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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W03 |
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管理番号 | 1397344 |
総通号数 | 17 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-05-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-06-22 |
確定日 | 2023-04-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6551560号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6551560号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6551560号商標(以下「本件商標」という。)は、「FIXME」の欧文字を別掲のとおりの態様で表してなり、令和3年11月5日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同4年3月22日に登録査定され、同年5月2日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第4941218号商標(以下「引用商標」という。)は、「フィットミー」の片仮名と「FITME」の欧文字を上下2段に表してなり、平成17年8月22日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同18年3月31日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の3第2項によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第35号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。 (1)「FITME」の周知著名性について ア 申立人であるロレアル(以下「申立人A」という。)は、フランスで1909年に創業され、パリに本社を構える世界最大の化粧品グループである(甲6、甲21〜甲27)。 申立人Aは、1960年代から戦略的買収により成長を促進させ、2020年現在、傘下に配している35のブランドには、LANCOME(ランコム)、YVES SAINT LAURENT(イヴサンローラン)、GIORGIO ARMANI(ジョルジオアルマーニ)、shu uemura(シュウウエムラ)、Helena Rubinstein(ヘレナルビンスタイン)等が含まれおり、ラグジュアリー化粧品からフレグランス、美容院サロン向けのヘアカラーやヘアケア商品、皮膚科医推奨のスキンケア製品まで幅広い商品を扱うグループ企業となっている(甲6)。 その傘下ブランドの一つに、「MAYBELLINE NEW YORK」(以下「メイベリン ニューヨーク」という。)がある。当該「メイベリン ニューヨーク」は、1915年にアメリカで誕生し、現在世界90か国以上で販売されている、世界No.1の販売実績数を誇るメイクアップブランドである(甲5)。 そして、「FITME」ブランドは、このような世界No.1のメイクアップブランドから、2018年10月にリキッドファンデーションをメインに商品の販売が開始されたものであるが、発売と同時に瞬く間に人気のベストセラー商品となった。このことは、「LIPS」という国内No.1のコスメ・美容に特化したSNSアプリの900万人のユーザーが選ぶベストコスメアワードにおいて、「リキッドファンデ部門」において、2020年度下半期の「第1位」に選ばれ、2021年間では「第2位」を獲得し(甲7)、クチコミから選ばれる賞である「@cosmeベストコスメアワード」の2021年度においても、「ベストリキッドファンデ」において「第3位」(甲8)となっており、このような需要者が選ぶ賞における複数の受賞歴からも「FITME」の人気の高さは明白である。さらに、ビューティー・コスメ誌部門で実売No.1の女性誌「美的」の2021年度のベストコスメ受賞においても、リキッドファンデーションが「第1位」を獲得しており(甲9)、化粧品の品質が高く評価されている。 現在は、リキッドファンデーションのほか、パウダーファンデーション、コンシーラー、化粧下地、ブラッシュ等、展開するメイクアップ商品の項目が順調に増えている(甲4)。「FITME」ブランドが販売される小売店としては、例えば、全国規模のマツモトキヨシ、ドン・キホーテ、イオンリテール、ウエルシア、スギ薬局等がある。「FITME」ブランドの商品の発売を開始した2018年から2022年8月までの日本における小売店における総売上高は、43億9千万円を超えている(甲10)。この売上高の高さは、2022年度のリキッドファンデーションの市場シェアで第2位を占めていることからも明らかである(甲11の1)。この市場シェアは、日本の1000以上のリキッドファンデーションのブランド(甲11の2)から導き出されたものである。これらの売上高と市場シェアについては、日本の市場調査会社として有名なインテージによる「SRI+」調査(甲12)による報告書に基づいている。 イ 申立人Aは、このような高い売上を達成するために、商品説明を兼ねたイベントを行い、公式ウエブサイトやTIKTOK、Instagram、Twitter、Google等のSNSメディアを積極的に活用して、申立人Aの商品の宣伝広告を大々的に実施している。 (ア)アンバサダー 「FITME」のキャンペーンに、動画メディア「MINE」とコラボし、アンバサダーとしてAKB48グループのSKE48、HKT48、NGT48から5名を起用した(甲13)。 (イ)女性雑誌の付録 現在、ファッション雑誌には付録をつけて販売するのが主流となっているが、付録の商品メーカーは、雑誌社に広告費を支払うことで、商品を付録として提供することができ、雑誌社は、付録をつけることで雑誌の販売部数を伸ばすことができる。付録は、その商品の人気がないと成り立たないものであるが、申立人Aの「FITME」を使用した商品は、人気の女性雑誌「VIVI」や「美的」の付録として採用されていることからも(甲14)、「FITME」に係る商品は人気がある裏付けとなるものである。 (ウ)イベント ジャーナリストやインフルエンサー向けに、「FITME」ブランドの認知拡大を目的としたイベントを数多く行っている。 例えば、2019年3月20日には、人気お笑い芸人Kさんをゲストに迎えたイベントが行われ、21のメディア(2つのテレビ局、6つの新聞や雑誌社、19のウエブ関係者)(決定注:申立人の主張のまま)が参加した。当該イベントは、同月21日にフジテレビ「ノンストップ」で紹介され、このテレビの紹介による売上への効果として、約2千万円以上の購入金額に換算された。テレビ以外にも、YAHOO!ニュースやYouTube等において、このイベントについて、3月20日から25日まで合計97の記事が発信され、1億7200万の数の閲覧がされ、その売上への波及効果は、8千8百万円以上の購入金額に換算された(甲15)。 2020年7月30日には、天王洲アイルに浮かぶ船「T−LOTUS M」を会場として、商品説明会が行われた。コロナ禍で行われるイベントであったため、会場の参加人数を20名以内の完全入れ替え制とし、メディア向けの発表会では5回の製品発表会が行われ、インフルエンサーのイベントは3回行われた。参加人数は、メディア向け商品説明会ではジャーナリストが175名参加し、インフルエンサーのイベントは64名参加した。また、リアルでの発表会と同時にTeamsを使ったオンラインストリーミングも実施し、リアルとオンラインによる同時発表会という申立人Aの戦略自体も話題となり記事となった。このイベントは550万円以上の費用をかけて行われた。イベントでは、新商品の発表後、メイベリン ニューヨークのメイクアップアーティストによるメイクアップショーが行われ、人気YouTuberが、メイベリン ニューヨークのTwitterアカウントからライブ配信を行い、配信中にAmazonのリンクを表示し、商品を購入できるように促すなど工夫を行った。このイベントの成果は絶大であり、インフルエンサーのInstagramやブログといったSNSで紹介され、その閲覧数は約380万に及んだ。国内・海外の最新ファッション&ビューティ・トレンドをはじめとした業界ニュースを発信するWWDといった28のメディアにも紹介された(甲16、甲18)。 (エ)SNS 申立人Aは、TIKTOK、Twitter、Instagram、LINEに公式アカウントを開設して最新の情報を発信し、申立人Aの商品の新作をリリースするときも、商品の写真やプロモーション動画等を配信している。また、Googleへの広告を行うと同時に、検索数やトレンドの推移についても調査を行い、最適な宣伝広告を行っている。 2020年度から2022年にかけてSNSにかけた費用は、合計4億4千万円を超えているが、その効果も絶大である。例えば、TIKTOKでは2022年には4600万回数以上、Twitterでは2021年に7000万回数以上、Instagramでは2021年に1億4600万回数以上の表示回数を獲得した。2020年から2022年にかけてこのようなSNSへのユーザー(潜在的購入者)の表示回数は、合計約11億4千万回に及んでおり、日本の総人口(約1億2千万人)が一人9回以上、「FITME」ブランドについて目にした計算になる。 このようなSNSを利用した広告宣伝方法は、「FITME」ブランドについて意図的に戦略として行ったものであるが、申立人Aは、2021年6月22日から7月17日にかけ、断続的に「TIKTOK」を活用した結果、ブランド認知度はBLS(ブランドリフト調査)で33%増となり、売上げにも寄与し、施策実施の前後2週間で比較して二桁成長を見せ、2021年7月の売上げは、過去最高を記録した(甲18)。 SNSのなかでも「TIKTOK」は、ユーザーから発信、そしてユーザー同士での会話が盛んな点が特徴であるが、2021年当時、まだ「TIKTOK」をマーケティングに活用するのが当たり前ではなかった中で、「TIKTOK」のスマートフォンアプリを起動後、ユーザーが最初に目にする動画広告「TopView」を活用し、当時、1日1社限定で使用できる枠で、15秒から最大60秒までの音声付き動画広告を流した。この「TopView」では、アジアにおける「FITME」のグローバルアンバサダーとして、人気K-Popグループの動画を活用した。他のメディアよりも早く「TIKTOK」で告知することで、結果的に1500万ビュー、5万4000いいね、750件のコメント、1400件のシェアを記録した。「TIKTOK」では、ブランド側から伝えたいことは2、3割に絞り、インフルエンサーの言葉で商品について語ってもらい、「FITME」のファン層に信頼を得た。「FITME」ブランドは、デジタルに親和性の高い世代をターゲットとしていることも、このSNSによる宣伝方法に非常に合っていた(甲18)。 その他にも、インフルエンサーはYouTubeにおいて「FITME」ブランドについて紹介を行っているが、YouTubeでの「FITME」に関する配信では、チャンネル登録者数が100万人のYouTuberは1,143,083回視聴され、チャンネル登録者数70.5万人のYouTuberは230,115回視聴された(甲19)。