ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
---|---|
管理番号 | 1397328 |
総通号数 | 17 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-05-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-03-15 |
確定日 | 2023-05-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6494764号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6494764号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6494764号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和3年6月21日に登録出願、第25類「被服」を指定商品として、同年12月3日に登録査定、同4年1月5日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 (1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下のアないしカのとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。 ア 登録第4415045号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様:CAMPER 登録出願日:平成11年3月2日 設定登録日:平成12年9月8日 指定商品:第25類「ずきん,帽子,サンバイザー,その他の被服,履物,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」 イ 登録第3270094号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 登録出願日:平成6年3月17日 設定登録日:平成9年3月12日 指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」 ウ 登録第4963828号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様:別掲3のとおり 登録出願日:平成17年5月16日 設定登録日:平成18年6月23日 指定商品・指定役務:第25類「帽子,その他の被服,履物,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」のほか、第18類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 エ 国際登録第1359449号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の態様:別掲3のとおり 国際商標登録出願日:2016年(平成28年)11月16日 設定登録日:平成30年10月5日 指定商品・指定役務:第25類「Scarves; belts for clothing; skirts; hats; caps; gloves for clothing; socks; trousers for clothing; clogs; overcoats; blouses; berets; boots; half boots; dresses; shirts; T-shirts; vests for clothing; jackets for clothing; raincoats for clothing; sweaters for clothing; sandals; suits; shoes; slippers; sneakers.」及び第35類「Import-export agencies; advertising and publicity services; public relations; business administration; business management assistance; retail services for shoulder bags, canes, trunks, wallets, sports bags, hand bags, travelling bags, wallets, suitcases, brief-cases, portfolios, backpacks (rucksacks), purses, umbrellas, parasols, scarves, belts for clothing, skirts, hats, caps, gloves for clothing, socks, trousers for clothing, clogs, overcoats, blouses, berets, boots, half boots, dresses, shirts, T-shirts, vests for clothing, jackets for clothing, raincoats for clothing, sweaters for clothing, sandals, suits, shoes, slippers, sneakers.」のほか、第18類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 オ 国際登録第925535号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の態様:別掲4のとおり 国際商標登録出願日:2007年(平成19年)1月31日 設定登録日:平成21年3月27日 指定商品:第25類「Clothing, footwear (other than boots for sports), headgear.」