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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W25
管理番号 1390785 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2021-08-19 
確定日 2022-09-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第5811470号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5811470号商標(以下「本件商標」という。)は、「パンジー」の片仮名を横書きしてなり、平成26年12月22日に登録出願、第25類「被服」を指定商品として、同27年12月4日に設定登録されたものである。
なお、本件審判請求の登録日は、令和3年9月6日である。
また、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成30年(2018年)9月6日ないし令和3年(2021年)9月5日である(以下「要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
なお、請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して、何ら弁駁していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第19号証を提出した。
[答弁の理由]
本件商標は、要証期間に継続して日本国内において商標権者よりの黙示の許諾を受けた使用権者により、本件審判請求に係る指定商品「被服」に含まれる「看護師服」に使用されている。
1 本件商標と乙第1号証及び乙第3号証の商標について
乙第1号証ないし乙第4号証は、「KAZENグループ」が製造・販売するメディカルウェア(看護師服)に係るカタログである。
2021年版カタログの第89頁において商標「パンジー」が使用されている事実が確認できる(乙1)。
2020年版カタログの第79頁及び第81頁においても商標「パンジー」が使用されている事実が確認できる(乙3)。
本件商標は、標準文字にて「パンジー」と書すものである。
一方、上記各商標も外観的に特徴のないゴシック書体にて「パンジー」と書されている。
よって、本件商標と乙第1号証及び乙第3号証の商標は、同一、少なくとも社会通念上同一であることは明らかである。
2 要証期間に継続して使用されていたことについて
乙第1号証及び乙第2号証に示すカタログは、表紙に「2021」とあることから、これが2021年版のカタログであることは明らかである。なお、乙第1号証は、該カタログの抜粋であり、乙第2号証はその現物の写真である。
通常、翌年のカタログは、その前年の9月から10月頃には内容が決まり、11月頃には印刷会社に発注され、12月から翌年年明けには完成し、得意先等に頒布される。乙第1号証のカタログにあっても同様である。この点は、2021年版のカタログの印刷費用が、2021年1月26日に本件商標権者のグループ企業である「株式会社ベリテシステム」宛てに請求されている事実からも確認できる(乙5)。
同様に、乙第3号証及び乙第4号証は表紙に「2020」とあることから、これが2020年中に発行され頒布されたカタログであることは明らかである。
また、これらカタログが顧客に「頒布」されていたことを示す事実として、本件商標権者のグループ企業である「KAZEN WLD株式会社」が2020年5月に発行した納品書、及び同じくグループ企業である「株式会社サンアロー大阪支店」が2021年4月22日に発行した納品書を乙第6号証及び乙第7号証として提出する。
乙第6号証の納品書にある型番「072−22」、「074−22」及び「073−22」は、2020年版のカタログに「パンジー」として紹介されている看護師服の型番と一致し(乙1(審決注:「乙3」の誤記と認める。))、乙第7号証の納品書にある型番「070−28」及び「073−28」は2021年版のカタログに「パンジー」として紹介されている看護師服の型番と一致する(乙1)。
カタログは、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告」に該当するものであり、その使用態様もメディカルウェアの商標として機能する態様にて使用されているものであるから、本件商標が、要証期間に継続して使用されていたことは明らかである。
なお、要証期間の使用ではないが、本件商標は2017年以降継続して使用されている(乙8、乙9)。
3 商標使用者について
本件商標権者は、医療や介護、食品工場等の厳しい衛生管理が求められる職場を対象としたユニフォームの企画・製造・販売を行う「KAZENグループ」の一構成企業である。
