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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W25
管理番号 1392151 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-21 
確定日 2022-11-04 
事件の表示 商願2020− 45249拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、別掲1のとおり、「overprint」の文字を弓なりに表してなり、第25類「被服,洋服,スウェットシャツ,スウェットパンツ,パーカ,ティーシャツ,靴下,手袋,マフラー,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,靴類,スニーカー,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」を指定商品として、令和2年4月23日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年1月18日付けで拒絶理由の通知がされ、同年3月26日に意見書(以下「意見書」という。)が提出されたが、同年6月16日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年9月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、「overprint」の文字を弓なりに表してなるところ、これは、一般的に用いられる表現の範ちゅうであり、普通に用いられる方法の範囲を脱しておらず、また、当該文字は、「(すでに印刷してあるものに)刷り重ねる」ほどの意味合いを認識させる。さらに、本願の指定商品を取り扱う業界において、「overprint」に通ずる「オーバープリント」の語が、「あるカラーの上にカラーを刷り重ねて製造された商品」であることを示す語として一般的に使用されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定商品中、上記のような手法で製造された商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、上記意味合いを理解するにとどまり、商品の品質を表示しているものと認識する。また、本願商標を上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3及び同法第4条第1項第16号に該当し、かつ、本願商標は、何人かの出所表示としてその商品の需要者の間で全国的に認識されているとはいえないから、使用をされた結果、周知性、識別性を獲得している商標とはいえないため、同法第3条第2項の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における審尋
当審において、令和4年4月22日付審尋により、請求人(出願人)(以下「請求人」という。)に対し、別掲2及び別掲3のとおりの事実を提示した上で、本願商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号並びに同法第3条第1項第6号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。

4 審尋に対する請求人の回答
請求人は、上記3の審尋に対し、指定した期間を経過するも、何ら回答をしていない。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、「overprint」の文字を弓なりに表してなるところ、「overprint」は、「〔・・・に〕・・・を刷り重ねる」を意味する英語(ジーニアス英和辞典 第5版)であり、別掲2のとおり、「overprint(オーバープリント)」の文字は、「プリントしてある布地の上からさらに重ねてプリントすること」を表すものとしてファッション関連の辞書に記載されている。
また、別掲3のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界において、「overprint(オーバープリント)」の文字が、「プリントしてある布地の上からさらに重ねてプリントが施されている商品」を表すものとして使用されている実情があることが認められる。
そして、本願商標は、「overprint」の文字を弓なりに表してなるとしても、多種多様なレタリング手法が存在する状況においては、本願商標は、殊更に、特殊な態様からなるものと認めるべき特段の事情は見当たらない。