のほか、第18類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品 カ 国際登録第925535号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の態様:別掲4のとおり 国際商標登録出願日(事後指定):2010年(平成22年)12月2日 設定登録日:平成25年9月20日 指定役務:第35類「Import and export agencies; advertising; commercial business management; business administration; business management assistance; business management of hotels; public relations; retail sale services via global communication networks for trunks, suitcases, handbags, shoulder belts, rucksacks, attache cases and other similar bags, wallets, coin purses (not made of metal), clothing, footwear and headgear.」 (2)申立人が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する登録商標は、上記引用商標1ないし引用商標6のほか、以下のアないしウのとおりの登録商標及び申立人の使用に係る商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)であり、登録商標については、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。 ア 登録第2394099号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の態様:CAMPER 登録出願日:平成元年7月27日 設定登録日:平成4年3月31日 指定商品:第25類「履物」のほか、第18類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 イ 登録第3265358号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の態様:別掲5のとおり 登録出願日:平成4年12月15日 設定登録日:平成9年2月24日 指定商品:第18類「原革,原皮,なめし革,毛皮,革ひも,かばん類,袋物,傘,ステッキ,つえ,合成皮革」 ウ 登録第4374072号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の態様:別掲6のとおり 登録出願日:平成10年8月3日 設定登録日:平成12年4月7日 指定商品・指定役務:第3類、第9類、第14類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 エ 申立人が「履物,かばん類,袋物,財布」(以下「申立人商品」という。)に使用し、周知、著名になっていると主張する「CAMPER」の文字からなる商標(以下「使用商標」という。) 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第257号証(以下、証拠の記載に当たっては「甲第○号証」を「甲○」(○は数字)のように表記する。)を提出した。 (1)引用商標の周知・著名性について ア 申立人について 申立人は、1870代年創業のスペインの靴メーカーであり、1975年に靴のブランド「CAMPER」を創設し、1981年にバルセロナにおいて最初の直営店をオープンした後、その展開は世界各国まで広がり、現在では40か国以上において、合計400店舗以上の直営店舗を運営している(甲11)。 我が国においては、1996年に初出店した後、着実に新店舗を増やしており、現在は北海道から九州まで全国各地に52店舗の直営店があり、2022年に入ってからも新たに3店舗がオープンするなど拡大を続けている(甲12)。また、直営店を訪れることのできない需要者も、オンラインショップにて申立人商品の購入が可能である(甲13)。 申立人ブランドは、長年にわたり親しまれた結果、図形部分と独立した「CAMPER」、「カンペール」のブランド名のみでも広く知られるに至っている。 イ 引用商標の使用について 申立人は、主要商品である履物のほか、かばん類や財布などのファッション雑貨も取り扱っている。申立人は、引用商標を申立人商品に付し、又はその広告宣伝・周知活動に使用しており、「カンペール」の片仮名が使用されることもある。「CAMPER」は、申立人の商号の略称でもあることから、申立人商品に付されるほか、その運営店舗の看板やウェブサイト、申立人ブランドを紹介する際の広告宣伝ツールなどに大々的に使用されている(甲11〜甲14)。 上述のとおり、申立人の日本進出は、1996年であり、申立人は、現在に至るまで25年以上にわたり引用商標を継続して使用してきた。 申立人商品の2017年ないし2021年までの5年間の売上げは、履物について年間25ないし30億円程度、バッグについて年間6ないし8億円程度で推移しており、申立人商品合計では30ないし40億円である(甲15)。 その他、申立人は、日本法人ウェブサイトにおいて自社ブランドの紹介を行っているほか、スタッフコーディネートやルックブックにて自社ブランド商品の積極的なアピールもしている(甲16、甲17)。 ウ 広告宣伝・周知活動について 申立人商品は、雑誌(甲18〜甲137)やインターネット記事(甲149〜甲231)にも数多く取り上げられているほか、申立人自らもプレスリリース等による広告宣伝・周知活動も行っている。 