• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W44
管理番号 1390911 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2021-09-21 
確定日 2022-07-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第6374562号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第6374562号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6374562号商標(以下「本件商標」という。)は、「やわらぎ」の文字を標準文字で表してなり、令和2年10月23日に登録出願、第44類「はり治療,アロマテラピーの提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,整体,美容,理容,医療情報の提供,健康診断,栄養の指導,介護,医療用機械器具の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与,セラピー」を指定役務として、同3年3月23日に登録査定、同年4月7日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
1 本件商標及び当事者
請求人は、それぞれ、大阪府大阪市北区にて「やわらぎ針灸整骨院天満」、千葉県八千代市にて「和らぎ整骨院」、東京都江東区で「やわらぎ整骨院」、東京都昭島市で「やわらぎ整骨院」を経営し、いずれも、捻挫、打撲等の症状に対して柔道整復術による治療を業として行う者である(甲1〜4)。
請求人4名は令和3年7月下旬、被請求人の代理人弁理士を名乗る人物から、請求人らの店舗及びウェブサイト等における「やわらぎ」の名称の使用によって被請求人の商標権が侵害されたとして、「やわらぎ」の名称の使用の中止と、それまでの本件商標の使用による損害賠償請求として金35万円の支払いを求めるとする「警告書」(甲5〜8)を受領した。
本件商標の権利者である被請求人は、「横浜クリア整骨院」を運営する者である(甲9)。
2 商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、前記第1のとおりの第44類の役務を指定役務とし、「やわらぎ」の標準文字によってなるところ、「やわらぎ」「和らぎ」は、「おだやかになる」「しずまる」という意味の動詞「やわらぐ」が名詞化したものであり、「やわらぐこと、またはその状態」という意味として国語辞典にも掲載された普通名詞である(甲10)。本件商標を上記指定役務について使用した場合には、指定役務に列挙された治療等によって痛みが和らぐ、症状が和らぐ、気持ちが和らぐという当該治療等の効能を表示しているにすぎず、これに接する需要者も一般に当該効能を連想するにすぎないから、単にその役務の効能を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 商標法第3条第1項第6号該当性について
商標法第3条第1項第6号は、同項第1号ないし第5号のほか、「商標の構成により識別力のないもの」「ありふれた商標で、多数人が現在使用しているため識別力のない商標」「公益上特定人に独占させることが不適当と認められるような商標」について登録を許さないものとする総括的な規定であると解される(「新・商標法概説(第3版)」135頁)。
また、同条項に関する審査基準によれば、同条項に該当する場合の一つとして「店名として多数使用されている商標」を挙げている。
本件商標は前記2記載のとおり、痛み・症状・気持ちが「やわらぐ」「おだやかになる」という意味の普通名詞であるから、本件商標における指定役務との関係では、およそ指定役務全般に妥当する極めてありふれた表現である。
さらに、特に整骨院・接骨院においては、施術者は「柔道整復師」の国家資格を有する者であり、その施術も「柔道整復術」といい、その歴史は柔道とも密接に関係しているが、「柔(やわら)」と「やわらぎ」が読みとして近く、その意味でも施術の内容を婉曲的に伝えることができるから、整骨院・接骨院において「やわらぎ」の屋号が使われることは多い。請求人が調査できただけでも「やわらぎ」「和らぎ」等の店名を使用するいわゆる整骨院・接骨院は、全国で少なくとも34軒ある(甲11)。
また、本件商標の指定役務に該当するその他の事業についてみても、少なくともはり・きゅう(鍼灸治療院)で8軒(甲12)、あん摩・マッサージ、指圧で7軒(甲13)、整体院で14軒(甲14)、介護施設で100軒以上を確認している(甲15)。
よって、まさに「多数人が現在使用しているため識別力のない商標」「店名として多数使用されている商標」である。
これらのことからすると、本件商標は、その標章によって需要者にそれが何人かの業務に係る役務であることを認識させるに足る識別力を有しないものであり、かつ、何人かに独占させるに不適当な標章である。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
前記3で述べたとおり、全国に「やわらぎ」「和らぎ」等の店名を使用する整骨院・接骨院は多数存在し、請求人が認識している範囲でも多くの当該事業者に被請求人から前記1に述べた警告書が送付されている。
また、業界新聞である「鍼灸柔整新聞」(甲16)や公益社団法人日本鍼灸師会のホームページ(甲17)にも本件に関係する記事が掲載されていることからすると、被請求人は、指定役務に該当する業務を行う全国の多くの整骨院、接骨院、鍼灸治療院等に同様の警告書を送付していることが推測される。
