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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0105
管理番号 1391167 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-01-13 
確定日 2022-11-03 
異議申立件数
事件の表示 登録第6461827号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6461827号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6461827号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハイドロジェノール」の文字を標準文字で表してなり、令和3年1月15日に登録出願、第1類「水素・海洋深層水および植物由来ポリフェノールを含有する化学品」、及び「水素・海洋深層水および植物由来ポリフェノールを主原料とする粉状・粒状・錠剤状の加工食品,水素・海洋深層水および植物由来ポリフェノールを配合したサプリメント,水素・海洋深層水および植物由来ポリフェノールを配合した食餌療法用飲料,水素・海洋深層水および植物由来ポリフェノールを配合した食餌療法用食品」を含む第5類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年9月29日に登録査定され、同年10月26日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれも同人が販売する「フランス海岸松樹皮エキス」のブランド名としてサプリメントの分野において広く知られ、周知に至っているとするものである。
1 登録第4926868号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成 PYCNOGENOL
指定商品 第29類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成9年3月3日
設定登録日 平成18年2月10日
2 国際登録第1439558号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成 別掲のとおり
指定商品 第5類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日 2019年(令和元年)10月17日(事後指定)
設定登録日 令和3年2月26日
3 国際登録第1003213号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成 PYCNOGENOL
指定商品 第1類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日 2009年(平成21年)3月24日
設定登録日 平成22年5月14日

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証を提出した。
1 「PYCNOGENOL」の独創性
「PYCNOGENOL」は、「濃密」を意味するギリシャ語の接頭辞「PYCNO」と、「生む」「作り出す」を意味する英語「Generate」の「GEN」、フラボノイド系化合物の一種であるフラバノール(Flavonol)の接尾辞「OL」を組み合わせてなる、独創性の高い造語商標である。
申立人は、1973年に独自の抽出方法で得られるフランス海岸松の樹皮エキスについての製品(「フランス海岸松樹皮エキス」(以下「申立人製品」という。))を開発し(甲5)、それにつける商標として「PYCNOGENOL」を採択した。その後、1991年に最初の国際登録出願(甲6)、1992年には最初の日本出願(甲7)を行い、1996年より日本で「PYCNOGENOL」「ピクノジェノール」の名の下に申立人製品の販売を開始した(甲8)。
ところで、日本でサプリメントという商品が認識されたのは1990年頃のことであり、国が規制を緩和し、サプリメントの販売を認めたのは1996年のことになるから(甲9)、申立人製品が、日本のサプリメント市場における先駆けであることは明らかである。今でこそ、競合他社製品の中に引用商標と似たような構成からなる商標を見つけることも少なくないが、申立人製品のパイオニアとしての立ち位置及び後述する引用商標の周知性を考慮すれば、そのような後発組の商標は、全て引用商標へのすり寄りという他なく、引用商標が今でもなお高い独創性を持った造語商標であることに相違はない。
2 引用商標の周知性について
(1)海外における使用実績
前述したとおり、申立人は1973年に申立人製品を開発した。申立人製品にはプロシアニジン類やフラボノイド類が豊富に濃縮されており、優れた抗酸化作用をはじめ、抗炎症作用、コラーゲン結合作用、血流改善効果などを有することが科学的に実証されている。これらの特徴を生かして、申立人製品は、サプリメントをはじめ、医薬品、化粧品、糖尿病患者のための代替食品及び飲料等について世界中で広く使用され続けている(甲5、10、11)。
現在、申立人製品が配合された商品が販売されている国は、北米、南米、欧州、アジア及びアフリカの46カ国にのぼる(甲12)。
(2)日本における使用実績
日本では、前述したとおり申立人は1996年より商標「PYCNOGENOL」「ピクノジェノール」を付した申立人製品の販売を開始し、現在に至るまで24年間にわたり販売を行っており、日本における申立人製品の直近6年間の年別販売量は、2016年から2021年まで順に、921kg、1285kg、1232kg、1176kg、1249kg、1313kgである。