近年の、申立人商品の雑誌への掲載状況について、広告料として600万円以上を支出している月もあり、出版物への広告物だけで、年間3,000万円以上を支出している(甲138〜甲148)。 また、申立人商品は、SNSで紹介されることも多く、これらSNSにおいてはハッシュタグをつけて申立人商品であることがわかるように紹介されている(甲232〜甲242)。 2022年以降の使用状況及び衣装提供に関する証拠を提出する(甲254〜甲257)。 エ テレビ番組への衣装提供について 申立人は、テレビ番組に出演するモデル・タレント・俳優などに対して衣装提供を行っており(甲243〜甲253)、有名芸能人からの提供依頼があることから、引用商標が周知・著名であるといえる。 オ 被服分野における周知・著名性について 上述のとおり、引用商標は、申立人による各種申立人商品の販売、広告宣伝・周知活動により、履物やかばん類などにおいて周知・著名になっていることは明らかである。雑誌・インターネット記事、衣装提供などファッションに関しては、履物やその他ファッション雑貨と被服との関連性は非常に高く、申立人及び申立人商品の周知・著名性は、申立人商品の販売に係る履物やかばん類等だけでなく被服の分野まで含めた広義のアパレル分野に及んでいる。 カ 小括 以上より、引用商標が需要者である履物、かばん類、被服を含めた広義のアパレル分野の関係者や一般消費者等に広く認識されるに至っている。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標 本件商標は、黒地背景に白抜きにて「I Am」及び「CAmPER」の欧文字を併記してなり、白抜き文字部分は多少ロゴ化されているものの、「I Am」及び「CAmPER」の文字からなることは容易に認識・理解できる態様である。 本件商標の構成文字を鑑みるに、「I am○○」は、「私は○○です。」という意味の平易な英文であり、これは、「主語(I)=補語(CAmPER)」の関係を成り立たせるもので、このような構文で目に留まるのは、主語ではなく補語のCAmPERである。 してみれば、本件商標に接する需要者は、自然と補語である「CAmPER」部分に着目し、あたかも本件商標が付された商品、又はその出所となる商標権者=Iと認識し、そこからその商品、又はその出所となる商標権者が「CAmPER」に関連するものであると理解する。すなわち、本件商標からは、構成文字に即した称呼・観念が生じるほか、欧文字「CAmPER」部分のみに即した称呼・観念も生じ得る。 上述のとおり、「CAMPER」は、履物や被服を含めたアパレル分野において申立人の商標として周知・著名であるから、申立人ブランド名としての「カンペール」の称呼が生じる。また、需要者によっては、「キャンパー」と称呼することも考えられる。 そうすると、本件商標からは、その構成文字全体に即した「アイアムカンペール」、「アイアムキャンパー」のほか、「カンペール」、「キャンパー」の称呼が生じ、観念については、引用商標のアパレル分野における周知・著名性から「私は靴のCAMPERブランドである」ほどの観念を想起させるほか、「CAmPER」部分に即した「(申立人に係る)靴のブランド」ほどの観念も想起させる。 イ 引用商標1ないし引用商標6 引用商標1は、「CAMPER」の欧文字を横書きしてなり、引用商標2ないし引用商標6は、下辺を円弧状に内側に湾曲させた長方形状の図形及びその内部又は下に配された「CAMPER」の欧文字からなるものであるが、図形部分と文字部分とが分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないから、それぞれが分離して把握されるものであり、「CAMPER」の欧文字部分のみが自他商品の出所識別標識として機能するといえる。 そうすると、上述のとおり、「CAMPER」は、履物や被服を含めたアパレル分野において申立人のブランドとして周知・著名であるから、引用商標1ないし引用商標6からは、そのブランド名である「カンペール」の称呼が生じるほか、需要者によっては構成文字の英語読みに即した「キャンパー」と称呼する者もいる。観念については、引用商標「CAMPER」のアパレル分野における周知・著名性から「(申立人に係る)靴のブランド」ほどの観念を想起させるから、両者は共通の観念を想起させる。 ウ 本件商標と引用商標1ないし引用商標6の対比 本件商標からは、「アイアムカンペール」、「アイアムキャンパー」並びに「カンペール」、「キャンパー」の称呼が生じ、引用商標1ないし引用商標6からは、「カンペール」、「キャンパー」の称呼が生じるから、称呼において共通する。 次に、観念については、本件商標からは「私は靴のCAMPERブランドである」ほどの観念を想起させるほか、「CAMPER」の文字部分に即した「(申立人に係る)靴のブランド」ほどの観念を想起させ、引用商標1ないし引用商標6からは、「(申立人に係る)靴のブランド」ほどの観念を想起させる。 外観においては、本件商標中、需要者が着目し、強く支配的な印象を与える部分である「CAmPER」の欧文字は、引用商標1ないし引用商標6の構成文字と同一であるから、需要者に近似した印象を与える。 以上のとおり、本件商標と引用商標1ないし引用商標6とは、同一の称呼を生じ、観念を共通するほか、外観においても近似した印象を与えるものであるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合すれば、両商標は互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 なお、本件商標の指定商品は「被服」であるところ、引用商標1ないし引用商標6に係る指定商品は、それに類似する商品等である。 