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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W2930
管理番号 1395498 
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-24 
確定日 2023-03-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第6494929号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6494929号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6494929号商標(以下「本件商標」という。)は、「乾味百撰」の漢字を標準文字で表してなり、令和3年1月18日に登録出願、第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年11月9日に登録査定され、同4年1月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「乾味百撰」の漢字からなり、申立人の長年の使用により同人の商標として周知となっていると主張するものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第26号証(枝番号を含む。なお、表記にあたっては、「甲〇」(「〇」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。
1 本件商標と引用商標の類似性について
両商標は、いずれも書体は少々異なるものの漢字で「乾味百撰」と書しており、称呼も同じであり、称呼、外観、観念共に同一あるいは類似する商標である。特に引用商標は、第29類及び第30類の指定商品として長年使用されて需要者の間に広く認識されており、本件商標は、申立人の業務に係る商品の需要者と重なり、かつ、申立人における全国的な販売網を参酌すると、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。
2 引用商標について
引用商標は、平成10年(1998年)頃に百貨店の伊勢丹(以下「伊勢丹」という。)で乾物のセットものとして販売されてきた乾物の名称であり、その当時、伊勢丹は、しいたけやわかめや海苔等の乾物を駿河食品株式会社(以下「駿河食品社」という。)より仕入れて販売していた。その当時、「乾味百撰」の名称の乾物は、駿河食品社を介して伊勢丹に納品して伊勢丹で販売されていた。
その後、平成12年(2000年)頃、駿河食品社の経営が思わしくなくなり、伊勢丹は乾物商品シリーズの仕入れ先を申立人の株式会社林久右衛門商店(以下「林久右衛門商店」という。)に変更した。その際、申立人は駿河食品社が取り扱っていた「乾味百撰」の出荷を引き継ぎ、現在に至るまで乾物商品シリーズとして「乾味百撰」の商品群を伊勢丹や他の乾物店舗にて販売してきた。
その間に「乾味百撰」の乾物商品シリーズについて、申立人は、商標登録の必要性を感じ、平成22年3月18日 に「乾味百撰」の商標登録出願を行い(甲11の1)、特許庁より拒絶理由の通知が発送されたが対応が十分でないまま拒絶査定となったという過去の経緯がある(甲11の2)。
また、駿河食品社及び伊勢丹で使用された引用商標「乾味百撰」の命名に関して、「乾味百撰」の名付け親については、元伊勢丹社員のS氏が命名し、この名称を駿河食品社に使用させて同社の乾物として、伊勢丹の店頭で「乾味百撰」として販売していた。その後、駿河食品社から申立人の林久右衛門商店に変更されて現在に至っている。
3 引用商標の周知性について
(1)申立人が伊勢丹に乾物商品を出荷する以前に、伊勢丹と取引していた駿河食品社のカタログには、駿河食品社頒布のカタログに乾物の詰め合わせセットの総合名称として「乾味百撰」が使用されており、カタログの裏面には駿河食品社の名称と住所が記載されている。駿河食品社は、平成12年(2000年)9月19日、株式会社舟匠庵に社名を変更している(甲6)。このことから、少なくとも駿河食品社の社名変更時よりも前に存在していたカタログである。すなわち、本件商標の登録出願日の約20年前から駿河食品社が「乾味百撰」の名称で伊勢丹に乾物商品を出荷していた。そして、カタログ発刊時において、駿河食品社は経営的に健在であって、駿河食品社の乾物名称として「乾味百撰」が使用されており、その後、伊勢丹との取引先が申立人に変わることで、乾物名称である「乾味百撰」は、申立人の商標として周知性を獲得する(甲2)。
