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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W22
管理番号 1395516 
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-06-27 
確定日 2023-03-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第6546261号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6546261号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6546261号商標(以下「本件商標」という。)は、「Vanlife」の文字を標準文字で表してなり、令和3年7月20日に登録出願、第22類「ターポリン、雨覆い,ハンモック,ケーブル(金属製のものを除く。),ロープ,固定用ロープ,漁網,遺体袋,織物製オーニング,テント,登山用又はキャンプ用のテント,テント入口の垂れ布」を指定商品として、同4年4月8日に登録査定、同月19日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に対する登録異議の申立ての理由において引用する商標は、男性用被服・かばんの分野で使用される「VAN」の文字よりなる商標(以下「引用商標」という。)である。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第83号証(以下「甲○」と表記する。)を提出した。
(1)申立人のグループ会社である株式会社ヴァンヂャケット(以下「ヴァン社」という。)は、長年、被服等の商品だけでなく、ライフスタイルを提供している。
ヴァン社(メインブランド名:VAN)の創始者は、団塊の世代の若者たちにアイビーファッションを提案し、アメリカン感覚の新しいライフスタイルを作り上げた。1951年、大阪府に、アメリカン・カジュアルを中心としたメンズアパレル「ヴァンヂャケット」を創設した。最初、VANはコットンのワークシャツやジーンズなどのアメリカン感覚の商品を販売し、人気を博していたが、1959年、細身のシルエットのアイビー・モデル・スーツを発表、都会の若者たちの注目を集めることとなる。1964年、二十代前半の男性を対象とした週刊誌「平凡パンチ」が創刊され、アイビー・ルックが紹介されると、アイビーファッションは全国的にブームを引き起こす(甲1〜甲5)。
そして、ヴァン社は、1974年から1976年頃には300億円以上の売り上げがあり、ジャケット、トレーナー、シャツ等の膨大な数の商品に「VAN」ブランドに係る商標が付されていた(甲6)。
ヴァン社は、設立当初から日常生活の衣、食、住、音楽、演劇、スポーツと様々なライフスタイル、文化を発信してきた(甲5、甲7〜甲17)。
また、ヴァン社が、ライフスタイルを発信していた点については、多くの作家や記者が述べている(甲5、甲18〜甲22)。
そして、現在も、ヴァン社は、日本TRADの発信者として、様々な「モノ」、「コト」、「ライフスタイル」を提供し続けている(甲23)。
(2)ヴァン社ないし同社の業務に係る商品及び「VAN」ブランドは、多くの有名人に対し、影響を与えている(甲24〜甲29)。
(3)ヴァン社ないし同社の業務に係る商品の「VAN」ブランドは、現在においても、周知・著名性を有している(甲30)。
現在でも、全国約40のショップ(甲31)とECサイト(甲32、甲33)で、引用商標に係るブランドを付した被服、かばん、雑貨類を販売し、カタログも毎シーズン発行している。また、我が国において、2018年から2021年と、毎年宝島社が「VAN」を特集したムック本を出版している(甲23、甲34〜甲36)。
また、国内最大級規模のファッションブランドのデータベースサイト「Fuku DB」では、ヴァン社の「VAN」ブランドが紹介されている(甲37)。国内アパレルメーカーの創業年度をまとめたHPでも、ヴァン社の「VAN」ブランドが掲載されている(甲38)。さらに、2020年3月の繊研新聞に掲載された、19年度百貨店バイヤーズ賞(メンズ)の「カジュアル部門」では、ヴァン社の「VAN」ブランドが3位に選出された(甲39)。
このように、引用商標は、その片仮名表記が「ヴァン」であって、ヴァン社の業務に係る「男性用被服、かばん」を表示するものとして使用され、遅くとも1965年12月には使用されており、当該商品は、1960年代及び70年代において人気を博していた。その後も現在に至るまで、引用商標に関する書籍及びムックが発行されたり、新聞、雑誌及び書籍に引用商標やこれの使用をした商品を紹介する記事が掲載されたり、当該商品の店舗がテレビ番組で紹介されたりするなどしている。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、その片仮名表記は「ヴァン」であって、ヴァン社の業務に係る「男性用被服、かばん」を表示するものとして、一定の世代の男性を中心とする需要者の間に広く認識されており、周知著名性の程度は高い。
審査例(甲41、甲42)にもあるとおり、現在も、ヴァン社に係る「VAN」ブランドは、ファッションに興味がある者を含め、一般の取引者、需要者の間において、広く認識されており、周知性の程度は高い。
近年においても、ブランドとコラボレーションをして商品を販売している(甲43〜甲56)。
また、ヴァン社の「VAN」ブランド及びヴァン社の直営ショップは、近年も多くのテレビ番組で紹介されている(甲57〜甲60)。
(4)申立人は、「VAN〇〇」の商標を多数所有し、ヴァン社は、これらを付した商品を販売している(甲7、甲61〜甲73)。
