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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X36
管理番号 1392179 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2021-02-12 
確定日 2022-11-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第5328151号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5328151号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成21年12月11日に登録出願、第36類「証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理,投資の仲介,投資用ポートフォリオの管理,財務管理,有価証券の売買,金融派生商品取引,金融・財務分析,信託の引受け,銀行業務,株式市況に関する情報の提供,投資に関する助言又は指導,金融又は財務に関する助言」を指定役務として、同22年4月28日に登録査定、同年6月4日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、令和3年(2021年)3月2日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の平成30年(2018年)3月2日から令和3年(2021年)3月1日までを以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、登録第5328151号商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもその指定役務について使用した事実が存しないことから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、「要証期間内に日本国内において商標権者が指定役務『証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理』について本件商標を使用している」旨を主張し、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
しかしながら、以下に述べるように、上記乙各号証によっては、本件商標の使用に関する被請求人の主張事実は証明されていないから、本件商標登録は取り消されるべきである。
商標法第50条の答弁書においては、(i)被請求人若しくはその使用権者が、(ii)取消請求に係る期間(本件でいえば、平成30年3月2日から令和3年3月1日の予告登録時までの間)に、(iii)請求に係る指定役務について、(iv)本件商標と同一の商標を、商標法第2条第3項各号のいずれかに規定する態様で、日本国内において「使用」していたことを「証明」しなければならない。
さらに、商標の使用というためには、自他商品識別機能が発揮されている状態でなければならないから、単に、登録商標と同一の標章がどこかに付されていたとしても、そのことをもって、直ちに商標の使用ということはできない。
(2)本件商標の使用が乙各号証によって証明されていないことについて
被請求人は「本件商標の通常使用権者が、本件商標と同一の商標を、『証券投資信託受託証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理』について使用していたことは明らかである」旨を主張するものの、以下の理由よりすれば、被請求人が通常使用権者と主張する楽天証券株式会社(以下「楽天証券」という。)が、本件商標の通常使用権を有することについて乙各号証によって証明されたとはいい難い。
楽天証券が本件商標に係る商標権について通常使用権を有する根拠として、被請求人は乙第2号証(審決注:「乙第1号証」の誤記と認められる。以下、この段落において同じ。)を提出するが、乙第2号証は要証期間外である2021年5月19日に形成されたものである。さらに、乙第2号証には「BOCI Securitiesと業務提携にかかる覚書を締結しました」と記載され、BOCI Securities社の概要が記載されているものの、商標権者である「ビーオーシーアイ−プルデンシャル アセット マネジメント リミテッド」又はその英語表記の記載は一切ないし、覚書も提出されていないことからすれば、乙第2号証は、楽天証券が本件商標に係る商標権について通常使用権を有する根拠足り得ない。
また、乙第4号証ないし乙第6号証は金融庁に提出した運用報告書であり、販売会社である楽天証券の記載及び同社ウェブページヘのリンクが掲載されていることについては認められるものの、販売会社として記載は、単に楽天証券が「W.I.S.E − CSI 300 China tracker」を取り扱っていることのみを示すものである以上、楽天証券が本件商標に係る商標権について通常使用権を有していることまでは認められない(業務提携を結んだことを内容とする乙第2号証(審決注:「乙第1号証」の誤記と認められる。)が通常使用権の根拠足り得ないことは前記のとおりである)。
