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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1393372 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-02-10 
確定日 2022-12-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第6475058号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6475058号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6475058号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、令和3年4月30日に登録出願、第25類「フットボール靴,登山靴,靴及び運動用特殊靴,帽子,新生児用被服,メリヤス下着、メリヤス靴下,手袋(被服),ネクタイ,ガードル,被服」を指定商品として、同年10月22日に登録査定され、同年11月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、本件商標は商標法第8条第1項に該当するとして引用する国際登録第1494385号商標(以下「引用商標1」という)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、2019年(令和元年)7月31日に国際商標登録出願、第18類、第25類及び第28類に属する別掲3のとおりの商品を指定商品として、令和4年2月25日に日本国において設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
2 申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は、「KING」の欧文字を横書きした構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)であり、引用商標2を使用したサッカー用品及びゴルフ用品(以下「申立人商品」という。)は、本件商標の指定商品の分野の取引者、需要者間において広く認識されている商標と主張するものである。
なお、上記の引用商標1と引用商標2をまとめていうときは、以下「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第8条第1項、同法第4条第1項第10号及び第15号に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第48号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標を商標法第8条第1項により取り消すべき理由
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、太文字で斜体に書された欧文字「KING」と「TRAIL」の間に空白を備え、当該文字部分の上に、山を想起させる三角形の図形を配置した態様からなる。
また、本件商標の指定商品(以下「本件指定商品」という。)は、第25類の「フットボール靴,登山靴,靴及び運動用特殊靴,帽子,新生児用被服,メリヤス下着、メリヤス靴下,手袋(被服),ネクタイ,ガードル,被服」である(甲2)。
「KING」、「TRAIL」がそれぞれ、「王、国王、君主」、「足跡、(登山・ハイキングなどで)行程、進路、コース、山道、小道」を意味する我が国の一般消費者にとって馴染みある英単語の一つであることから(甲6〜甲8)、本件商標の文字部分は、「KING」と「TRAIL」の二つの英単語を配したものと容易に看取される。
そして、昨今のランニングブームにより、「トレイルランニング(trailrunning)」(甲42)が流行しており(甲43)、アウトドア・登山用品やスポーツ用品を扱う店舗においては、「トレイルランニング」用のシューズやウェア等が多数販売されている実情が存在する(甲44〜甲46)から、本件商標構成中の「TRAIL」の文字は、本件指定商品が「トレイルランニング又は道なき道を走破する用に適した商品」であることを指称する語と認識される。
一方、「KING TRAIL」の文字は、辞書等に掲載された語ではなく(甲6、甲7)、「TRAIL」は、本件指定商品との関係において、商品の品質、用途(トレイルランニング又は道なき道を走破する用)を表示する文字に該当し、「KING」との観念上の明確なつながりもないことから、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものと認められない。
したがって、本件商標の要部は、「KING」の欧文字部分といえる。
(2)引用商標1
引用商標1は、別掲2のとおり、左右を切り欠いた横長の楕円(以下「引用図形部分」という場合がある。)の中に、ゴシック体で欧文字「KING」が書された態様からなる。また、引用商標1の指定商品には、第25類「Clothing;footwear;boot uppers;footwear uppers;inner soles;non−slipping devices for boots and shoes;soles for footwear,studs for football boots;headgear.」(和訳:被服,履物及び運動用特殊靴,靴用甲革,履物用甲革,靴の中敷き,靴用滑り止め具,履物の底及び運動用特殊靴の底,フットボール靴用スタッド,帽子)が含まれている(甲3)。