このように、ヴァン社が、「VAN〇〇」といった「VAN」ブランドと関連するブランドを展開した多数の実績があるため、本件商標を見たり聞いたりした取引者、需要者は、ヴァン社の「VAN」ブランドとの関連性を想起する。詳しくは、本件商標「Vanife」は、「life」の語が「Van」の語と結合したことによって、「ヴァンライフ」の称呼と「VANの生活」、「VANのライフスタイル」等の観念を生じさせる。特に、観念の点は、ヴァン社が「VAN」ブランドを通じてライフスタイルを提供していることと相まって、本件商標を見たり聞いたりした取引者、需要者は、ヴァン社の「VAN」ブランドとの関連性を想起する。
(5)他人の周知、著名な商標を一部に含む商標について、当該他人の業務に係る商品等と混同を生じるおそれがあるとして、登録を無効又は取消しの判断をした審決は多数存在する(甲30、甲74〜甲78)。
(6)ヴァン社に係る「VAN」ブランドは、主に「被服」等の商品に使用されているが、周知、著名であるため、「テント,登山用又はキャンプ用のテント,テント入り口の垂れ布,ハンモック,ロープ、固定用ロープ」等の被服とは非類似の商品に使用された場合であっても、本件商標を見たり聞いたりした取引者、需要者は、ヴァン社に係る商品である、あるいはヴァン社と組織的・経済的に何らかの関連性を有する者の業務に係る商品であると誤って認識する。多くのアウトドアメーカーが、テント、ハンモック、ロープといったキャンプグッズから被服にまで同一ブランドの下に商品を製造、販売し、同一デザインや同一コンセプトを活かしたトータルコーディネイトを提要するという商品展開を行っている(甲79〜甲83)。
したがって、本件商標が、被服とは非類似の商品に使用された場合であっても、本件商標を見たり聞いたりした取引者、需要者は、ヴァン社に係る商品である、あるいはヴァン社と組織的、経済的に何らかの関連性を有する者の業務に係る商品であると誤って認識する。
(7)ヴァン社の「VAN」ブランドと本件商標の構成中「Van」の文字部分を比較すると、外観においては、「VAN」の欧文字を共通にするから、近似した印象を与え、称呼及び観念においては、「ヴァン」の称呼及び「ヴァン社のブランド」としての観念を共通にする(甲40)。
そうすると、ヴァン社の「VAN」ブランドと本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛らわしい類似の商標である。
(8)ヴァン社の「VAN」ブランドは、その片仮名表記が「ヴァン」であって、ヴァン社の業務に係る「男性用被服、かばん」を表示するものとして、一定の世代の男性を中心とする需要者の間に広く認識されていることからすると、本件商標は、その構成中「Van」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。一方で、本件商標の構成中「life」の文字部分は、その語が「生活」等の意味し、我が国において広く一般的に親しまれている語であるから、自他商品の識別力が比較的弱い部分である(甲40)。
そうすると、本件商標は、その構成中「Van」の文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許される。
(9)結論
現在においても、ヴァン社に係る「VAN」ブランドは、被服、かばんの分野で周知、著名性を有している。また、ヴァン社は、長年、被服等の商品を販売するだけでなく、「ライフスタイル」を提供している。さらに、ヴァン社は、商標「VAN」に関連する商標「VAN〇〇」を数多く有しており、それらの商標を使用した商品を販売している。また、多くのアウトドアメーカーが、テント、ハンモック、ロープといったキャンプグッズから被服にまで同一ブランドの下に商品を製造、販売し、同一デザインや同一コンセプトを活かしたトータルコーディネイトを提供するという商品展開を行っている。
したがって、本件商標の指定商品という、被服とは非類似の商品について、本件商標が付された商品を見たり聞いたりした取引者、需要者は、ヴァン社の商品である、あるいはヴァン社を組織的・経済的に何らかの関連性を有する者の業務に係る商品であると誤認する。
また、ヴァン社の「VAN」ブランドと本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛らわしい類似の商標である。さらに、本件商標は、その構成中「Van」の文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許される。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性
ア 申立人の提出証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)1961年に創設されたメンズ・アパレルブランド「ヴァン・ジャケット」は、アイビー・ルックと称されるスーツやシャツなどを取り扱っており、1978年に倒産したものの、1981年にアメリカン・トラッドのアパレルとして復活した(甲1、甲2)。
同ブランドは、引用商標「VAN」の文字を大きく顕著に表し、その下に「JAC」の文字を小さく表示したロゴを使用しており、引用商標を表示した「男性用被服、かばん」などが取扱商品にある(甲3、甲5、甲23)。
(イ)引用商標に係るブランドの商品は、国内各地にある店舗のほか、オンラインショップなどを通じて販売されている(甲31〜甲33)。
(ウ)引用商標に係るヴァン社の年商は、1975年には450億円に達したとされる(甲2)。
(エ)引用商標に係るブランド及び商品は、雑誌や書籍、新聞記事などで言及、紹介されている(甲5、甲18〜甲23、甲34〜甲36)。
それら記事において、例えば「ぼくたちのアイビーの原点/いまこそVAN精神を学びたい」(甲5)、「1960〜70年代にアイビールックの一大ブームを巻き起こし、戦後の日本の男性の装いに多大な影響を与えたブランド「VAN」」(甲19)、「輝き失わぬVANブランド」(甲22)などの記載がある。
また、テレビ番組においても、当該ブランドが紹介、取り上げられている(甲57〜甲60)。