なお、運用報告書(乙4〜乙6)は金融庁に提出する書面としての性格を踏まえると、役務に関する取引に際して用いられる書面ではないため、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告、価格表若しくは取引書類」に該当しないというべきであり、このような書面に商標を付したとしても、同号に定める商標の使用には該当しない。
そして、被請求人の主張を踏まえると、被請求人自らは我が国において本件商標をその指定役務に使用していないことが窺える。
以上のことからすれば、被請求人が立証責任を有する前記事項のうち、「(i)被請求人若しくはその使用権者が、」については、証明されたとはいえない。
また、被請求人が提出する他の証拠についても、以下の事項を踏まえると、本件商標が要証期間内に使用されていたことを示す証拠としては不十分であるといわざるを得ない。
被請求人は、楽天証券が本件商標を使用したことを示す証拠として乙第2号証を提出しているものの、乙第2号証のみをもって、本件商標が要証期間内に楽天証券によって「証券投資信託受託証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理」について使用されていたことは証明されていない。
すなわち、被請求人は「乙2の2によれば、本件投資信託に係る『W.l.S.E − CSI 300 China tracker』が、2007年7月17日に設定され、被請求人と楽天証券の業務提携以降、運用がなされていることが理解できる」と主張するが、2007年7月17日が我が国おいて、役務の提供が開始された日なのか、我が国以外の場所(例えば、被請求人が居所を有する香港)で提供されたのか明らかではない。
また、被請求人は乙第3号証において、本件投資信託の値動きを示す「チャート」が少なくとも過去10年分掲載されていることをもって、「本件投資信託に係る『W.l.S.E − CSI 300 China tracker』の取引が我が国において継続的になされていた事実を示す」と主張するが、過去の「チャート」の値動きが掲載されていることをもって、我が国において取引がなされていたことを肯定することは早計であるといわざるを得ない。
すなわち、かかる「チャート」は、楽天証券が本件投資信託に係る「W.l.S.E − CSI 300 China tracker」の取引を我が国で開始する以前の我が国国外の値動きを参考のために掲載したものである可能性も否定できない。
乙第3号証においては、楽天証券のウェブページ上で、本件投資信託に係る「W.I.S.E − CSI 300 China tracker」の買い注文ができることが窺えるものの、これが要証期間内に可能であったか否かは明らかではない。
被請求人は、乙第2号証が要証期間外に印刷されたことを認めた上で、乙第4号証の2、乙第5号証の2、乙第6号証の2に記載の楽天証券のウェブページのURLをクリックすると乙第2号証に係るウェブページが表示されることをもって、乙第2号証が要証期間内にも表示されていたことを主張しているようであるが、一般的にウェブページが必要に応じてその内容を自由に改変・編集できる性質のものである以上、これら証拠は要証期間内に乙第2号証のウェブページが存在したことの証明にはならない。
乙第4号証ないし乙第6号証が、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告、価格表若しくは取引書類」に該当しないことは前記のとおりであり、乙第2号証のウェブページが要証期間内に提出された内容で存在していたかも不明である以上、本件商標が要証期間内に商標法第2条第3項第8号の態様で使用されていたことは証明されたとはいい難い。
被請求人が主張する本件商標の使用行為は、もっぱら商標法第2条第3項第8号に基づくもののみであることを踏まえると、被請求人が立証責任を有する前記事項のうち、「(ii)取消請求に係る期間(本件でいえば、平成30年3月2日から令和3年3月1日の予告登録時までの間)に」及び「(iv)本件商標と同一の商標を、商標法第2条第3項各号のいずれかに規定する態様」について証明されたとはいえない。
なお、被請求人は我が国における取引実績に関する資料として乙第7号証を提出するが、乙第7号証は内部資料にすぎず、客観性は一切存在しない。
(3)結語
以上述べてきたように、被請求人によって提出された上記乙各号証によっては、本件商標の使用事実は何ら証明されていないから、本件商標に係る登録は、取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求人の主張
本件商標は、以下に述べるとおり、要証期間内に、被請求人によって、その指定役務中の、少なくとも「証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理」について使用された事実がある。