「KAZENグループ」は、A氏が1964年に創業した「日産被服販売会社」(旧「株式会社アプロンワールド」、現「KAZEN WLD株式会社」)を中心に発展し、現在ではグループ各社の経理・人事といった管理機能を担う「KAZENホールディングス株式会社」、グループの中心的存在としてメディカルウェア(看護師服)の企画や病院等の大口契約先への販売を行う「KAZEN WLD株式会社」、メディカルウェア(看護師服)の生産を行う「株式会社タップ(本件商標権者)」、物流や卸売りを担う「株式会社サンアロー」、小売りや通販を担当する「株式会社KAZEN東京」、及び広告・宣伝等を行う「株式会社ベリテシステム」等により構成されている。「株式会社ベリテシステム」を除くグループ構成会社については、「KAZENグループ」のウェブサイトでも紹介されている(乙10)。
なお、これら各社がグループ企業として密接に連携していることは、創業者の子に当たるB氏が「KAZENホールディングス株式会社」、「KAZEN WLD株式会社」、「株式会社タップ」、「株式会社サンアロー」及び「株式会社ベリテシステム」の代表取締役を兼務しており、「株式会社KAZEN東京」についても同じく創業者の子であるC氏が代表取締役を務めていることからも明らかである(乙11〜乙16)。
このように、本件商標権者と「KAZENホールディングス株式会社」、「KAZEN WLD株式会社」、「株式会社タップ」、「株式会社サンアロー」、「株式会社KAZEN東京」及び「株式会社ベリテシステム」は、いずれも同族経営のグループ企業として密接に連携を取りながら活動しているのであるから、本件商標権者は他のグループ構成企業に対して、本件商標の使用について、黙示の使用許諾を与えていたと推認できる。
前記のとおり、乙第1号証ないし乙第4号証のカタログは、「KAZENグループ」全体で製造・販売するメディカルウェアに係るものである。これらカタログが「KAZENグループ」に係るものであることは、その表紙に商標「KAZEN」が付されていること、奥付にグループのウェブサイトのURLが記載されていること、カタログの制作費用について請求を受けた「株式会社ベリテシステム」(乙5)が、その後、2021年1月31日付で、同カタログ製作費用として「KAZEN WLD株式会社」、「株式会社サンアロー」及び「株式会社KAZEN東京」に対して請求書を発行していることからも明らかである(乙17〜乙19)。
乙第1号証のカタログは、前記「KAZENグループ」のウェブサイトにも掲載されている。
このように、本件商標は、商標権者よりの黙示の許諾を受けた使用権者により使用されていたことは明らかである。
4 使用商品について
乙第1号証ないし乙第4号証のカタログは、「メディカルウェア」すなわち「看護師服」に係るものである。
類似商品・役務審査基準に照らすと、「看護師服」は、本件審判の請求に係る指定商品「被服」に含まれる。
このように、本件商標は、本件審判請求に係る指定商品「被服」に含まれる「看護師服」に使用されていることは明らかである。
5 まとめ
本件商標は、要証期間に継続して日本国内において商標権者よりの黙示の許諾を受けた使用権者により、本件審判請求に係る指定商品「被服」に含まれる「看護師服」に使用されている。

第4 当審の判断
1 被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)乙第10号証は、「KAZEN」のウェブサイト(アドレス:「www.kazen.co.jp」)を2021年10月20日に出力した書面である。
当該書面の6葉目及び7葉目に、「KAZENグループ概要」のタイトルの下、「KAZENホールディングス株式会社」(以下「KAZENホールディングス社」という。)、「KAZEN WLD株式会社」(以下「KAZEN WLD社」という。)、「株式会社サンアロー」(以下「サンアロー社」という。)、「株式会社タップ」(以下「タップ社」又は「商標権者」という。)を含む複数の会社が、それぞれの設立年月、本社所在地、事業内容などとともに記載されており、上記会社は、いずれも本社の所在地が「東京都文京区白山・・・」であって同一の住所が記載されている。
(2)乙第11号証ないし乙第14号証は、それぞれKAZENホールディングス社、KAZEN WLD社、タップ社、サンアロー社の履歴事項全部証明書の写しであるところ、上記各社の代表取締役は、いずれもB氏である。
(3)乙第3号証は、「KAZEN」の2020年版カタログの抜粋であり、その表紙には「KAZEN MEDICAL 2020」の記載、また、5葉目の奥付には「KAZEN」、「www.kazen.co.jp」及び「KAZEN公式オンラインストアも併せてご覧下さい。」の記載と「本社・・・東京都文京区白山・・・」など、会社の所在地について記載がある。
そして、当該カタログの2葉目は、「NURSE WEAR[ナースウェア]Pansy(パンジー)」(別掲2)と表記されたページであって、「Pansy」(別掲1)のタイトルの下、看護師服を着用した人物2名の写真の傍らに「074−22 レディススクラブ (ホワイト×オリーブ) 本体価格¥7,600+税」、「073−22 ジャケット (ホワイト×オリーブ) 本体価格¥7,800+税」とそれぞれ記載されている。
なお、当該ページには、「073−22・28 メンズジャケット半袖 本体価格¥7,800+税」、「074−22・23・24・28 レディススクラブ 本体価格¥7,600+税」といった型番、品名、価格とともにサイズ表や仕様が掲載されている。
(4)乙第6号証は、KAZEN WLD社が顧客宛に発行した請求日・出荷日・受注日をいずれも2020年5月15日とする納品書の写しであって、「074−22 ホワイト×オリーブ/レディススクラブ」を4着及び「073−22 ホワイト×オリーブ/メンズジャケット 半袖」を3着、顧客に納品したといえる。