(2)元伊勢丹商品試験室長をしていたS氏は、その後独立して食品企画開発等のコンサルタントとして「小売業の食卓革命」の書籍を発刊し、この本にはS氏が伊勢丹社員時代に商品開発をした商品開発コンセプトの全てが掲載されており、その商品内容として、本書籍には「乾味百撰」の表記説明が記載されており、海産乾物の詰合せセット商品を「乾味百撰」と表していた。S氏の著書の発刊日は当該書籍の奥付から、2000年3月4日が初版であり、少なくとも平成12年(2000年)には、乾物全般の小売袋詰合せを「乾味百撰」と称していた。
そして、申立人は、少なくとも平成12年(2000年)には、乾物商品について「乾味百撰」の商標を付して使用していたことがうかがえ、現在
も使用していることを考えると「乾味百撰」は申立人において少なくとも20年以上にわたり使用されていた(甲3)。
(3)食に関する紹介月刊誌として著名な「dancyu」の2002年12月号には、お歳暮カタログとして伊勢丹の「乾味百撰」商品セットが掲載されており、この「乾味百撰」には申立人の出荷商品であることが明記されている。すなわち、平成14年12月(2002年12月)頃には伊勢丹への「乾味百撰」の納入業者が駿河食品社から申立人に変更されており、申立人から出荷された「乾味百撰」の商品詰め合わせセットが伊勢丹で販売されていた。さらに、同号証の発行日として「2002年12月1日」と表記されているから、この日時には「乾味百撰」が使用されていたことがわかる。しかも、この頁の紹介は「伊勢丹」と表記されており、林久右衛門商店の「乾味百撰」の写真が缶詰のパック形態となっていることから、缶詰めの「乾味百撰」商品は少なくとも2002年には存在している(甲4)。
(4)2001年、2003年ないし2010年における伊勢丹のお中元、お歳暮のカタログには伊勢丹へ出荷していた申立人の名称が商品毎に表記されるとともに、商品名として「乾味百撰」が明記され、「乾味百撰」の詰合せセット商品としては、「日高昆布」「松茸」「ふかひれ」「かつお削り」「乾わかめ」「どんこ」等の原材料を主体とした商品詰合せであることが説明されている。基本的に申立人から伊勢丹への毎年のお中元やお歳暮の出荷商品が「乾味百撰」として出荷されたものであったことが認識できる。
以上のように、申立人のお中元、お歳暮の出荷カタログは約20年前より発行され、本号証の証拠方法のカタログ発行以後も毎年定期的に発行掲載されていた(甲5の1)。
2008年及び2009年の丸井今井の贈答品カタログには、申立人の「乾味百撰」が表示され、同号証は、伊勢丹以外にも丸井今井店舗で販売されていたことを示す。申立人の「乾味百撰」商品は、大手の伊勢丹以外の店舗にも広く流通していた。このカタログは贈答品用の物であり、缶詰商品の化粧箱入りの写真が掲載されている。商品紹介として、各写真の下方に値段と商品内容説明が記載されており、表題として「<久右衛門>乾味百撰」の表記がある。なお、このカタログ原本の表紙の裏面には「商品お取扱い期限2009年8月15日(土)」と記載されているように、同号証のカタログの「乾味百撰」は少なくとも2009年前後には掲載され、「乾味百撰」商品が出回っていた。また、カタログ原本の背表紙にも「2009 SPRING−SUMMER」と表記されている(甲5の2)。
(5)駿河食品社の履歴事項全部証明書により、平成12年(2000年)9月19日に社名を駿河食品社から株式会社舟匠庵に変更していることが分かる(甲6)。
(6)申立人の2002年から2020年にわたる商品の売上点数一覧表における商品売上点数(売上個数)は「乾味百撰」に係る商品の販売点数のみであり、申立人の乾物・調味料事業の規模、及び商品の普及度合いを推測する上での資料となる。同号証によれば、「乾味百撰」の付された乾物商品としては、約80種類の商品があることが分かり、2002年から2020年の約18年間に合計で約230万個という「乾味百撰」が販売されていた。「乾味百撰」の名称を付して販売されていた個数を見るだけでも、「乾味百撰」の商標が全国的に周知となっていたといえる。
特にここ10年間において、乾物中の削り節商品、煮干し商品等が大きく売り上げに貢献した。10年から20年以上前には、同じ削り節の「乾味百撰」商品でも「枯削り」「さば削り」「いわし削り」等の一般的な削り節原料が乾物商品となっており、売れ筋であったものが時代の変遷とともに高級品趣向となり、その原材料も変わったことをうかがわせる。しかし、いつの時代においても時代にマッチングした原材料で「乾味百撰」の商品が需要者間に普及したことがわかる。同時に「乾味百撰」の商品は申立人の独特の商品として一般需要者間に周知されてきた(甲7)。