よって、本件審判の請求が成り立たないことは明らかである。
2 本件商標の商標権者である被請求人について
被請求人であるビーオーシーアイ−プルデンシャル アセット マネジメント リミテッドは、香港における強制積立基金制度(MPF)、年金基金、個人投資信託、上場投資信託、機関投資信託、その他の投資ファンドなど、幅広い投資商品とサービスを提供している。また、同社は、個人及び機関投資家向けの投資一任ポートフォリオ及びチャリティーファンドも管理している。
被請求人は、わが国においては、本件審判の請求の登録前の2010年11月16日に締結された業務提携のもと(乙1)、わが国における国内販売会社である楽天証券を通じて、本件商標を用いて、「証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理」等を行っている。
3 本件商標の使用事実
(1)使用証拠
本件商標に係る「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」は、「香港籍指数連動型上場投資信託/私募外国投資信託」、すなわち、外国籍(中華人民共和国の特別行政区である香港)の上場投資信託(ETF)であって、指数連動型の投資信託(ファンド)(以下「本件投資信託」という。)の名称として採択されたものである。
ア 国内販売会社のホームページ(乙2〜乙4)
乙第2号証は、被請求人の業務提携先であって、日本における国内販売会社である楽天証券が、わが国において、要証期間内に、本件投資信託の取引(証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理等)を行った事実を示す、同社のホームページの写しである。
乙第2号証の1は、本件投資信託の現在の価格を示すページである。
乙第2号証の2は、本件投資信託の概要を示すページである。
乙第2号証の3は、本件投資信託の最大過去10年間の値動きを示すものである。
もっとも、同ホームページは、要証期間外に印刷されたものであるところ、乙第2号証の2によれば、本件投資信託に係る「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」が、2007年7月17日に設定され、被請求人と楽天証券の業務提携以降、運用がなされていることが理解できる。
また、本件投資信託の値動きを示す「チャート」(乙2の3)が少なくとも過去10年分掲載されているものである。これは、要証期間はもちろんのこと、これを優に超える10年以上の長きに渡って、本件投資信託に係る「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」の取引がわが国において、継続してなされていた事実を示すものである。
上記ウェブページにおいては、本件商標に係る「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」の文字が表示されている。
本件投資信託「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」の売買を希望する者は、本件投資信託のページ(乙2)内の「買い」又は「売り」のボタンをクリックしたあと、楽天証券のログインIDとパスワードを入力するページに移動する(乙3)。これらを入力した後、取引をすることが可能となる。
イ 運用報告書(乙4〜乙6)
2013年改正金融商品取引法により、運用報告書の二段階化(「交付運用報告書」と「運用報告書(全体版)」)がなされ、約款に定めがある場合、運用報告書の記載事項のうち重要なものだけを記載した書面(「交付運用報告書」)を交付すればよいこととなり、それ以外の記載事項については、投資者の個別の承諾がなくても電子媒体(電磁的方法)で提供すればよいこととなり、投資者から個別の請求があれば、従来の運用報告書(「運用報告書(全体版)」)を書面で交付しなければならないとされた。これは、本件商標が使用される、外国証券投資信託受益証券にも適用された。
そこで、2017年から2019年までの各年次における運用報告書(金融庁長官への提出書の写し、交付運用報告書、及び運用報告書(全体版))を提出する(2017年分につき乙4、2018年分につき乙5、2019年分につき乙6)。
上記各運用報告書においては、本件商標に係る「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」の文字が表示されている。
また、「交付運用報告書」においては、「運用報告書(全体版)」が販売会社である楽天証券のウェブサイトにおいて電磁的方法により提供されている旨の記載があり(乙4の2、乙5の2、乙6の2)、そのリンク先をクリックすると乙第2号証に係るウェブページが表示される。
ウ わが国における取引実績に関する資料(乙7)