販売開始から24年を経てなお販売量が増加傾向にあることは、申立人製品が日本で親しまれていることの証拠に他ならない。これらの申立人製品は、主な日本販売代理店であるDKSHジャパン株式会社(甲13)及び株式会社トレードピア(甲14)を通じて各種メーカーヘ配分され、そこでサプリメントや化粧品等の最終製品に配合された上で需要者の手元に届く。現在日本で販売されている、申立人製品が配合されたサプリメントの一例を挙げる(甲15〜39)。
これらからは、申立人製品を配合したサプリメントが、健康食品通販の大手であるディーエイチシーをはじめ、健康食品通販業者及びネットショッピング大手の楽天市場及びAmazon等複数のチャネルを通じて、多数取り扱われている事実が分かる。また、多くの場合、販売されている各種サプリメントの包装容器あるいは販売ウェブサイトのページには、引用商標が大きく表示されており、申立人製品が単なるひとつの原料というよりもむしろ、商品の選択を左右する看板成分として扱われている事実が分かる。
(3)小括
引用商標が独創性の高い造語であること、引用商標が現在に至るまで24年もの間、健康食品通販の大手を含め複数のチャネルを通じてサプリメントについて使用され続けており、また申立人製品の販売数量は今でもなお増加傾向にある事実に鑑みれば、引用商標は、少なくともサプリメントの分野において広く知られており、周知に至っていると考えて然るべきである。
3 混同のおそれについて
(1)本件商標の指定商品(以下「本件指定商品」という。)と申立人製品について
本件指定商品の第5類には、いわゆるサプリメントが含まれている。前記のとおり、引用商標が広く知られている分野はサプリメントであるため、両者の商品は同一である。
次に、本件指定商品の表示によれば、当該サプリメントには「植物由来ポリフェノール」が主原料としてあるいは材料のひとつとして、含まれている。一般的に、ポリフェノールは高い抗酸化作用を有する成分として知られていることを加味するに、両者のサプリメントは、植物由来という点、高い抗酸化作用を有するという点で共通し、数あるサプリメントの中でも原材料・効能においてより近い関係性がうかがえる。
その他、本件指定商品には、第1類の化学品、第5類の食餌療法用飲料・食餌療法用食品が含まれている。申立人製品がサプリメントにとどまらず、薬剤・機能性食品・飲料の原料としても使用されている事実(甲4、5、11)に鑑みれば、第1類の化学品とは同じ「原料」として需要者・市場・流通経路が重複することは想像に難くない。また、第5類の食餌療法用飲料・食餌療法用食品と申立人製品とは、完成品と原材料としての密接な関係にあることは明らかである。
(2)引用商標と本件商標について
本件商標は、「ハイドロジェノール」の片仮名を標準文字で表したものであり、その構成に従い「ハイドロジェノール」の称呼が生じる。本件商標は、造語であるため、特定の観念は生じない。
一方、引用商標からは、その構成に従い「ピクノジェノール」の称呼が生じる。また、申立人は、引用商標の他に、「ミルトジェノール」(甲40)及び「MIRTOGENOL」(甲41)を登録し、2011年より現在に至るまで日本でサプリメントの原料及びサプリメントについて使用している(甲42〜46)。
(3)小括
前述した引用商標の周知性に加えて、申立人が「GENOL」「ジェノール」を接尾辞とする複数の商標を登録・使用している現状に鑑みれば、健康志向をうたう商品について「○○○GENOL」に接した需要者は、引用商標を想起すると考えるのが妥当である。
本件指定商品には、申立人製品と同じ、植物由来であって抗酸化作用を有する物質が含まれていることを考慮すればなおのこと、本件商標に接した需要者が引用商標を想起し、何らかの関連性があるものとして混同するおそれがあると考えて然るべきである。
4 まとめ
前記のとおり、引用商標が造語であって広く知られていること、申立人製品と本件指定商品の同一性等を考慮するに、本件商標が本件指定商品について使用された場合、申立人の業務に係る商品又は役務と何らかの関連性があるものとして広義の混同が生じるおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、(ア)申立人製品(フランス海岸松樹皮エキス)は、1973年に開発されたこと(甲5)、(イ)申立人により、商標「PYCNOGENOL」が1991年に国際登録出願、1992年に我が国に商標登録出願されたこと(甲6、7)、(ウ)1996年から我が国で申立人製品の販売が開始され、商標「ピクノジェノール」が使用されていること(甲8)、(エ)申立人製品は、サプリメントを始め、化粧品、糖尿病患者のための代替食品及び飲料などに使用されていること(甲5、10、11)、(オ)我が国で申立人製品を原材料に含むサプリメント、美容ドリンクが販売されており、販売者のウェブサイトにおける当該商品の紹介等において、申立人製品の説明と合わせて引用商標(色彩が異なるものを含む。)や商標「ピクノジェノール」の表示があるほか、上記各商標が包装容器に表示された商品もあること(甲15〜39)、(カ)申立人製品と「ミルトセレクト(MIRTOSELECT)」と称するエキスを配合した「ミルトジェノール(MIRTOGENOL)」と称する商品があること(甲42〜46)が認められる。
しかしながら、引用商標やこれの片仮名表記と理解される商標「ピクノジェノール」を使用した申立人製品の売上高等の販売実績、シェア、広告宣伝の規模等の事実を裏付ける具体的な証拠の提出はない。
なお、申立人は、その主張において、我が国における申立人製品の2016年ないし2021年の販売量について述べるが、これを客観的に裏付ける証拠の提出はないから、当該主張に係る販売量を採用することはできない。