(7)2002年ないし2020年までの申立人の「乾味百撰」商品売上額一覧表によれば、2002年ないし2020年までの売上総額は7億5千万円超であり、甲第7号証の「乾味百撰」の個々の商品の売上点数に対応しており、約10年以上前までは「乾味百撰」の原材料が「さば」「あじ」「いわし」「枯削り」であったが、ここ10年の間に「鮪」「焼あご」「かつお」「真昆布」へと変遷しながら売上を伸ばしている。
いずれにしても「乾味百撰」の商品名で全国津々浦々乾物製品がいきわたり、需要者の間では周知となっていた。特に「乾味百撰」の個々の商品は、単価は低く個々の販売価格は大きな売上額に結びつかないものの、売上点数では200万個以上売上げており、競合品が極めて多い乾物商品の中では驚異的な売上点数、売上額であり、周知度も向上した(甲8)。
(8)申立人が2002年ないし2021年にかけて頒布したカタログの乾物商品に「乾味百撰」の表示があり、これらのパンフレットやカタログを見る限り、申立人の林久右衛門商店では「かつおだし」「にぼしだし」「あわせだし」その他、昆布や削り節商品「乾味百撰」の表示がなされており、申立人の商品が「乾味百撰」シリーズの商品として全国に行きわたったことを認識できる。
同号証は約10年以上前の申立人の「乾味百撰」に関するカタログであり、この当時より「乾味百撰」の名のもとに各種の乾物が袋のみならず丸缶にも収納されて販売されており、この当時より「乾味百撰」の品種としては多種多様の原材料が用いられており、特に削り節を主体として現在に至っていることが読み取れる。
「乾味百撰」の商標と「乾味百撰」を付した各種削り節商品の歴史は長く、約20年前に伊勢丹へ納品した時代から現在に至るまで申立人の削り節調味料の製造販売の努力が実り「乾味百撰」といえば申立人の独占的商品として百貨店をはじめ多種の大手取引業者や需要者間に周知されてきた。このように、既に缶詰としての「乾味百撰」商品は少なくとも2002年には存在していた(甲9)。
(9)申立人は、平成21年開催の「全国水産加工品総合品質審査会」に出品し、優秀な成績を賞され、同証拠に添付の「活動内容」に申立人の出品した「乾味百撰あわせ削り」が連合会会長賞を受賞したことが表されている。
この審査会の入賞商品は、いずれも日本国内で周知となった商品ばかりであり、これらの周知著名な商品群の中に申立人の「乾味百撰」も含まれていることに意義がある(甲10)。
(10)申立人は、約20年前より「乾味百撰」を使用し、周知性を獲得していたところ、商標登録の必要性を感じて「乾味百撰」の商標登録出願を行い、審査の結果、形式的な違反により拒絶されたが、既にこの出願時点(平成22年頃)で「乾味百撰」の商標を使用し、伊勢丹をはじめ全国的に周知となったことを認識し、必要性を感じていた(甲11)。
(11)申立人の会社案内と代表者のあいさつ書面及び明治18年の創業時から最近(2020年)までの申立人の会社トピックス一覧には、申立人の会社の創業が明治18年であり、「株式会社林久右衛門商店」の組織改変として、法人化設立をしたのが昭和34年12月であることを示している。特に同号証の「林久右衛門商店のあゆみ」の項においては、時系列表記の中で平成21年に「乾味百撰あわせ削り」として前出(甲10)の全国水産加工品総合品質審査会を受賞したことが表記されており、申立人の事業活動の中で、特に「乾味百撰」の標章は、会社の大きな柱としての商品表示として重要視されていたことがわかる(甲12)。
(12)申立人の乾物商品に関する口コミレビューの評価を表示した書面では、ロコミレビューの対象である申立人の乾物商品を「乾味百撰」として紹介しており、同号証中には、申立人の「乾味百撰」の商品群(まぐろ薄削、あわせ削りなど)の評価が点数とともに「星印」の数によって表示されている。結合評価として「4.1」星印4個が表示されており、評価ランキングとして「713商品中、227位」、売れ筋ランキングとして「713商品中238位」となっており、申立人の「乾味百撰」商品は、全国的にかつネット上でも評価、売れ筋ともに3分の1上位にランクされるほどの好評な商品であり、これら評価対象は、「乾味百撰」という商標名として評価されている(甲13)。
(13)申立人が取り扱う全ての商品の紹介が掲載されたホームページには、各種の商品写真のそれぞれが「乾味百撰」と表記されており、特に三枚目の下段中央には「削り節乾味百撰」の表示で削り節の使用状態の写真が掲載されている。すなわち、申立人の商品群では、基本的には、削り節関連商品を「乾味百撰」で称呼していた。