そうすると、本願商標を、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該商品が、「プリントしてある布地の上からさらに重ねてプリントが施されている商品」であることを理解するにとどまり、商品の品質を表示するものと認識し、また、本願商標を「プリントしてある布地の上からさらに重ねてプリントが施されている商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、「overprint」の文字を弓なりに表してなるところ、「overprint」の欧文字は、上記(1)のとおり、「プリントしてある布地の上からさらに重ねてプリントすること」を表すものとしてファッション関連の辞書に記載され、本願の指定商品を取り扱う業界において、「overprint(オーバープリント)」の文字が、「プリントしてある布地の上からさらに重ねてプリントが施されている商品」を表すものとして使用されている実情があることが認められ、本願商標は、殊更に、特殊な態様からなるものと認めるべき特段の事情は見当たらない。
そうすると、本願商標を、その指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者に、当該商品が、「プリントしてある布地の上からさらに重ねてプリントが施されている商品」であることを理解させるにすぎないものであり、当該商品の品質、特徴を簡潔に表した宣伝広告であると認識させるものである。
そして、本願商標は、その指定商品について、何人もその使用を欲するといい得るものであり、特定人による独占使用を認めることを公益上適当としないものであるとともに、自他商品の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであるため、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができない商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、「本願商標が本願の指定商品の被服や履物等に付されて使用されるとき、本願商標から原審説示のような意味合いが暗示されるとしても、本願商標からはその他にも意味合いが生じ得るから、被服の品質それ自体を表示するものと認識されるとまでいうことはできない。」旨主張する。
しかしながら、上記(1)及び(2)のとおり、本願商標を、その指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、当該商品が、「プリントしてある布地の上からさらに重ねてプリントが施されている商品」であることを理解するにとどまり、商品の品質あるいは商品の特徴を簡潔に表した宣伝広告であると認識するものである。
イ 請求人は、「本願商標のデザインについて、取引者において一般的に使用する範囲にとどまらない特殊なレタリングを施して表示するものに該当するといえ、単に丸みを帯びた書体で表現されたにすぎないものではなく、本願商標の文字配列は、緩やかな右上がりの「over」と緩やかな右下がり「print」とを組み合わせ「p」を頂点とした極めて特徴のある構成からなるものである。」旨主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、多種多様なレタリング手法が存在する状況においては、本願商標の書体や構成等を考慮したとしても、本願商標は、殊更に、特殊な態様からなるものと認めるべき特段の事情は見当たらない。
ウ 請求人は、意見書及び審判請求書にて、「本願商標は、ウェブ、SNS等を通じた情報発信を毎日行うことで、洋服好きの若者に周知性・識別性を獲得している商標である。」旨主張し、当該主張を立証するための証拠を提出している。
そこで、請求人の主張及び同人の提出に係る証拠を参照すると、請求人は、本願商標を表示した商品を2020年から製造し、主としてECサイトで販売していること、請求人に係るSNSの2021年現在のフォロワー数は、4万8千人以上であること、請求人に係るSNSにおいて、本願商標を表示した商品を紹介していること、2020年から2021年にかけて雑誌やアイドルグループとのコラボが行われたこと、2019年の売上高が約1000万円、2020年の売上高は2億円との新聞記事の記載があること及びウェブ等を通じ、本願商標を表示した被服をモデル等が着用し、宣伝広告していることは確認できる。
しかしながら、本願商標を表示した商品の販売期間は、約2年程度と短いこと、広告は、SNSやウェブサイトが中心であり、広告手段が限定されていること、本願の指定商品の需要者は、老若男女問わず一般的な需要者であるところ、本願商標を表示した商品の主たる需要者は、洋服に興味を有する若年に限定されていること、新聞記事に記載された売上高が、本願商標を表示した商品のみのものであるかが明らかではないことに加え、本願商標を表示した商品の市場占有率やSNSやウェブサイト以外の広告宣伝方法及びその費用等についての証拠は提出されていないこと等からすると、請求人の主張及び提出された証拠によっては、本願商標が、本願の指定商品の需要者及び取引者の間において、請求人の取り扱いに係る商品を表示するものとして、広く認識されているとはいえない。
エ 請求人の上記主張は、いずれも採用することができず、その他、請求人の主張は、採用するべき事情はない。
(5)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲1 本願商標