引用図形部分は、それ自体、さほど特徴のある図形ではなく、中に描かれた欧文字「KING」の外郭線(フレーム)とも看取されることから、引用商標1を目にした本件指定商品に係る取引者、需要者であれば、欧文字部分に着目して、引用商標1を認識する。
(3)申立人と引用商標
申立人は、スポーツシューズ、スポーツウェア、被服、バッグ等を世界的に製造販売している多国籍企業である(甲9〜甲12)。
我が国においては、1972年(昭和47年)から、日本国内における代理店としてコサ・リーベルマン株式会社が、申立人の業務に係る商品のうち、靴、バッグ、アクセサリーについて事業を展開し、2003年(平成15年)5月1日に、申立人の日本法人であるプーマジャパンが同事業を承継した。そして、ウェアについては、1972年(昭和47年)から国内のライセンシーであるヒットユニオン株式会社が製造・販売していたが、2006年(平成18年)1月に、日本において引用商標を付したアパレル関連商品を生産する、申立人の日本法人であるプーマ・アパレル・ジャパンが設立され、同社がヒットユニオン株式会社から営業権を譲り受けた。2010年(平成22年)に、プーマ・アパレル・ジャパンとプーマジャパンは合併し、現在のプーマジャパンとなった(甲9〜甲12)。
プーマジャパンの業務に係るスポーツ用品について、「スポーツ産業白書(2003年〜2018年版)」(甲10の1〜6)によると、スポーツ用品メーカー(スポーツ関連売上高10億円以上)として、「プーマジャパン(株)」は2018年(平成30年)の国内での企業別順位は9位、売上高は約393.2億円(予測)である。
また、プーマジャパンの業務に係るスポーツシューズについて、「スポーツシューズビジネス(2003年〜2018年版)」(甲9の1〜5)によると、国内での出荷額は毎年170億円を超え、5%を超える市場占有率を有している。
さらに、「スポーツアパレル市場動向調査(2015年〜2018年版)」(甲11の1〜4)によると、スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキングでは、2018年(平成30年)の出荷金額(見込)は、約231.6億円(市場占有率4.2%)となっている。
このように、申立人は、1958年(昭和33年)から60年以上にわたり、各種スポーツ用品・アパレル商品を世界各国で販売しており、とりわけ、サッカーシューズにおいて、1966年(昭和41年)から、プーマサッカースパイクのモデル名の一つとして「KING」を長年にわたり使用している。
プーマ「KING」サッカーシューズは、ペレやマラドーナといったサッカー界のレジェンドをはじめ各国の数多の名サッカー選手に愛され続け、「ペレキング」、「マラドーナキング」といった特別モデルまで存在する、プレミアムなプーマサッカースパイクの名称として、サッカー界では非常に高い評価を得ている(甲15〜甲17)。
今日においては、サッカーシューズのみならず、プーマ社の各種スポーツ用品に引用商標は使用されている(甲18)。
このように、申立人は、同社のサッカースパイクを指称するブランドの一つとして引用商標を長年にわたり使用し(甲12〜甲18)、また、2013年(平成25年)から2017年(平成29年)における申立人の売上高も堅調に推移しており、「スポーツシューズメーカー別国内出荷金額」及び「スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキング」においても常に上位に位置していることから(甲9〜甲11)、本件商標の出願時及び登録時において、引用商標は、申立人の業務に係るスポーツシューズ等を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間で広く認識されている。
さらに、申立人は、2010年(平成22年)3月10日、世界有数のグルフクラブメーカーであった米国法人コブラゴルフインコーポレーテッド(1973年創設)を買収し(甲19)、同社の「KING」ブランドを残しつつ、ゴルフ事業に本格的に参入した。「KING」モデルの国内売上は、2019年(平成31年〜令和元年)が6億9,000万円(小売価格ベース)、2020年(令和2年)が8億3,000万円となっている。
上記の国内売上自体は、国内のゴルフ用品市場規模からすると、やや小さい印象は否めないものの、海外の人気ゴルファーが愛用する「パワーヒッター御用達」ゴルフブランドとして、業界内において一定の認知度を獲得している(甲20〜甲35)。
以上により、引用商標は、申立人のサッカー用品及び申立人の100%子会社である米国法人コブラゴルフインコーポレーテッドのゴルフ用品を表す出所標識として、本件指定商品のうち、特に、第25類「フットボール靴,靴及び運動用特殊靴,帽子,メリヤス下着,メリヤス靴下,手袋(被服),被服」に係る取引者、需要者の間で一定の認知度を獲得している。
(4)本件商標と引用商標1との対比
本件商標の文字部分は、「KING」と「TRAIL」を結合した態様からなるところ、「TRAIL」の欧文字は、本件指定商品の品質、用途を表示する文字に該当し、「KING」の語との観念上の明確なつながりもないことから、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものとは認められず、したがって、本件商標の要部は、「KING」の欧文字部分といえる。
そこで、本件商標の要部「KING」と引用商標1とを対比すると、引用商標1から生ずる称呼「キング」、観念「王、国王、君主」において同一であることから、両商標は全体として類似する。
また、引用商標は、申立人のサッカー用品及び申立人子会社のゴルフ用品を表す出所標識として、本件指定商品に係る取引者、需要者の間で一定の認知度を獲得しているところ、本件商標は、需要者の間に広く認識された商標を構成中に含む場合に該当する。
したがって、本件商標は、申立人の引用商標1と類似する。