このように、申立人は各種商品を手掛けている中で削り節を主体とした一商品分野に関し「乾味百撰」の商標を使用しており、同じ削り節商品でも甲第15号証に示すように「本枯薄削り」「鰹節、昆布あわせ削り」「まぐろ薄削り」等のように多様の削り節商品を揃えており、これらをすべて、「乾味百撰」の商標として販売していた。
申立人の「乾味百撰」に関する商品の紹介が掲載された申立人ホームページには「乾味百撰林久右衛門商店」の表示があり、申立人の取扱商品の「まぐろ薄削り」「本枯薄削り」「真堅節昆布あわせ削り」等の商品に関し、すべてに「乾味百撰」の表記がある(甲14、甲15)。
(14)楽天市場における申立人のオンラインショップの多数の商品紹介カタログでは、このサイトで販売するギフト商品関係のカタログにおいて、「乾味百撰本枯蒲削り」の表示があり、表紙には追加のお気に入り商品名として「乾味百撰本枯蒋削り」の表示がある。
これらの多数のカタログは楽天市場における販売用のカタログであり、各4種類のカタログには削り、まぐろ薄削り、本枯厚削り等がそれぞれ表示されている。
このように楽天市場においても「乾味百撰」の商品とともに商標「乾味百撰」の表示が記載されており、全国的にPR効果の高い楽天市場で「乾味百撰」の周知性の向上に貢献している(甲16)。
(15)異議申立時の申立人の商品取引先(企業)の一覧表では、取引先企業が地域的に全国にわたっており、大小の種々の企業群と取引を行っていることが推測されるとともに申立人のすべての商品群との取引であるため、その中には、「乾味百撰」商品も多数含まれていることが推測される。換言すれば、「乾味百撰」の商品は全国的に取引されて個々のユーザーに行きわたっていたことが理解でき、「乾味百撰」は、全国的に知名度が高く周知商標となっている(甲17)。
申立人の商品取引先(個人)の一覧表では、商品の性格上、申立人の商品流通は、企業(百貨店や問屋等)が主体であり、企業等から一般ユーザーに行きわたるのが一般的であるため、直接的に申立人から個人への流通は甲第17号証に対し少なくなっている(甲18)。
(16)申立人の大阪店舗の陳列棚のディスプレイの写真(平成28年(2016年)撮影)には、陳列商品中に「乾味百撰」の表示がある。同号証の陳列棚がこのディスプレイ形態とされ、申立人の商品陳列がなされたかを示す日時は不明であるが、少なくとも平成28年(2016年)に撮影されたものであることは推測できる(甲19)。
申立人の東京都内の新宿店における陳列棚のディスプレイの写真(平成29年(2017年撮影)には、商品の陳列表示板に「久右衛門乾味百撰あわせ削り」がある(甲20)。
申立人の東京都内の銀座店における陳列棚のディスプレイの写真(平成29年(2017年)12月撮影)には、「乾味百撰」の表示の表示棚商品がある(甲21)。
平成29年(2017年)の申立人の京都店における陳列棚のディスプレイを示す写真には、各種商品が陳列されており、その中に「乾味百撰」の名称の商品セットがある(甲22)。
上記のいずれの写真にも鰹節・昆布の味付けの削り節商品に「乾味百撰」の表示をしている。すわなち、申立人の陳列商品中でいわゆる削り節商品に関しては、「乾味百撰」の表記を付しており、陳列商品の一角を占めている。商店においてこれらの陳列をのぞく人々には、「乾味百撰」の商標が目に付くように陳列に工夫を凝らしている。
(17)取引先へ頒布したカタログの各商品(削り節商品)には「乾味百撰」の表示がある。同号証のカタログは申立人の多数のカタログの中で特に「乾味百撰」に特定した商品カタログであり、申立人の取引先に頒布した取引先用カタログである。取引先では、申立人からもらったこのカタログは、ユーザーへの削り節中心の商品販売のPR用に使用する。申立人がいかに「乾味百撰」の商標商品に力を入れていたかを示すカタログとなっている。特にこの取引先用カタログに注目すべきことは、削り節商品に付されていた「乾味百撰」の商標が「まぐろ薄削り」や「まぐろ絹削り」や「さば薄削り」や「いか薄削り」等の削りものの他に「あごだし」や「にぼしだし」「かつおだし」「あわせだし」「万能だし」等のだしパック商品においても使用されていることである。同じ乾物でも各種の種類の乾物商品に「乾味百撰」を手広く周知化していることの証左となる(甲23)。
