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審決分類 審判 一部無効 商4条1項14号 種苗法による登録名称と同一又は類似 無効としない X18
管理番号 1396391 
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2021-12-02 
確定日 2023-02-06 
事件の表示 上記当事者間の国際登録第1002196号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。  
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1002196号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2008年8月14日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づく優先権を主張し、2009年(平成21年)1月16日に国際商標登録出願、第8類、第9類、第11類、第12類、第14類、第16類、第18類、第20類、第22類、第25類及び第34類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年8月4日に登録査定、同年11月5日に設定登録されたものである。
その後、指定商品については、2018年10月12日付けで国際登録簿に記録された取消しの通報があった結果、最終的に、第8類、第9類、第14類、第18類及び第25類に属する別掲2のとおりの商品とされた。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は、その指定商品中、第18類「全指定商品」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 商標法4条1項1号該当性の判断基準
商標が、その一部に国旗等を顕著に有する場合は、商標全体として商標法第4条第1項第1号に該当するものと判断される(商標審査基準参照)。同号該当性の判断基準は、国旗等の権威を損じ、国家等の尊厳性を害する程度のものか否かであって、商品等の識別標識として、出所混同のおそれがあるかという観点からの判断ではない(甲1)。
例えば、英国国旗を想起させる図形を顕著に有するため英国国旗に類似するものとして例示されている標章も、その外周部分の形状は英国国旗とは全く異なるが、その一部に英国国旗を顕著に有するものとされている(甲1)。
2 スイス連邦の国旗とその特徴
スイス連邦(以下「スイス」という。)の国旗(flag of Switzerland)は、別掲3のとおり、正方形である赤地の地色の中心に白色の十字の図形が配置されている(甲2:以下「スイスの国旗」という。)。このように、スイスの国旗の大きな特徴の第一は、(1)白色の十字の図形をその中心に有することである。
また、スイスの国旗の特徴の第二は、(2)全体の外周部分の形状が正方形であることである。スイス以外で、正方形の国旗を有するのは、バチカン市国しかない。
3 本件商標はスイスの国旗の特徴2つを共に有すること
本件商標は、その中心に白色の十字の図形を有し、スイスの国旗の特徴(1)を有する。また、本件商標は、外周部分の形状が厳密には直線ではないものの略正方形である。したがって、スイスの国旗の特徴(2)も有する。
4 本件商標は商標法第4条第1項第1号違反の無効理由があること
以上のとおり、本件商標は、スイスの国旗が有する二つの特徴を共に有している。
また、白色の十字の図形を、2本の長方形が十文字に重なっていると見た場合の、長方形の長辺と短辺の長さの比は、本件商標もスイスの国旗も10対3と同一である。さらに、2本の長方形が交差する角度は共に90度であり、2本の長方形の重心が同一の位置になるように交差している点も、同じである。つまり、双方の白十字は同一である。
そうすると、本件商標とスイスの国旗との違いは、地色が黒色であるか赤色であるかという点と、外周部分の形状が略正方形であるか厳密な正方形であるかという点にすぎない。よって、本件商標は、その一部にスイスの国旗を顕著に有することは明らかである。
したがって、本件商標は、スイスの国旗の権威を損じ、国家等の尊厳性を害する程度にスイスの国旗に類似しており、商標法第4条第1項第1号違反の無効理由がある。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第1号について
商標法第4条第1項第1号においては、外国の国旗と同一又は類似の商標は登録を受けることができない旨が定められている。同号は、国家等の尊厳を保持するという公益保護の観点から規定されたものであり、商標全体が国旗等と紛らわしいか否かにより判断されるものである(商標審査基準第1項第1号の5.「同一又は類似の商標」について)。そのため、請求人が指摘するとおり、同号該当性の判断基準は「国旗等の権威を損じ、国家等の尊厳性を害する程度のものか否かであって、商品等の識別標識として出所混同のおそれがあるかという観点からの判断ではない。したがって、専ら外観のみから判断すれば足りる」と考えられる(甲1)。
同審査基準においては、「類似」の例として「出願商標が、その一部に国旗等を顕著に有する場合」を挙げており、また、さらに、商標審査便覧(42.101.01「外国の国旗の取扱い」)においては、商標構成中に外国の国旗を想起せる図形を顕著に有する場合も同号に該当する旨の規定がある。
よって、同号に該当するか否かは、(1)商標全体と国旗を比較したうえで外観が類似するか、という観点の他、(2)商標構成中に国旗等を顕著に有するか、又は(3)商標構成中に外国の国旗を想起する図形を顕著に有するか、という観点で判断されるべきである。
