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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1395501 
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-26 
確定日 2023-02-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第6515614号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6515614号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6515614号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和3年1月8日に登録出願、第3類「粉せっけん,家庭用漂白剤(脱色用のもの),つや出しクリーム,口紅,化粧用マッサージクリーム,毛髪用の化粧品,ウエットティッシュタイプのクレンジング用剤(医療用のものを除く。),美容せっけん,皮膚の手入れ用化粧品,植物由来の化粧品,ペット用化粧品,バニラからなる香料・薫料・香水類,歯磨き,ヘアークリーム(医療用のものを除く。),化粧せっけん,ティッシュに浸み込ませた化粧水,化粧用の美顔用パック,化粧用接着剤,化粧品,せっけん類」を指定商品(以下「本件指定商品」という。)として、同4年1月13日に登録査定され、同年2月18日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下のとおりである(なお、以下の引用商標1ないし引用商標3をまとめて「引用商標」という。)。
1 「IBIM」の欧文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)であり、申立人の代表者が経営する「ビバリーグレンラボラトリーズ株式会社」(以下「B社」という)が、「定額で化粧品等の小売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「B社役務」という。)に使用しているというものである。
2 「ビーグレン」の片仮名からなる商標(以下「引用商標2」という。)及び「b.glen」の欧文字からなる商標(以下「引用商標3」という。)であり、B社が、「化粧品及び医薬品」(以下「B社商品」という。)に使用しているというものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号又は同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1項第1号により、取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証を提出した。
1 商標並びに商品及び役務の類似性について
(1)本件商標について
本件商標は、全体として、上下2段に文字列が配置された構成となっている。各文字は、比較的太いサインペン等を用いて一筆書きにより描かれたような書体からなる。
本件商標は、上段部分及び下段部分それぞれについて、外観上の特徴が表れると共に称呼及び観念が生ずる。
本件商標の上段部分は、何らかの図形を表しているとも読めるが、下段部分の2文字目と形状が類似していることから、文字である可能性が高く、その場合に英大文字の「B」と読むのが妥当である。
本件商標の下段部分は、全て英大文字による文字列「IBIM(アイビーアイエム)」と読むのが妥当である。
以上から、本件商標は、上段部分が何らかの図形若しくは文字列「B」、「B.」又は「B’」として認識され、下段部分が文字列「IBIM」として認識される。
したがって、本件商標は、上段部分を何らかの図形としてみた場合、下段部分のみから、文字列「IBIM」として認識され、「アイビーアイエム」の称呼及び観念が生じる。
また、本件商標は、上段部分を文字及び記号とみた場合、全体として英文字及び記号からなる「B./IBIM」等の2段の文字列として認識され、この場合に「ビー/アイビーアイエム」や「ビードット/アイビーアイエム」のような称呼及び観念が生じる。
(2)引用商標について
B社は、本件商標の登録出願前から、ウェブページを開設しており(甲2)、社名の略称を表すものとして引用商標2及び引用商標3等を使用して、B社商品の通信販売を行っている。
また、B社は、引用商標1を使用して、B社役務を提供している(甲3〜甲5)。
(3)商標の対比
本件商標の下段部分から認識される文字列「IBIM」は、引用商標1と同一である。
このため、本件商標は引用商標1と類似する。
また、本件商標の上段部分から認識される文字及び記号「B.」は、引用商標3の語頭部分の「b.」を大文字に変換したものにも該当する。
そうすると、本件商標に接した需要者は、あたかもB社によるB社商品及びB社役務と関連性がある」と誤認する可能性がある。
(4)商品及び役務について
本件指定商品は、B社商品及びB社役務と類似の関係にある。
