1のとおり、引用商標等は、申立人の業務に係る商品及び役務を表す著名な商標である。
また、引用商標等を構成する図形並びに「17LIVE」、「イチナナ」の語及び「17LIVER」の語は、いずれも申立人のオリジナルであり、既成語ではなく、特定の観念を有しない造語である。これらの語は、一般的な辞書や情報事典等には一切記載がなく、市場においても、申立人の運営に係るライブ配信サービスないしその配信者を指称する語としてのみ使用されている(甲38〜甲40)。したがって、引用商標の独創性の程度は高い。
(2)本件商標と引用商標等との類似性の程度
上記2のとおり、本件商標と引用商標等とは、その類似性の程度は極めて高いものである。
(3)商品・役務間の関連性及び取引者・需要者の共通性
上記3のとおり、本件商標の指定役務と、引用商標等の指定商品及び指定役務並びに使用役務は、類似であり関連性が高く、取引者・需要者を共通にするものである。
(4)ハウスマークとしての使用
引用商標等中の「17LIVE」の文字は、上記1のとおり、申立人の著名商標であるとともに、2020年10月以降は申立人の社名としても使用されているものであり(甲41)、申立人の著名なハウスマークといえる。
(5)取引の実情
ア 申立人と本件商標権者との関係
本件商標権者のウェブサイトには、申立人サービスについての紹介文とあわせて、「イチナナ」及び「17Live」の文字等が大きく表示されている(甲42)。なお、申立人は本件商標権者とは、申立人サービスのエージェンシー業務に係る契約(以下「本件エージェント契約」という。)を2019年10月1日ないし2020年2月29日に締結していた(甲43)。
イ 本件商標権者ないしその関連会社による本件商標の使用
本件商標権者は、2021年8月2日に、本件商標をその指定役務について使用する事業の運営法人として、18合同会社(以下「本件関連会社」という。)を設立した。本件関連会社は、その代表社員及び業務執行社員はいずれも本件商標権者であり、本件商標権者と本店所在地を共通にしている(甲44〜甲46)。
そして、本件関連会社は、2022年6月18日付けで本件商標に係るロゴを発表するプレスリリース(甲47)(以下「本件プレスリリース」という。)を発行しているところ、その内容は、申立人が2020年6月18日付けで発行した、引用標章1に係るロゴを発表するプレスリリース(甲7)に依拠して制作されたものといわざるを得ないほどに酷似している。
本件プレスリリースにおいて、本件商標に係るロゴを使用する事業とされる「ライバーエージェント『18LIVER(イチハチライバー)』」(以下「本件事業」という。)とは、成人向けコンテンツを配信する配信者のエージェント事業であり、「18liver.jp」とのドメイン名を使用して開設された本件事業のウェブサイトでは、本件商標のロゴのほか、本件企業ミッション等も使用されている(甲48、甲49)。
ウ 申立人からの通知書に対する本件商標権者らの対応
上記イの本件事業を認識した申立人は、本件商標権者や本件事業を運営しているとされる米国法人等に対して、本件商標の使用の中止や本件商標に係る商標権の放棄を求めたものの、本件商標を採択した経緯や本件商標と引用商標の類否等に関する合理的な説明ないし反論を一切行わなかった(甲51)。
エ 小括
以上のとおり、申立人と本件商標権者が過去に本件エージェント契約を締結していたことや、本件関連会社が関与する本件事業において本件商標に係るロゴや本件企業ミッション等が使用されていることに加え、本件商標権者と本件関連会社の関係性等からすれば、本件商標権者は、申立人サービスを知り、これに使用されている引用商標等が高い著名性を有すること及び引用商標等が高い顧客吸引力を有することを確知し、かかる顧客吸引力にただ乗りし、その出所表示機能を希釈化させる意図を有していたことは疑いようがない。
(6)別件商標「17Live」の審査における「17LIVE」の著名性の認定
本件商標権者が、本件商標の登録出願前に出願した、商標「17Live」に係る商標登録出願(商願2018−5975、甲52)に対する拒絶理由通知書等(甲53〜甲55)によれば、申立人の商標「17LIVE」が著名であると特許庁も認めており、本件の審理においても考慮、斟酌されるべきである。
(7)出所の混同を生ずるおそれ
上記(1)のとおり、本件商標の登録出願及び登録査定時における、引用商標等の周知著名性の程度は極めて高いものであり、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標等との類似性の程度は極めて高いものである。そして、上記(3)のとおり、本件商標の指定役務と引用商標等の指定商品及び指定役務並びに使用役務とは共通性ないし一定の関連性があり、その取引者及び需要者は共通するものである。これらのことや、上記(5)で挙げた本件商標の実際の使用態様や本件商標権者のただ乗り及び希釈化の意図を併せ考慮すれば、本件商標をその指定役務について使用する場合、これに接する取引者・需要者は、申立人サービスについて周知著名性を獲得した引用商標等を連想、想起し、本件商標を使用した役務が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように誤認し、その出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
(8)小括
以上の事実に基づき総合的に勘案すれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
7 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、引用商標等は、日本国内における需要者の間に広く認識されている商標であり、上記2のとおり、本件商標と引用商標等とは、類似するものである。