申立人Aは、このようなインフルエンサーに対し2021年には1億3千万円、2022年には1億7400万円の出稿費を設けている。 このような上記のSNSの表示回数等をみただけでも、SNSを通じて申立人Aの商品が紹介され発表される際には、申立人Aの「FITME」が日本中の多数の需要者及び取引者の目に触れることになることは明らかであり、申立人Aの「FITME」が需要者及び取引者から極めて注目されており、認知されていることの証左といえる。 ウ 以上によれば、本件商標の出願時はもちろんのこと、登録査定時においても、「FITME」は、申立人Aの傘下ブランドの「メイベリン ニューヨーク」に係る商品に使用される商標として、我が国の取引者・需要者において高い周知著名性を有していたというべきである。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性 最高裁判決(昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)が示した商標の類否判断における基本的な原則、特許庁の商標審査基準等に従い、以下、本件商標と引用商標との類否について検討する。 ア 本件商標及び引用商標 本件商標は、「FIXME」の欧文字を横書きした商標であり(甲1)、引用商標は、片仮名「フィットミー」と欧文字「FITME」を上下二段に書してなるものである(甲2)。 イ 指定商品の類否 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、生産部門、販売部門、流通経路、用途及び需要者の範囲が一致する。したがって、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品を含んでいる。 ウ 本件商標と引用商標の類否 本件商標は、引用商標の欧文字部分「FITME」の構成中、実に5文字中「F」「I」「M」「E」の4文字が共通し、差異はたった1文字であり、その文字も印象がとりわけ薄い中間の第3文字目に位置し、さらに相違する「X」と「T」は、どちらも直線のみで構成され、2本の直線を組み合わせた印象を与える文字として、外観上、近似した印象を与えるものである。また、両商標は、その称呼も、語頭と語尾の「フィッ○ミー」も共通する。上述したとおり、「FITME」の語は周知著名となっているものであり、非常に独自性の高い商標である。ゆえに、たとえ、本件商標と引用商標との間に中間の一文字の差異があるとしても、看者の注意を引く語頭と語尾の4文字を共通にする以上、全体的印象が共通し外観上相紛れるおそれが高いというべきである。 したがって、本件商標は、引用商標とは、外観において類似性が極めて高い。 また、引用商標に係る「FITME」は、「フィットする」といった意味を有する英単語の「FIT」と「私」を意味する英単語の「ME」より、全体として「私にフィットする」といった意味合いが生じる。一方、本件商標は、「固定する」といった意味を有する英単語「FIX」と「私」を意味する英単語の「ME」より、全体として「私に固定する」といった意味合いが生じる。引用商標と本件商標は、「フィットする」と「固定する」といったささいな意味の違いはあるが、いずれも「私にぴったりする、私に定着する、私にぴたっとはまる」と似たような意味合いを生じる点で観念上も相紛らわしいというべきである。さらに、上述のとおり、引用商標に係る「FITME」は、我が国において化粧品分野で周知著名なブランドとして広く知られている。そして、本件商標と引用商標とは、中間の一文字が相違するにすぎず、外観上においても語頭・語尾の「FI○ME」が共通するものであるから、その造語性の程度は、引用商標から生じる申立人Aの業務に係る化粧品分野において周知著名な「FITME」ブランドの観念を完全に打ち消すほど強いものとはいえず、少なくとも本件商標は、一般人の注意力からすれば、「FITME」をもじった商標という程度に理解されるものである。したがって、本件商標に接した需要者が、引用商標に近似した印象を受け、または同じ観念を生じて記憶、連想されることも生じうる。 しかして、引用商標が「メイベリン ニューヨーク」のブランドの表示として周知著名性を獲得し、広く認知されていることからすれば、本件商標に接する者の中には、「FITME」を既存の概念として、これを前提に接する者も少なくないはずである。このような者にとって、本件商標に接したとき、まずそれが共通部分で特徴のある「FI○ME」の各欧文字から構成されたものである点に注意が向くことはごく自然なことであり、ここから「FITME」を想起することは十分にあり得ることというべきである。 したがって、本件商標は、引用商標とは、メイベリン ニューヨークブランドの業務に係る化粧品分野において周知著名な「FITME」ブランドの観念を共通にする類似性を有するものである。 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれの要素についても互いに類似性を有するものであるから、商標全体としても互いに類似するものである。 エ 裁判例及び審決例 本件商標と引用商標が互いに類似するものである点は、過去の最高裁判所判決(平成3年(オ)第1805号。商標「大森林」と商標「木林森」)や東京高裁判決(甲28)において示された判断に照らすことでさらに明確となる。 オ 小括 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは商標全体として互いに類似するものであり、引用商標の指定商品と同一又は類似する指定商品を含むものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性 本件商標が引用商標との間で出所の混同を生じさせるおそれについて、最高裁判決(平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁)が明確にした判断基準に沿って、以下検討する。 