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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない W06070911123742
管理番号 1392218 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-07 
確定日 2022-11-24 
事件の表示 商願2020−30934拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年3月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年3月22日付け :拒絶理由通知書
令和3年4月21日 :意見書の提出
令和3年4月22日 :手続補足書の提出
令和3年10月4日付け :拒絶査定
令和4年1月7日 :審判請求書の提出
令和4年1月11日 :手続補足書の提出
令和4年6月27日付け :証拠調べ通知書

第2 本願商標
本願商標は、「「製造」じゃない、「創造」だ。」の文字を標準文字で表してなり、第6類、第7類、第9類、第11類、第12類、第37類及び第42類に属する別掲1のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、登録出願されたものである。

第3 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、「「製造」じゃない、「創造」だ。」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「品物をつくること。原料を加工して製品とすること。」等の意味を有する「製造」、「新たに造ること。新しいものを造りはじめること。」等の意味を有する「創造」の各文字を、「否定、または問いかけ(質問・反問)の意味で用いられる、くだけた表現。文脈に応じて『ではない』の意味または『ではないか』の意味で用いられる。」等の意味を有する「じゃない」の語、及び「だ」の助詞でつなぎ、句読点を配してなるものである。そして、本願商標は、意味合いの理解が容易な語の組合せであって、構成全体から、「製造ではなく、創造だ。」ほどの意味合いが理解されるものであり、また、句読点が配されていることから、全体として記述的な語句、文章表現との印象を与えるものである。さらに、例えば、「製造ではなく創造を」など、「製造」及び「創造」の語が、企業の経営理念や経営方針等を表示するために採用されている実情や、それらの語を結合して、企業理念や経営方針として表現することが少なからず行われている実情がある。そうすると、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、接する取引者、需要者は、企業理念等を表する記述的な語句として認識するにとどまり、本願商標を自他商品及び自他役務識別標識として認識し得ないというべきである。したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品及び役務であることを認識することができない商標というべきものであり、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第4 当審における証拠調べ通知及びそれに対する請求人の対応
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、上記第1の証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
しかしながら、請求人は、上記証拠調べ通知に対し、所定の期間内に何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
1 本願商標について
(1)本願商標は、上記第2のとおり、「本願商標は、「「製造」じゃない、「創造」だ。」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字自体の表示方法に特徴があるものとはいえない。
(2)本願商標は、原審説示のとおり、「品物をつくること。」などの意味を有する「製造」、「新たに造ること。」等の意味を有する「創造」の各文字を、「否定、または問いかけ(質問・反問)の意味で用いられる、くだけた表現。文脈に応じて「ではない」の意味または「ではないか」の意味で用いられる。」などの意味を有する「じゃない」の語、及び「だ」の助詞でつなぎ、句読点を配したものであり、請求人も認めるとおり、その全体から「製造ではなく、創造だ。」程の意味合いを理解させるものである。
2 企業理念や経営方針等を表す語に関する実情について
(1)本願商標から生じる「製造ではなく、創造だ。」の意味合いと同様の文言が、企業理念や経営方針を表す語として用いられている実情
別掲2(1)によれば、製造業の分野において、本願商標から生じる「製造ではなく、創造だ。」の意味合いと同様の文言は、例えば、企業のウェブサイトに「それが私たちの考える、メーカーのあるべき姿だ。/THE VALUE MAKER/製造じゃない、創造するんだ。」(別掲2(1)ア)、「お客様の胸に宿ったアイディアを実現させるモノづくり、それが私たちの仕事です。目指すのは、世界にたった1つしかないオリジナリティーにあふれた機械。その開発工程を、私たちは「製造」ではなく、「創造」と呼んでいます。」(同イ)、「創業当初より「製造から創造へ」をスローガンに・・・」(同オ)のように記載されており、また、求人情報を提供するウェブサイトやテレビ番組のウェブサイトにおいて、企業の紹介として「人生を豊かにするために、常に進化する鞄創造ブランドを目指します。/ただ鞄を製造するのではなく、お客様の人生を豊かにすることをミッションとして、株式会社由利では“製造”ではなく“創造”という言葉を使用しています。」(同ウ)、「・・・「過去を振り返るよりも新規事業のアイデアが優先」という企業文化が根づいているからだ。「製造ではなく創造」という社風は・・・」(同エ)のように記載されており、さらに、企業のウェブサイトのトップページに「製造から創造へ/株式会社フキタ鉄工」(同カ)、「製造から創造へ 村松機工」(同キ)のように記載されているところ、これらは、その文脈やウェブサイトにおける記載方法からすれば、「製造よりも創造を優先する」といった企業理念や経営方針を表す語として用いられているものと認められる。
