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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W02
管理番号 1390742 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2021-04-27 
確定日 2022-08-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第6037028号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第6037028号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6037028号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり「KAND」の欧文字及び「ケイアンド」の片仮名を二段に書してなり、平成29年7月26日に登録出願、第2類「印刷機用インクカートリッジ,印刷機用トナーカートリッジ,インクジェットプリンター用インクカートリッジ,インクジェットプリンター用トナーカートリッジ,印刷インキ,絵の具,顔料,染料」を指定商品として、同30年4月20日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日(予告登録)は、令和3年5月17日であり、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成30年(2018年)5月17日ないし令和3年(2021年)5月16日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第6号証は、以下のとおり、いずれも本件商標を使用したことの証拠とはならない。
(1)社会通念上の同一の範囲について
本件商標は、「KAND」及び「ケイアンド」を2段に横書きにしてなるもので、そのうち「KAND」の部分からは、通常「カンド」の称呼を生じ、この称呼が自然の称呼であると判断するのが相当である。これに対し、「ケイアンド」の部分は、「KAND」から生じる自然の称呼に反して記載されたものである。このような構成にあっては、本件商標は、「KAND」と「ケイアンド」とを二段に表した結合商標とみるか、あるいは「KAND」の文字を特殊な読みに限定するために表したものとみるのが相当である(同趣旨の判断例として、取消2005−030249参照)。
被請求人は、乙第1号証ないし乙第6号証を挙げて商標「KAND」を使用した旨主張しているが、そもそも、本件商標の構成中の「ケイアンド」の文字を使用することなく、単に「KAND」を使用したのみでは、本件商標を使用したことにはならず、本件商標と社会通念上同一の範囲内にある商標を使用したものということもできない。
したがって、乙第1号証ないし乙第6号証は、被請求人が本件商標を要証期間内に日本国内において使用したことを証明するものではない。
(2)乙第5号証及び乙第6号証について
乙第5号証には、2021年4月21日付けで、申請者による申請の確認コードがAmazonから通知されたことが記載され、確認コード及びケースIDを記載して返信することで、ブランド登録の承認を確認するEメールを送付する旨が記載されている。
また、乙第6号証には、本件取消審判事件の請求日である2021年4月27日付けで、Amazonブランド登録申請が承認されたことが記載されている。乙第6号証は、乙第5号証に記載されているEメールの送信結果として、2021年4月27日付けでAmazonによりブランド登録申請が承認されたことを示す資料であると推認する。
そのため、乙第6号証によると、被請求人は、2021年4月27日付けで、AmazonのWebサイトで、商標「KAND」を使用できるようになったと解釈することは可能であるかもしれない。しかしながら、乙第6号証は、被請求人が、2021年4月27日にAmazonのWebサイトで、第2類の指定商品「印刷機用インクカートリッジ,印刷機用トナーカートリッジ,インクジェットプリンター用インクカートリッジ,インクジェットプリンター用トナーカートリッジ,印刷インキ,絵の具,顔料,染料」について商標「KAND」を使用したことを何ら証明するものではない。
したがって、乙第5号証及び乙第6号証は、被請求人が本件商標を要証期間内に日本国内において使用したことを証明するものではない。
(3)乙第4号証について
乙第4号証には、「KAND」の文字が付されたプリンター用インクカートリッジが示されているが、このインクカートリッジが被請求人の取り扱っている製品であること、及びこのインクカートリッジが被請求人によっていつどのように使用されたかは全く示されていない。
したがって、乙第4号証は、被請求人が本件商標を要証期間内に日本国内において使用したことを証明するものではない。
(4)乙第1号証ないし乙第3号証について
乙第1号証ないし乙第3号証は、被請求人から取引先(株式会社アジアンクローゼット:以下「アジアンクローゼット社」という。)に向けた納品書兼領収書で、乙第1号証には販売金額として20,400円が記載され、乙第2号証には販売金額として15,640円が記載され、乙第3号証には販売金額として6,800円が記載されているように、乙第1号証ないし乙第3号証はそれぞれ、被請求人とアジアンクローゼット社とが相当額の取引を行ったことを示す証拠として提出されたものと思料する。