なお、「KING TRAIL」の文字は、辞書等に掲載された語ではなく、このため、申立人の引用商標1の「KING」は、既成の語の一部には該当しない。
以上より、両商標は、外観において異なるものの、本件商標の要部「KING」において、称呼及び観念が一致しており、また、本件商標の文字部分は、本件指定商品に係る需要者の間に広く認識された申立人の引用商標1に、本件指定商品の品質・用途を指称する「TRAIL」の文字を結合した商標に該当することから、これらの事情を総合的に勘案すると、両商標は類似すると判断されてしかるべきである。
(5)本件指定商品と引用商標1の指定商品との同一
本件指定商品は、引用商標1の指定商品と同一又は類似である。
(6)小括
本件商標と引用商標1とは、全体として類似しており、本件指定商品と引用商標1の指定商品とは同一である。
したがって、本件商標は、商標法第8条第1項に該当する。
2 本件商標を商標法第4条第1項第10号により取り消すべき理由
(1)引用商標2の認知度
引用商標2は、本件商標の登録出願前から、最終消費者の間とまではいい難いにせよ、とりわけ、国内外のサッカー業界及びゴルフ業界の関係者や熱狂的なファンの間で広く認識されている事情が認められる(甲7〜甲35)。
(2)本件商標と引用商標2との類否
本件商標の文字部分は、我が国の取引者、需要者において馴染みある英単語「KING」と「TRAIL」を結合した態様からなるところ(甲6〜甲8)、「TRAIL」の欧文字は、本件指定商品の品質、用途を指称する文字に該当し、「KING」の語との観念上の明確なつながりもないことから、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものとは認められない。
したがって、本件商標の要部は、「KING」の欧文字部分といえる。
そこで、本件商標の要部「KING」と引用商標2とを対比すると、引用商標2から生ずる称呼「キング」、観念「王、国王、君主」において同一であることから、両商標は全体として類似する。
また、引用商標2は、申立人のサッカー用品及びゴルフ用品を表す出所標識として、本件指定商品に係る取引者、需要者の間で一定の認知度を獲得しているところ(甲7〜甲18)、本件商標は、需要者の間に広く認識された商標を構成中に含む場合に該当する。
したがって、本件商標は、引用商標2と類似する。
以上により、両商標は、外観において異なるものの、本件商標の要部「KING」において、称呼及び観念が一致しており、また、本件商標の文字部分は、本件指定商品に係る需要者の間に広く認識された引用商標2に、本件指定商品との関係において識別力が弱い「TRAIL」の文字を結合した商標に該当することから、これらの事情を総合的に勘案すると両商標は類似すると判断されて然るべきである。
(3)本件指定商品と申立人商品との同一又は類似
本件指定商品中、「フットボール靴,登山靴,運動用特殊靴」は、申立人商品と同一又は類似する。
(4)小括
本件商標と引用商標2とは、全体として類似しており、本件指定商品中、「フットボール靴,登山靴,運動用特殊靴」と申立人商品とは同一又は類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
3 本件商標を商標法第4条第1項第15号により取り消すべき理由
(1)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標の文字部分は、我が国の取引者、需要者において馴染みある基本的な英単語「KING」と「TRAIL」を結合した態様からなるところ、「TRAIL」の欧文字は、本件指定商品の品質・用途を指称する文字に該当し(甲6〜甲8)、「KING」の語との観念上の明確なつながりもないことから、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものとは認めらない。
したがって、本件商標の要部は、「KING」の欧文字部分といえる。
本件商標と引用商標は、「TRAIL」の文字の有無、図形部分において外観上異なるものの、本件商標の要部「KING」において、称呼及び観念が一致しており、また、本件商標の文字部分は、本件指定商品に係る需要者の間に広く認識された引用商標に、本件指定商品との関係において識別力が弱い「TRAIL」の文字を結合した商標に該当することから、これらの事情を総合的に勘案すると両商標の類似性の程度は高いものといえる。
(2)引用商標の周知著名性及び独創性の程度
「KING」の語は、「王、国王、君主」を意味する基本的な英単語であるため(甲6〜甲8)、引用商標の独創性の程度は高いとはいい得ないものの、引用商標は、とりわけ、国内外のサッカー業界及びゴルフ業界の関係者や熱狂的なファンの間で広く認識されている事情が認められる(甲7〜甲35)。
(3)本件指定商品と申立人商品との関連性
本件指定商品中、「フットボール靴,登山靴,運動用特殊靴」は、申立人商品であるサッカー用品(シューズ)、ゴルフ用品と同一である。また、前記以外の商品「靴,帽子,新生児用被服,メリヤス下着、メリヤス靴下,手袋(被服),ネクタイ,ガードル,被服」は、申立人商品とは非類似とはいえ、スポーツをする際や運動の前後に利用するものでもあり、需要者が共通することから、総じて、本件指定商品と申立人商品との関連性は高いものといえる。
(4)取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
本件指定商品及び申立人商品の主たる需要者は、スポーツの愛好家を始めとして、広く一般の消費者を含むものということができる。そして、このような一般の消費者には、必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれているといえ、商品の購入に際し、メーカー名やハウスマークなどについて常に注意深く確認するとは限らず、小売店の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定するということも少なくないと考えられることから、商品の選択・購入に際して払う注意力が高いとはいえない一般消費者を需要者とする点で共通する。