ア 「FITME」の周知著名性 上述のとおり、「FITME」商標は、申立人A傘下ブランドの「メイベリン ニューヨーク」の業務に係るメイクアップ化粧品に使用される商標として、我が国の取引者・需要者において高い周知著名性を有している。 イ 商標の類似性の程度 本件商標と引用商標の類似性については、上述のとおりであり、外観上極めて強い出所識別機能を有する「FITME」の「FI○ME」を共通にし、「フィットミー」の称呼とは4音中3音の「フィッ○ミー」の部分が共通するものであり、観念上も相紛らわしいから、本件商標と引用商標の類似性の程度は極めて高いといわなければならない。 ウ 本件商標の指定商品と引用商標の使用商品との関連の程度、商品等の取引者及び需要者の共通性 本件商標の指定商品は、引用商標に係る商品「メイクアップ化粧品」等と同一又は類似する商品である。したがって、両商品の性質等及び商品の取引者及び需要者において互いに共通性が高いことは明らかである。 エ 周知・著名商標が考慮された判決・異議決定・審決例 外観及び称呼における共通部分を有する商標について互いに混同のおそれがあるとの判断を示している判決・異議決定等は少なくない(甲29〜甲35)。申立人Aの引用商標が獲得した周知著名性、及び、本件商標と引用商標の類似性の程度の高さを考慮し、それらの裁判例及び異議決定・審決例に照らせば、本件商標及び引用商標が出所の混同を生じるおそれが高いものであることは明らかである。 オ 小括 以上述べたとおり、本件商標と引用商標は類似し、引用商標が高い周知著名性を獲得しており、高い周知著名性を獲得している化粧品分野の商品を本件商標が指定商品としている等の取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも申立人A若しくは申立人Aと何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標(使用商標)の周知性について 申立人の主張によっては、同人が周知著名であるとする商標の態様が不明確なところがあるが、同人提出の証拠及び主張の全趣旨から、同人は「FITME」の欧文字からなる商標(以下「使用商標」という。)について周知著名であると主張しているものと認め、以下検討する。 ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人Aの傘下のブランド(企業)である「MAYBELLINE NEW YORK」(メイベリン ニューヨーク)は、2018年10月から使用商標(大文字と小文字の異なるもの、デザイン化されたものを含む。)を使用したリキッドファンデーションなどのメイクアップ化粧品(以下「使用商品」という。)を販売していること(甲4〜甲6、甲15の1)、使用商標を使用したリキッドファンデーションは「LIPSベストコスメ」の「リキッドファンデ部門」において、2020年下半期は第1位、2021年間で第2位に、「@cosmeベストコスメアワード2021」の「ベストリキッドファンデ」において第3位に、女性誌「美的」の「2021年間読者ベストコスメ受賞」において、プチプラファンデーションランキング第1位となったこと(甲7〜甲9)、使用商品は芸能人やインフルエンサーが起用等された各種イベント、SNS等で宣伝広告されていること(甲13〜甲19)などが認められる。 また、インテージによる「SRI+」調査において、使用商品の2018年から2022年8月までの日本における小売店での売上高は約43.9億円であることがうかがえる(甲10)。 イ 上記アのとおり、使用商品は2018年10月から販売され、各種イベント、SNS等で宣伝広告され、使用商品のうちリキッドファンデーションは複数のベストコスメにおいて1位ないし3位に選ばれていることなどからすると、使用商品は需要者の間である程度知られているということができる。 しかしながら、申立人が使用商品の売上高を示すものとして提出した証拠(甲10)によれば、2018年ないし2022年8月の「FITMEシリーズ合計」は約43.9億、「フェイス市場合計」は約7,504.5億円とされ、前者は後者の0.6%にすぎないものであって、当該数値はフェイス市場における使用商品のシェアといえるから、かかるシェアをもってしては、使用商品及びそれに使用されている使用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、メイベリン ニューヨークの業務に係る商品(メイクアップ化粧品)として及び同商品を表示するものとして、いずれも需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 なお、申立人は、使用商品が、2022年度のリキッドファンデーションの市場シェアで第2位を占めている旨主張し、その証拠(甲11)を提出しているが、かかる証拠はその調査方法などが不明確であるばかりでなく、何より、「2022/8マーケットシェアランキング」の表題より、2022年8月のものと認められ、本件商標の登録査定日(令和4年(2022年)3月22日)前のものではないから、申立人のかかる主張及び証拠は、上記判断を左右し得ない。 (2)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標 本件商標は、上記1のとおり「FIXME」の欧文字を別掲のとおりの態様で表してなり、該文字に相応し「フィックスミー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 イ 引用商標 引用商標は、上記2のとおり「フィットミー」の片仮名と「FITME」の欧文字を上下2段に表してなり、該文字に相応し「フィットミー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 ウ 本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者の上記のとおりの外観は、構成文字のデザイン化の有無など構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。