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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1392387 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-22 
確定日 2022-11-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第6492871号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6492871号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6492871号商標(以下「本件商標」という。)は、「Assurance」の欧文字を標準文字で表してなり、令和3年7月1日に登録出願、第9類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年12月3日に登録査定され、同月27日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれも申立人及びそのグループ企業の出所を表すものとして、広く知られていたとするものである。
(1)登録第6080998号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成 「ASSURANT」(標準文字)
指定商品及び指定役務 第9類、第38類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成29年8月14日
設定登録日 平成30年9月14日
(2)「ASSURANT」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)
また、引用商標1に係る商標権は現に有効に存続している。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証を提出した。
(1)引用商標1及び引用商標2の著名性
申立人は、フォーチュン500企業の1社であり、我が国において日本法人その他グループ企業を通じて保険その他の役務を提供してきた。
甲第3号証には、「ASSURANT(NYSE:AIZ)は、革新的なハウジングとライフスタイルソリューションを提供するグローバル・プロバイダーです。グローバルな知見と絶えず変化する各地域の消費者ニーズの予測に基づき、世界の主要ブランドとのパートナーシップを通じて、最高の顧客体験に資する革新的なソリューションを提供します。世界21か国で事業展開するフォーチュン500企業の1社であり、携帯端末ソリューション、延長サービス契約、車両保険サービス、レンターズ保険などを提供しています。また、当社が運営するASSURANT Foundation(ASSURANT財団)は、地域社会の支援、発展、インクルージョン(一体性)を促し、将来のリーダー育成に貢献する慈善パートナーを支援することで、コミュニティーヘの貢献を深めています。」とある。これと同様の記載は、甲第4号証、甲第5号証、甲第8号証、甲第13号証、甲第15号証ないし甲第18号証、甲第21号証、甲第25号証、甲第26号証にもされている。
申立人及びその日本におけるグループ企業の事業の具体的内容、商品、役務には、(ア)携帯端末の保証、自動車の保証、家電・エレクトロニクス製品保証、工具及び宝飾品・家具保証、旅行者及びクレジットカード保有者に対する追加的な会員特典の提供、賃貸物件保証、住宅ローン返済履行管理、住宅所有者向け洪水被害損失補償、葬儀など終末期に関する費用準備サービス、金融商品を利用する顧客に対する信用保証サービス(甲6、甲7、甲11、甲13)、(イ)携帯端末の修理・回収(下取り)・テクニカルサポート・消費者への再販・ロジスティクス・ローン・リースプラン(甲8〜甲11)、携帯端末の保証プログラムの営業・販売の最適化(甲12)、(ウ)ソフトウェア開発・デジタルプラットフォームの提供(甲13〜甲16、甲18、甲19)がある。
甲第20号証ないし甲第23号証も、上記事業に関連するインターネット上の企業向け記事である。
申立人ASSURANT及びその商品・役務等については、甲第3号証ないし甲第23号証のインターネット記事の他、企業買収に関する記事(甲24、甲25)、申立人が日本における働きがいのある会社ランキングに選出された旨の記事(甲26)、その他の記事(甲27)においても紹介されている。これらの記事は、甲第4号証、甲第5号証、甲第7号証、甲第19号証を除き、本件商標の出願前のデータに基づくものか(甲6)、本件商標の出願前に公開された記事である。しかして、申立人の携帯端末保証やこれに関連するテクニカルサポートは、経験則及び甲第7号証からも類推可能なとおり、一般大衆に対して提供されてきたものである。甲第14号証の求人も、同様に一般大衆向けのものである。さらに、甲第15号証ないし甲第19号証の家電製品等の取扱説明書の一元管理用モバイルアプリも同様に一般大衆に対して提供されてきたものであって、半年程度の短期間でダウンロード数が50万も増えるほど人気がある(2021年6月1日付けの甲第18号証ではダウンロード数が150万越えだったのが、2021年12月20日付けの甲第19号証ではダウンロード数が200万越えとなっている。)。
したがって、引用商標1及び2は、本件商標出願前に我が国の一般需要者(企業、一般大衆を含む。)、取引者の間で著名となっていた。