先に述べたとおり、本件投資信託「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」の売買を希望する者は、本件投資信託のページ(乙2)内の「買い」又は「売り」のボタンをクリックして取引を開始し、ウェブサイト上ですべて取引が完結する。そのため、金銭の授受の事実を端的に示す、請求書の類が存在しない。
そのため、本件投資信託の国内販売会社である楽天証券が、わが国において、要証期間内に、本件投資信託の取引を行った事実を証明するため、売買金額を示す、同社の内部資料の写し(乙7)を提出する。
乙第7号証の1は、本件投資信託「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」に関する2018年10月から2021年2月までの、個別の売買取引の一覧表である。
例えば、一覧表中の「約定日時」の項目に記載されている、例えば「2018/10/9 12:34」は、「2018年10月9日 12時34分」に取引がなされた事実を表している。
乙第7号証の2は、乙第7号証の1に係る、本件投資信託「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」に関する2018年10月から2021年2月までの、売り(Sell)買い(Buy)の金額(Trading Value)の、月毎の総額を示す表である。表中の「Holders」は保有者の人数を示す。
(2)使用商標
被請求人の提出する上記乙第2号証、乙第4号証ないし乙第6号証に係る証拠に表示されている「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」(以下「本件使用商標」という。)と本件商標は、共に「W.I.S.E.− CSI 300 China Tracker」の文字を表したものであり、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であるから、本件商標と本件使用商標は、社会通念上同一の商標というべきものである。
(3)使用商品
上記乙第2号証、乙第4号証ないし乙第6号証に係る証拠に掲載されている、「香港籍指数連動型上場投資信託/私募外国投資信託」は、いわゆる投資信託(ファンド)に係る金融商品であり、このような金融商品は、少なくとも指定役務中の「証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理」の範ちゅうに属する。
(4)使用行為
乙第2号証には、被請求人のわが国における国内販売会社である楽天証券のホームページに本件商標が表示されている。
そして、本件商標に係る投資信託(ファンド)の購入者に頒布又は電磁的方法により提供される運用報告書(乙4ないし乙6)にも本件商標が明示されている。
これらの使用行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当することは明らかである。
(5)使用時期、使用場所
乙第2号証は、被請求人の通常使用権者である楽天証券によって作成又は頒布されたウェブサイトであり、日本語で記載されたものである。
乙第4号証ないし乙第6号証は、被請求人によって作成され、わが国で頒布されたものであり、いずれも上記の要証期間内(平成30年7月6日、令和元年9月9日、令和2年9月30日)のものである。
なお、乙第2号証は、要証期間内に印刷されたものはないが、インターネットのウェブページである性質上、過去の表示画面自体を証拠として提出することは困難である。
この点、要証期間内に作成、頒布されたことが明らかな「交付運用報告書」(乙4の2、乙5の2、乙6の2)においては、「運用報告書(全体版)」が販売会社である楽天証券のウェブサイトにおいて電磁的方法により提供されている旨の記載があり、そのリンク先をクリックすると乙第2号証に係るウェブページが表示される。
このことからすれば、少なくとも乙第2号証に係るウェブページは、「交付運用報告書」(乙4の2、乙5の2、乙6の2)が作成又は頒布された時期(平成30年7月6日、令和元年9月9日、令和2年9月30日)において、インターネットを通じて閲覧が可能であったものとみて差し支えないものであり、いずれも要証期間内である。
よって、いずれの証拠も、要証期間内において、日本国内で本件商標が使用された事実を示すものである。
(6)使用者
被請求人は、楽天証券との間で締結された2010年11月16日に締結された業務提携に基づき、同社をわが国における国内販売会社として、本件投資信託の取引を行っているものである。
被請求人は、楽天証券に対して本件商標の使用を許諾していたことは明らかである。
よって、楽天証券は、被請求人の通常使用権者といえる。
(7)小括
以上より、要証期間内において、本件商標の通常使用権者が、本件商標と同一の商標を、「証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理」について使用していたことは明らかである。
4 結論