そして、引用商標等が本件商標の登録出願時において、すでにわが国で著名性を獲得していたことや、上記6(5)のとおり、本件商標権者が過去に申立人との間で本件エージェント契約を締結していたことがあり、本件事業において本件商標に係るロゴや本件企業ミッション等が使用されていること、さらには、上記6(6)のとおり、本件商標権者が、本件商標の登録出願前にも商標「17Live」を登録出願し拒絶されていたとの事実も併せ考えれば、本件商標権者が引用商標の存在を知らなかったとは考え難い。
すなわち、本件商標権者は、申立人サービスを知り、これに使用されている引用商標等が高い著名性を有すること及び引用商標等が高い顧客吸引力を有することを確知した上で、その著名性に便乗し、その顧客吸引力を不当に利用する目的をもって、本件商標を出願したのである。
以上の事実から、本件商標権者が、引用商標等の著名性に便乗してこれにただ乗りすると同時に、申立人に損害を与える目的をもって、本件商標を使用するものであることは明らかである。したがって、本件商標は、わが国において著名な引用商標等に類似し、本件商標権者が不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
8 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標の出願の経緯及び引用商標等の使用状況(甲57)及び上記6(5)で述べた取引の実情に照らせば、本件商標権者が、申立人サービスについて使用する引用商標等がわが国で著名となっていることを十分に認識した上で、引用商標等と類似性の高い本件商標を採択し、出願・登録に至ったことは明らかである。
かかる出願の経緯等に鑑みると、本件商標の登録出願は、申立人が有する著名商標への「フリーライド」を意図したものであり、また上記6(5)のとおりの取引の実情がある。そして、かかるただ乗り的使用によって、申立人の不断の努力により引用商標等に化体した業務上の信用が毀損され、また引用商標等が希釈化され、その価値が損なわれることになる。本件商標権者は、かかる結果を招来することを認識し、これを是認して本件商標の出願及び使用行為に及んだものであり、商道徳上到底容認できるものではない。
以上のとおり、本件商標権者による本件商標の登録出願に係る動機・経緯には、健全な法感情に照らして到底容認することのできないものであり、かかる本件商標の独占使用を認めることは、社会公共の秩序を著しく混乱させるおそれがあり、取引秩序の維持を目的とする商標法の予定するところではなく、保護に値しない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標等の周知著名性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、ライブ配信サービス「17LIVE」(申立人サービス)を運営する企業であり、申立人サービスは、2015年6月に台湾で最初にサービスが開始されたのち、申立人の前身企業(以下、単に「申立人」という。)により、2017年にわが国での運営が開始され、引用商標1及び引用標章2の使用が開始された(甲5の1、甲16、甲25)。申立人は現在、東京を含め世界6か所に拠点を置き、申立人サービスを展開している(甲5の1)。
イ 申立人は、2020年6月18日の申立人サービスのブランドリニューアルに伴い、引用標章1の使用を開始した(甲7)。また、引用標章1を用いたテレビCMを2020年10月及び2021年6月にそれぞれ全国地域で放送した(甲8、甲9)。2021年7月度のCM好感度調査によると、申立人サービスについてのCMの出稿回数は580回、全オンエア2575銘柄中第8位であった(甲10)。
ウ 申立人サービス用アプリの広告等では、引用商標1、引用標章1及び引用標章2が使用されている(甲6、甲8、甲9、甲11、甲12、甲14)ところ、甲第13号証によると、申立人サービス用アプリの「認知率」は、同種の9つのライブ配信アプリのうち2位であるが、「利用率」及び「配信率」は5位である。また、第三者が提供する配信アプリで、「認知率」、「利用率」、「配信率」いずれも1位とされている「LIVE LIVE」や、「認知率」は3位であるものの「利用率」及び「配信率」のいずれもが2位とされている「SHOWROOM」がある。
エ 申立人は、申立人サービスを通じて視聴者に商品やサービスを広告宣伝するイベントや、インターネットによる中継を通じて商品を販売する「ライブコマース」を実施した(甲28〜甲37)。
オ 2021年9月時点の我が国における申立人サービス用アプリの累計DL数は1500万DLとされ、全世界の登録ユーザー数は5000万人以上、申立人サービスへの配信者(ライバー)のうち、申立人と直接契約する「認証ライバー」の数は5万4000人に達する(甲6、甲14)。なお、申立人サービスのライバーは「17LIVER」(引用商標2及び引用標章3)と呼ばれる(甲21〜甲23)。
(2)上記(1)からすると、以下のように判断できる。
ア 申立人は、2017年頃から引用商標1及び引用標章2を、また2020年から引用標章1を、それぞれ申立人サービスでの使用を開始し、現在に至るまで使用しており、さらに、これらに伴い引用商標2及び引用標章3も使用していることを確認することができる。また、申立人と直接契約する「認証ライバー」の数や申立人サービス用アプリのDL数等からすれば、引用商標等が申立人の業務に係るライブ配信サービス(オンラインによるライブ動画の提供、申立人サービス)の名称を表すものとして、需要者の間に一定程度知られていることはうかがえる。
しかしながら、申立人サービスの視聴数(視聴時間)、売上高、シェア等が不明である。また、申立人サービスの広告宣伝については、全国地域を対象としたテレビCMを2020年10月及び2021年6月の2回放送したのみであることに加えて、CM好感度調査によるCMの出稿回数は580回で全オンエア2575銘柄中第8位であるものの、わずか2021年7月度という1か月分の情報でしかない。