また、昨今のランニングブームにより、「森林・原野・山地などにコースを設定して、走破するタイムを競う耐久レース」である「トレイルランニング(trailrunning)」(甲42)が流行しており(甲43)、アウトドア・登山用品やスポーツ用品を扱う店舗においては、「トレイルランニング」用のシューズやウェア等が、「トレイルランニング」に適した商品であることを標榜して、多数販売されている(甲44〜甲46)。
(5)混同を生ずるおそれ
上記の事情を総合すると、「TRAIL」の文字の有無において、両商標の文字部分は外観構成に差異が存在するとしても、本件商標の要部である「KING」において引用商標の称呼及び観念と一致しており、そのため、本件商標が申立人商品と同一又はこれと深く関連する本件指定商品(とりわけ、フットボール靴,運動用特殊靴)に付して使用された場合には、一般消費者の注意力などをも考慮すると、これに接する取引者、需要者は、本件商標構成中の「KING」の文字部分に着目し、サッカー業界及びゴルフ業界において広く認識された引用商標を連想、想起して、当該商品が申立人又は申立人との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるものというべきである。
したがって、仮に、本件商標と引用商標とが非類似であるとしても、引用商標は、申立人商品を表示する商標として、我が国のサッカー業界及びゴルフ業界の関係者や熱狂的な愛好家の間に広く認識されており、また、本件商標の要部「KING」において、本件商標と引用商標とは共通するものであるから、たとえ、外観全体の構成において差異が認められるとしても、本件商標が本件指定商品、とりわけ、「フットボール靴,運動用特殊靴」に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、引用商標を連想、想起し、当該商品が申立人、又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、誤認するおそれがある。
(6)小括
以上から、本件商標は、本件指定商品、とりわけ、「フットボール靴,運動用特殊靴」について使用された場合、これに接する取引者、需要者は、本件商標の登録出願前から、申立人の業務に係るサッカー用品、ゴルフ用品を表示する商標として、我が国の需要者の間で広く認識された引用商標を連想、想起し、当該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 結論
以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第8条第1項、同法第4条第1項第10号及び同項第15号に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 商標法第8条第1項該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、黒塗り三角形内の右下部を三角形状に小さく切り欠き、その中に黒塗り三角形を配した構成からなる図形と、その図形の下に太文字でやや斜体に書された「KING TRAIL」の欧文字を横書きした構成からなるところ、当該図形部分と文字部分とは、視覚上、分離して看取されるばかりでなく、これらが常に一体不可分のものとしてのみ看取、把握されなければならない特段の事情も見いだせないものであるから、それぞれが独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというのが相当である。
そして、本件商標の構成中の「KING TRAIL」の文字部分は、「KING」と「TRAIL」の文字の間に半文字程度の空白があるものの、同じ書体で、等間隔に軽重の差なくまとまりよく一体的に表されており、ことさらに、「KING」と「TRAIL」とを分離して称呼し観念しなければならない特段の事由が存するものとは認め得ないものであり、これより生ずる「キングトレイル」の称呼も格別冗長というべきものではなく、一気一連に称呼し得るものである。
また、「KING TRAIL」の文字部分中、「KING」が、「王、国王、君主」等の意味を有し、「TRAIL」が、「足跡、(登山・ハイキングなどで)行程、進路、コース、山道、小道」等の意味を有するとしても、構成全体としては、特定の意味合いを有するものとして理解されない造語と認識し、把握されるものとみるのが相当である。
そうすると、本件商標の構成中「KING TRAIL」の文字部分は、上述のとおり、一体的に看取され、その構成文字の全体に相応して「キングトレイル」の称呼のみを生じるものであり、かつ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標1について
引用商標1は、別掲2のとおり、左右を切り欠いた横長の楕円形状の図形中に、太字で「KING」の欧文字を横書きした構成からなるところ、当該図形部分からは特定の称呼及び観念を生じるものではなく、その「KING」文字部分に相応して「キング」の称呼を生じ、「王、国王、君主」の観念を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1は、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、外観については、本件商標全体又はその構成中の文字部分と引用商標1とを比較した場合のいずれにおいても、「TRAIL」の文字の有無及び図形の構成態様の相違により、両者は、明確に区別できるものである。