(2)前記(1)のとおり、申立人製品は、1973年に開発されて以降、我が国では1996年に販売開始、一定数のサプリメント等の原材料に使用され、当該サプリメント等に申立人製品の説明とともに引用商標が表示されていることが認められる一方、引用商標を使用した申立人製品の販売実績や広告宣伝の規模等は確認できない。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、サプリメントを取り扱う者の間である程度知られていたとうかがえるとしても、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
2 本件商標と引用商標との類似性の程度について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり「ハイドロジェノール」の文字を標準文字で表してなるところ、当該構成文字に相応して「ハイドロジェノール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(2)引用商標
ア 引用商標1及び3は、前記第2の1及び3のとおり、いずれも「PYCNOGENOL」の欧文字からなるところ、当該構成文字に相応して「ピクノジェノール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標2は、別掲のとおり、二重円の間の上部に「PYCNOGENOL」の文字、下部に「HORPHAG RESEARCH」の文字を配し、当該二重円の内部に3本の木を表したと思われる図形を配してなるところ、その構成態様からすれば、構成全体をもって把握されるほか、上部に位置し、看者の注意を引きやすい「PYCNOGENOL」の文字も独立して商品の出所識別標識たり得る要部として把握されるといえる。
そうすると、引用商標2は、構成文字全体から生じる称呼のほか、「PYCNOGENOL」の文字に相応して「ピクノジェノール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。
(3)本件商標と引用商標との対比
本件商標と引用商標及び引用商標2の「PYCNOGENOL」の文字(以下、単に「要部」という。)とを比較すると、外観については、両者は構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
次に、称呼についてみると、本件商標から生じる「ハイドロジェノール」の称呼と引用商標から生じる「ピクノジェノール」の称呼とは、前半部において「ハイドロ」と「ピクノ」という音の相違があることから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、語調語感が異なり、彼此聞き誤るおそれのないものである。また、引用商標2の要部から生じる「ピクノジェノール」の称呼について、上記のとおり、彼此聞き誤るおそれのないものであるため、引用商標2の構成文字全体から生じる称呼については、なおさら、本件商標から生じる称呼と聞き誤るおそれのないものといえる。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標はいずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標との類似性が高いというべき事情は見いだせない。
3 出所の混同を生ずるおそれについて
(1)前記1のとおり、引用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認められないものであり、前記2(3)のとおり、本件商標は引用商標と非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、その商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(2)申立人は、商標「PYCNOGENOL」の独創性が高いと述べ、申立人に係る商標「MIRTOGENOL」の存在も挙げて、「○○○GENOL」に接した需要者は、引用商標を想起すると主張する。
しかしながら、「PYCNOGENOL」と称する申立人製品と「MIRTOSELECT」と称するエキスを配合した、「MIRTOGENOL」と称する商品があるとしても、その事実から直ちに「GENOL」の文字から引用商標を想起するとはいい難く、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、その主張を採用することはできない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものでなく、本件商標の登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲 引用商標2



(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-10-25 
出願番号 2021004378 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W0105)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 板谷 玲子
須田 亮一
登録日 2021-10-26 
登録番号 6461827 
権利者 炭プラスラボ株式会社
商標の称呼 ハイドロジェノール、ドロジェノール、ジェノール 
代理人 特許業務法人 丸山国際特許事務所 

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