また、第三者が提供する配信アプリが、申立人サービス用アプリよりも、認知率、利用率、配信率が高いことからすれば、アプリのDL数や認証ライバーの数を考慮しても、申立人サービス用アプリが、突出して認知度が高いとはいえない。
イ 以上からすれば、申立人サービス又は申立人サービス用アプリに使用されている引用商標等が、需要者の間に広く知られていると認めることはできない。
ウ その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用商標等が、申立人サービス又はその他の申立人の業務に係る商品若しくは役務(以下「申立人の業務に係る商品又は役務」という場合がある)を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事情は見いだせない。
エ したがって、引用商標等は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
2 本件商標と引用商標等の類否について
(1)本件商標について
ア 本件商標は、別掲1のとおり、ピンク色のリボンを付し角に丸みを帯びた四角状枠(ピンク色とオレンジ色のグラデーションがほどこしてある。)内に、何らかの動物の顔とおぼしき図形(以下「図形部分」という。)と、その右側上段に、黒色の太く大きな字体で「18LIVER」の文字を、その下段には、黒の横長平行四辺形の内側に「イチハチ」の文字を白抜きで、それぞれ表した構成からなるものである。
イ そして、「18LIVER」の文字部分は、数字の「18」と「〜の生活をする人」等の意味を有する英語の「LIVER」(「ジーニアス英和大辞典」株式会社大修館書房発行。以下同じ。)を結合したものであって、特定の意味合いを有するものではない。また、「イチハチ」の文字部分は、「18LIVER」の文字部分の数字の読みを表したものといえる。
以上よりすれば、本件商標は、その構成中、「18LIVER」の文字部分に相応して「ジュウハチライバー」の称呼及び「イチハチ」の文字を「18」の読みと捉えて「イチハチライバー」の称呼をも生じ、当該文字部分からは、特定の観念を生じない。
ウ 本件商標の図形部分からは特定の称呼及び観念は生じない。
(2)引用商標1及び引用標章2について
引用商標1及び引用標章2は、「17LIVE」の文字を表してなるところ、該文字は、数字の「17」と、「生存する。生きる。」等の意味を有する英語の「LIVE」(ジーニアス英和大辞典)を結合したものであって、特定の意味合いを有しないものである。そうすると、引用商標1及び引用標章2は、その構成文字に相応して「ジュウナナライブ」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
(3)引用商標2及び引用標章3について
引用商標2及び引用標章3は、「17LIVER」の文字を表してなるところ、該文字は、数字の「17」と、「〜の生活をする人」等の意味を有する英語の「LIVER」を結合したものであって、特定の意味合いを有しないものである。そうすると、引用商標2及び引用標章3は、その構成文字に相応した「ジュウナナライバー」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
(4)引用標章1について
引用標章1は、別掲2のとおり、角に丸みを帯びた四角状枠(水色、紫色、ピンク色等のグラデーションがほどこしてある。)内に、何らかの動物の顔とおぼしき図形と、その右側上段に、黒色の太く大きな字体で「17LIVE」の文字を、その下段には、黒の横長平行四辺形の内側に「イチナナ」の文字を白抜きで、それぞれ表した構成からなるものである。
そして、上記(1)及び(2)と同様に、引用標章1は、その構成中の「17LIVE」の文字部分に相応して「ジュウナナライブ」の称呼及び「イチナナ」の文字を「17」の読みと捉えて「イチナナライブ」の称呼をも生じ、当該文字部分からは、特定の観念を生じない。
また、引用標章1の図形部分からは特定の称呼及び観念は生じない。
(5)本件商標と引用商標1及び引用標章2の類否について
本件商標の要部(「18LIVER」及び「イチハチ」の文字)と引用商標1及び引用標章2の類否について検討するに、外観については、数字及び欧文字の相違並びに片仮名の有無において相違し、全体をみても、図形の有無において相違するから、両者は、外観上、十分に区別することができるものである。
次に、称呼についてみるに、本件商標から生じる「ジュウハチライバー」及び「イチハチライバー」の称呼と引用商標1及び引用標章2から生じる「ジュウナナライブ」の称呼は、構成音が異なり、それぞれを一連に称呼しても、語調、語感が相違し、明瞭に聴別することができる。
さらに、観念についてみるに、両者はともに特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することができない。
以上から、本件商標と引用商標1及び引用標章2とは、観念において比較することができないとしても、外観において十分区別することができ、称呼において明らかに相違するものであるから、これらを総合して勘案すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(6)本件商標と引用商標2及び引用標章3の類否について
本件商標の要部(「18LIVER」及び「イチハチ」の文字)と引用商標2及び引用標章3の類否について検討するに、外観については、数字の相違及び片仮名の有無において相違し、全体をみても、図形の有無において相違するから、両者は、外観上、十分に区別することができるものである。
次に、称呼についてみるに、本件商標から生じる「ジュウハチライバー」及び「イチハチライバー」の称呼と引用商標2及び引用標章3から生じる「ジュウナナライバー」の称呼は、中間の「ハチ」と「ナナ」の音の相違又は前半の「イチハチ」と「ジュウナナ」の相違から、それぞれを一連に称呼しても、語調、語感が相違し、明瞭に聴別することができる。