(18)申立人の乾物商品シリーズの各種乾物の包装缶にも「乾味百撰」の表示をしており、包装缶「乾味百撰」商品は、甲第4号証で説明したとおり、2002年には既に存在し、雑誌「dancyu」に掲載されている。すなわち、同号証は、申立人の「乾味百撰」商品の中で特に「缶入り」包装とした「乾味百撰」商品の箱詰め商品群及び袋詰め商品を示している。このように「乾味百撰」商品は、市場で好評であり、売上げも上昇していることから、ユーザーの購入が可能なように大型縦缶中に「本枯薄削り」や「御海苔」や「乾わかめ」や「日高昆布」や「花どんこ」や「羅白昆布」等を収納して新しい形態パッケージの縦缶として販売した(甲24)。
申立人の販売する乾物商品シリーズの各乾物の商品は、それぞれ使い切り用の少量パックになっており、各乾物商品の包装袋には「乾味百撰」の表示がある。すなわち、甲第24号証で示した縦缶入りの乾物商品を少量パック袋として箱内詰め合わせ商品としたものであり、各パック袋の表面には商品名の貼布シートを貼付け、それに「乾味百撰」を表示している。この少量パック袋の商品群は今まで紹介した申立人の各種乾物商品が収納されており、多種多様の削り節商品や呈味材料が各種のパック形態で収納されていることが分かる(甲25)。
使い切り用少量パックの商品にも「乾味百撰」の表示があり、同号証では、申立人の取り扱う調味料商品のほとんどを小袋収納して小袋中に窒素ガスを封入して原料の新鮮さを保持できるようにしている。同時に少量の使用後保存が手軽に可能となるようにエ夫したパック商品である。すなわち、小袋をラミネート紙とするとともに開封部分をチャック付として一旦開封した後は、チャックを利用して外気と完全隔離可能としている。収納商品は煮干しもの、削りもの、しいたけ・昆布等の原材料の(あわせ)だしもの等であり、申立人が調味料原料として取り扱う材料は、ほとんど含まれている(甲26)。
4 むすび
以上の各甲号証で示すように、申立人が長年にわたって「乾味百撰」の商標を付した商品は、有名百貨店や有名な小売業者の店舗で販売されてきた。特に夏冬期の贈答品の季節には百貨店の販売戦略において大々的に「乾味百撰」の商品が宣伝されてきた。
申立人は、「乾味百撰」を約20年にわたって販売してきており、その売上額、売上商品点数等を考慮すれば、「乾味百撰」は周知商標として需要者の間に広く認識されていた。
他方、申立人の長年の使用によって「乾味百撰」を付した乾物商品は、申立人の製造販売する商品として需要者の間に広く知れわたっている事情を勘案すると、本件商標を第三者が指定商品に使用すればあたかも申立人の業務に係る乾物商品と混同を生ずる。すなわち、申立人は、全国各地の乾物販売小売店に「乾味百撰」の乾物商品を約20年にわたって卸しているために本件商標を他人が使用すると需要者は、他人の「乾味百撰」の商標商品があたかも申立人の業務に係る乾物商品と混同する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実が確認できる。
ア 「乾味百撰」と称するだし昆布、煎り子、しいたけ、削り節などの乾物類(以下「申立人商品」という。)は伊勢丹で商品開発され(甲3)、
2003年(平成15年)から2010年(平成22年)頃までは、申立人(林久右衛門商店、久右衛門)の「乾味百撰」と表示した申立人商品がギフト商品として伊勢丹のカタログに掲載されている(甲5の1)。
イ 申立人商品は、上記カタログのほか、丸井今井のギフトカタログ(2008年(平成20年)及び2009年(平成21年))、雑誌「dancyu」(2002年12月号)、申立人の通信販売のカタログ(2007年(平成19年)から2021年(令和3年))において、「乾味百撰」と表示して掲載されている(甲4、甲5の2、甲9)。
ウ 取引先に配布したとするカタログや商品写真に、申立人(林久右衛門商店)の「乾味百撰」と表示した申立人商品が掲載されている(甲23〜甲26)。
エ 申立人は、申立人商品を、直営店舗(福岡、大阪、京都、東京)及びオンラインショップにおいて販売している(甲9、甲15、甲16、甲19〜甲22)。
オ 2009年(平成21年)開催の「全国水産加工品総合品質審査会」において、申立人商品が連合会会長賞を受賞した(甲10)。
カ 申立人商品に関する口コミレビューとして、風味調味料カテゴリ内713商品中、評価ランキング227位、売れ筋ランキング238位の記載がある(甲13)。
キ 申立人商品は、2002年(平成14年)ないし2020年(令和2年)に、75品目、約232万個、約7.6億円販売されたとされ(甲7、甲8)、その取引先は、企業、個人を合わせて1,000を超えるとされる(甲17、甲18)。
(2)上記(1)の事実からすれば、次のとおり判断できる。
