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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W01
管理番号 1393236 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-04-25 
確定日 2022-12-08 
事件の表示 商願2020−122901拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年10月5日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年7月30日付け:拒絶理由通知書
令和3年9月16日 :意見書の提出
令和4年1月11日付け:拒絶査定
令和4年4月25日 :審判請求書の提出

第2 本願商標
本願商標は、「オイルタイト」の文字を標準文字で表してなり、第1類「ガスケットの密封に使用するためのペースト状の化学剤,ペースト状の化学剤,化学品,工業用のり及び接着剤,未加工人造樹脂」を指定商品として登録出願されたものである。

第3 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は「オイルタイト」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「オイル」の文字は「油」の意味を有する語であり、「タイト」の文字は「ぴったりしたさま。」の意味を有する語であるところ、本願の指定商品に係る分野では、「オイルタイト」の文字は「油密、油の漏れない」の意味を有する語として一般に使用されているものである。そして、本願の指定商品に係る分野では、機械器具などを油密にするための商品が製造販売されている実情があり、そのような商品について「オイルタイト」の文字が使用されている実情がある。そうすると、本願商標はその構成全体から「油密にするための(商品)」の意味合いを容易に認識させるものというべきである。そうとすれば、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その商品が「油密にするための商品」であること、すなわち、商品の品質(効能及び用途)を理解、認識するにとどまるというべきであるから、本願商標は、単に商品の品質等を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記意味合いに照応する商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)商標法第3条第1項第3号の趣旨
商標法第3条第1項第3号が、「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状(包装の形状を含む。),生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録を受けることができない旨規定しているのは,このような商標は,指定商品との関係で,その商品の産地,販売地,品質,形状その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによるものと解される。そうすると,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには,審決の時点において,本願商標が,その指定商品との関係で,その商品の産地,販売地,品質,形状その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,本願商標の指定商品の取引者及び需要者によって本願商標がその指定商品に使用された場合に,将来を含め,商品の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(知財高裁平成27年(行ケ)第10107号、同年10月21日判決参照)。
(2)本願商標
本願商標は、上記第2のとおり、「オイルタイト」の文字を標準文字で表してなるところ、「オイルタイト」の文字は、「油密、油の漏れない」の意味を有する語である(別掲)。
(3)本願の指定商品の分野において「油密であること」又は「油の漏れないこと」を品質又は用途とする商品が販売されている事実
原審で示した事実のほか、以下に示すインターネット情報からも裏付けられるところである。
ア 「スリーボンド」のウェブサイトにおいて、「液状ガスケットとは?」の見出しの下、「一般に常温で流動性のある物質で、接合面に塗布すると、一定時間の後に乾燥または均一化し、弾性皮膜あるいは粘着性の薄層を形成。接合部の油密・水密・気密を完全にし、もれを防止するとともに耐圧機能を持つものです。」の記載がある。
(https://www.threebond.co.jp/technical/seminar/liquidgaskets/)
イ 「株式会社ヘルメチック」のウェブサイトにおいて、「一般配管用液状パッキン」の見出しの下、「配管及び機械等の接合部の水密、気密、油密するために開発された液状パッキンです。」の記載がある。
(https://www.hermetic.co.jp/item/pipe-sealant/190/)
ウ 「MISUMI−VONA」のウェブサイトにおいて、「一般機器用シール剤 ヘルメシール 101Y」の見出しの下、「【用途】・自動車部品、船舶、工作機械、建設機械などの油密、気密、水密などの漏洩防止。」の記載がある。
(https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/223006441945/?HissuCode=101Y-A)
エ 「日産自動車株式会社」のウェブサイトにおいて、「NC81オイルシーリング剤」の見出しの下、「あらゆるシール・ガスケット・パッキン素材に対応し、短時間でオイル漏れ防止効果を発揮します。」の記載がある。
(https://www.nissan.co.jp/SERVICE/MAINTE/UPGRADE-ENGINE/OIL/)
