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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W41 |
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管理番号 | 1394246 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-08-02 |
確定日 | 2022-09-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 国際登録第1475668号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 国際登録第1475668号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 国際登録第1475668号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの態様で表してなり、2019年(平成31年)3月28日に国際登録出願、第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、令和3年1月14日に登録査定され、同年5月21日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標等 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標が商標法第4条第1項第11号又は同法第8条第1項に該当するとして引用する商標は次のとおりであり、現に有効に存続しているものである。以下、これらをまとめて「引用商標」という。 (1)登録第3264562号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 指定役務 :第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 登録出願日:平成4年9月28日 設定登録日:平成9年2月24日 (2)登録第4117278号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様:別掲3のとおり 指定役務 :第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 優先権主張:1993年(平成5年)4月1日 スイス連邦 登録出願日:平成5年10月1日 設定登録日:平成10年2月20日 (3)登録第4117279号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 指定役務 :第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 優先権主張:1993年(平成5年)4月1日 スイス連邦 登録出願日:平成5年10月1日 設定登録日:平成10年2月20日 (4)国際登録第1026242号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の態様:別掲3のとおり 指定商品・役務:第1類、第3類ないし第7類、第9類ないし第12類、第14類、第16類ないし第19類、第25類、第28類ないし第30類、第32類、第35類ないし第44類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 国際登録出願日:2009年(平成21年)11月3日 設定登録日:平成24年9月7日 (5)国際登録第788585号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の態様:別掲4のとおり 指定商品・役務:第1類ないし第45類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 国際登録出願日:2002年(平成14年)9月24日 事後指定日:2019年(令和元年)6月26日 設定登録日:令和4年5月13日 2 申立人が、本件商標が商標法第4条第1項第6号、同項第7号及び同項第15号に該当するとして引用する標章は、別掲2ないし4のとおりの構成からなるオリンピック・シンボルと称される標章である。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第6号、同項第7号、同項第11号、同項第15号及び同法第8条第1項に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第127号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第6号について (1)申立人について 申立人(IOC)は、近代オリンピックの創始者であるフランス人、ピエール・ド・クーベルタン男爵の提唱で1894年6月23日に設立された、オリンピック競技大会を運営・統括する国際的な非政府の団体であって、オリンピック競技大会の運営・統括等を行いオリンピック・ムーブメントを統括する最高機関として、オリンピック憲章に従い、オリンピズムを普及させる役割を担っている(甲7)。 (2)オリンピック・シンボルの著名性及び公益性について 「オリンピック・シンボル」は、単色又は5色の同じ大きさの結び合う5つの輪(オリンピック・リング)からなるところ、1896年の第一回オリンピックアテネ大会から2018年の第二十三回冬季オリンピック平昌大会までの130年以上の長期にわたり、オリンピック競技大会を表象し、1914年から継続的に使用され、申立人がその運営・統括の中心となって開催するオリンピック競技大会やその関連活動等を広く示すものとして認識されており、その程度は極めて高く、世界でも最も著名な標章の一つであると共に、公益性も非常に高いものであることは明白である(甲7〜甲69)。 上述の諸点に加え、申立人は、オリンピック・ムーブメントの一環として、様々な教育・文化活動を世界的規模で行い、オリンピック・シンボルは、これらの各種教育・文化活動についても広く用いられ、親しまれている。我が国では、日本オリンピック委員会(JOC)等がオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業として、各種の教育・文化活動を国内で精力的に行っており(甲70〜甲122)、このような活動は多岐にわたる。 以上より、申立人は、多くの協力者と共に、オリンピックの理念であるオリンピズムを具現化し、次の世代へと受け継いでいく様々な活動を行い、また、オリンピック憲章に従い、オリンピズムを推進すべく、普遍かつ恒久的な活動を行っており、このような活動とともに使用され続けてきたオリンピック・シンボルが公益性の高い標章であることは明らかである。 (3)本件商標とオリンピック・シンボルなる標章について 本件商標は、別掲1のとおりの構成からなり、「WorldEdu」の欧文字を多少図案化させた文字の左側に、同じ大きさの5個の円を上段に3個 、下段に2個を逆台形状に密接して配置した図形を配してなるものである。他方、オリンピック・シンボルは、別掲2及び3のとおり、同じ大きさの5個の輪を上段に3個、下段に2個を互い違いに交差させて逆台形状に配置した構成からなるものである。 しかして、本件商標の図形部分とオリンピック・シンボルの外観を対比すると、両者は色彩の有無並びに円と輪という形状の差異はあるとしても、(a)同じ大きさの5個の円或いは輪から構成されている点、(b)上段に3個、その下段に2個の円或いは輪を表している点、(c)5個の円或いは輪を逆台形状に密接して配置している点において共通し、両者は着想、構図などの構成の軌をーにするものといえ、本件商標の図形部分をオリンピック・シンボルと見誤るおそれが極めて高いものと考えられる。 そして、前記のとおり、オリンピック・シンボルがオリンピック競技大会を表象する著名な標章であることからすると、本件商標に接する需要者・取引者にあっては、これからオリンピック・シンボルを容易に想起し、両者を密接に結び付けて認識するものといえるから、そうすると、本件商標は、オリンピック・シンボルと外観上見誤るおそれが極めて高い類似の商標であるというべきである。 (4)小結 以上を総合すると、オリンピック・シンボルは、申立人に係る公益に関する事業であって営利を目的としない事業であるオリンピック競技大会を表象する標章として、本件商標の登録出願時には、我が国はもとより世界的に著名になっていたものと認められるものであり、かつ、その状態は登録査定時においても継続していたと認められるものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第6号の規定に違反して登録された。 2 商標法第4条第1項第7号について (1)商標法第4条第1項第7号該当性の検討に際しては、オリンピック・シンボル及びこれが使用される各種活動の公益性という点が十分に考慮されるべきである。 (2)申立人と何ら関わりのない本件商標は、オリンピック・シンボルの著名性に便乗し、その信用、名声にあやかろうとする意図が明らかであって、申立人が推進してきたオリンピック・ムーブメントが阻害されるに他ならない。 本件商標の左側に配された図形部分と、オリンピック・シンボルとを比較するに、上記1(3)のとおり、本件商標に接した者は、オリンピック・シンボルと見誤るおそれが極めて高いというべきものである。 そうすると、本件商標は、オリンピック・シンボルからなる標章に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって出願し登録を受けたもので、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。 (3)また、商標法第4条第1項第7号は、商標を採択し権利化する行為が穏当でなく、国際信義に反すると認められる場合にも適用されると解されるところ(東京高裁平成17年(行ケ)10349、東京高裁平成10年(行ケ)第185号)、IOCはオリンピック開催都市とその国のオリンピック委員会に対して、オリンピック・シンボル及び「Olympic」等のオリンピック関連商標等がIOCの名前で保護されていることなどを要求している(甲125)。 したがって、特許庁においても、本件のようなオリンピック・シンボルと外観上極めて近似する図形要素を含む商標の審査にあっては、国際信義の観点からも開催国として負うべき義務を当然に考慮して判断すべきというのが相当である。 さらに、本件商標の登録の是非については、中国と欧州においては、本件商標の登録を認めないとする判断がなされており(甲126、甲127)、国際協調・国際調和の観点から、このような他国での判断も十分に尊重されて然るべきである。 (4)小結 上述のとおり、本件商標は、社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すことは明らかであって、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録された。 3 商標法第4条第1項第11号又は同法第8条第1項について (1)本件商標は、別掲1のとおりの態様からなり、上記1(3)に記載のとおりの図形を配してなるものである(甲1)。他方、引用商標1及び3は、別掲2のとおり、引用商標2及び4は別掲3のとおり、それぞれ表されてなり、いずれも同じ大きさの5個の輪を上段に3個、下段に2個を互い違いに交差させて逆台形状に配置した構成からなるものである(甲2〜甲6)。 (2)本件商標と引用商標との類否については、前記のとおりであって、また、本件商標と各引用商標の指定役務は、同一又は類似のものである。 したがって、本件商標は、引用商標1ないし4との関係において、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録された。 また、引用商標5に係る国際登録日は、本件商標に係る国際登録出願の国際登録日に先立つものであるから、本件商標は、引用商標5との関係において、商標法第8条第1項の規定に違反して登録された。 (3)小結 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同法第8条第1項の規定に違反して登録された。 4 商標法第4条第1項第15号について (1)オリンピック・シンボルの著名性について オリンピック・シンボルが、我が国は当然として全世界で極めて著名性の高いものであることは、上記にて詳述したとおりであり、また、申立人は、世界各国でオリンピック競技大会運営等のための資金調達を目的としたマーケティング活動を実施している(甲121、甲123、甲124)。 (2)出所の混同のおそれについて ア 上述のように、オリンピック・シンボルなる標章が著名であることは、特許庁における数多の異議・審判事件からも疑いようのない事実である。 イ 商標法第4条第1項第15号の適用にあたっては、混同を生ずるおそれがある対象が当該他人の使用する商標であるかは全く問題とならず、商品等との関係で周知・著名な当該他人の名称や略称、又はその者に係る各種活動等も当然にその対象に含み、かつ出願商標の採択の必要性、取引の実情等を多角的に十分に勘案した上で同号の該当性を判断するのが、規定中の文言及び立法趣旨からも妥当である。 ウ このような状況において、オリンピック・シンボルが、オリンピック競技大会といったスポーツの興行の企画・運営にとどまらず、これに関連した極めて広範な商品や役務との関係で著名であることは、明らかである。 また、本件商標とオリンピック・シンボルとは、前記のとおり、外観上見誤るおそれがあるとともに、本件商標はOLYMPIC関連の一群の商標と認識され得るものである。 そして、申立人は、各企業とのスポンサーシップ契約を締結しているという実態からすれば、本件商標が付された本件指定商品が実際の商取引に資された場合、これに接した需要者・取引者は、申立人あるいは日本オリンピック委員会と正式なスポンサー契約を締結した、オフィシャルスポンサーの業務に係る商品であるかの如く、役務の出所について混同を生じるおそれがあることは明らかである。 (3)小結 したがって、本件商標は、これが使用された場合、オリンピック競技大会を容易に想起又は連想させ、申立人あるいは日本オリンピック委員会とスポンサー関係にある者の業務に係る商品であると商品の出所について混同を生じさせるおそれがあることから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 5 むすび 以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第6号、同項第7号、同項第11号及び同項第15号並びに同法第8条第1項に違反して登録されたものである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第6号該当性について (1)オリンピック・シンボルの周知性について 申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、オリンピック・シンボルは、単色又は5色の同じ大きさの結び合う5つの輪(オリンピック・リング)からなるものであり、1894年に設立された非営利公共団体である国際オリンピック委員会(申立人)によって、1896年に開始された近代オリンピック競技大会を表象する標章として長年にわたり使用されており、また、当該競技大会に係る文化活動等の関連イベント等においても長年にわたり使用されていることが確認できる。 そして、近代オリンピック競技大会やその関連イベントは、テレビやインターネット、新聞、雑誌等で全世界に向けて発信されており、オリンピック・シンボルは当該競技大会やその関連活動等を指標するものとして広く認識されている。 そうすると、オリンピック・シンボルは、公益に関する事業であって営利を目的としないオリンピック競技大会を表象する著名な標章と認めることができる。 したがって、オリンピック・シンボル(以下「引用標章」という。別掲2ないし4)は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものである。 