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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1393373 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-02-22 
確定日 2022-12-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第6501186号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6501186号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6501186号商標(以下「本件商標」という。)は、「Smart Cloud Controller」の欧文字を横書きしてなり、令和3年10月15日に登録出願、第9類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年12月14日に登録査定され、同4年1月18日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録第5267543号商標(以下「引用商標」という。)は、「SmartCloud」の欧文字及び「スマートクラウド」の片仮名を二段に横書きしてなり、平成21年2月24日に登録出願、第9類、第35類、第37類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年9月18日に設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として第1号証ないし第5号証及び刊行物1ないし463を提出した。
なお、上記第1号証ないし第5号証については、甲第1号証ないし甲第5号証と、上記刊行物1ないし463については、甲第6号証の1ないし463と読み替える。
1 本件商標について
本件商標の構成中、「Controller」の文字は、「制御装置」等を意味する語として、一般的な辞書に掲載されており、かつ電気通信機械器具、電子応用機械器具の分野では、該意味の商品やその品質、機能を有する商品の表示として一般に使用されている(甲3〜甲5)。
そうすると、本件商標を構成する「Smart Cloud Controller」の文字を、その指定商品又は指定役務に使用した場合、当該商品又は役務が、「制御装置、制御機能に関する商品」又は「制御装置、制御機能に関する役務」であることを需要者に認識させるにすぎず、「Controller」の文字部分は、商品又は役務の内容を直接的かつ具体的に表示したものに該当するから、自他商品等識別力を具備しない若しくは極めて弱いものである。
さらに、第9類には「コンピューター用記憶装置及びその制御装置」や「制御装置に関する電子計算機用プログラム」等といった商品が含まれ、第42類には、「制御装置に関する電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守、制御装置に関する電子計算機用プログラムの提供」といった役務が含まれるため、これらの商品・役務に本件商標を使用した場合、本件商標の要部は「Smart Cloud」であると認識されるのが相当である。
よって、本件商標を構成する「Controller」の文字部分は、自他商品等識別力を具備しない若しくは極めて弱いものであるから、本件商標は、「Smart Cloud」と「Controller」に分離考察され、「Smart Cloud」の文字部分が強く支配的な印象を与えるものである。
そうすると、本件商標は、「Smart Cloud」のみを抽出して類否判断を行うべきであるから、引用商標である「SmartCloud/スマートクラウド」とは、称呼及び観念が共通することは明らかであり、本件商標と引用商標は類似する商標である。
また、引用商標の権利者である申立人は、本件商標の出願日以前から、引用商標をインターネット接続サービス、大容量メールサービス、仮想サーバーサービス等、幅広いクラウドサービスに使用しており(甲6の1〜463)、長年の使用の結果、引用商標は、需要者に広く認識されている。
例えば、甲第6号証の17、19、20、47、57にある記載から、申立人が、「SmartCloud/スマートクラウド」、「SmartCloud」、「スマートクラウド」の文字を、引用商標の権利者である申立人の提供するクラウドサービス等に使用していること、及び、多くの刊行物等に掲載され、「SmartCloud/スマートクラウド」、「SmartCloud」、「スマートクラウド」の文字が引用商標の権利者である申立人の提供する役務を表示するものとして需要者に広く認識されていることが明らかである。
さらに、申立人は、「SmartCloud」シリーズで多くのサービスを展開し、「SmartCloud○○」といった商標も多数使用しており(甲6の25、28、34、40、45、49、323、361)、前述のとおり、「SmartCloud/スマートクラウド」、「SmartCloud」、「スマートクラウド」は、申立人の商標として広く需要者に認識されていることから、共通する商品、サービス分野等において、本件商標の商標権者やその使用許諾を受けた者が「SmartCloud○○」からなる商標を使用した場合には、引用商標の権利者である申立人のサービスの出所と誤認を生じるおそれが考えられる。