なお、本件商標の構成文字「FIXME」と引用商標の構成中の欧文字「FITME」のつづりの比較においても、両者は3文字目に「X」と「T」の文字の差異を有し、この差異が共に5文字という比較的少ない文字構成からなる両者の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。 次に、本件商標から生じる「フィックスミー」の称呼と引用商標から生じる「フィットミー」の称呼を比較すると、両者は中間音において「クス」と「ト」の差異を有し、この差異が促音、長音を含む6音又は5音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、その語調、語感が相違し、互いに聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。 さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。 エ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。 (3)商標法第4条第1項第15号について ア 使用商標の周知性 上記(1)のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、メイベリン ニューヨークの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認められないものである。 イ 本件商標と使用商標の類否 (ア)本件商標 本件商標は、上記(2)アのとおり、「FIXME」の欧文字を別掲のとおりの態様で表してなり、該文字に相応し「フィックスミー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 (イ)使用商標 使用商標は、上記(1)のとおり「FITME」の欧文字からなり、該文字に相応し「フィットミー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 (ウ)本件商標と使用商標の比較 本件商標と使用商標を比較すると、両者の上記のとおりの外観は、構成文字のデザイン化の有無など構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。なお、両者の構成文字「FIXME」と「FITME」のつづりの比較においても、上記(2)ウと同様の理由により、相紛れるおそれのないものというのが合理的である。 次に、本件商標から生じる「フィックスミー」の称呼と使用商標から生じる「フィットミー」の称呼は、これも上記(2)ウと同様の理由により、互いに聞き誤るおそれのないものというのが合理的である。 さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。 そうすると、本件商標と使用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 ウ 混同のおそれ 上記(1)のとおり使用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、メイベリン ニューヨークの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記イのとおり本件商標は、使用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、本件商標の指定商品と使用商品との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、これに接する取引者、需要者が使用商標を連想又は想起するものということはできない。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして使用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(メイベリン ニューヨーク)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 本件商標 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2023-04-18 |
出願番号 | 2021138199 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W03)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大森 友子 |
特許庁審判官 |
石塚 利恵 飯田 亜紀 |
登録日 | 2022-05-02 |
登録番号 | 6551560 |
権利者 | エスジェー ネイル カンパニー リミテッド |
商標の称呼 | フィックスミー、フィックスエムイイ、フィックス、エフアイエックス |
代理人 | 宮川 美津子 |
代理人 | 宮崎 修 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 宮川 美津子 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 池田 万美 |
代理人 | 池田 万美 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 廣中 健 |
代理人 | 廣中 健 |