2 引用商標1の周知性について
(1)B社による引用商標の使用状況
B社は、引用商標1を使用して、B社役務の提供を、本件商標登録出願前である令和2年10月1日より開始している(甲3〜甲5)。
このB社役務は、専門家による顧客の肌のカウンセリングや肌改善プランの設計や相談、及び顧客が選択した化粧品の提供等をパッケージ化して(ひとまとめにして)、月額制のサービスとして顧客に提供するものである(甲5等)。
B社は、同年9月22日に、プレスリリースを行い、引用商標1を使用したB社役務の提供を開始する旨、同年10月17日に、SNSのLINEを利用してショッピングサービスを提供する旨を説明すると共に、画面イメージ内に引用商標1を使用し、同年10月24日に契約者が1万5千人を超えたことを明らかにした(甲6〜甲8)。
また、B社は、定期的にWebマガジンを発行しており、その中でも引用商標1を使用したB社役務について繰り返し紹介している(甲9〜甲13)。
さらに、B社は、SNSのFacebookに「ビーグレン公式」アカウントを開設し、しばしば引用商標1を使用したB社役務について紹介や説明をしている(甲14〜甲16)。このアカウントは、4,400人以上の「フォロワー」によりフォローされている。
さらにまた、B社は、SNSのInstagramに「bglen_official」アカウントを開設し、また、SNSのTwitterに「ビーグレン【公式】」アカウントを開設しており、しばしば引用商標1を使用したB社役務について紹介や説明をしている(甲17〜甲20)。
(2)報道記事や紹介記事等による引用商標1の使用
B社によるプレスリリースを受けて、令和2年9月22日に、「時事メデイカル」、「マイナビニュースTECH+」、「日本ネット経済新聞」及び「楽天Infoseek News」等の複数のニュースサイトにおいて、引用商標1を使用したB社役務を紹介する報道記事がそれぞれ掲載された(甲21〜甲24)。
また、B社役務の提供開始に合わせて、同年10月1日に、「ORICON NEWS」及び「エキサイトニュース」等の複数のニュースサイトにおいて、引用商標1を使用したB社役務を紹介する報道記事がそれぞれ掲載され、同日に、女性向けの雑誌「CLASSY.」の電子版において、引用商標1を使用したB社役務を紹介する紹介記事がそれぞれ掲載された(甲25〜甲27)。
さらに、B社によるプレスリリースを受けて、同年10月24日に、「産経ニュース」及び「ZDNet Japan」等の複数のニュースサイトにおいて、引用商標1を使用したB社役務の利用者が1万5千人を超えたことを紹介する報道記事がそれぞれ掲載された(甲28、甲29)。
さらにまた、同年10月下旬以降、「美女とコスメ」、「LULU MAMA」、「アラハダ」、「HB humming birds WEB」及び「NOVELABRIDE」等の女性向けの記事を掲載する複数のウェブサイトにおいて、引用商標1を使用したB社役務を紹介する紹介記事がそれぞれ掲載された(甲30〜甲34)。
(3)検索サイトによる引用商標1の検索結果
令和3年6月1日に、検索サイト「Google」において引用商標1「IBIM」の検索を行ったところ、上位10件が全てB社役務に関連する内容であった(甲35)。また、同日に、検索サイト「Yahoo!」において引用商標1「IBIM」の検索を行ったところ、上位10件のうち最上位3件を含む8件が、B社役務に関連する内容であった(甲36)。
(4)B社役務の利用者の推移
B社役務の利用者(顧客)は、令和2年10月19日の時点で1万5千人を超えており、さらに同年12月21日には2万人を超え、同3年1月4日には、3万人を大きく超えた(甲37)。
(5)引用商標1の周知性
以上のとおり、B社役務は、サービスを開始した令和2年10月1日以降、引用商標1を広く使用して今日に至っている。
B社役務は、コロナ禍において、化粧品の需要者が抱える様々なニーズを良好に満たしていたため、各種媒体を利用した宣伝等とも相まって、主にインターネットを介して急速に需要者に広く知られるようになり、数多くの利用者を獲得した。
以上から、B社役務や化粧品等にかかる需要者の間では、引用商標1がB社役務を表すものであることは、広く認識されているものである。
3 商標法第4条第1項第10号該当性
上記のとおり、本件商標と引用商標1とは、「IBIM」の文字部分が共通するため、外観、称呼及び観念の何れにおいても類似する。また、本件商標の指定商品とB社役務も類似する。さらに引用商標1はB社役務を表すものとして需要者の間に広く認識されている。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号該当性
上記のとおり、B社は、令和2年10月1日のサービス開始以降、B社役務について、引用商標1を広く使用して今日に至っており、我が国における顧客数も非常に多く、さらに増加しつつある。
また、本件商標の上側部分は「B.」の文字及び記号として認識し得るものであるが、引用商標3の語頭部分の「b.」において、小文字を大文字に変換したものにも該当する。