さらに、観念についてみるに、両者はともに特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することができない。
以上から、本件商標と引用商標2及び引用標章3とは、観念において比較することができないとしても、外観において十分区別することができ、称呼においても明らかに相違するものであるから、これらを総合して勘案すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(7)本件商標と引用標章1の類否について
本件商標の文字部分と引用標章1の文字部分の類否について検討するに、外観については、数字、欧文及び片仮名において相違するものであり、両者は、外観上、区別することができるものである。
次に、称呼についてみるに、本件商標から生じる「ジュウハチライバー」及び「イチハチライバー」の称呼と引用標章1から生じる「ジュウナナライブ」及び「イチナナライブ」の称呼は、構成音が異なり、それぞれを一連に称呼しても、語調、語感が相違し、明瞭に聴別することができる。
さらに、観念についてみるに、両者はともに特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することができない。
また、本件商標の図形部分と引用標章1の図形部分を比較しても、両者は、その外観において、リボンの有無、顔とおぼしき図形の形状が異なることから、外観上、区別することができ、称呼及び観念において、特定の称呼及び観念を生じないことから、比較することはできない。
以上から、本件商標と引用標章1とは、観念において比較することができないとしても、外観において区別することができ、称呼において明らかに相違するものであるから、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
3 商標法第4条第1項第11号について
上記2の(5)及び(6)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品又は指定役務と引用商標の指定役務が類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
(1)上記1のとおり、引用商標等は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間において、広く認識されていたと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の要件を欠くため同号に該当しない。
(2)上記1のとおり、引用商標等は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間において、広く認識されていたと認めることはできない。
また、上記2のとおり、本件商標と引用標章等とは、非類似であって類似性の程度は低いというべきである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標等を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、引用商標等が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間において広く認識されていたと認めることはできず、上記2のとおり、本件商標と引用商標等とは非類似である。
また、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を証拠から見いだすこともできないから、本件商標は、不正の目的をもって使用するものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
上記1のとおり、引用商標等が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間において広く認識されていたと認めることはできない。
そうすると、本件商標は、引用商標等の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
また、本件商標が、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべき事情は見いだせないものである。さらに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激又は他人に不快な印象を与えるようなものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲

別掲1 本件商標(色彩については、原本を参照。)


別掲2 引用標章1(色彩については、原本を参照。)




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異議決定日 2023-03-30 
出願番号 2021094075 
審決分類 T 1 651・ 21- Y (W35)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 茂木 祐輔
大森 友子
登録日 2022-05-31 
登録番号 6563752 
権利者 株式会社リッチファンズ
商標の称呼 イチハチリバー、イチハチライバー、ジューハチリバー、ジューハチライバー、イチハチ、リバー、ライバー 
代理人 田中 克郎 
代理人 廣中 健 
代理人 赤間 昌帆 
代理人 関川 淳子 
代理人 村上 諭志 
代理人 小林 奈央 
代理人 稲葉 良幸 

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