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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1393371 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-02-07 
確定日 2022-12-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第6473429号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6473429号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6473429号商標(以下「本件商標」という。)は、「SCOVERY」の文字を標準文字で表してなり、令和3年5月13日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」を指定商品として、同年10月12日に登録査定、同年11月18日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は、以下に掲げるとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)であり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第1558439号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおり「ENRICO COVERI」の欧文字を書してなり、昭和52年12月1日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として同57年12月24日に設定登録され、その後、平成7年5月30日、同15年1月7日、同25年4月2日及び令和4年10月19日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成16年9月8日に、指定商品を第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)登録第1626512号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおり「ENRICO COVERI」の欧文字を書してなり、昭和55年9月10日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊靴を除く),かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として同58年10月27日に設定登録され、その後、平成7年5月30日、同16年3月2日及び同26年4月30日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同17年1月19日に、指定商品を第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」及び第25類「履物」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(3)登録第2336741号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおり「ENRICO COVERI」の欧文字と「エンリコ コベリ」の片仮名を上下2段に横書きしてなり、昭和62年3月19日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として平成3年9月30日に設定登録され、その後、同13年12月18日、同23年10月4日及び令和3年7月5日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成14年9月18日に、指定商品を第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」及び第25類「履物」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(4)登録第4776345号商標(以下「引用商標4」という。)は、「ENRICO COVERI」の文字を標準文字で表してなり、平成15年10月14日に登録出願、第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,布製ラベル」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として同16年6月4日に設定登録され、その後、同26年12月9日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとし、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標「ENRICO COVERI(エンリコ コベリ)」について
引用商標「ENRICO COVERI(エンリコ コベリ)」が、世界的に極めて著名なイタリアのファッションブランドであることは特許庁においても顕著な事実と思料する。
「ENRICO COVERI」は、服飾デザイナー「ENRICO COVERI」氏(1952〜1990)により、1973年にイタリア・フィレンツェで創業され、1978年にパリにおいて鮮やかな色を駆使した独特のスタイルが発表されて以来、モード界に常に新しい波を巻き起こしてきた。カラフルな色を巧みにあやつる色彩感覚は「色彩オペラ」と賞賛され、ミラノをはじめ色彩の復活が目覚しい世界のコレクションの舞台で高い評価を受けている。あたかもアートのような鮮烈な印象を放つ作品は、ソフィア・ローレンやモナコのステファニー王女といった女優や皇室の面々をもとりこにし、今なおその独創性豊かな世界は色あせることがない(甲6〜甲9)。
「ENRICO COVERI」ブランドは、我が国においても、1980年代から現在に至るまで、専用使用権者である伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠商事社」という。)を中心として、被服をはじめ、履物、かばん、眼鏡、香水等、ファッション分野の様々な商品について展開されている(甲10〜甲13)。
そして、申立人は、我が国において、1980年代から、被服や履物等の商品について商標「ENRICO COVERI(エンリコ コベリ)」の登録を取得することにより、「ENRICO COVERI」ブランドの保護を図ってきた。