そうすると、本願商標から生じる「製造ではなく、創造だ。」の意味合いは、製造業の分野において、「製造よりも創造を優先する」といった企業理念や経営方針として一般に理解されているというのが相当である。
(2)本願商標のように「じゃない」、「だ」の各文字を「〜じゃない〜だ」のように組み合わせた文字構成や、これに「」(かぎ括弧)を組み合わせた文字構成が、企業理念や経営方針等を表す際に用いられている実情
別掲2(2)によれば、各企業が、企業理念、経営方針やキャッチコピーを表す語として、「部品じゃない/作品だ!」、「「コツ」じゃない「学力」だ。」、「鑑賞じゃない、体験だ」の文言を用いていることが認められる。
そうすると、本願商標のような、「じゃない」、「だ」の各文字を「〜じゃない〜だ」のように組み合わせた文字構成や、これに「」(かぎ括弧)を組み合わせた文字構成は、企業理念、経営方針等の表示としてありふれた構成といえるものであって、需要者に強い印象を与えるものとはいえないというのが相当である。
3 本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、上記1のとおり、「「製造」じゃない、「創造」だ。」の文字を特徴のない表示方法で表してなるものであり、その全体から「製造ではなく、創造だ。」程の意味合いを理解させるものであって、上記2のとおり、「製造ではなく、創造だ。」の意味合いは、製造業の分野において、「製造よりも創造を優先する」といった企業理念や経営方針として一般に理解されていること、本願商標のような、「じゃない」、「だ」の各文字を「〜じゃない〜だ」のように組み合わせた文字構成や、これに「」(かぎ括弧)を組み合わせた文字構成は、企業理念、経営方針等の表示としてありふれた構成といえるものであって、需要者に強い印象を与えるものとはいえないことをも考慮すれば、本願商標は、本願の指定商品及び指定役務の需要者よって、「製造よりも創造を優先する」といった企業理念、経営方針等として一般に認識されるというのが相当であり、商品及び役務の出所識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであるといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、「需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標」として、商標法第3条第1項第6号に該当する。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲1 本願の指定商品及び指定役務
第6類「鉄及び鋼,建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製建造物組立てセット,金属製荷役用パレット,荷役用ターンテーブル,荷役用トラバーサー,金属製の滑車・ばね及びバルブ(機械要素に当たるものを除く。),金属製管継ぎ手,金属製フランジ,金属製貯蔵槽類,金属製輸送用コンテナ,金属製金具,ワイヤロープ,金網,金属製包装用容器,化学用・圧縮ガス用及び圧縮液体用の金属製容器」
第7類「金属加工機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,化学機械器具,波を発生させる風水力機械器具,農業用機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。),動力機械器具の部品,船舶用内燃機関,タービン,蒸気タービン(陸上の乗物を除く),風水力機械器具,圧縮機,遠心圧縮機,機械要素(陸上の乗物用のものを除く。),起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機」
第9類「測定機械器具,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータプログラム(記憶されたもの),遠隔操作によるコンピュータ及びコンピュータネットワークの中身の検索用のコンピュータプログラム」
第11類「化学製品製造用乾燥装置,化学製品製造用換熱器,化学製品製造用蒸煮装置,化学製品製造用蒸発装置,化学製品製造用蒸留装置,化学製品製造用熱交換器,工業用炉,原子炉,ボイラー(動力機械部品・機関用のものを除く。)」
第12類「牽引車,荷役用索道,陸上の乗物用の動力機械器具(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),船舶並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品及び附属品」
第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備,船舶の建造,船舶の修理又は整備,荷役機械器具の修理又は保守,土木機械器具の修理又は保守,電子応用機械器具の修理又は保守,電動機の修理又は保守,配電用又は制御用の機械器具の修理又は保守,発電機の修理又は保守,測定機械器具の修理又は保守,化学機械器具の修理又は保守,金属加工機械器具の修理又は保守,工業用炉の修理又は保守,貯蔵槽類の修理又は保守,化学プラントの修理又は保守,原子力発電プラントの修理又は保守」
第42類「建築物の設計,測量,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,機械器具に関する試験又は研究,電子計算機用プログラムの提供,水理学に関する研究」