称呼については、本件商標から生ずる「キングトレイル」の称呼と、引用商標1から生ずる「キング」の称呼とは構成音数や「トレイル」の音の有無において相違することから、両者は、明瞭に聴別できるものである。
観念については、本件商標は、特定の観念が生じないのに対し、引用商標1からは、「王、国王、君主」の観念が生ずるものであるから、両者は、相紛れるおそれはないものである。
してみれば、本件商標と引用商標1は、外観、称呼及び観念において類似するものではなく、それらを全体的に考察しても、非類似の商標というべきである。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1とは、非類似の商標であるといえるから、本件指定商品が引用商標1の指定商品と同一又は類似の商品を含むとしても、本件商標は、商標法第8条第1項に該当しない。
2 引用商標の周知性について
申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、以下の(1)ないし(6)の事実が認められる。
(1)申立人は、スポーツシューズ、スポーツウェア、被服、バッグ等を世界的に製造販売している多国籍企業であり、我が国においては、靴及びアクセサリー事業については、1972年(昭和47年)から代理店を通じて、また、ウェア事業については、ライセンシーを通じて展開しており、現在はプーマジャパンが事業を承継している(申立人の主張、甲9の1、甲10の1)。
(2)プーマジャパンは、国内におけるスポーツ用品メーカー(スポーツ関連売上高10億円以上)の中で、2018年(平成30年)の企業別順位は第9位、2015年〜2018年(予測)の売上高は400億円前後である(甲10の6)。
(3)プーマジャパンのスポーツシューズの2015年(平成27年)〜2018年(平成30年:予測)の国内出荷額は、毎年160億円前後、市場占有率は4%前後である(甲9の5)。
(4)プーマジャパンのスポーツアパレルの2015年(平成27年)〜2018年(平成30年:予測)の国内出荷額は、毎年230億円前後、市場占有率は4%超である(甲11の4)。
(5)申立人は、1966年(昭和41年)から、サッカースパイクについて、引用商標を使用しており(甲12〜甲14、甲16〜甲18)、今日においては、サッカーシューズのみならず、申立人の各種スポーツ用品に引用商標が使用されている(甲18)。
(6)申立人は、2010年(平成22年)3月10日以降、申立人の100%子会社である米国法人コブラゴルフインコーポレーテッドを通じて、「KING」ブランドのゴルフクラブの販売を行っており、その国内売上は、2020年(令和2年)で8億3千万円であるとされる(申立人の主張)。
(7)上記(1)ないし(6)によれば、申立人は、スポーツシューズ、スポーツウェア等を取り扱う世界的企業であり、我が国においては、1972年(昭和47年)から、事業を展開していることはうかがえるものであって、スポーツ用品業界において、申立人自身は一定程度の周知性を有すると推認し得るものである。
一方で、申立人は、引用商標は1966年(昭和41年)からサッカーシューズについて使用し、今日では、申立人の各種スポーツ用品に使用している旨主張しているが、引用商標を使用した商品の具体的な取引状況等を示す客観的な証拠の提出はなく、他に、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の使用事実を示す客観的な証拠は見いだせない。
そうすると、具体的な使用事実に基づいて、引用商標の使用状況を把握し、その周知性の程度を客観的に推し量ることができないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
したがって、申立人から提出された証拠によっては、引用商標が、我が国において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認めることができない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)引用商標2について
引用商標2は、「KING」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字部分に相応して「キング」の称呼を生じ、「王、国王、君主」の観念を生ずるものである。
また、引用商標2は、上記2(7)のとおり、我が国の需要者の間で広く認識されるに至った商標であるとも認められない。
(2)本件商標と引用商標2との類否について
本件商標は上記1(1)のとおりの構成からなり、引用商標2は上記(1)のとおりの構成からなるところ、外観については、本件商標全体又はその構成中の文字部分を比較した場合のいずれにおいても、図形の有無及び「TRAIL」の文字の有無により、両者は、明確に区別できるものである。
称呼については、本件商標から生ずる「キングトレイル」の称呼と、引用商標2から生ずる「キング」の称呼とは構成音数や「トレイル」の音の有無において相違することから、両者は、明瞭に聴別できるものである
観念については、本件商標は、特定の観念が生じないのに対し、引用商標2からは、「王、国王、君主」の観念が生ずるものであるから、両者は、相紛れるおそれはないものである。
してみれば、本件商標と引用商標2は、外観、称呼及び観念において類似するものではなく、それらを全体的に考察しても、非類似の商標というべきである。
(3)小括