そうすると、申立人の登録商標が需要者に広く認識され、申立人が「SmartCloud」シリーズで多くのサービス等を提供していることから、共通する取引分野において、本件商標の商標権者やその使用許諾を受けた者が、「Smart Cloud○○」からなる商標を使用することは、申立人のサービス等と出所を混同するおそれがあるといわざるを得ず、需要者の利益が害されることが明らかであり、需要者の保護の観点からも認められるべきものではない。
2 指定商品及び指定役務について
本件商標は、その指定商品及び指定役務のうち、少なくとも、第9類「電子応用機械器具及びその部品,電子計算機用プログラム,携帯情報端末,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究」において、引用商標の指定商品又は役務と同一又は類似する。
よって、本件商標と引用商標は、第9類及び第42類において、互いに抵触するものである。
類否判断
以上から、本件商標と引用商標は、指定商品及び指定役務が互いに抵触するものであり、かつ本件商標は、「Smart Cloud」のみを抽出して類否判断を行う必要があるから、引用商標である「SmartCloud/スマートクラウド」とは、称呼及び観念が共通することは明らかであり、本件商標と引用商標は類似する商標である。
さらに、申立人の登録商標が需要者に広く認識され、かつ申立人が「SmartCloud」シリーズで多くのサービス等を提供していることから、共通する取引分野において「Smart Cloud○○」からなる商標を使用することは、引用商標の権利者である申立人のサービス等と出所を混同するおそれがあり、需要者の利益が害されることは明らかである。
4 むすび
したがって、本件商標と引用商標は類似する商標であり、またその指定商品及び指定役務も同一又は類似するものであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人は、引用商標及び「SmartCloud」の文字の周知性を根拠として、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張しているところがあるので、まずこの点について判断する。
申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下の事実のとおりである。
ア 申立人は、遅くとも2010年7月に、「SmartCloud」(以下「申立人商標」という。)と称するクラウドコンピューティングサービス(以下「申立人役務」という。)の提供を開始した(甲6の2、20ほか)。
イ 申立人役務には、「SmartCloud メール」(甲6の34、49ほか)、「SmartCloud Desktop(デスクトップ)」(甲6の21、28、34、49ほか)、「SmartCloud Resource Pool」(甲6の21、34、49ほか)、「SmartCloud Data Center」(甲6の26、34ほか)、「SmartCloud Phone」(甲6の61ほか)、「SmartCloud DevaaS2.0」(甲6の62、323ほか)、「SmartCloud イメージベースAR」(甲6の89ほか)、「SmartCloud Duo」(甲6の365ほか)、「SmartCloud IAM ソリューション」(甲6の380ほか)等、シリーズ化した役務も存在し、これらの役務名には共通して、申立人商標の構成文字である「SmartCloud」の文字が冒頭に付されている。
ウ 申立人商標を付した申立人役務(シリーズ化した役務を含む。以下同じ。)は、申立人役務の提供開始の頃から、少なくとも本件商標の登録査定時までの間、各種新聞(甲6の20、25、29〜32、36、37、46、57、61ほか)、雑誌(甲6の2〜6、10、13〜19、21〜23、26、33〜35、43〜45、47〜53ほか)、ウェブサイト(甲6の179〜214、216〜251ほか)において紹介記事が掲載され、また、申立人による雑誌広告(甲6の7〜9、11、12、457、459〜463ほか)や、申立人ウェブサイトにおける広告や記事(甲6の149〜178ほか)も掲載された。
なお、これらの新聞、雑誌及びウェブサイトの購読者数や閲覧者数は明らかでない。
エ 申立人商標を付した申立人役務に関する売上高を示す証左は見いだせない。
また、申立人商標を付した申立人役務について、2015年度において、クラウドサービスの一分野での市場規模が第6位であったことをうかがわせる雑誌記事(甲6の13)は見受けられるものの、当該内容を具体的に裏付ける証拠はなく、申立人役務が継続して高い市場シェアを有していることを証する証拠の提出もない。
その他、申立人商標を付した申立人役務の取引実績等、取引状況を具体的に示す証左は見いだせない。
オ 申立人役務について、申立人商標である「SmartCloud」の文字に、「スマートクラウド」の文字を併記して紹介等する記事や広告は見受けられるものの、「SmartCloud」の欧文字と「スマートクラウド」の片仮名を上下二段に表してなる、引用商標と同一の構成からなる標章が用いられている事実は確認できない。