以上より、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標が、商標権者及び通常使用権者によって、その指定役務中の少なくとも「証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理」について使用された事実が証明される。
よって、答弁の趣旨のとおり、本件審判の請求は成り立たない。との審決を求める。

第4 当審の判断
1 事実認定
被請求人の提出した証拠及び主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)楽天証券のホームページ中、マーケット情報の「中国株式:株価」(乙2の1)のページには、「W.I.S.E.−CSI300 CHINA TRACKER(W.I.S.E.−CSI300 チャイナ・トラッカ)」の表示と、オレンジ色の長方形内に「買い」及び青色の長方形内に「売り」の表示があり、さらに、株価の推移(過去10年:2012年〜2021年)を示すグラフが表示されている。また、ファンド概要として「W.I.S.E.−CSI300 チャイナ・トラッカー(W.I.S.E.−CSI300 China Tracker)は指数連動型ファンド」である旨の記載がある。
また、同号証の2頁目の下部には、多様なインターネットサービスを提供している「楽天グループ」の表示があり、「楽天市場」、「楽天カード」、「楽天銀行」、「楽天生命」等の表示もあることからすれば、楽天証券は、楽天グループのインターネット証券会社と認められる。
(2)同マーケット情報の「中国株式:企業情報」(乙2の2)のページには、「W.I.S.E.−CSI300 CHINA TRACKER(W.I.S.E.−CSI300 チャイナ・トラッカ)」の表示と、オレンジ色の長方形内に「買い」及び青色の長方形内に「売り」の表示があり、さらに、ファンド情報として、資産クラスは「株式」、投資地域は「中国」、投資回数は「年1回」、設定国は「香港」、設定日は「2007/07/17」(2007年7月17日)、上場市場は「香港」、通貨は「香港ドル」、そしてファンド概要として、上記(1)と同じ内容の記載がある。
(3)同マーケット情報の「中国株式:チャート」(乙2の3)のページには、「W.I.S.E.−CSI300 CHINA TRACKER(W.I.S.E.−CSI300 チャイナ・トラッカ)」の表示と、オレンジ色の長方形内に「買い」及び青色の長方形内に「売り」の表示があり、上記(1)の株価の推移(過去10年:2012年〜2021年)を表示したグラフが大きく表示されている。
(4)上記(1)ないし(3)を踏まえると、楽天証券のホームページ(乙2)は、ファンドの概要、基本情報、株価の推移を掲載していることから、取り扱っているファンドの広告の役割を果たしているものということができる。
(5)楽天証券のホームページ中に、「中国株式・買い注文ログイン」(乙3)のページがある。
(6)運用報告書(2017年1月1日〜2017年12月31日)に関する金融庁長官宛の平成30年(2018年)7月6日付けの提出書(乙4の1)には、同日付で金融庁の受付印が押されており、報告対象のファンド名として「W.I.S.E.−CSI300 チャイナ・トラッカー」(右上の付記的部分に、ごく小さく「R」(審決注:「R」は、○の中にRの文字。以下同じ。)の記号が付されている。以下「R」の記号については省略する。)及び「(W.I.S.E.−CSI300 China Tracker)」が二段に表示されている。また、管理会社名として「BOCI−プルデンシャル・アセット・マネジメント・リミテッド」及び「(BOCI−Prudential Asset Management Limited)」が二段に表示されている。そして、「下記書類を提出いたしますので、よろしくお取り計らいください。」として、「記」の下に「W.I.S.E.−CSI300 チャイナ・トラッカー」及び「(W.I.S.E.−CSI300 China Tracker)」が二段に表示されている。そして「(計算期間:自 2017年1月1日 至 2017年12月31日―第10期)」とあり、「1.交付運用報告書 1部」及び「2. 運用報告書(全体版) 1部」と記載されている。
(7)運用報告書(2017年1月1日〜2017年12月31日)の交付運用報告書(乙4の2)の表紙には、上段に、表題として「W.I.S.E.− CSI 300 チャイナ・トラッカー」が表示されており、その直下に「香港籍指数連動型上場投資信託」及び「私募外国投資信託(香港ドル建)」が二段で記載されている。
また、中段右側には、四角囲いで、「受益者の皆様へ」として、「・・・『W.I.S.E.− CSI 300 チャイナ・トラッカー』(以下『本サブ・ファンド』または『サブ・ファンド』といいます。)は、このたび、第10期の決算を行いました。本サブ・ファンドは、SCI 300株価指数(以下『CSI300』といいます。)への連動の追求を目指して運用を行いました。今期の運用経過等について、以下の通りご報告いたします。・・・」との記載がある。