イ 上記の認定事実によれば、ヴァン社が創設した引用商標に係るアパレルブランド「VAN」は、1960年代から1970年代にかけての我が国における販売実績は相当程度の規模にのぼり、その後の倒産、復活を経て、現在でも継続して販売され、新聞や雑誌等のメディアを通じて取り上げられてもいるから、50年以上前に人気を博したブランドとして、高齢男性を中心とした需要者の間においては、一定程度認知されていると考えられる。
そうすると、引用商標「VAN」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人やヴァン社と関連する商品「男性用被服、かばん」を表示する商標として、一定程度の範囲の需要者(高齢男性)の間においては、広く認識されているといえる。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度
ア 本件商標について
本件商標は、「Vanlife」の文字を標準文字で表してなるところ、同種文字を、同じ大きさ及び書体で、字間なく、横一列に配置してなるから、まとまりよく一連一体の語を表してなると認識できるものである。
そして、本件商標の構成中、「Van」の文字は「小型トラック。バン。」の意味を、「life」の文字は「命。生活。」の意味を有する英語(参照:「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)であるが、両語を結合して成語となるものではなく、各語の語義を結合して連想できる意味合い「小型トラックの生活」なども漠然としたものであり、具体性を欠く。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「バンライフ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
イ 引用商標について
引用商標は、「VAN」の欧文字からなるところ、当該文字は「小型トラック。バン。」の意味を有する英語(前掲書参照)である。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「バン」の称呼を生じ、「小型トラック。バン。」程度の観念が生じる。
ウ 本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、語頭の「Van」(VAN)の構成文字を共通にするものの、語尾の「life」の文字部分の有無により、全体としては異なる語を表してなると容易に理解できるから、相紛れるおそれはない。また、称呼においては、語頭の「バン」の2音を共通にするが、語尾の「ライフ」の3音の有無の差異があるから、構成音全体の語調、語感は明らかに異なるものとなり、相紛れるおそれはない。さらに、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから、比較できない。
そうすると、両商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれはないから、類似性の程度は低く、誤認混同を生じるおそれのない別異の商標といえる。
(3)本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品の関連性
本件商標の指定商品は、前記1のとおり、主にキャンプなどで使用するアウトドア用品であるところ、引用商標の使用に係る「男性用被服、かばん」等のファッション関連商品とは、商品の性質や用途、目的などが明らかに異なるばかりか、その需要者層や取引者層も必ずしも一致するものではなく、また、一般的には、同一営業主が製造又は販売するものではないから、両商品の関連性の程度は低い。
(4)出所の混同のおそれについて
以上を踏まえると、引用商標「VAN」は、「男性用被服、かばん」に使用される商標として、我が国の一定程度の範囲の需要者(高齢男性)の間に広く認識されているとしても、本件商標と引用商標は類似性の程度が低い別異の商標であって、その指定商品と引用商標の使用に係る商品との関連性の程度も低い。
そうすると、本件商標は、その指定商品に係る需要者及び取引者をして、引用商標又は申立人らの業務に係る商品との関連性や、他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)申立人の主張について
申立人は、アウトドアメーカーがキャンプグッズから被服まで同一ブランドの下に商品を製造、販売し、同一デザインや同一コンセプトを活かしたトータルコーディネイトを提供するという商品展開を行っているから、本件商標が被服とは非類似の商品に使用された場合であっても、本件商標に接する需要者は、申立人の業務に係る商品であると誤認する旨を主張する。
しかしながら、上記(3)のとおり、本件商標の指定商品であるアウトドア用品と、引用商標の使用に係るファッション関連商品は、商品の性質や用途、目的などが明らかに異なるものであり、一般的には、同一営業主が製造又は販売するものではないから、両商品の関連性の程度は低い。
また、本件商標と引用商標は、上記(2)のとおり、類似性の程度が低い別異の商標であることを考慮すれば、両商標の間で出所の誤認混同が生じることは考えにくい。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当せず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-02-24 
出願番号 2021091017 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W22)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 豊田 純一
特許庁審判官 小田 昌子
阿曾 裕樹
登録日 2022-04-19 
登録番号 6546261 
権利者 ▲トウ▼ 植金
商標の称呼 バンライフ 
代理人 藤沢 則昭 
代理人 岡田 陽之介 
代理人 藤沢 昭太郎 

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