そうすると、本件商標は、全体として、需要者に対し、あたかもB社商品又はB社役務と関連性があるかのような印象を与える可能性がある。
したがって、本件指定商品の分野における需要者は、文字列「IBIM」と認識し得る部分を含む本件商標が、本件指定商品について使用された場合、B社の業務にかかる商品又は役務と出所の混同を生ずる恐れがあることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号該当性
本件商標を使用した化粧品を通信販売するウェブサイト(甲38)には、商品の説明画像や記載に加えて、ブランドに関して説明した記載(以下「ブランド説明部」という。)がある。
このブランド説明部には、上段に本件商標が表示されており、下段に日本語で「私が作る、私のブランドーアイビム」の記載、及び英単語を列挙した「I Brand What I Made」の記載がある。
この英単語の略称として、各英単語の頭文字を列挙した場合には、「IBWIM」となり、「W」の文字が含まれるのが自然であるが、本件商標の下部には、この「W」の文字が含まれておらず、省略されている。また、この「W」を省略したことに関する明示的な説明もないから、本件商標の下部は、引用商標1に意図的に類似させる目的で「W」の文字を省略し、文字列「IBIM」とした可能性がある。
そうすると、本件商標が本件指定商品に使用された場合、その商品の需要者がB社の業務に係る商品と出所について混同するおそれがある。また、本件商標は、B社役務の提供が開始され、周知性が十分に高まった後に出願されたものであることから、B社役務の周知性を不正に利用しようとしている蓋然性が高い。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
申立人の主張及び証拠によれば、以下のとおりである。
(1)引用商標1について
ア 引用商標1の使用状況
(ア)B社の令和2年10月24日付けウェブサイトの記事において、同月1日にB社が引用商標1を使用したB社役務の提供開始した旨の記載がある(甲8)。
(イ)B社役務の契約者数は、令和2年10月24日に1万5千人を超えた(甲8)。そして、同年12月21日には2万人、同3年1月4日には3万人を超えたとする(申立人の主張、甲37)。
(ウ)B社は、自社のWebマガジンにおいて、引用商標1を使用したB社役務について紹介を行った(甲9〜甲13)。
また、B社は、Facebookの同社アカウントにおいて、令和2年9月30日、同年12月3日及び同月17日に、引用商標1を使用したB社役務について紹介を行った(甲14〜甲16)。そして、4,473人がフォロー中である旨の記載がある(甲14)。
さらに、B社は、Instagram及びTwitterの同社アカウントにおいて、引用商標1を使用したB社役務について紹介を行った(甲17〜甲20)。
イ 報道記事や紹介記事等による引用商標1の使用
令和2年9月22日に「時事メデイカル」、「マイナビニュースTECH+」、「日本ネット経済新聞」及び「楽天Infoseek News」等のウェブサイトにおいて、同年10月1日に「ORICON NEWS」、「エキサイトニュース」及び「CLASSY.」のウェブサイトにおいて、並びに、同年10月下旬以降に「美女とコスメ」、「LULU MAMA」、「アラハダ」、「HB humming birds WEB」及び「NOVELABRIDE」等のウェブサイトにおいて、それぞれ、引用商標1を使用したB社役務を報道、紹介する記事が掲載された(甲21〜甲27、甲30〜甲34)。
また、同年10月24日に「産経ニュース」及び「ZDNet Japan」のウェブサイトにおいて、B社役務の利用者が1万5千人を超えたとの記事が掲載された(甲28、甲29)。
ウ 検索サイトによる引用商標1の検索結果
申立人は、令和3年6月1日に、検索サイト「Google」において「IBIM」の文字について検索を行ったところ、上位10件が全てB社役務に関連する内容であり、また、同日に、検索サイト「Yahoo!」において同文字について検索を行ったところ、上位10件のうち最上位3件を含む8件が、B社役務に関連する内容であったとする(申立人の主張、甲35、甲36)。
エ 上記アないしウによれば、以下のとおり判断できる。
(ア)B社は、引用商標1を、本件商標の登録出願日(令和3年1月8日)前である令和2年10月1日より、B社役務について使用を開始し、複数のウェブサイト等において、引用商標1を使用したB社役務に関する記事が掲載されており、B社による引用商標1の使用は、本件商標の登録査定日(令和4年1月13日)はもとより、現在まで継続して使用していると推認し得る。
(イ)B社役務について、提供開始から本件商標の登録出願日までは3か月、登録査定日までは1年3か月程度の比較的短い期間である。
(ウ)B社役務の契約者数は、令和2年10月24日に1万5千人を超えた(甲8)ことは認められるが、その後の契約者数の推移は、B社が作成した内部資料(甲37)を根拠とするものであって、その記載内容を客観的に立証するものではない。また、同業他社の契約者数との比較ができないため、当該契約者数については、多寡の確認ができない。