さらに、「その他記載事項」として、「運用報告書(全体版)は販売会社である楽天証券株式会社の下記のウェブサイトにおいて電磁的方法により提供しております。」として当該URLが表示されているとともに、「書面での運用報告書(全体版)は受益者の皆様のご請求により交付されます。書面での交付をご請求される方は、販売会社までお問い合わせください」とされている。
そして、下段には、管理会社として「BOCI−プルデンシャル・アセット・マネジメント・リミテッド」及び「(BOCI−Prudential Asset Management Limited)」が二段に表示されている。
(8)運用報告書(2017年1月1日〜2017年12月31日)の運用報告書(全体版)(乙4の3)の表紙には、上段に、表題として「W.I.S.E.− CSI 300 チャイナ・トラッカー」及び「(W.I.S.E.−CSI300 China Tracker)」が二段に表示されており、また、その下方に「香港籍指数連動型上場投資信託」及び「私募外国投資信託(香港ドル建)」が二段で記載されている。
また、下段には、管理会社名として「BOCI−プルデンシャル・アセット・マネジメント・リミテッド」及び「(BOCI−Prudential Asset Management Limited)」が二段に表示されている。
(9)運用報告書(2018年1月1日〜2018年12月31日)に関する金融庁長官宛の令和元年(2019年)9月9日付けの提出書(乙5の1)、交付運用報告書(乙5の2)及び運用報告書(全体版)(乙5の3)、並びに運用報告書(2019年1月1日〜2019年12月31日)に関する金融庁長官宛の令和2年(2020年)9月30日付けの提出書(乙6の1)、交付運用報告書(乙6の2)及び運用報告書(全体版)(乙6の3)には、上記(6)ないし(8)(乙4)と同様の表示等が確認できる。
2 判断
上記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)通常使用権者による「証券投資信託受益証券の募集・売出し」等についての使用について
ア 使用商標
楽天証券のホームページ中、マーケット情報の「中国株式:株価」(乙2の1)、「中国株式:企業情報」(乙2の2)、「中国株式:チャート」(乙2の3)の各ページに表示されている、「W.I.S.E.−CSI300 CHINA TRACKER」(以下「使用商標1」という。)と本件商標とは、一部にスペースの有無やローマ字の大文字と小文字の差異があるものの、両者は、構成文字や称呼を共通にする、社会通念上同一と認められる商標である。
イ 使用役務
楽天証券のホームページ中、マーケット情報の「中国株式:株価」(乙2の1)のページにおいて、「W.I.S.E.−CSI300 チャイナ・トラッカー(W.I.S.E.−CSI300 China Tracker)は指数連動型ファンド」である旨の記載があり、当該ページにおいて、当該ファンドの「買い」又は「売り」ができること、また、「W.I.S.E.− CSI 300 チャイナ・トラッカー(W.I.S.E.−CSI300 China Tracker)」の交付運用報告書及び運用報告書(全体版)(乙4の2、乙4の3、乙5の2、乙5の3、乙6の2、乙6の3)には「香港籍指数連動型上場投資信託」及び「私募外国投資信託(香港ドル建)」と表示されていることから、使用商標1は、当該ファンド(当該投資信託)の名称であって、請求に係る指定役務中、第36類「証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理」の範ちゅうに含まれる役務に使用されているものと認められる。
ウ 使用時期
被請求人は、わが国においては、2010年11月16日に締結された業務提携のもと、わが国における国内販売会社である楽天証券を通じて、本件商標を用いて、「証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理」等を行っている旨主張しているところ、「W.I.S.E.− CSI 300 チャイナ・トラッカー(W.I.S.E.−CSI300 China Tracker)」の運用報告書(乙4〜乙6)等によれば、少なくとも2017年(平成29年)1月から現在に至るまで、楽天証券がわが国における当該ファンド(当該投資信託)の販売会社であることは明らかである。
そして楽天証券は、楽天グループのインターネット証券会社であることからすれば、インターネット上で当該ファンド(当該投資信託)の広告や取引を行うために、使用商標1が表示されている楽天証券のホームページ(乙2)が、要証期間においても存在していたことは、優に推認することができる。
エ 使用者
使用商標1は、楽天証券のホームページ(乙2)上で表示されているから、使用者は楽天証券である。