オ 「ツールエクスプレス本店」のウェブサイトにおいて、「シールエンド SENo.7 150g 不乾性無溶剤型」の見出しの下、「各種機械、装置のケース・カバーの接合面、ネジ部、パイプフランジ接合面などからの水 油、ガス等の漏れ防止用として広い範囲に使用でき、あらゆる用途にマッチするよう研究されております。」の記載がある。
(https://www.toolexpress.jp/item/se7-150/)
(4)判断
上記(2)及び(3)のとおり、本願商標は、「オイルタイト」の文字が有する「油密、油の漏れない」の意味、本願の指定商品の分野における「油密であること」又は「油の漏れないこと」を品質又は用途とする商品の販売状況を勘案すれば、これを本願の指定商品について使用するときには、その指定商品の取引者、需要者によって、「油が漏れないようにするための商品」、「油密にするための商品」ほどの意味合いを表すものとして認識されるものと認められる。
そうすると、本願商標は、その指定商品に使用されたときは、その商品が「油が漏れないようにすること」、「油密にすること」を特徴とする商品の品質又は用途を表示するものとして一般に認識されるものであって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適切でないとともに、自他商品の出所識別力を欠くものであるというべきである。
そして、本願商標は、上記第2のとおり、標準文字で表されているから、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであることは明らかである。
したがって、本願商標は、その指定商品中「油密にするために用いるガスケットの密封に使用するためのペースト状の化学剤,油密にするために用いるペースト状の化学剤,油密にするために用いる化学品,油密にするために用いる工業用のり及び接着剤」に使用する場合は、その商品の特徴、品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
上記1の認定判断によれば、本願商標をその指定商品中、前記商品以外の商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その商品が前記商品であると、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるということができる。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、「「oil tight」の語は、大部な英和辞典でごく小さく記載されているにすぎない成語であって、わが国における一般的な需要者が、そのような意味合いを理解できるとするのは一般的とはいえず、「油がぴったりとあっている様子」や「油がぎっしりと詰まっている様子」などといったイメージを想起させるにすぎない。」旨主張する。
しかしながら、本願商標の指定商品に含まれる「化学品」等の商品は、一般需要者が購入、使用する場合もあるものの、むしろ、化粧品や工業製品の原料となり、また、様々な商品の製造工程において使用されるなど、その製造・流通過程においては、専門家(研究者や技術者等)の関与の程度が高いことは当審において顕著な事実であって、当該専門家の間において自他商品の出所識別標識として機能しない以上は、実質的に商標として機能する余地はないというべきである。
なお、別掲に示した辞典は、もっぱら専門家(研究者や技術者等)を対象とする媒体ではなく、化学品等への関心が高い一般需要者をも対象とするものであるから、当該需要者においては、本願商標は上記1(4)のとおり、「油密であること」又は「油の漏れないこと」という商品の品質又は用途を表示するものと認識、理解されるというべきである。
(2)請求人は、「「オイルタイト」の語は、請求人以外の者によって現に使用されておらず、また、過去にも使用されていなかった。請求人は、そのような使用の不存在は、本願商標が取引に際して必要適切な表示ではない蓋然性がある。」旨主張する。
しかしながら、「商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」(東京高裁平成12年(行ケ)第76号、同年9月4日判決参照)から、本願商標構成する「オイルタイト」の文字が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている事実は、本号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである。
そして、上記1(3)のとおり、「オイルタイト」と同義である「油密、油の漏れない」ことを表す文字が、商品の内容を説明する文章の一部として現実に使用されているものであり、「オイルタイト」の文字の有する意味や使用状況等を総合的にみれば、「油が漏れないようにする」、「油密にする」を特長とする商品の品質又は用途を表すために将来一般的に使用され得るものであって、これを特定人に独占させることは適切ではないというべきであるから、本願商標については上記1のとおり判断するのが相当である。
(3)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲 本願商標を構成する「オイルタイト」の文字の辞典における記載
(1)「自動車用語中辞典、株式会社山海堂」の記載
「オイル・タイト[oil tight]」の項に、「油密,オイルが漏れないこと」の記載がある。
(2)「ランダムハウス英和大辞典 第2版 株式会社小学館」の記載
「oil tight」の項に、「油を通さない,油の漏れない」の記載がある。

(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-09-14 
結審通知日 2022-09-20 
審決日 2022-10-20 
出願番号 2020122901 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W01)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 小俣 克巳
豊瀬 京太郎
商標の称呼 オイルタイト、タイト 
代理人 藤本 一 
代理人 杉村 光嗣 
代理人 杉村 憲司 
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