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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない W45
管理番号 1394067 
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-11 
確定日 2023-01-04 
事件の表示 商願2020− 62367拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 手続の経緯
本願は,令和2年5月1日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年4月20日付け:拒絶理由通知書
令和3年6月4日 :意見書の提出
令和3年8月23日付け:拒絶査定
令和3年10月11日 :審判請求書の提出

2 本願商標
本願商標は,「こどものみかた」の文字を標準文字で表してなり,第45類「養育費請求、生活保護、ドメスティック・バイオレンスその他に関する法律相談,民法、民事執行法、生活保護法、配偶者からの暴力の防止及び被害の保護等に関する法律その他の法律に関する助言,生活保護開始申請、生活保護変更申請その他の行政手続に関する助言又は代理,養育費請求調停その他の調停,訴訟事件その他に関する法律事務」を指定役務として,登録出願されたものである。

3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,要旨以下のとおり,認定,判断し,本願を拒絶したものである。
本願商標は「こどものみかた」の文字を標準文字で表してなるところ,子どもが抱える問題の解決のための相談窓口の肩書や名称,及び法律事務所の理念等を表す際に,本願商標に通じる「子どもの味方」等の文字が,使用されている実情がある。
そうすると,本願商標をその指定役務に使用しても,これに接する需要者は,出願人に係る役務であることを理解するというよりも,単に役務の提供理念(子どもの味方をすること。)を端的に表した語句として認識するにとどまる。
したがって,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものというのが相当であるから,商標法第3条第1項第6号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号の趣旨について
商標法は,「商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もつて産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法第1条),商標の本質は,自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり,この自他商品の識別標識としての機能から,出所表示機能,品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。同法第3条第1項第6号が,「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは,同項第1号ないし第5号に例示されるような,識別力のない商標は,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,自他商品の識別力を欠くために,商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10270号,平成22年1月27日判決)。
そうすると,商標法第3条第1項第1号から同項第5号までにおいて例示的に列挙されたものではなくても,本件審決時において,本願商標がその指定役務に使用された場合に,将来を含め,その需要者において,役務の宣伝活動を行う際に一般的に使用される標章と認識されるものである等,識別力を欠き,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないと判断されるときは,本願商標は同項第6号に該当するものと解するのが相当である。
(2)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は,「こどものみかた」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中,「こども」の文字は,「幼いもの。わらわ。わらべ。小児。」等の意味を有する「子供」の語を,また,「みかた」の文字は,「(敵方・相手方に対して)自分の属する方。自分の方の仲間。」「仲間として力をかすこと。助勢。」等の意味を有する「味方」の語を,それぞれ平仮名表記したものと容易に理解できるものである。