そして、被請求人は、わが国においては、2010年11月16日に締結された業務提携のもと、わが国における国内販売会社である楽天証券を通じて、本件商標を用いて、「証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理」等を行っている旨主張しているところ、「W.I.S.E.− CSI 300 チャイナ・トラッカー(W.I.S.E.−CSI300 China Tracker)」の運用報告書(乙4〜乙6)等によれば、少なくとも2017年(平成29年)1月から現在に至るまで、楽天証券がわが国における当該ファンド(当該投資信託)の販売会社であることは明らかであって、両者は業務上緊密な関係が認められる上、被請求人(本件商標権者)は、楽天証券によって使用商標1が使用されていることを認識できているにもかかわらず、それに対する異議を述べていない。
以上を総合判断すれば、被請求人(本件商標権者)は、楽天証券が本件商標を使用することについて黙示の許諾を与えているものと推認できる。
そうすると本件商標の使用者は、楽天証券であり、同社は本件商標の通常使用権者と認められる。
オ 使用行為
楽天証券のホームページにおいて使用役務に関する広告に使用商標1が表示される行為は、「役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)が行われていたものと認められる。
カ 小括
上記アないしオで判断したとおり、本件商標の通常使用権者は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中、第36類「証券投資信託受益証券の募集・売出し」等に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一の商標を付して、自社のウェブサイト上で、電磁的方法(インターネット)により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)をしていたことが認められる。
(2)商標権者による「証券投資信託受益証券の募集・売出し」等についての使用について
ア 使用商標
運用報告書(全体版)(乙4の3、乙5の3、乙6の3)の表紙に表示されている「W.I.S.E.−CSI300 China Tracker」(以下「使用商標2」という。)と本件商標とは、構成文字や称呼を共通にする、社会通念上同一と認められる商標である。
イ 使用役務
楽天証券のホームページ中、マーケット情報の「中国株式:株価」(乙2の1)のページにおいて、「W.I.S.E.−CSI300 チャイナ・トラッカー(W.I.S.E.−CSI300 China Tracker)は指数連動型ファンド」である旨の記載があり、当該ページにおいて、当該ファンドの「買い」又は「売り」ができること、また、「W.I.S.E.− CSI 300 チャイナ・トラッカー(W.I.S.E.−CSI300 China Tracker)」の交付運用報告書及び運用報告書(全体版)(乙4の2、乙4の3、乙5の2、乙5の3、乙6の2、乙6の3)には「香港籍指数連動型上場投資信託」及び「私募外国投資信託(香港ドル建)」と表示されていることから、使用商標2は、当該ファンド(当該投資信託)の名称であって、請求に係る指定役務中、第36類「証券投資信託受益証券の募集・売出し,投資,金融資産の管理」の範ちゅうに含まれる役務に使用されているものと認められる。
ウ 使用時期
金融庁長官宛の提出書(乙4の1、乙5の1、乙6の1)によれば、運用報告書(全体版)(乙4の3、乙5の3、乙6の3)は、平成30年(2018年)7月6日、令和元年(2019年)9月9日、令和2年(2020年)9月30日にそれぞれ金融庁に提出されていることから、当該運用報告書(全体版)は、いずれも要証期間内である当該時期において、販売会社である楽天証券のウェブサイトにおいて電磁的方法により提供されていたものと推認される。
エ 使用者
運用報告書(全体版)(乙4の3、乙5の3、乙6の3)の表紙に管理会社名として表示されている「BOCI−プルデンシャル・アセット・マネジメント・リミテッド」及び「(BOCI−Prudential Asset Management Limited)」は、本件商標権者と認められるから、使用商標2の使用者は、本件商標権者である。
オ 使用行為
本件商標権者が、使用役務に関する取引書類に使用商標2を表示したものを、楽天証券のホームページを通じて提供する行為は、「役務に関する取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)が行われていたものと認められる。
カ 小括
上記アないしオで判断したとおり、本件商標権者は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中、第36類「証券投資信託受益証券の募集・売出し」等に関する取引書類(「運用報告書(全体版)」)を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一の商標を付して、日本国内の販売会社である楽天証券のウェブサイトを通じて電磁的方法(インターネット)により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)をしていたことが認められる。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、乙第1号証が要証期間外に形成されたものであること、同号証には商標権者である「ビーオーシーアイ−プルデンシャル アセット マネジメント リミテッド」又はその英語表記の記載が一切ないことから、同号証は楽天証券が本件商標に係る商標権について通常使用権を有する根拠足り得ない旨、また、乙第4号証ないし乙第6号証の運用報告書は販売会社である楽天証券が「W.I.S.E − CSI 300 China tracker」を取り扱っていることを示すのみであって、楽天証券が本件商標に係る商標権について通常使用権を有していることまでは認められない旨主張している。