本件商標は「やわらぐ」が名詞化したものであって、指定役務の効能を表示するものでしかなく、かつ極めてありふれた表現であって、商標として登録するに適さない標章であることは明らかなところであり、かつ、全国数多くの指定役務にかかる事業者が従前から店名・屋号として使用していることは公知の事実であった。しかし被請求人は、誰しもがそのように考え、登録を控えていたそのような標章について、商標の登録を得るや、全国の事業者に警告書を送付し、しかもその内容は、根拠も示すことなく損害賠償として35万円の支払いを求めるというものであった(甲5〜8)。
このことからすれば、本件商標の登録は、商標権者等の業務上の信用の維持や需要者の利益保護という商標法の目的のためではなく、「やわらぎ」を店名・屋号として使用する事業者から損害賠償・使用料の名目で金銭を得ることを目的とするものであって、不当な目的のためになされたものであることは明らかであるから、公序良俗に反するものである。したがって、本件商標の登録を無効とすべきである。
5 上申の内容
商標法第4条第1項第7号について、協同組合中央接骨師会にも、当該「警告書」に関して相談が多く寄せられている(甲18)。

第3 被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 本件審判の請求の利益について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、被請求人は何ら争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
2 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 「やわらぎ(和らぎ)」の文字(語)は、「痛みなどによる心の騒ぎ・乱れがおさまったり平静になったりする。」程の意味を有する「やわらぐ(和らぐ)」の名詞である(甲10)。
イ 名称に「やわらぎ(和らぎ)」の文字を含む整骨院・接骨院、鍼灸院、マッサージ等の施術院、整体院等が、我が国において少なくとも60軒程度存在する(甲11〜14)。また、同様に、名称に「やわらぎ(和らぎ)」の文字を含む介護施設が100軒程度(甲15)存在する。
ウ 痛みや苦痛がやわらぐという「やわらぎ(和らぎ)」の文字(語)が有する意味合いやイメージなどから、当該文字が施術院等の名称に採択されやすく、取引者において、上記文字は特定人の独占に適さないものと認識されていることがうかがえる(甲1〜4、甲11〜15)。
(2)判断
本件商標は、前記第1のとおり、「やわらぎ」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成文字から、「痛みなどによる心の騒ぎ・乱れがおさまったり平静になったりする。」程の意味合いを容易に認識させるものである。
また、本件商標の指定役務は、前記第1のとおりであって、心身の痛みや乱れをおだやかにすることに関連する役務であるといえる。
そして、本件商標の指定役務に関連する事業者が、その名称中に「やわらぎ(和らぎ)」の文字を使用している事例が多数あることが認められる。加えて、そのような実情の下、取引者において、当該文字は特定人の独占に適さないものと認識されていることもうかがえるから、そのような文字(語)は、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるといえ、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないといわなければならない。
以上からすると、「やわらぎ」の文字からなる本件商標は、自他役務識別力を欠くものというのが相当である。
したがって、本件商標は、これをその指定役務に使用しても、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであると認められ、商標法第3条第1項第6号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、その登録は、同法第3条の規定に違反してされたものである。
したがって、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
なお、請求人は、本件商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第7号にも該当する旨主張しているが、提出された証拠によっては、本件商標が上記各号に該当すると認めることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-06-01 
結審通知日 2022-06-03 
審決日 2022-06-16 
出願番号 2020131343 
審決分類 T 1 11・ 13- Z (W44)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 板谷 玲子
馬場 秀敏
登録日 2021-04-07 
登録番号 6374562 
商標の称呼 ヤワラギ 
代理人 久保田 聖 
代理人 田中 利彦 
代理人 久保田 聖 
代理人 久保田 聖 
代理人 原田 貴史 
代理人 田中 利彦 
代理人 久保田 聖 
代理人 田中 利彦 
代理人 田中 利彦 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