(2)商標法第4条第1項第11号違反について
本件商標は、「Assurance」の欧文字を横書きしてなり、引用商標1は「ASSURANT」の欧文字を横書きしてなるものである。本件商標と引用商標1は、それぞれ9文字、8文字からなるところ、語頭から7文字目までの「Assuran」の文字部分を共通にする。
したがって、本件商標は、外観において引用商標1に類似する。
本件商標は、「Assurance」の欧文字を横書きしてなるから、その構成文字に相応して「アシュアランス」又は「アシュランス」の称呼を生じる。
引用商標1は、「アシュラント」の称呼を生じる。本件商標の称呼「アシュランス」は、引用商標の称呼「アシュラント」と同じ5音構成であり、1音目から4音目が共通し、語尾のみが相違する。本件商標の称呼「アシュランス」及び引用商標の称呼「アシュラント」において、語頭の「ア」にアクセントが置かれ、語尾は弱く聴別し難い。
したがって、本件商標は、称呼において引用商標1に類似する。
よって、本件商標は、外観及び称呼において引用商標1に類似し、本件商標に接した需要者、取引者は、本件商標と引用商標1とを混同するおそれがある。
本件商標の指定商品・役務中、少なくとも、第9類「コンピュータソフトウェア(記憶されたもの),コンピュータソフトウェア用アプリケーション(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),コンピュータ操作用プログラム(記憶されたもの),コンピュータ用プログラム(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),監視用コンピュータプログラム,記録された又はダウンロード可能なコンピュータソフトウェアプラットフォーム,電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,情報技術(IT)に関する助言,コンピュータシステムの設計,コンピュータシステムの分析,コンピュータープラットフォームの開発,コンピュータソフトウェアの設計・作成・保守に関する助言,ソフトウェア制作におけるコンピュータソフトウェアの開発,コンピュータプログラムのインストール,コンピュータプログラムの複製,コンピュータソフトウェアのバージョンアップ,コンピュータソフトウェアの設計,ウェブサイト経由によるコンピュータ技術及びコンピュータプログラミングに関する情報の提供,ウェブサイトの作成又は保守,コンピュータシステムの遠隔監視,遠隔操作によるデータのバックアップ,受託によるウェブサイトにおける情報インデックスの作成及び設計(情報技術の提供),インターネットセキュリティに関する指導及び助言,ウェブサイトの設計に関する助言,コンピュータセキュリティに関する指導及び助言,コンピュータ技術に関する助言,データセキュリティに関する助言,コンピュータソフトウェアの保守,シングルサインオンの技術を利用したオンラインソフトウェアアプリケーションのためのユーザー認証,コンピュータデータの回復,受託によるウェブサイトにおける情報インデックスの作成及び設計(情報技術の提供),電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS)」は、引用商標1の指定商品・役務に類似する。
しかして、上記(1)のとおり、申立人の引用商標1は、本件商標の出願前から著名となっていた。殊に、本件商標の指定商品は、一般大衆が需要者となるコンピュータソフトウェア商品、企業が需要者となる携帯情報端末、コンピュータソフトウェア商品、コンピュータソフトウェアプラットフォーム等の商品や、一般大衆も企業も需要者となる「電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS)」等を含んでいる。
したがって、本件商標に接した需要者、取引者が、引用商標1の著名性に引きずられて両商標を混同するおそれがあることは明らかで、本件商標及び引用商標1の外観、称呼における類似性はさらに高まるものである。
本件商標は、商標及び指定商品・役務について引用商標1のそれに類似するから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号違反について
上記のとおり、引用商標に関連する記事が本件商標の出願前からインターネットで紹介され、また引用商標を用いて一般消費者向けの携帯端末保証やこれに関連するテクニカルサポート、企業向けの各種ソフトウェア商品や役務が提供されていたことにより、引用商標は、我が国の需要者、取引者の間で著名となっていた。
本件商標は、引用商標1及びこれと同一の構成文字からなる引用商標2に類似するところ、本件商標がその指定商品・役務について使用された場合には、需要者、取引者において、その商品・役務の出所が申立人、その日本法人、或いはその他のグループ企業であると混同するおそれが極めて高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、申立人は、2004年に設立された米国ニューヨーク州所在の持ち株会社であり、北米、南米、欧州、アジアで事業展開していること(甲4、甲5)、携帯端末ソリューション、延長サービス契約、車両保険サービス、レンターズ保険などを提供していること(甲3、甲8、甲13、甲15〜甲18、甲21、甲25、甲26)がうかがえる。 また、申立人の日本法人(Assurant Japan株式会社)は、自社のウェブサイトに引用商標を表示し(甲6、甲9〜甲12等、職権調査)、携帯端末のサポート、デジタルライフサポート、家電・住設の延長保証等といった役務を提供していること(職権調査)がうかがえるとともに、2019年4月22日付けのプレスリリースにおいて、2018年12月に他社と業務提携して提供している家電保証サービスについて、2019年4月には当該サービスの修理依頼や履歴確認のデジタル化を実現した旨発表したこと(甲13)等が認められる。