以上のとおり、引用商標2は、我が国の需要者の間で広く認識されるに至った商標であるとは認められないものであり、かつ、本件商標と引用商標2とは、非類似の商標であるといえるから、本件指定商品が申立人商品と同一又は類似の商品を含むとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1(3)及び3(2)のとおり、本件商標は、引用商標に類似する商標であるとは認められず、また、上記2のとおり、引用商標が、我が国の需要者の間で広く認識されるに至った商標であるとも認められないことからすれば、本件商標は、その構成中に「KING」の文字を有するものであるとしても、当該語を構成の一部に含むことをもって、本件商標が引用商標と関連付けて認識されるとはいい難いものであり、結局、両者は、別異の出所を表示する商標として看取されるというべきである。
してみれば、本件商標をその登録出願時及び査定時において、本件指定商品に使用しても、これに接する需要者が、申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤信するとは認め難く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあったということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第8条第1項、同法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1)


別掲3(引用商標1の指定商品)
第18類「Bags; pouches; carrying bags; travelling bags; all-purpose sports bags; sports pouches; attache cases; shopping bags; net bags for shopping; market bags; handbags; clutch bags; duffel bags; rucksacks; school bags; shoulder bags; belt bags; hip bags; trunks and travelling cases; luggage tags; wallets; purses; card cases; briefcases; credit card cases; business card cases; key cases; tie cases; umbrellas; umbrella covers; parasols; walking sticks.」
第25類「Clothing; footwear; boot uppers; footwear uppers; inner soles; non-slipping devices for boots and shoes; soles for footwear, studs for football boots; headgear.」
第28類「Gymnastic and sporting equipment, gymnastic and sporting articles (included in this class) except for darts and darts equipment; skiing and tennis equipment; skis, ski bindings, ski poles, edges for skis, climbing skins for skis; dumb-bells; shot puts; discus; javelins; clubs for gymnastics; sport hoops; shin guards, knee, elbow and ankle guards for sports purposes; sports gloves, included in this class; tennis rackets, cricket bats, golf clubs, hockey sticks, table tennis rackets, badminton and squash rackets and parts therefore, in particular grips, strings, grip and lead tapes; bags for sports equipment, specially designed for the objects to be carried therein; specially adapted bags and shaped covers for tennis rackets, table tennis rackets, badminton rackets, squash rackets, cricket bats, golf clubs and hockey sticks; roller skates and ice skates; inline skates; table tennis tables and nets; nets for sports, goal and ball nets; start and finish banners, tapes and awnings for sports events.」

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異議決定日 2022-11-30 
出願番号 2021053729 
審決分類 T 1 651・ 4- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 豊瀬 京太郎
小俣 克巳
登録日 2021-11-22 
登録番号 6475058 
権利者 中山市新生東藝鞋業有限公司
商標の称呼 キングトレイル、キング、トレイル、トレール 
代理人 三上 真毅 
代理人 篠崎 史典 

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