エ 小括 以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知・著名性 引用商標は、申立人によって我が国において1996年より25年以上もの長きにわたって継続的に使用されてきた結果、その需要者である履物や被服を含めたアパレル分野の需要者において、本件商標の登録出願日前より、その登録査定時はいうまでもなく現在に至るまで、申立人の業務に係る商品の商標として周知・著名となっている。 イ 商標の類似性 本件商標に接する需要者は、上記したとおり、補語である「CAmPER」の部分に着目し、あたかも本件商標が付された商品、又はその出所となる商標権者=「I」と認識し、そこからその商品、又はその出所となる商標権者が「CAMPER」に関連するものであると理解するから、本件商標からは、構成文字である「I Am」と「CAmPER」に即した称呼・観念が生じるほか、「CAmPER」の欧文字部分のみに即した称呼・観念も生じ得るものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、同一の称呼を生じ、観念においても共通するほか、外観においても近似した印象を与えるものであるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合すれば両商標は、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 ウ 商品の関連性 本件商標の指定商品は、被服であるところ、引用商標は、履物や被服を含めたアパレル分野において申立人のブランドとして周知・著名となっており、広くファッション分野の雑誌・記事等において申立人商品を含めた各種履物、ファッション雑貨が併せて紹介されていることからすれば、履物やファッション雑貨と被服との関連性は非常に高く、本件商標と引用商標に係る商品は共通する商品を含み、需要者も重なるものであり、関連性が高い商品であるといえる。 エ 混同性 引用商標は、上述のとおり、履物や被服を含めたアパレル分野において周知・著名であり、履物と被服とは密接に関連し、関連性の高い関係にあるから、そのような関連性の高い商品について使用する商標に、強く支配的な印象を与える部分として、引用商標と同一の構成文字を含むから、たとえ外観構成がまとまりよく一体に表されているとしても、本件商標は、引用商標と混同を生じるおそれがある商標である。 また、仮に引用商標と直接的な混同を生じさせるものではないとしても、本件商標と引用商標とは、類似することから、そのような本件商標を申立人商品と同一又は類似の商品や関連性の高い商品に使用すれば、申立人と本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)との間にいわゆる親子会社や系列会社関係にある者の業務に係る商品であると誤信されるおそれがある。 オ 小括 以上より、本件商標は、その指定商品に使用すると、引用商標と混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、1870年代創業のスペインの靴メーカーであり、1975年に靴のブランド「CAMPER」を創設し、1981年にバルセロナにおいて最初の直営店をオープンして以降、現在では40か国以上において、合計400店舗以上の直営店舗を運営している(甲11)。 我が国においては、1996年に初出店して以降、現在では北海道から九州まで全国各地に52店舗の直営店があり(甲12)、申立人のオンラインショップにおいては、申立人の業務に係る「靴」が紹介されている(甲13)。 (イ)申立人のウェブサイトにおいて、申立人の業務に係る「靴」には、引用商標を構成する「CAMPER」の文字と同一の構成文字からなる「CAMPER」の欧文字及び「カンペール」の片仮名が使用されており、申立人の店舗の看板やウェブサイトなどに引用商標3、引用商標4及び引用商標9と同一の態様の商標が使用されている(甲11〜甲14)。 また、2017年ないし2020年にかけて発行された多数の雑誌(甲18〜甲137)や2021年の多数のインターネット記事(甲150〜甲156、甲158〜甲165、甲167〜甲172、甲174〜甲179、甲181〜甲183、甲185〜甲191、甲193〜甲198、甲200〜甲208、甲210〜甲219、甲221〜甲224、甲226〜甲231)において、引用商標を構成する「CAMPER」の文字と同一の構成文字からなる「CAMPER」の欧文字及び「カンペール」の片仮名の表示の下、申立人の業務に係る「靴」が紹介されている。 なお、上記雑誌及びインターネット記事の一部に、かばん(甲45、甲92、甲112、甲123、甲137、甲151、甲152、甲211、甲213、甲214、甲223)や靴下(甲221)などが紹介されている。 そして、申立人は、申立人商品について、SNSで紹介(甲232〜甲242)され、テレビ番組に出演するモデルやタレント等に衣装提供をしている(甲243〜甲257)旨主張しているが、申立人の提出した証拠には、複数のSNSの名称やモデルやタレント等の名前などが記載されているが、申立人商品についての引用商標の使用状況は具体的に確認できない。 (ウ)申立人の代表者の証明とされる書面(甲15)によれば、我が国における履物についての2017年ないし2021年までの5年間の売上げは、年間約23億円ないし30億円程度で推移しているが、当該売上高を客観的に裏付ける証拠はなく、商品の市場シェアについても不明であるから、我が国における当該売上高の多寡を判断することができない。 イ 上記アによれば、申立人は、我が国において、直営店やオンラインショップなどを通じて、申立人の業務に係る「靴」を取り扱っていること、申立人の店舗の看板やウェブサイトなどに引用商標3、引用商標4及び引用商標9と同一の態様の商標が使用されていること、多数の雑誌やインターネット等において、引用商標を構成する「CAMPER」の文字と同一の構成文字からなる「CAMPER」の欧文字及び「カンペール」の片仮名の表示の下、申立人の業務に係る「靴」が紹介されていることから、引用商標は、申立人の業務に係る「靴」の分野においては需要者の間にある程度知られていることがうかがえる。 