(エ)ウェブサイト等における広告宣伝記事については、広告宣伝回数、サイトの記事へのアクセス数等が不明であり、また、Instagram及びTwitterにおいて、引用商標1を使用したB社役務が広告宣伝されているとしても、広告宣伝回数、フォロワー数等が明らかではない。さらに、Facebookのフォロワー数も4,400人程度と決して多いとはいえない。そして、他に役務の提供数、広告宣伝の方法、期間、地域及び規模を示す具体的な証左は見いだせないことから、その提供実績は明らかではない。
(オ)検索サイト「Google」及び「Yahoo!」における検索結果において、引用商標1が上位に表示されていたとしても、当該検索結果をもって、直ちに周知著名性を立証することにはならない。
(カ)上記(ア)ないし(オ)によれば、いずれの証拠によっても、引用商標1の周知著名性の程度を推し量ることはできない。
(2)引用商標2及び引用商標3について
引用商標2及び引用商標3については、甲第2号証ないし甲第34号証において、記載が認められるものの、その使用に係る商品の販売数量、広告宣伝の方法、期間、地域及び規模を示す具体的な証左は見いだせないことから、その販売実績は明らかではなく、引用商標2及び引用商標3の周知著名性の程度を推し量ることはできない。
(3)小括
以上を踏まえると、申立人の主張及び提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標がB社商品又はB社役務を表示するものとして、我が国及び外国における需要者に広く認識されているものとは認めることができない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、「B」の欧文字をモチーフにしたと思われる図形と該図形部分の右に「.」とおぼしき記号(以下「図形部分」という。)と、その下に「IBIM」の欧文字を横書きしてなるところ、図形部分と「IBIM」の文字部分とは、互いに接することなく、その態様も異なることから、視覚上分離して看取され、それぞれが独立して、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものと判断するのが相当である。
そして、「IBIM」の文字は辞書等に掲載のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない、一種の造語として理解されるものであるから、特定の観念は生じないものである。
また、図形部分からは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
したがって、本件商標は、その構成中、独立して自他商品の識別標識としの機能を果たし得る「IBIM」の文字部分に相応して、「アイビイアイエム」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標1は、「IBIM」の欧文字を横書きした構成からなるものであるから、本件商標と同様に、「アイビイアイエム」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
引用商標2は、「ビーグレン」の片仮名を横書きした構成からなるものであり、「ビーグレン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
引用商標3は、「b.glen」の欧文字を横書きした構成からなるものであり、「ビーグレン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1は、上記ア及びイのとおりの構成からなり、全体の外観においては、図形部分の有無に差異があるとしても、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得る本件商標の文字部分と引用商標1は、書体が異なるものの、共に「IBIM」の欧文字よりなることからすれば、紛らわしいといえる。
次に、称呼においては、両者は、「アイビイアイエム」の称呼を共通にするものである。
さらに、観念においては、両者は、共に特定の観念を生じないものであるから、比較することはできない。
そうすると、本件商標の文字部分と引用商標1とは、共に特定の観念を生じない造語であるといえるから、観念において比較できないとしても、外観において紛らわしく、称呼を共通にするものであるから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、互いに相紛れるおそれのある類似の商標である。
エ 本件商標と引用商標2及び引用商標3との類否について
本件商標と引用商標2及び引用商標3は、上記ア及びイのとおりの構成からなり、全体の外観においては、図形部分の有無の差異があり、また、独立して自他商品の識別標識の機能を果たし得る本件商標の文字部分と引用商標2及び引用商標3の比較においては、その文字構成、文字種及び書体において明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、両者は、構成音数及び音構成において明らかな差異を有するから、明瞭に聴別できるものである。