そして,原審で挙げた証左に加え,当審における職権調査によれば,本願の指定役務を取り扱う業界においては,子供やその保護者等を対象として,子供が抱える問題に関する相談窓口(以下「当該相談窓口」という。)が,日本弁護士連合会,地方自治体等によって,全国各地で設置されており,当該相談窓口の広告においては,幼い子供でも読めるように漢字には振り仮名を併記しているものも少なくなく,漢字でなく敢えて平仮名を用いて表しているものもある(別掲1)。さらに,当該相談窓口の広告や当該相談窓口を紹介するウェブサイトにおいては,本願商標に通じる「子どもの味方」の文字が,当該相談窓口の名称や,当該相談窓口やこれを開催する組織の理念等を表す際に使用されているものもある(別掲2)。
そうすると,本願商標を,「養育費請求、生活保護、ドメスティック・バイオレンスその他に関する法律相談」を始めとする養育費請求や生活保護に関する役務であって,子供を保護・養育することに関連する役務といえる本願の指定役務に使用したときには,本願商標の構成文字がすべて平仮名で記載されているとしても,これに接する取引者,需要者は,本願の指定役務との関係から,容易に「子供の味方」を表すものと看取し,当該役務が「子供の養育等に関する問題に対処する役務」であるという役務の説明や特性,あるいは「子どもの味方となる」程の役務の提供理念を表したものと理解するにとどまり,自他役務の識別標識としては認識しないものと判断するのが相当であって,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるというべきである。
したがって,商標法第3条第1項第6号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は,「本願商標は,「みかた」という平仮名を用いる点で特徴的であって,この特徴によって「みかた」が多義的に認識され易くなる。」旨を主張している。
しかしながら,我が国においては平仮名表記することは特殊なこととはいえないことに加え,前記(2)で挙げた事実(別掲1,別掲2)があって,本願の指定役務には,ドメスティック・バイオレンス等から子供を保護する等,その保護の対象が子供であることからすれば,本願商標をその指定役務について使用するときは,容易に「子供の味方」の意味合いを認識するというのが自然である。加えて,本願商標は「子供の味方」であることを訴求するため,むしろ,平仮名による平易な記載によって,子供の味方であるという意味合いをより強く理解させるといえる。
イ 請求人は,「「こどものみかた」又は「子どものみかた」という商標に関して,本願商標の指定役務についての使用状況を見れば,専ら役務の提供理念を示すものとして一般的に使用されているというような実情は存在しない」旨を主張している。
しかしながら,仮に「こどものみかた」又は「子どものみかた」という文字が役務の提供理念を示すものとして一般的に使用されている実情がないとしても,本願商標を,その指定役務に使用したときには,これに接する取引者,需要者は,「子供の味方」を表すものと容易に看取し,当該役務が「子供の養育等に関する問題に対処する役務」であるという役務の説明や特性,あるいは「子どもの味方となる」程の役務の提供理念を表したものと理解するにとどまるものであることは,前記(2)のとおりである。なお,「子どもの味方」の文字が,当該相談窓口やこれを開催する組織の理念等を表す際に使用されている実情があること(別掲2)は,たとえ本願商標が平仮名で表されているとしても,自他役務の識別力の評価において参酌すべき取引の実情といえる。
ウ 請求人は,「請求人が既に1年以上の期間に渡って,養育費請求,養育費請求調停等の役務について「子どものみかた」という商標を自他役務識別標識として使用し続け,その結果,原審における意見書を提出した時点で100件以上の案件を受任済みであること,審判請求人の管理に係るウェブサイト上で「子どものみかた」という商標が現に自他役務識別機能を果たしていると客観的に明らかであること(甲4)などからすれば,本願商標は自他役務識別機能を果たし得るものである」旨を主張している。
しかしながら,請求人が,本願の指定役務に含まれる役務について,本願商標を1年以上にわたって,実際に使用しており,100件以上の案件を受任済みであるとしても,需要者が当該「子どものみかた」の文字を,自他役務の識別標識として把握,理解していると認めるに足る客観的な事実は見いだせず,本願商標が,自他役務の出所識別標識としての機能を果たしているものであると認めることはできない。
そして,上記主張が,本願商標は,請求人がその指定役務について使用した結果,自他役務の識別力を獲得し,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っている旨の主張であるとしても,本願商標について,我が国における周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,本願商標に係る役務の売上高,市場シェア並びに広告宣伝の方法及び回数など取引状況を具体的に示す証拠は見いだすことはできないから,我が国における客観的な使用事実に基づいて,本願商標の使用状況を把握することはできない。そうすると,本願商標は,その指定役務について使用をされた結果,自他役務の識別力を獲得し,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っていると認めることもできないし,その他,当審において,職権で調査するも,本願商標が,その指定役務を取り扱う業界において,自他役務の出所識別標識としての機能を発揮し得るものであると認めるに足りる事情を見いだすこともできなかった。