なお、申立人は、被服や履物等以外にも化粧品・眼鏡・時計等について商標「ENRICO COVERI(エンリコ コベリ)」の登録を保有しており、現在、我が国における商標「ENRICO COVERI(エンリコ コベリ)」の登録は合計10件に上る(甲14)。
また、申立人は、商標「ENRICO COVERI」について、本国イタリアや我が国のみならず、世界各国において登録を取得することにより「ENRICO COVERI」ブランドの世界的な保護を図っている(甲15)。
(2)商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号該当性について
本件商標は、「SCOVERY」の欧文字により構成され、一方、引用商標「ENRICO COVERI」についても、「ENRICO」と「COVERI」の間に一文字程度の間隔があるから、視覚上分離して認識されやすい。その結果「COVERI」部分が独立して要部として認識されやすいといえる。
そうとすると、本件商標は冒頭に「S」が付されているとはいえ、外観上、「COVER」部分を共通とし、称呼も本件商標の「スコベリ」は冒頭音の「ス」が弱音であることから、引用商標の要部の称呼「コベリ」と音調音感を共通にする結果、聴別が難しく、両者は、類似する。
インターネットの代表的な検索エンジン「Google」により、「coveri」ないし「コベリ」をキーワードとして検索を行ってみると、いずれもヒットしたウェブサイトの先頭9件のうち全件とも申立人の「ENRICO COVERI(エンリコ・コベリ)」ブランドに関連するものであった(甲16)。さらに、データベースで確認したところでは、被服や履物等のファッション分野の商品との関係において、欧文字「COVERI」が独立して認識され得る構成態様を有する商標で登録された例は、本件商標を除けば申立人名義に係る商標「ENRICO COVERI(エンリコ コベリ)」のみであった(甲17)。
以上の事実を考慮すると、本件商標及び引用商標の共通の指定商品である被服や履物等のファッション分野の商品との関連においては、本件商標は、1980年代から現在まで継続して周知著名な申立人の「ENRICO COVERI」ブランドを想起させ得るものとして、我が国の取引者・需要者により把握・認識されている状況にあると考えるのが相当である。すなわち、本件商標と引用商標は、「COVERI」から生ずる自然な称呼「コベリ」並びに「ENRICO COVERI」ブランドという観念を共通とする相互に類似の商標として把握・認識するのが相当である。
また、上記事実を考慮すれば、仮に本件商標と引用商標が類似するとはいえない場合でも、被服や履物等のファッション分野の商品との関連において、本件商標に接する我が国の取引者・需要者は、本件商標に係る商品があたかも1980年代から現在まで継続して周知著名な申立人の「ENRICO COVERI」ブランドの商品であるかのごとく商品の出所について混同するおそれがあるか、あるいは、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認した結果、商品の出所について混同するおそれがあるといわざるを得ない。
そして、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある本件商標の登録を認めることが、商標の使用をする者の業務上の信用を維持し、需要者の利益を保護することを目的とする商標法の趣旨に反することはいうまでもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第8号該当性について
引用商標が本件商標の登録出願時である2021年5月当時に世界的に著名なファッションブランドとなっていたことは明らかであるから、その後半部の「COVERI」も本件商標の出願時に申立人の名称の略称として著名であったと考えるのが妥当である。
そうとすると、本件商標は、申立人の名称の著名な略称を実質的に含む商標であるにもかかわらず、申立人から本件商標の登録について承諾を得ていないということになる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標が本件商標の登録出願時である2021年5月当時に世界的に著名なファッションブランドとなっていたことは明らかであり、また、本件商標と引用商標は、「COVERI」から生ずる自然な称呼「コベリ」並びに「ENRICO COVERI」ブランドという観念を共通とする相互に類似の商標として把握・認識するのが相当である。
そうとすると、被服や履物等のファッション分野の商品との関連において、引用商標の後半部「COVERI」を主要な構成要素とする商標がたまたま偶然に採択されたとは考え難いため、本件商標は不正の目的をもって使用されるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
引用商標が、世界的に著名なファッションブランドであることに鑑みれば、同じくファッション分野の商品を指定商品とする本件商標がたまたま偶然に採択されたとは考え難い。そうとすると、世界的な著名性に基づく顧客吸引力という財産的価値のある引用商標の後半部「COVERI」を要部とする本件商標を自己の商標として採択使用することは国際的商道徳に反する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)「ENRICO COVERI」は、服飾デザイナーのENRICO COVERIによって、1973年にイタリア・フィレンツェで創業され、2009年及び2010年のミラノファッションウィークにおいて、「ENRICO COVERI」ブランドのファッションショーが開催されたことはうかがえる(甲7)が、当該ファッションショーにどのような商品が出品され、どのような商標が使用されたかは確認できない。
また、2008年ないし2012年の「ENRICO COVERI」ブランドのコレクションに関する資料(甲8)において、表紙に「Enrico Coveri」(筆記体で書されている)及び「ENRICO COVERI」の表示があり、衣服を着用したモデルの写真が掲載されている。
そして、「COVERI story」と題する書籍(甲9)には、「1977年、エンリコ・コベリは、初めてのファッションショーをパリで開催した。ミラノを選択した他の多くのテーラー達とは最初からたもとを分かち、既にメイドインイタリーブランドが高嶺の花になっていた国際的コンテストの中心であるパリに直接自分を置くというこの素晴しいアイデアのお蔭で、彼のファッションは、スタイル、文化、経済の観点から見て最も革新的で重要な現象と見做されることになった。」との和訳に相応する英文の記載がある。