そして、この状況は、本件商標の国際登録出願時(2019年(平成31年)3月28日)及び登録査定時(令和3年1月14日)においても同様である。 (2)本件商標と引用標章の類否 ア 本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、多少デザインを施した「WorldEdu」の欧文字とその左に図形(以下「図形部分」という。)を配してなるところ、「WorldEdu」の欧文字と図形部分とは、視覚上分離して看取されるものである。 そして、「WorldEdu」の欧文字は、その構成文字に相応して「ワールドエデュ」の称呼が自然に生じるものの、辞書等に載録のない語であって、直ちに何らかの意味合いを想起させるものでもないから、これより特定の観念は生じない。 他方、図形部分は、黒塗りの円形図形を上段に3個、下段に2個を逆台形状に配し、それぞれの円形図形が横、斜め下又は斜め上に位置する円形図形の一部と接するように表された構成からなるところ、これより、特定の事物を表したものと看取させるものではないから、称呼や観念が生じるものではない。 そうすると、欧文字部分と図形部分とは、視覚上分離して看取されるうえに、称呼や観念において何らかの繋がりがあるものではないから、このうち、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ると認められる図形部分をもって、商標の類否を判断することができる。 イ 引用標章 引用標章は、別掲2ないし4のとおり、同じ大きさの輪(円輪郭図形)を上段に3個、下段に2個配置した逆台形状の構成からなるところ、上段の3個及び下段の2個は、それぞれの斜め下又は斜め上に位置するほかの輪と交差しつつ、横方向の輪とは間隔をあけて配されている。そして、5個の輪は、上段左から青、黒、赤、下段左から、黄、緑の色彩を施されている又は単色で表されている。 ウ 本件商標と引用標章の類否 本件商標の図形部分と引用標章とは、全体が逆台形状である点は共通にするものの、本件商標の図形部分を構成する図形が黒塗りの円形図形であるのに対し、引用標章のそれは輪(円輪郭図形)である点、本件商標の図形部分は、円形図形が横、斜め下又は斜め上に位置する図形と一部接しているのに対し、引用標章は輪(円輪郭図形)が斜め下又は斜め上に位置するほかの輪と交差しつつ、横方向の輪とは間隔をあけて配置されている点、のように両者を構成する図形及びその配置の仕方が大きく異なるものであるから、これらが外観上の顕著な差異として看者に強い印象を与えるというべきである。 そうすると、本件商標の図形部分と引用標章とは、外観において、見誤るおそれはなく判然と区別することができる。 加えて、本件商標の図形以外の部分が、引用標章と類似するとみるべき理由がないことは明らかである。 したがって、本件商標は、引用標章と紛らわしいものではなく、類似しない商標と判断するのが相当である。 (3)小括 以上のとおり、引用標章が、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものであるとしても、本件商標は、引用標章とは類似しないものであるから、商標法第4条第1項第6号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、上記1(2)のとおり、引用標章とは類似しないものであるから、本件商標に接した者が引用標章を連想・想起することはなく、引用標章と見誤るおそれはないというべきである。 そうすると、本件商標は、引用標章に化体した信用、顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る目的で出願、登録を受けたものではないから、公正な取引秩序を乱し商道徳に反するものではない。 また、本件商標は、引用標章と類似しないものである以上、オリンピックに関連する商標にはあたらず、本件商標権者がこれを採択し権利化しても、申立人が主張するような国際信義に反するものでもない。 以上のとおり、本件商標は、引用標章に化体した信用にただ乗りしたとか、あるいはオリンピック競技大会との関連性を想起させるべく採択されたものではないから、社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すものではない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第11号又は同条第8条第1項該当性について (1)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標と引用商標1ないし4の外観について 引用商標1ないし4は、別掲2及び3の構成からなるところ、色彩の相違を除けば、引用標章(別掲2ないし4)と同一の構成からなるものである。 そうすると、本件商標の図形部分と引用商標1ないし4は、上記1(2)と同様に、外観において判然と区別することができる。なお、本件商標と引用商標1ないし4の全体の外観を比較しても、欧文字の有無により、両者は相紛れるおそれはない。 イ 本件商標と引用商標1ないし4の称呼及び観念について 本件商標は、上記1(2)アのとおり、「ワールドエデュ」の称呼が生じるものの、欧文字及び図形部分から特定の観念は生じないものであるから、全体としても特定の観念は生じない。 そうすると、本件商標と引用商標1ないし4は、引用商標1ないし4の称呼及び観念の有無にかかわらず、称呼において区別することができ、また、観念においては、区別することができる又は比較することができないものであるから、いずれにしても両者は称呼及び観念において相紛れるおそれはない。 