エ 請求人は,「こどものみかた」又は「子どものみかた」の文字が,小児歯科・子育て相談用の書籍の題号として使用している例があることを挙げ,「これらの使用例が子どもに関連する商品・役務について,「こどものみかた」又は「子どものみかた」という商標が自他商品・自他役務の識別標識としての機能を果たし得ることを示すものである」旨を主張するとともに,「社会常識に属する部類の事柄であるが,書籍の著作者等において,需要者の誘引のために,識別力を生じ得る文字を題号として選択可能であるにもかかわらず,識別力が生じ得ない文字を敢えて題号として採用するはずがない。現に,小児歯科・子育て相談用の書籍の題号としての使用例(例えば,甲3の1)をみれば,「こどものみかた」又は「子どものみかた」という文字に識別力が生じていることは明らかである」旨述べている。
しかしながら,これらの主張は請求人独自の主張であって,裏付けとなる証拠の提出はないし,書籍の題号として使用されていることをもって,当該題号が,本願の指定役務について,自他役務の識別標識としての機能を果たし得ることを示すとはいい難い。そのほか,請求人の主張及び同人が提出する全証拠を総合してみても,「こどものみかた」又は「子どものみかた」の文字が,本願の指定役務の分野において,自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものであると認めるに足りる事情も見いだせない。
オ 請求人は,本願商標と同一の商標及び「こどもの味方」の文字から成る商標が登録されている(甲5,甲6)ことを挙げ,本願商標も登録されるべき旨を主張している。
しかしながら,登録出願に係る商標がその指定役務との関係において,自他役務の識別標識として機能し得るか否かは,当該商標の構成態様と指定役務との関係や取引の実情をも踏まえて個別具体的に判断されるべきものであるところ,請求人の示す登録例(甲5,甲6)と本願商標とは,その指定商品及び指定役務が異なり,事案を異にするものであるし,本願商標は,前記(2)のとおり,その指定役務との関係において,自他役務の識別力を欠くものというのが相当であるから,本願商標と同一の商標の登録例があるからといってその判断が左右されることはない。
カ したがって,請求人の主張はいずれも採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲
別掲1 子どもが抱える問題に関する相談窓口の例
1 日本弁護士連合会のウェブサイトにおける「弁護士会の子どもの人権に関する相談窓口一覧」のページには,「お父さんやお母さんにたたかれる,友達に無視されるなど,つらい思いや苦しい思いをしていたら,一人で抱え込まないで相談してください。」の記載があり,相談先として,日本全国の弁護士会の連絡先等が記載されている。
(https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/search/other/child.html)
2 広島弁護士会のウェブサイトにおける「弁護士に相談する」のページには,「こどもでんわそうだん こまったときは,ひとりでなやまないでそうだんしてみよう!」の見出しの下,受付時間や相談料金等の当該「こどもでんわそうだん」の概要が記載されている。当該ページにおける漢字には,例えば「相談できる日(そうだんできるひ)」,「両親(りょうしん)が暴力(ぼうりょく)を振(ふ)るうんだけど,どうしたらいいですか?」のように,振り仮名として平仮名が記載されている。
(https://www.hiroben.or.jp/soudan/kodomo/)
3 大阪弁護士会のウェブサイトにおける「子ども何でも相談」のページには,「これらのことについて,家族や学校の先生に相談しにくいとき,あるいは,相談したけどどうしたらいいのかと悩んでいるときは,一人で悩まずに弁護士に相談してみて下さい。」の記載とともに,相談日時や電話番号等の当該「子ども何でも相談」の概要や相談事例の紹介が記載されている。当該ページにおける漢字には,振り仮名として平仮名が記載されている。
(https://www.osakaben.or.jp/01-aboutus/committee/room/kodomo110/index.php)
4 岡山弁護士会のウェブサイトにおける「子どもの困りごとの相談」のページには,「岡山弁護士会では,いじめ・体罰・虐待などで困っている子どものために,弁護士が電話や面談による相談を行っています。相談だけでなく子どもの味方として困りごとの解決を頼むこともできます。」の記載とともに,「相談できる方」として「子どもの方や,その保護者や関係者で,子どもの方の困りごとがある方」の記載等の当該「子どもの困りごとの相談」の概要が記載されている。当該ページにおける漢字には,振り仮名として平仮名が記載されている。