2 本件商標とスイスの国旗との類似性について
請求人は、本件商標がスイスの国旗に類似するため、商標法第4条第1項第1号に該当すると主張する。
本件商標が同号に該当するか否かについては、まずは、本件商標全体とスイスの国旗が同一又は類似であるか否かが判断されるべきであるところ、本件商標は黒地のやや丸みのある略正方形を白色で縁取った図形であり、図形中央に白の十字を配置したものである。一方スイスの国旗は、赤地の正方形に白の十字を配置したものである。
どちらも白の十字部分を含むという点においては共通するものの、本件商標は黒地に白の十字、スイスの国旗は赤地に白の十字である。また、本件商標は丸みのある略正方形が縁どられており、スイスの国旗は縁取りのない正方形である。そのため、両者の構成及び色彩において顕著な差異があり、本件商標全体とスイスの国旗とは明らかに非類似の商標である。
なお、請求人による本件商標に基づく被請求人の商標権侵害を認定した東京地判令和2年9月29日 令和元年(ワ)第26463号商標権侵害差止等請求事件判決は、「スイスの国旗は,赤色の正方形の内部に白色の幅広の十字が配置されているものであり(乙1),かばん製品(原告商標の指定商品,被告商品)の取引者,需要者は,その特徴的な赤色,白色や正方形の形により,その印象,記憶,連想等を総合して,スイスの国旗と原告商標(審決注:本件商標と同じ構成。)とを対比した場合だけでなく,スイスの国旗と被告各標章とを対比した場合についても,両者は全体として全く異なると認識するというべきである。」として本件商標全体とスイスの国旗とが非類似であると判示している(乙1)。
次に、本件商標はその構成中にスイスの国旗を取り込んだものであるか否かを検討する。請求人はスイス国旗の大きな特徴を(1)白色の十字の図形をその中心に有すること、(2)全体の外周部分の形状が正方形であること、の2点であると主張している。
請求人の主張する(1)及び(2)は、スイス国旗の特徴の一つであることは被請求人も否定はしない。
しかし、そもそも各国の国旗には共通のモチーフ(十字、円、星、月、等)を使用したもの、同様の構成(複数色での色分け等)を有するものが多数存在する。このような国旗を、特定の国旗と認識するためには国旗の彩色が極めて重要な要素となるのであって、かかる要素を抜きに特定の国の国旗と認識することは困難な場合も多い。したがって、スイスの国旗においては、赤地と白の彩色も当然に特徴として挙げるべきである。
請求人は、スイスの国旗の特徴を恣意的に2点に絞り、この特徴2点を有することをもって、本件商標がスイス国旗を顕著に有すると主張する。さらに、本件商標とスイスの国旗との違いは、地色が黒色であるか赤色であるかという点と、外周部分の形状が略正方形であるか厳密な正方形であるかという点にすぎないと主張する。
しかし、上述のとおり彩色は国旗の重要な要素である。また、彩色だけでなく、本件商標の略正方形にしても、外周が直線ではなく丸みを帯びている点もスイスの国旗との外観の違いを創出しているのであり、これらの点を過小評価すべきではない。このような差異があるにも関わらず、本件商標が、その一部にスイス国旗を顕著に有するとの請求人の主張は失当である。
さらに、本件商標にはスイスの国旗の重要な特徴の1つである赤地と白の彩色がないため、スイス国旗を直ちに想起させるものでもない。よって商標審査便覧(42.101.01)に規定されている、「商標構成中に外国の国旗を想起させる図形を顕著に有する場合」にも該当しない。
3 我が国における十字を含む商標の登録例
我が国において、十字又は十字を含む商標が多数登録されている(乙2〜乙8、乙10〜乙13)。これらの登録例からも、国旗のデザインにおいては、色彩及びその取り合わせが重要な構成要素であり、色彩及びその取り合わせが異なる商標や色彩を施さない商標であれば国旗と類似(又は国旗を想起するもの)には該当しないと判断されていることは明らかである。
なお、別件の異議申立事件(異議2016−900195号事件)の決定においては、「国旗における色彩は、国旗を表示する重要な要素というべきである」とし、十字図形を黒色と灰色で表されてなる図形は「スイス国の国旗を連想、想起するものとはいえない」旨の判断がされている(乙14)。
第4 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。
1 商標法第4条第1項第1号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、やや丸みを帯びた縁(辺)を有する略四角形(略正方形)と、これに囲まれた略相似形である、同様にやや丸みを帯びた縁(辺)を有する略四角形(略正方形)と、その内部(中央)に位置する幅広の十字からなり、前者の略四角形の縁と後者の略四角形の縁とが成す部分(外縁部分)は白色、後者の略四角形の内部は、白色である上記十字を除いて黒色である。
(2)スイスの国旗
スイスの国旗は、別掲3に示したとおり、正方形である赤地の地色の中心に白色の十字の図形が配置されているものである(甲2)。
(3)本件商標とスイスの国旗との類否
本件商標は、上記(1)のとおりの構成からなるのに対し、スイスの国旗は、上記(2)のとおり、正方形である赤地の地色の中心に白色の十字の図形が配置されているところ、両者は、スイスの国旗の特徴である赤地の地色の有無において相違するばかりか、全体の形状が正方形か略正方形かにおいても相違し、さらに、本件商標の丸みを帯びた外縁部分の色彩及び形状は、スイスの国旗の構成とは大きく異なるものである。
これらの相違を総合してみるに、本件商標とスイスの国旗は、全体の印象が全く異なるものであって、外観において類似するものとはいえない。
したがって、本件商標は、スイスの国旗と同一又は類似の商標ということはできない。
(4)請求人の主張について