さらに、観念においては、両者は、共に特定の観念を生じないものであるから、比較することはできない。
そうすると、本件商標の文字部分と引用商標2及び引用商標3とは、外観において明確に区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別できるものであり、観念において比較できないとしても、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(2)小括
商標法第4条第1項第10号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」に該当する商標について、商標登録を受けることができないと規定しているところ、上記ウのとおり、本件商標と引用商標1が同一又は類似するものであるとしても、上記1(3)のとおり、引用商標は、B社商品又はB社役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものとは認められないものである。
また、上記(1)エのとおり、本件商標と引用商標2及び引用商標3は、非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
上記1(3)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、B社商品又はB社役務を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く知られていたと認めることはできないものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標と引用商標1は、上記2(1)ウのとおり、類似の商標であるから、類似性の程度は高いものである。
他方、本件商標と引用商標2及び引用商標3は、上記2(1)エのとおり、非類似の商標であるから、類似性の程度は高いとはいえない。
(3)引用商標の独創性について
引用商標は、特定の意味合いを想起させることのない造語というべきものであるから、引用商標の独創性は高いといえる。
(4)本件商標の指定商品とB社商品又はB社役務との関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定商品は「化粧品」を含むものであるであるところ、B社商品は「化粧品及び医薬品」であり、また、B社役務は「化粧品等の提供を行う定額サービス」であり、両者は、共に「化粧品」に関する商品の販売及び役務の提供であるかことからすれば、商品又は役務の関連性を有し、需要者の範囲を共通にする場合があるといい得るものである。
(5)小括
上記(1)ないし(4)のとおり、本件商標と引用商標1は類似の商標であり、引用商標は独創性が高く、本件商標の指定商品とB社商品又はB社役務の一部において関連性を有し、需要者の範囲を共通にする場合があるとしても、何より引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、B社商品又はB社役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
してみれば、本件商標に接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起するものということはできない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(B社)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そうすると、引用商標1が本件商標と同一又は類似のものであるとしても、引用商標は、上記1(3)のとおり、B社の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
また、申立人が提出した甲各号証からは、本件商標権者が我が国において不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実を見いだすことはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲 本件商標



(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-02-14 
出願番号 2021002203 
審決分類 T 1 651・ 251- Y (W03)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 豊瀬 京太郎
小俣 克巳
登録日 2022-02-18 
登録番号 6515614 
権利者 イーエル ライズ コーポレーション
商標の称呼 アイビイアイエム、ビイ 
代理人 貴答 信介 
代理人 奥田 康一 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 並川 鉄也 

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