ウ 本件商標と引用商標1ないし4の類否について 以上からすれば、本件商標と引用商標1ないし4は、外観、称呼及び競念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者は類似しないと判断するのが相当である。 工 まとめ したがって、本件商標は、引用商標1ないし4と類似しない商標であるから、両者の指定役務が同一又は類似であるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (2)商標法第8条第1項該当性について 商標法第68条の9第1項は、「日本国を指定する領域指定は、議定書第3条(4)に規定する国際登録の日(以下「国際登録の日」という。)にされた商標登録出願とみなす。ただし、事後指定の場合は、議定書第3条の3(2)の規定により国際登録に係る事後指定が議定書第2条(1)に規定する国際事務局の登録簿(以下「国際登録簿」という。)に記録された日(以下「事後指定の日」という。)にされた商標登録出願とみなす。」と規定されている。 そして、本件商標に係る国際登録の日は、2019年(平成31年)3月28日であり、一方、引用商標5に係る国際登録の日は2002年(平成14年)9月24日とするものの、日本国を指定する領域指定は事後指定によるものであって、当該事後指定の日は、2019年(令和元年)6月26日である。 そこで、上記商標法第68条の9第1項に照らしてみると、本件商標は、2019年(平成31年)3月28日の商標登録出願とみなされるのに対し、引用商標5は、2019年(令和元年)6月26日の商標登録出願とみなされるため、本件商標が引用商標5よりも先に商標登録出願したものとみなされることとなる。 したがって、本件商標は、商標法第8条第1項に該当しない。 (3)小括 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について 引用標章は、上記1(1)のとおり、本件商標の国際登録出願時及び登録査定時において、著名な標章であるとしても、本件商標は、上記1(2)のとおり、引用標章とは類似せず、別異の商標というべきものであるから、両者の類似性の程度は低いものである。 そして、申立人が各企業とスポンサーシップ契約を締結していることを考慮しても、本件商標と引用標章とを殊更関連付けてみるべき事情は見あたらない。 以上を踏まえて、本件商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、その商標権者がこれをその指定役務に使用しても、取引者、需要者をして引用標章を連想又は想起することはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者(日本オリンピック委員会とスポンサー契約をしたオフィシャルスポンサー)の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 申立人の主張 (1)申立人は、本件商標と引用標章又は引用商標が類似することを前提に、申立ての理由に該当する旨主張する。 しかしながら、本件商標と引用標章又は引用商標が類似しないことは、上記1及び3のとおりであるから、引用標章及び引用商標が、著名な標章(商標)であることやマーケティング活動に使用されていることを考慮しても、それが両者の類否の判断に影響を及ぼすことはなく、本件商標は申立ての理由に該当しないというべきである。 (2)申立人は、中国と欧州において、本件商標の登録を認めないと判断がなされており、国際協調等の観点から、我が国でも他国での判断を十分に尊重されるきである旨主張する。 しかしながら、本件商標が、申立ての理由に該当するか否かは我が国の商標法に照らして判断すべきことであるから、海外における各国独自の法に基づく判断結果に何ら左右されることはないというべきである。 (3)したがって、請求人のいずれの主張も採用することはできない。 6 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第6号、同項第7号、同項第11号及び同項第15号並びに同法第8条第1項のいずれにも該当するものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に違反して登録されたというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標![]() 別掲2 引用商標1、引用商標3、引用標章(色彩はいずれも原本参照) ![]() 別掲3 引用商標2、引用商標4、引用標章 ![]() 別掲4 引用商標5、引用標章(色彩はいずれも原本参照) ![]() |
異議決定日 | 2022-09-01 |
審決分類 |
T
1
651・
21-
Y
(W41)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大森 友子 |
特許庁審判官 |
清川 恵子 岩崎 安子 |
登録日 | 2019-03-28 |
権利者 | Dajin Pei World United Group Pty. Ltd. |
商標の称呼 | ワールドエデュー、ワールドエデュ、ワールド、エデュー、エデュ、イイデイユウ |
代理人 | 岡田 淳 |
代理人 | 田中 尚文 |
代理人 | 渡部 彩 |