別掲2 証拠調べ通知書において示した事実
(1)本願商標から生じる「製造ではなく、創造だ。」の意味合いと同様の文言が、企業理念や経営方針を表す語として用いられている事実
ア 「Taica」のウェブサイトにおいて、「CONCEPT/コンセプト」の見出しの下、「WHAT IS A “MAKER”?・・・いつからメーカーは、製造業になったのだろう。・・・むしろ製造業というカタチにとどまらず、社会の課題や人の想いに応える。それはやがて、製造ではなく創造に変わる。・・・それが私たちの考える、メーカーのあるべき姿だ。/THE VALUE MAKER/製造じゃない、創造するんだ。」の記載がある。
(https://taica.co.jp/recruit/message/)
イ 「株式会社進和技研」のウェブサイトにおいて、「可能性へのゆるぎない追求」の見出しの下、「お客様の胸に宿ったアイディアを実現させるモノづくり、それが私たちの仕事です。目指すのは、世界にたった1つしかないオリジナリティーにあふれた機械。その開発工程を、私たちは「製造」ではなく、「創造」と呼んでいます。」の記載がある。
(https://wwb.jp/sg/)
ウ 「ジョブナビ」のウェブサイトの「株式会社 由利 大宮工場」に関するページにおいて、「採用情報」の項目に、「人生を豊かにするために、常に進化する鞄創造ブランドを目指します。/ただ鞄を製造するのではなく、お客様の人生を豊かにすることをミッションとして、株式会社由利では“製造”ではなく“創造”という言葉を使用しています。」の記載がある。
(https://kyotango-jobnavi.org/data/yurikk/)
エ 「BSテレ東」のウェブサイトの「カンブリア宮殿/バックナンバー/2012年1月19日放送」のページにおいて、「村上龍の/編集後記」の項目に、「ブラザー工業は創業以来100年を超える歴史を持つが、創業者や歴代社長の自伝の類が極端に少ない。 おそらく「過去を振り返るよりも新規事業のアイデアが優先」という企業文化が根づいているからだ。「製造ではなく創造」という社風は、ミシン修理の際に部品を独自に作ったという創業以来の伝統に由来している。」の記載がある。
(https://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2012/0119/)
オ 「FUJIPOLY」のウェブサイトにおいて、「職種を知る」の見出しの下、「創業当初より「製造から創造へ」をスローガンに、また、経営理念として「フジポリは、新しい価値の創造により、社会への貢献と社員の幸福を追求します。」を掲げ、時代のニーズに合った新しいものを創造することを全社員で目指しています。」の記載がある。
(https://www.fujipoly.co.jp/recruit/shokusyu/)
カ 「株式会社フキタ鉄工」のウェブサイトにおいて、トップページに、「製造から創造へ/株式会社フキタ鉄工」の記載がある。
(http://www.futakitekkou.com/index.html)
キ 「MURAMATSU KIKO」のウェブサイトにおいて、トップページに、「製造から創造へ 村松機工」の記載がある。
(http://www.mmkk.jp/)

(2)本願商標のように「じゃない」、「だ」の各文字を「〜じゃない〜だ」のように組み合わせた文字構成や、これに「」(かぎ括弧)を組み合わせた文字構成が用いられている事実
ア 「株式会社テク・ミサワ」のウェブサイトにおいて、「企業方針」の見出しの下、「部品じゃない/作品だ!」の記載がある。
(https://techmisawa.jp/concept/)
イ 「PIC/school」のウェブサイトにおいて、「PICの理念/「コツ」じゃない「学力」だ。」の記載がある。
(http://www.school-pic.net/philosophy/)
ウ 「HIROBA!」のウェブサイトにおいて、「HIROBAスタッフによる、#映画館で映画を見ることの良さを伝えるキャッチコピー」の見出しの下、「動画配信サービスが勢いを増し、自宅や外出先などで手軽に映画やドラマが楽しめるようになり、またコロナ禍もあって、映画館から少し足が遠のいているという人もいるかもしれません。そこで今回は、映画館で映画を見ることの良さ
を伝えるキャッチコピーをHIROBAスタッフで考えました。」の記載があり、「<今月のグランプリ>」として、「鑑賞じゃない、体験だ」の記載がある。
(https://hiroba-magazine.com/feature/copy-18/)


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-09-21 
結審通知日 2022-09-27 
審決日 2022-10-12 
出願番号 2020030934 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (W06070911123742)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 鈴木 雅也
渡邉 あおい
商標の称呼 セーゾージャナイソーゾーダ、セーゾージャナイ、ソーゾーダ 
代理人 弁理士法人磯野国際特許商標事務所 

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