上記各証拠からは、申立人が「ENRICO COVERI」の標章を商品「被服」(以下「申立人商品」という。)に使用していることはうかがえるものの、「ENRICO COVERI」を使用した申立人商品に関する我が国及び外国における売上高、市場シェアなどの具体的な販売実績並びに広告宣伝費などの証拠は提出されていない。
(イ)我が国においては、雑誌「marie claire」に、「ENRICO COVERI」について、「2002年春夏から待望の服のコレクションが発売される予定。」との記載がある(甲12)。
また、申立人と伊藤忠商事社との間で締結された、我が国におけるファッション分野の各種商品についての引用商標に係る専用使用権に関する契約書(甲10)が提出されている。
(ウ)我が国及び外国における「ENRICO COVERI」ブランドの店舗画像とするもの(甲11)には、「ENRICO COVERI」又は「ENRICO」及び「COVERI」の二段書きの表示がある店舗において、被服や靴等が取り扱われていることは確認できる。
また、我が国における「ENRICO COVERI」ブランドの被服、履物、鞄等以外の商品を示す画像とするもの(甲13)には、香水等の商品に「ENRICO COVERI」の表示がある。
イ 上記アによれば、2009年及び2010年のミラノファッションウィークにおいて、服飾デサイナー及び被服等のブランドの「ENRICO COVERI」はファッションショーを開催し、申立人商品が、遅くとも2002年には我が国において販売されていたことはうかがわれる。
しかしながら、提出された証拠からは、我が国又は外国における引用商標を使用した申立人商品の売上高、市場シェアなどの具体的な販売実績並びに広告宣伝費などについては、その事実を具体的に把握することができる証拠は提出されていない。
よって、申立人提出の証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者にどの程度認識されているのか把握、評価することができない。
したがって、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、上記1のとおり、「SCOVERY」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で外観上まとまりよく一体的に表されている。
また、その構成文字全体に相応して生じる「スコベリー」の称呼は無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、「SCOVERY」の欧文字は、辞書等に載録がないから、特定の意味合いを理解させるものではない。
そうすると、本件商標のかかる構成においては、本件商標に接する取引者、需要者が、殊更、その構成中の「COVERY」の文字部分のみに着目すると判断し得る特別な事情はなく、構成要素全体をもって把握するとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、「スコベリー」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標は、上記2のとおり、引用商標1、引用商標2及び引用商標4は、いずれも「ENRICO COVERI」の文字よりなり、引用商標3は、「ENRICO COVERI」の欧文字及び「エンリコ コベリ」の片仮名を上下2段に横書きしてなるところ、「ENRICO(エンリコ)」と「COVERI(コベリ)」の間に一文字程度の間隔を有しているとしても、構成各文字は、いずれも同じ書体、同じ大きさでまとまりよく一体的に表されており、引用商標3の構成中の下段の「エンリコ コベリ」の片仮名は、上段の「ENRICO COVERI」の欧文字の表音と理解できるものである。
そうすると、引用商標は、その構成中の「COVERI(コベリ)」の文字部分が需要者に対し、強く支配的な印象を与える構成とはいい難いものである。
また、引用商標の構成全体に相応して生じる「エンリココベリ」の称呼も格別冗長とはいえず、一連に称呼し得るものである。
そして、「ENRICO COVERI(エンリコ コベリ)」の文字は、辞書等に載録がないから、特定の意味合いを理解させるものではない。
そうすると、引用商標のかかる構成においては、引用商標に接する取引者、需要者が、殊更、「COVERI(コベリ)」の文字部分のみに着目すると判断し得る特別な事情はなく、構成要素全体をもって把握するとみるのが相当である。
したがって、引用商標は、「エンリココベリ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
なお、申立人は、引用商標の構成中の「ENRICO」と「COVERI」の間に空白があること及び「coveri」又は「コベリ」の文字をキーワードとするインターネット検索結果や「ENRICO COVERI」関連の商標登録状況から、「COVERI」の部分が「ENRICO COVERI」ブランドを想起させるから、「COVERI」の文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たす旨主張している。
しかしながら、上記のとおり、「ENRICO COVERI(エンリコ コベリ)」の文字は、同じ書体、同じ大きさでまとまりよく一体的に表されており、かかる構成において、殊更、後半に表された「COVERI(コベリ)」の文字部分のみに着目すると判断し得る特別な事情はなく、構成要素全体をもって把握するとみるのが相当である。
また、「COVERI」又は「コベリ」の文字をキーワードとして検索したインターネットの検索結果(甲16)は、「ENRICO COVERI」の欧文字の「COVERI」の欧文字部分から検索され表示されるものであって、かかる検索結果のみをもって、「COVERI(コベリ)」の文字が申立人のブランド名又はデザイナーの氏名である「ENRICO COVERI」を表すものとして認識されているとはいえないから、「COVERI(コベリ)」の文字が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものということはできない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、上記1のとおり、「SCOVERY」の文字を表してなるのに対し、引用商標は、上記2のとおり、「ENRICO COVERI」の文字又は「ENRICO COVERI」の欧文字と「エンリコ コベリ」の片仮名とを2段に表してなるものであるから、両者は、構成文字及び構成態様が明らかに相違するものであるから、外観は、明確に区別できるものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「スコベリー」の称呼と、引用商標から生じる「エンリココベリ」の称呼とは、前半部における「ス」、「エンリコ」及び後半部の「リ」の長音の有無という明らかな差異を有し、両者は、その音構成及び構成音数が相違することから、明瞭に聴別し得るものである。