2003年(平成15年)から2010年(平成22年)まで、「乾味百撰」と表示した申立人商品は、ギフト商品として伊勢丹のカタログに掲載され、上記カタログのほか、2008年(平成20年)及び2009年(平成21年)の丸井今井のギフトカタログ、雑誌「dancyu」(2002年12月号)、申立人の通信販売のカタログ(2007年(平成19年)から2021年(令和3年))への掲載、直営店舗やオンラインショップなどを通じて販売され、2002年(平成14年)ないし2020年(令和2年)の販売実績などから、申立人商品は少なくとも2002年(平成14年)から2020年(令和2年)までの約18年間継続して販売されたことはうかがえる。
しかしながら、2010年(平成22年)以降は、「乾味百撰」と表示した申立人商品が、伊勢丹等の百貨店等のカタログに掲載された事実は確認できず、雑誌への掲載についても、2002年(平成14年)発行の1種類の雑誌への掲載1回のみであり、他に本件商標の登録査定日以前に発行された雑誌は確認できない上、その他の広告宣伝の方法、期間及び規模及び広告宣伝費などの申立人商品の周知性を判断するための証拠は提出されていない。
また、申立人商品の「全国水産加工品総合品質審査会」における受賞についても、本件商標の登録出願時及び登録査定時より前の2009年(平成21年)のものである上、当該審査会の詳細な内容は明らかでなく、かつ、それらの受賞歴が取引者、需要者の認識にどの程度の影響を与えているのかも明らかではない。そして、申立人商品に関する口コミレビューにしても、その評価ランキング、売れ筋ランキングともに、商品選出の方法、対象、基準等が不明である上、各ランキングも上位に評価されているとはいい難いものであるから、これらをもって引用商標の周知性を推し量ることはできない。
さらに、申立人商品の我が国における販売実績についても、申立人商品が少なくとも2002年(平成14年)から2020年(令和2年)までの約18年間継続して販売されたことがうかがえるとしても、当該実績が乾物類などの1ブランドの販売数、売上高としてその周知性を基礎付けるほど多数、多額であると認めるに足りる証左は見いだせない。
よって、申立人提出の証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者にどの程度認識されているのかを把握、評価することができない。
したがって、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は、上記第1及び第2のとおり、いずれも「乾味百撰」の漢字よりなるものであるから、両商標は同一又は類似のものである。
3 本件商標の指定商品と申立人商品の類否について
上記1(1)アのとおり、申立人商品は、「だし昆布、煎り子、しいたけ、削り節」などの乾物類であり、当該商品と本件商標の指定商品中、第29類「干し昆,かつお節,干しのり,干しわかめ,焼きのり,とろろ昆布,加工水産物」は、生産部門、販売部門、品質、用途及び需要者の範囲などを共通にする同一又は類似の商品である。
4 商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標と引用商標は、上記2のとおり、同一又は類似のものであり、上記3のとおり、本件商標の指定商品と申立人商品とは、同一又は類似の商品であるとしても、引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記2のとおり、本件商標と同一又は類似のものであり、上記3のとおり、本件商標の指定商品と申立人商品とは、同一又は類似の商品であるとしても、上記1のとおり、申立人商品及びそれに使用されている「乾味百撰」の表示(商標)は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
そうすると、本件商標は、その指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者に引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-02-08 
出願番号 2021004769 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W2930)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 阿曾 裕樹
小田 昌子
登録日 2022-01-05 
登録番号 6494929 
権利者 株式会社イケガヤ
商標の称呼 カンミヒャクセン 
代理人 松尾 憲一郎 
代理人 長谷川 二美 
代理人 市川 泰央 
代理人 松下 恵三 

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