(5)上記(1)ないし(4)によれば、次の事実を認めることができる。
KAZENのウェブサイト(乙10)には、KAZENホールディングス社、KAZEN WLD社、タップ社(商標権者)、サンアロー社がグループ会社として記載されていること、上記各社の代表取締役は同一人物(乙11〜乙14)であることから、上記各社は、「KAZEN」と称するグループ会社(以下「KAZENグループ」という。)であるといえる。
さらに、2020年版カタログ(乙3)には、「KAZEN」の記載とともに、KAZENのウェブサイト(乙10)と共通のアドレス及び所在地が記載されていることから、KAZENグループが作成したカタログであると認められる。
そして、KAZENグループのKAZEN WLD社は、2020年版カタログ(乙3)の「Pansy(パンジー)」又は「Pansy」(これらを以下「使用商標」という。)と表記のあるページに掲載された、型番が「074−22」及び「073−22」の看護師服(ナースウェア)(以下「使用商品」という。)をいずれも2020年5月15日に受注し、顧客に納品(乙6)したということができる。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
2020年版カタログ(乙3)に表記された使用商標は、「Pansy(パンジー)」又は「Pansy」の文字からなるところ、これらは、いずれも「パンジー」の称呼を生じるものであり、また、「(スミレ科の一年草である)パンジー」の観念が生じる。
そして、上記第1のとおり、本件商標は、「パンジー」の文字を書してなるところ、これより「パンジー」の称呼を生じ、「(スミレ科の一年草である)パンジー」の観念が生じる。
そうすると、使用商標は、本件商標と同一の称呼及び観念を生じる商標であるから、本件商標とは社会通念上同一と認められる商標といえる。
(2)使用商品について
2020年版カタログ(乙3)に使用商標とともに掲載されている使用商品「看護師服(ナースウェア)」は、本件審判の請求に係る指定商品である第25類「被服」の範ちゅうに属する商品である。
(3)使用行為、使用時期、使用者について
2020年版カタログ(乙3)は、作成日について明記されていないものの、遅くとも2020年の年頭には作成され、頒布されたと推認し得るものであり、そのカタログに使用商標とともに掲載された使用商品は、少なくとも2020年5月15日に、KAZENグループのKAZEN WLD社によって顧客との間で取引されたといえる。
そして、この取引の時期は要証期間に含まれる。
また、2020年版カタログ(乙3)は、KAZENグループが作成したものであり、商標権者がKAZENグループの一社であることからすれば、商標権者とKAZENグループを構成する各社とは相互に密接な業務上のつながりが認められるものである。
さらに、上記2020年5月15日の使用商品に関する取引を行ったKAZEN WLD社もKAZENグループの一社であるから、KAZEN WLD社が、KAZENグループが作成した2020年版カタログを用いて商取引に当たることに何ら不自然な点はなく、また、同社は商標権者より本件商標について黙示の使用許諾がされていたと推認できるものである。
そうすると、KAZEN WLD社は、本件商標の通常使用権者とみて差し支えないものである。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、本件商標の通常使用権者(KAZEN WLD社)は、要証期間である2020年5月に、日本国内において本件審判の請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品「看護師服」に本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を付し、その商品を譲渡した(商標法第2条第3項第2号)と認められる。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標の通常使用権者が、本件審判の請求に係る指定商品について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
(別掲1:色彩については乙3を参照。)


(別掲2:乙3を参照。赤い丸囲みは被請求人が付した。)


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-06-29 
結審通知日 2022-07-04 
審決日 2022-07-21 
出願番号 2014110862 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W25)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 鈴木 雅也
大山 健
登録日 2015-12-04 
登録番号 5811470 
商標の称呼 パンジー 
代理人 泉 通博 
代理人 青木 篤 
代理人 外川 奈美 
代理人 齋藤 宗也 

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