(2)上記(1)のとおり、申立人は、2010年7月頃から、申立人商標を用いて申立人役務を提供し、当該申立人役務が新聞、雑誌及びウェブサイトにおいて紹介され、申立人により広告されたことが認められるものの、申立人役務の提供に係る具体的な営業実績を裏付ける証左は見いだせない。加えて、申立人が使用する商標として、引用商標と同一の構成からなる標章が用いられた事実も確認できない。
そうすると、申立人商標及び引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも、申立人の業務に係る役務(クラウドコンピューティングサービス)を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり「Smart Cloud Controller」の欧文字を横書きしてなるところ、構成中の「Smart」の文字が「機敏な」等の、「Cloud」の文字が「雲、雲状のもの」等の、「Controller」の文字が「制御装置」等の意味をそれぞれ有する語(いずれも株式会社小学館 ランダムハウス英和大辞典第2版)であるとしても、これらを組み合わせた「Smart Cloud Controller」の文字は、全体として辞書等に載録されている語ではなく、一種の造語というべきものである。
また、本件商標は、構成中の「Smart」及び「Cloud」の文字が、申立人商標及び引用商標の欧文字部分とつづりを同じくするものであるものの、上記1のとおり、申立人商標及び引用商標の周知性は認められないものである。
さらに、本件商標の構成は、「Smart」、「Cloud」及び「Controller」の各文字が、同書、同大にまとまりよく一体に表され、いずれかの文字部分が殊更に看者の注意をひくというような事情も見いだせない。
そうすると、たとえ構成中の「Controller」の文字が、上記のとおり「制御装置」の意味を有する語であるとしても、本件商標から殊更に「Smart Cloud」の文字のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見いだせず、当該「Smart Cloud」の文字部分が要部として抽出されるとはいえない。
してみれば、本件商標は、その構成文字全体をもって「スマートクラウドコントローラー」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。
(2)引用商標
引用商標は、上記第2のとおり、「SmartCloud」の欧文字及び「スマートクラウド」の片仮名を二段に横書きしてなるところ、下段の「スマートクラウド」の片仮名は、上段の「SmartCloud」の欧文字の読みを表したものと容易に理解されるものである。
そして、構成中の「SmartCloud」の文字は、「Smart」の文字が「機敏な」等の、「Cloud」の文字が「雲、雲状のもの」等の意味をそれぞれ有する語(いずれも株式会社小学館 ランダムハウス英和大辞典第2版)であるとしても、これらを一連に表した「SmartCloud」の文字が、全体として辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって認識されている事情も見いだせないことから、一種の造語として認識されるものとみるのが相当である。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「スマートクラウド」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、片仮名の有無を含む全体の文字構成や文字数が異なることから、両者は明らかに区別し得る。
また、本件商標から生じる「スマートクラウドコントローラー」の称呼と、引用商標から生じる「スマートクラウド」の称呼を比較すると、両者は全体の音構成及び音数が異なり、明確に聴別できる。
そして、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じない造語であることから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は非類似の商標というのが相当である。
(4)小括
上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品及び指定役務と、引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではないから、その登録は、同条第1項の規定に違反してなされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-12-16 
出願番号 2021128448 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W0942)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小林 裕子
鈴木 雅也
登録日 2022-01-18 
登録番号 6501186 
権利者 日本ビジネスシステムズ株式会社
商標の称呼 スマートクラウドコントローラー、スマートクラウド、スマート、クラウドコントローラー 
代理人 眞島 竜一郎 
代理人 西澤 和純 
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