また、観念においては、本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
したがって、本件商標と引用商標とは、観念において比較するすることができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く知られていたものということはできず、また、上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く知られていたものということはできず、また、上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。
そうすると、本件商標は、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)が、その指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標又は申立人を連想又は想起することはなく、その商品が、他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第8号該当性について
商標法第4条第1項第8号における「他人の著名な略称」に関して、「人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても、常に、問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。」と解されるものである(最高裁平成16年(行ヒ)第343号平成17年7月22日第二小法廷判決参照)。
なお、申立人は、本件商標は、申立人の著名な略称である「COVERI」を含むものである旨主張している。
しかしながら、提出された証拠において、香水に「COVERI」の欧文字が表示されている例(甲6の2葉目)や書籍の題名に「COVERI story」の欧文字が表示されている例(甲9)はあるものの、これらの使用例をもって、「COVERI」の欧文字が申立人の略称を指し示すものとして一般に受け入れられているとはいい難く、他に、申立人が提出した証拠において、「COVERI」の欧文字が、申立人の略称を表すものとして使用されている事実は見当たらない。
そうすると、本件商標は、その構成中に他人の著名な略称を含むものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表すものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く知られていたものということができず、また、上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。
なお、申立人は、本件商標権者が、引用商標の後半部「COVERI」を主要な構成要素とする商標がたまたま偶然に採択されたとは考え難いため、本件商標は不正の目的をもって使用される旨主張するが、たとえ、本件商標及び引用商標の構成中に「COVERI」の欧文字が含まれているとしても、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が不正の目的をもって本件商標を使用すると認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(7)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、引用商標が、世界的に著名なファッションブランドであることに鑑みれば、同じくファッション分野の商品を指定商品とする本件商標がたまたま偶然に採択されたとは考え難い。そうすると、世界的な著名性に基づく顧客吸引力という財産的価値のある引用商標の後半部「COVERI」を要部とする本件商標を自己の商標として採択使用することは商道徳に反する旨主張している。
しかしながら、引用商標は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表すものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く知られていたものということができず、また、上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。
そうすると、本件商標が、引用商標の持つ顧客吸引力にただ乗りフリーライド)したり、信用・名声・顧客吸引力を毀損するなどの不正の目的をもって使用するものであると認めることもできないから、これをその指定商品について使用をすることが商道徳に反するものとはいえない。
その他、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないし、申立人が提出した証拠からは、本件商標が国際信義に反し、あるいは、本件商標の出願の経緯に著しく社会的相当性を欠く等の事実は見当たらず、本件商標をその指定商品について使用することが、社会の一般道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものともいえない。
してみると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(8)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(引用商標1)



別掲2(引用商標2)



別掲3(引用商標3)




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異議決定日 2022-12-06 
出願番号 2021058349 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
杉本 克治
登録日 2021-11-18 
登録番号 6473429 
権利者 株式会社大西
商標の称呼 スコベリー、エスカバリー 
代理人 弁理士法人三枝国際特許事務所 
代理人 青木 篤 
代理人 外川 奈美 

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