別掲2「overprint(オーバープリント)」の文字が「プリントしてある布地の上からさらに重ねてプリントすること」を表すものとしてファッション関連の辞書に記載されている事実
(1)「新版ファッション/アパレル辞典」(2013年5月10日、繊研新聞社発行)「オーバープリント overprint」の項に「⇒オーバープリンティング」として、「オーバープリンティング overprinting」の項に「先に「無地染め」や「プリント(捺染)」などをしてある布地に、さらに別の図柄を上から重ねてプリントすることをいう。「オーバープリント」ともいう。」の記載がある。
(2)「新版 ファッション大辞典」(2019年3月30日、繊研新聞社発行)の「オーバープリント[overprint] 」の項に、「プリントした生地の上からさらに重ねてプリントすること、またそうしたプリント柄を指す。カバープリント[cover print]とも呼ばれる。」の記載がある。
(3)「繊維辞典」(昭和26年9月10日、財団法人商工会館出版部発行)の「オーバー・プリント(Over print)」の項に、「機械捺染の一種。カバー・プリントともいい、塗りかぶせる印捺又は被いかぶせ捺染の意で、先に捺染した箇所の上に被いかぶせて他の捺染糊を印捺する捺染方法をいう。=カバー・プリント」の記載がある。

別掲3 本願の指定商品を取り扱う業界において、「overprint(オーバープリント)」の文字が、「プリントしてある布地の上からさらに重ねてプリントが施されている商品」を表すものとして使用されている事実
(1)「楽天市場」のウェブサイトにおいて、「JORDAN【BOYSサイズ★旧口ゴの上から3連のNIKE AIRをオーバープリント】半袖Tシャツ【ブラック黒】」の見出しの下、「JORDAN BOYS(ジョーダンボーイズサイズ)のクルーネック半袖Tシャツになります。・・・ ☆前後にまたがるサイドプリントのデザイン☆チャコールグレーの旧口ゴを縦置きし、その上から赤・白・緑の3連のNIKE AIRをオーバープリント☆」の記載がある。
https://item.rakuten.co.jp/slyder/10010237/
(2)「楽天市場」のウェブサイトにおいて、「AZZURE【透明のオーバープリントあり★ビッグシルエット】半袖Tシャツ【ホワイト白】USEDアズール」の見出しの下、「☆ブランドロゴの一文字づつをチェック、ストライプと全てパターンを変え、エンブレム(紋章)とMIX☆さらに!その上から透明のドットのプリントでアクセントをプラス☆」の記載がある。
https://item.rakuten.co.jp/slyder/10009234/
(3)「AVIREX」のウェブサイトにおいて、「AVIREX/アヴィレックス/半袖 オーバープリント ハワイアンシャツS/S OVER PRINT HAWAIAN SHIRT/アロハシャツ」の見出しの下、「DESCRIPTION・・・アメリカ海軍の航空母艦エンタープライズをモチーフに生地の柄はエンタープライズが航行した地をモチーフにしていて背中にはオーバープリントで更にプリントを施しました。」の記載がある。
https://www.avirex-usa.com/shop/avirex-official-site/item/view/shop
_product_id/65298
(4)「あまねくストア」のウェブサイトにおいて、「A00267/ニルズNilsエクセスオーバープリントTシャツ」の見出しの下、「COTTON 100%を使用したJERSEY生地はしっかりと生地感にストリートの要素を含ませたプリント地を施しております。」の記載がある。
https://associationpatc.buzz/index.php?main_page=product_info&products_id=6363
(5)「WEAR」のウェブサイトにおいて、「【WEB限定】BEAMS/NEW STANDARD オーバープリント アロハシャツ」の見出しの下、「アイテム説明・・・パイナップル柄の生地の上にドット柄をオーバープリン卜することでクラシックな印象を中和。」の記載がある。
https://wear.jp/item/19363223/
(6)「used&vintage box Hi-smile」のウェブサイ卜において、「90’s ディズニーイェン・シッドオーバープリントTシャツ」の見出しの下、「●コメント・・・前後両面ともにディズニー映画『ファンタジア』に登場する魔法使いでミッキーマウスの師匠『イェン・シッド』がプリントされたインパクトのあるデザインですが、こちらはその前面にエアブラシによるペイントが施された正真正銘の1点物。」の記載がある。
https://www.hi-smile.com/product/19021
(7)「YAHOO!ショッピング」のウェブサイトにおいて、「VANS バンズ ヴァンズ スニーカー SK8-HI スケートハイ バンズハイカット OVERPRINT オーバープリントBLACK/CLASSI
C WHITブラック/ホワイト」の見出しの下、「商品情報・・・キャンバスの上にオーバープリントした新たな技法でデザインした新作。」の記載がある。
https://store.shopping.yahoo.co.jp/fringe-cs/sk8hi-vn0a4bv6v8p.html
(8)「西武・そごうのe.デパート」のウェブサイトにおいて、【JOSEPH ABBOUD MOUNTAIN/UNISEX】OGシャンブレーカモ 折り畳みキャップ」の見出しの下、「■アイテム説明JOSEPH ABBOUD 永遠のテーマ「自然との共存」・「天然素材志向」にこだわり、環境へ配慮したORGANICライン。タテ糸にオーガニックコットンを使用したシャンブレードビー。3色の糸を先染めでシャンブレーに表現し、更にカモフラージュ柄をオーバープリントしたJOSEPH ABBOUDオリジナル素材を使用した折り畳みキャップです。」の記載がある。
https://edepart.omni7.jp/detail/00100504543785122605
(9)「Amazon Fashion」のウェブサイトにおいて、「[NEW ERA(ニューエラ)]キャップ59FIFTY ボタニカル LA ロサンゼルス・ドジャース ネイビー]」の見出しの下、「商品の説明 ニューエラのキャップで最もオーセンティックな、フィット感抜群の完成されたシルエットで、ストリートのアイコンとして君臨する人気ベースボールキャップ「59FIFTY」。今作は1950年代から1960年代のヴィンテージなアロハ柄をモチーフにニューエラがオリジナルで描き起こしたボタニカル柄をオールオーバープリントしたトロピカルなデザイン。」の記載がある。
https://www.amazon.co.jp/NEW-ERA-/dp/B07Q4VXNWD



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審理終結日 2022-08-31 
結審通知日 2022-09-06 
審決日 2022-09-22 
出願番号 2020045249 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W25)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 豊田 純一
特許庁審判官 小田 昌子
渡邉 潤
商標の称呼 オーバープリント、オーバー 
代理人 協明国際特許業務法人 

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