しかしながら、一部の雑誌やインターネット等において、申立人が靴以外のかばんや靴下などの商品を取り扱っていることはうかがわれるが、提出された証拠はほとんどが靴に関するものであり、他に靴以外の被服を含むアパレル分野における引用商標の周知性を判断するための証拠、例えば、引用商標が使用された申立人商品の市場シェア、広告宣伝の規模や広告宣伝費等の証拠が提出されていないことから、我が国における引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。 そうすると、引用商標が靴以外の被服を含むアパレル分野にまで需要者の間に広く認識されていることを認めるに足りる証拠は見いだせない。 したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているということはできない。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標について 本件商標は、黒色正方形内に白抜きの「I Am」及び「CAmPER」の欧文字を併記してなるところ、その構成文字は、文字の大きさが一部異なるものの、同一の書体で、黒色正方形内にまとまりよく配してなるものであるから、かかる構成においては、その構成文字全体をもって一体不可分の語を表してなると理解するのが自然である。 また、本件商標は、白抜き文字部分が多少ロゴ化されているとしても、「I Am」及び「CAmPER」の文字を表してなることは容易に認識・理解できるものである。 そして、本件商標の構成中「I Am」の文字は、「私は」の意味を、「CAMPER」の文字は、「キャンプする人」(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)の意味を有するいずれも親しまれた英語であるから、全体として「私はキャンプをする人です」ほどの意味合いを理解させるものである。 また、本件商標の構成全体から生じる「アイアムキャンパー」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。 したがって、本件商標は、構成文字全体に相応して「アイアムキャンパー」の称呼のみを生じ、「私はキャンプをする人です」ほどの観念を生じるものである。 イ 引用商標1ないし引用商標6について 引用商標1は、「CAMPER」の欧文字を横書きしてなるものである。 また、引用商標2ないし引用商標6は、別掲2ないし別掲4のとおり、下辺を円弧状に内側に湾曲させた横長長方形状の図形及びその内部又は下部に配された「CAMPER」の欧文字を表してなるところ、構成中の図形部分は、直ちに特定の事物又は意味合いを表したものと認識され、親しまれているというべき事情は認められないため、これより特定の称呼及び観念を生じないものである。また、引用商標2ないし引用商標6の構成中の図形部分と文字部分とは、一体のものとして、特定の事物又は意味合いを表したものと認識され、親しまれているというべき事情は認められないため、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないから、それぞれが分離して把握され得るものであり、図形部分と文字部分の、称呼上及び観念上の結びつきも認められないことから、引用商標2ないし引用商標6は、その構成中の「CAMPER」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。したがって、引用商標2ないし引用商標6の構成中の「CAMPER」の欧文字部分は、独立して自他商品の出所識別標識として機能するといえる。 そして、引用商標1ないし引用商標6の構成中の「CAMPER」の文字部分は、上記アと同様、「キャンプする人」(前掲書)の意味を有する親しまれた英語であるから、引用商標1ないし引用商標6は、「CAMPER」の欧文字部分に相応して、「キャンパー」の称呼及び「キャンプする人」の観念が生じるほか、上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る「靴」の分野においては需要者の間にある程度知られているといえ、「CAMPER」の欧文字は「カンペール」の片仮名の表示とともに使用されていることから、「カンペール」の称呼も生じ得るものであり、かつ、「(申立人に係る)靴のブランド」の観念も生じる場合がある。 ウ 本件商標と引用商標1ないし引用商標6の類否について 本件商標と引用商標1ないし引用商標6を比較すると、外観においては、構成中の図形の有無又は相違に加え、「I Am」の文字の有無の差異を有するものであるから、構成文字及び構成態様が明らかに相違し、明確に区別できるものである。 次に、称呼においては、本件商標から生じる「アイアムキャンパー」の称呼と、引用商標1ないし引用商標6の要部から生じる「キャンパー」の称呼又は「カンペール」の称呼は、「キャンパー」の称呼とは、「キャンパー」の音を含む点を共通にするとしても、語頭における「アイアム」の音の有無の差異を有するものであり、「カンペール」の称呼とは、その音構成が明らかに相違するから、いずれも明瞭に聴別し得るものである。 さらに、観念においては、本件商標から生じる「私はキャンプをする人です」ほどの観念と引用商標1ないし引用商標6の要部から生じる「キャンプする人」又は「(申立人に係る)靴のブランド」とは明らかに相違するから、相紛れるおそれはないものである。 