(https://www.okaben.or.jp/active/child.html)
5 板橋区のウェブサイトにおける「子どもなんでも相談」のページには,「子育ての不安や悩み,困っていることや,わからないことなど,どうぞお気軽にご相談ください。子育てに関することであれば,なんでもご相談いただけます。相談内容については秘密を守ります。」の記載とともに,「相談対象」として「子ども(0歳から18歳未満)」「子育て中の父母または養育者」「子育てに関係している方」の記載等,当該「子どもなんでも相談」の概要の記載がある。
(https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kosodate/soudan/kosodate/1004691.html)

別掲2 「子どもの味方」の文字が,子供が抱える問題に関する相談窓口の広告や当該相談窓口を紹介するウェブサイトにおいて使用されている例(下線は合議体による。)
1 倉敷市のウェブサイトにおいて,「相談窓口(子ども専用/子どもの味方弁護士相談)」の見出しの下,「子どもの味方弁護士相談」を設置している岡山弁護士会の連絡先や受付時間等が掲載されている。また,当該ページにおけるポスター様の部分には,「子どもの味方」等の漢字に振り仮名として平仮名が記載されている。
(https://www.city.kurashiki.okayama.jp/30215.htm)
2 一般社団法人 不登校支援センターのウェブサイト
(1)2018年2月28日付けの「葛藤を抱いている子どもとの関わり方2」(審決注:「2」は丸付き数字。)というタイトルの記事において,「子どもの味方になってあげる事が何よりの薬」の見出しの下,「一番子どものそばにいる方が,一番の子どもの味方になってあげる事が何よりの薬です。」の記載がある。
(https://www.futoukou119.or.jp/blog/20180228/8493)
(2)2019年9月2日付けの「不登校支援における適切な親のスタンスとは?」というタイトルの記事において,「不登校支援における親としての適切なスタンスとは?」の見出しの下,「結論からお伝えすると,それは「子どもの味方になってあげる」というスタンスです。・・・ですので,可能な限り親御さんには「子どもの側」にいてあげる=「子どもの味方になってあげる」というスタンスでいていただければと思います。」の記載がある。
(https://www.futoukou119.or.jp/blog/20190902/14713)
3 目黒区のウェブサイトにおける「子ども相談室「めぐろ はあと ねっと」相談事例」のページには,「(1)「子どもがいじめられているのに,学校は何の対応もしない」保護者」の項に,「相談員からのワンポイント」の見出しの下,「1.親は子どもの味方であることを,子どもにわかるように伝えること。」の記載がある。
(https://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/kosodate/kodomokyoshitsu/heart_net/jirei.html)
4 miraxsシッターのウェブサイトにおける「愛情ある言葉と笑顔がカギ!自己肯定感が高い子どもの育て方」というタイトルの記事には,「ポイント1:どんなときでも味方であることを伝える」の見出しの下,「子どもがうまくいかないときでも,いつも子どもの味方であることを伝えましょう。」の記載がある。
(https://sitter.miraxs.co.jp/article/200016)
5 東京弁護士会のウェブサイトにおける「子どもの人権と少年法に関する特別委員会」のページには,「子どもの人権110番(電話相談,面接相談)」の見出しの下,「電話相談」の項に「子どもの人権110番・・・「さぁ,子どもの味方,110番」」の記載がある。
(https://www.toben.or.jp/know/iinkai/children/jinkenkyusai/)
6 弁護士法人 岡山香川架け橋法律事務所のウェブサイトには,「架け橋弁護士の想い」というタイトルの記事において,「架け橋法律事務所は本当の意味での「子どもの味方」でありたい,と考えています。」の記載がある。
(https://kakehashi-kodomo-law.com/thought)

(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-10-24 
結審通知日 2022-10-28 
審決日 2022-11-15 
出願番号 2020062367 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (W45)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 板谷 玲子
須田 亮一
商標の称呼 コドモノミカタ 
代理人 岩崎 浩平 

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