しかしながら、申立人による引用商標を使用した役務の提供実績、提供期間、市場シェア、広告宣伝の規模等に関する具体的、客観的な主張はなく、また、それらの証左は見いだせない。
イ 上記アのとおり、申立人の日本法人は、引用商標を自己のウェブページで表示していることは認められるものの、引用商標を使用した役務の提供実績等を示す具体的、客観的な証左は見いだせないから、引用商標は、申立人又は申立人の日本法人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると、引用商標は、申立人又は申立人の日本法人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「Assurance」の欧文字を標準文字で表してなり、該文字に相応し「アシュアランス」又は「アシュランス」の称呼を生じるものである。そして、観念については、該文字は「保証」等の意味を有する比較的親しまれた英語であるから、「保証」の観念を生じる。
イ 引用商標
引用商標1は、上記2(1)のとおり、「ASSURANT」の欧文字を標準文字で表してなるものであるから、該文字に相応し「アシュラント」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標1の類否を検討すると、まず、外観において、本件商標「Assurance」と引用商標1「ASSURANT」は、両者の構成文字中の「Assuran」又は「ASSURAN」のつづりを共通にするものの、それに続く「ce」と「T」の文字が異なるものであり、その差異が9文字又は8文字構成からなる両者の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は大きく、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に、本件商標から生じる「アシュアランス」又は「アシュランス」の称呼と引用商標1から生じる「アシュラント」の称呼を比較すると、「アシュアランス」と「アシュラント」との比較においては、中間の「ア」の有無及び語尾の「ス」と「ト」の差異を有し、また「アシュランス」と「アシュラント」との比較においては、語尾の「ス」と「ト」の差異を有するものであり、この差異が6音又は5音といった比較的短い音数である両称呼において、全体の語調語感に及ぼす影響は大きく両者をそれぞれ一連に称呼しても、相紛れるおそれはないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標は「保証」の観念を生じるものであるのに対し、商標は特定の観念を生じないものであるから、両者は相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標1は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標1が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1は非類似の商標であるから、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標1の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、申立人又は申立人の日本法人の業務に係る役務を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、本件商標は、上記(2)のとおり、引用商標1と相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであり、引用商標2は、引用商標1と同一の構成文字からなるものであるから、上記判断と同様に、本件商標は引用商標2とも非類似の商標というのが相当であって、本件商標と引用商標の類似性の程度は高いとはいえない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(申立人又は申立人の日本法人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-11-18 
出願番号 2021082114 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W0942)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 鈴木 雅也
小松 里美
登録日 2021-12-27 
登録番号 6492871 
権利者 エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社
商標の称呼 アシュアランス 
代理人 西澤 和純 
代理人 青木 博通 
代理人 中田 和博 
代理人 鈴木 薫 
代理人 眞島 竜一郎 

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