しかしながら、上記2(1)エのとおり、楽天証券はわが国における当該ファンド(当該投資信託)の販売会社であって、被請求人(本件商標権者)と業務上緊密な関係が認められる上、被請求人(本件商標権者)は、楽天証券によって使用商標1が使用されていることを認識できているにもかかわらず、それに対する異議を述べていないことからすれば、被請求人(本件商標権者)は、楽天証券が本件商標を使用することについて黙示の許諾を与えているものと推認できるので、楽天証券は本件商標の通常使用権者と認められる。
イ また、請求人は、一般的にウェブページが必要に応じてその内容を自由に改変・編集できる性質のものである以上、乙第4号証の2、乙第5号証の2、乙第6号証の2に記載の楽天証券のウェブページのURLをクリックすると乙第2号証に係るウェブページが表示されることをもって、要証期間内に乙第2号証のウェブページが存在したことの証明にはならない旨主張している。
しかしながら、上記2(1)ウのとおり、少なくとも2017年(平成29年)1月から現在に至るまで、楽天証券はわが国における当該ファンド(当該投資信託)の販売会社と認められること、楽天証券は、楽天グループのインターネット証券会社であることからすれば、使用商標1が表示されている楽天証券のホームページ(乙2)が、要証期間においても存在していたものと推認することができる。
ウ さらに請求人は、運用報告書(乙4〜乙6)は、金融庁に提出する書面としての性格を踏まえると、役務に関する取引に際して用いられる書面ではないため、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告、価格表若しくは取引書類」に該当しないというべきであり、このような書面に商標を付したとしても、同号に定める商標の使用には該当しない旨主張している。
しかしながら、上記1(7)ないし(9)のとおり、交付運用報告書及び運用報告書(全体版)(乙4の2、乙4の3、乙5の2、乙5の3、乙6の2、乙6の3)は、金融庁に提出するためだけに作成されたものではなく、受益者に報告するために作成されたものであることは明らかであるから、当該報告書は、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する・・・取引書類」の範ちゅうに含まれるものと認められる。
エ 以上のとおり、請求人の主張は、いずれも採用することはできない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標権者及び通常使用権者が、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていたことを証明したと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲(本件商標)



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。

審判長 岩崎 安子
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2021-12-02 
結審通知日 2021-12-07 
審決日 2021-12-22 
出願番号 2009094142 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X36)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 板谷 玲子
森山 啓
登録日 2010-06-04 
登録番号 5328151 
商標の称呼 ダブリュウアイエスイイシイエスアイサンビャクチャイナトラッカー、ダブリュウアイエスイイシイエスアイサンゼロゼロチャイナトラッカー、ダブリュウアイエスイイ、ワイズ、シイエスアイサンビャクチャイナトラッカー、シイエスアイサンゼロゼロチャイナトラッカー、シイエスアイサンビャク、シイエスアイサンゼロゼロ、シイエスアイ、チャイナトラッカー、トラッカー 
代理人 石田 昌彦 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 松下 友哉 
代理人 右馬埜 大地 
代理人 田中 克郎 
代理人 田中 伸一郎 

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