請求人は、「双方の白十字は同一である。そうすると、本件商標とスイスの国旗との違いは、地色が黒色であるか赤色であるかという点と、外周部分の形状が略正方形であるか厳密な正方形であるかという点にすぎない。よって、本件商標は、その一部にスイスの国旗を顕著に有することは明らかである。」旨主張する。
しかしながら、国旗における色彩は、例えば、我が国における「国旗及び国家に関する法律」の別記第1「日章旗の制式」の「2 彩色」において、「地 白色」及び「日章 紅色」と規定がされていること、さらに、外国の国旗における三色旗の場合には、色彩の違いにより、別の国の国旗を表すことになる(フランスとイタリア等、イエメンとオランダ等)ことからすれば、国旗における色彩は、国旗を表示する重要な要素というべきである。
そうすると、黒色及び白色で表された本件商標と、国旗の特徴である赤色及び白色で表されたスイスの国旗とを対比した場合、白十字が共通するとしても、その重要な構成要素である色彩が異なることは明らかであり、その他の形状等の相違も併せて考慮すれば、本件商標は、その一部にスイスの国旗を顕著に有するということはできない。
したがって、請求人のかかる主張は、採用できない。
(5)小括
以上より、本件商標は、外国の国旗と同一又は類似の商標に該当しない。
2 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第1号に該当するものでなく、本件審判の請求に係る指定商品についての登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標

別掲2 本件商標の指定商品
第8類「Cutlery, in particular pocket knives, multi−purpose pocket knives, multi−purpose knives, folding knives, household knives, kitchen knives and paring knives, bread knives, knives used in the restaurant industry, butchers’ knives, fishing knives, hunting knives, craftsmen’s knives, knives for sportsmen and sportswomen; kitchen flatware, in particular peelers, spatulas, carving forks; table cutlery; scissors; sharpening instruments; display boxes adapted for cutlery, knife holders, cutlery pouches sold empty, knife cases, knife holsters, knife covers and storage cases.」
第9類「Camera cases; computer carrying cases, mobile phone and cell phone cases and specialty holsters for carrying personal digital assistant; laser pointers; luminous pointers.」
第14類「Watches of Swiss origin.」
第18類「All−purpose dry bags, luggage, backpacks, daypacks, duffel bags, utility bags, shoulder bags, casual bags, briefcases, non−motorized wheeled packs, cosmetic cases sold empty and toiletry cases sold empty, travel bags, small personal leather goods, namely, wallets, billfolds, credit card cases, neck, necklace wallets, and shaving bags sold empty; umbrellas and name and calling card cases, cosmetic cases sold empty, toiletry cases sold empty, luggage tags, waistpacks, bags worn on the body, business cases, travel bags, all−purpose personal care bags, small personal leather goods; shoe bags for travel; unfitted bags for handheld electronic devices; waistpacks for holding electronic devices.」
第25類「Clothing, footwear, headgear.」
別掲3 スイスの国旗(色彩は甲2参照)

審理終結日 2022-12-08 
結審通知日 2022-12-12 
審決日 2022-12-28 
審決分類 T 1 12・ 21- Y (X18)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 鈴木 雅也
小林 裕子
登録日 2009-01-16 
代理人 寺前 翔平 
代理人 松永 章吾 
代理人 前川 砂織 
代理人 中野 博之 
復代理人 辻野 篤郎 
代理人 日▲高▼ 英太朗 

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