したがって、本件商標と引用商標1ないし引用商標6とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 エ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標1ないし引用商標6とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品が引用商標1ないし引用商標6の指定商品及び指定役務と同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知性について 引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る「靴」について使用する商標として、我が国の需要者の間にある程度知られていることがうかがえるとしても、靴以外の被服を含むアパレル分野にまで需要者の間に広く認識されているとはいい難い。 イ 本件商標と引用商標の類似性の程度 本件商標と引用商標1ないし引用商標6とは、上記(2)のとおり、非類似の商標であり、引用商標1ないし引用商標6と同様の構成文字からなる引用商標も、本件商標とは非類似の商標といえるから、その類似性の程度は低いものである。 また、本件商標と引用商標7ないし引用商標9及び使用商標とは、引用商標7及び使用商標は「CAMPER」の欧文字からなり、引用商標8は黒地横長長方形内に、下辺を円弧状に内側に湾曲させた白抜き横長長方形状の図形及びその内部に横書きされた「CAMPER」の輪郭線からなる欧文字からなるもので、引用商標9は下辺を円弧状に内側に湾曲させた横長長方形状の図形及びその内部又は下部に配された「CAMPER」の欧文字を表してなるところ、引用商標8及び引用商標9の構成中の図形部分は、直ちに特定の事物又は意味合いを表したものと認識され、親しまれているというべき事情は認められないため、これより特定の称呼及び観念を生じないものである。 さらに、引用商標8及び引用商標9の構成中の図形部分と文字部分とは、一体のものとして、特定の事物又は意味合いを表したものと認識され、親しまれているというべき事情は認められないため、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないから、それぞれが分離して把握され得るものであり、図形部分と文字部分の、称呼上及び観念上の結びつきも認められないことから、引用商標8及び引用商標9は、その構成中の「CAMPER」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。 したがって、引用商標8及び引用商標9の構成中の「CAMPER」の欧文字部分は、独立して自他商品の出所識別標識として機能するといえる。 そして、引用商標8及び引用商標9の構成中の「CAMPER」の文字部分は、「キャンプする人」(前掲書)の意味を有する親しまれた英語であるから、引用商標7ないし引用商標9及び使用商標は、「CAMPER」の欧文字部分に相応して、「キャンパー」の称呼及び「キャンプする人」の観念が生じるほか、上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る「靴」の分野においては需要者の間にある程度知られているといえ、「CAMPER」の欧文字は「カンペール」の片仮名の表示とともに使用されていることから、「カンペール」の称呼も生じ得るものであり、かつ、「(申立人に係る)靴のブランド」の観念をも生じる場合がある。 そうすると、本件商標と引用商標7ないし引用商標9及び使用商標とは、非類似の商標であるというべきであるから、その類似性の程度は低いものである。 ウ 申立人の業務に係る「靴」と本件商標の指定商品との関連性について 申立人の業務に係る「靴」は、ファッション関連商品といえ、本件商標の指定商品である「被服」と、商品の販売部門及び需要者を共通にする場合があるとしても、商品の製造部門、原材料、用途等が相違するから、商品の関連性はさほど高いとはいえない。 エ 出所の混同のおそれについて 上記アないしウのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る「靴」を表示するものとして、我が国の需要者の間にある程度知られていることがうかがえるとしても、靴以外の被服を含むアパレル分野にまで需要者の間に広く認識されているとはいい難く、本件商標と引用商標の類似性の程度は低く、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性もさほど高いとはいえないことからすれば、本件商標に接する需要者が、申立人の業務に係る引用商標を連想又は想起するということはできない。 そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 オ 小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものではなく、その登録は、同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標2) 別掲3(引用商標3及び引用商標4:色彩については原本参照。) 別掲4(引用商標5及び引用商標6:色彩については原本参照。) 別掲5(引用商標8) 別掲6(引用商標9) (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2023-04-20 |
出願番号 | 2021083865 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W25)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
矢澤 一幸 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 杉本 克治 |
登録日 | 2022-01-05 |
登録番号 | 6494764 |
権利者 | 株式会社FOF |
商標の称呼 | アイアムキャンパー、アイアム、キャンパー |
代理人 | 服部 京子 |
代理人 | 清水 三沙 |
代理人 | 齊藤 整 |
代理人 | 徳永 弥生 |