一方、株式会社間でこのような相当額の取引を行う場合には、購入者からの注文書、受領書等の取引書類が存在していることが通常である。
しかしながら、乙第1号証ないし乙第3号証は、いずれも被請求人からアジアンクローゼット社ヘ向けた一方的なものであり、実際にアジアンクローゼット社に受領されたものであるかどうかも判然としない。そのため、乙第1号証ないし乙第3号証は、商品取引の事実を客観的に証明するものとはいえない。
したがって、乙第1号証ないし乙第3号証は、被請求人が本件商標を要証期間内に日本国内において使用したことを証明するものではない。
(5)結論
上述のとおり、被請求人が提出した証拠中には、本件商標を、第2類「印刷機用インクカートリッジ,印刷機用トナーカートリッジ,インクジェットプリンター用インクカートリッジ,インクジェットプリンター用トナーカートリッジ,印刷インキ,絵の具,顔料,染料」に使用した証拠は存在していない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、審判事件答弁書及び回答書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を、商品「インクジェットプリンター用インクカートリッジ,インクジェットプリンター用トナーカートリッジ」に付して用いている。
乙第1号証は、被請求人が顧客に納品した際の納品書兼領収書(写し)である。2018年10月18日付で、要証期間内である。
乙第2号証は、被請求人が顧客に納品した際の納品書兼領収書(写し)である。2019年7月31日付で、要証期間内である。
乙第3号証は、被請求人が顧客に納品した際の納品書兼領収書(写し)である。2019年8月30日付で、要証期間内である。
乙第4号証は、被請求人が本件商標と社会通念上同一の商標を使用した販売商品の写真である。
乙第5号証は、本件商標と社会通念上同一の商標がAmazonでブランド登録申請され、申請者確認コードが通知されたメール(写し)である。2021年4月21日付で、要証期間内である。
乙第6号証は、Amazonブランド登録承認メール(写し)である。2021年4月27日付で、要証期間内である。
乙第1号証ないし乙第6号証により、被請求人が本件商標と社会通念上同一の商標を、本件取消請求に係る指定商品「インクジェットプリンター用インクカートリッジ,インクジェットプリンター用トナーカートリッジ」に、本件取消請求の要証期間内に使用していることは明らかである。
(2)上述のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において本件商標を取消請求に係る指定商品に使用していたといえる。
2 審尋に対する回答書
(1)当審における審尋
審判長は、被請求人に対し、令和4年2月4日付けの審尋において、乙各号証に関する暫定的見解を示し、本件商標の使用についての客観的な証拠とともに具体的に主張、立証するよう求めた。
(2)回答書
被請求人は、上記審尋に対して令和4年3月9日付け回答書において以下のとおり回答した。
ア 被請求人とアジアンクローゼット社との取引態様
被請求人と、取引先であるアジアンクローゼット社との取引形態は、アジアンクローゼット社から電話で注文を受け、当日又は後日(在庫切れの場合)に、納品商品及び納品商品に対応した領収書を「持参」して、納品するという取引形態である。電話で注文を受けた商品の在庫がすべてある場合は、注文内容と納品商品は合致するが、在庫切れの場合は、次回の納品の際に、先の注文商品を持参する。被請求人とアジアンクローゼット社とは、このような取引形態をとるため、同社から、紙面やメールでの注文書はない。紙面やメールでの注文書が残っていないから、取引実態がなかったといえるものではなく、また、注文は、必ず、紙面やメールで行うべし、との法律もあるわけではないため、注文書が残っていないという一事をもって、乙第1号証ないし乙第3号証が、実際に存在した取引の領収書でなかったことになるものではない。
以上より、実際に注文があったことを示す書面を提出できないが、乙第2号証の内容に合致した注文、納品、支払いがあったことを示すアジアンクローゼット社の代表者による「証明書」を提出する(乙7)。
イ なお、被請求人が、乙第1号証ないし乙第3号証で主張、立証しようとする行為は、商標権者による、商標法第2条第3項第8号に記載の使用行為、すなわち、「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」で、商品は「インクジェットプリンター用インクカートリッジ」である。
ウ 弁駁書では、二段書きの登録商標について、「KAND」の使用だけでは、登録商標と社会通念上同一の範囲内にある商標を使用したということができない旨主張しているが、審判便覧では、登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用は、社会通念上同一と認められる商標である旨、記載されている(審判便覧53−01)。「KAND」と「ケイアンド」は、観念を同一にするため、「KAND」の使用は、社会通念上同一と認められる商標の使用である。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(1)「納品書兼領収書」について
取引先(アジアンクローゼット社)に宛てた本件商標権者作成の納品書兼領収書(乙1〜乙3:以下、まとめて「本件納品書」ということがある。)は、納品日がそれぞれ2018年10月18日(乙1)、2019年7月31日(乙2)及び2019年8月30日(乙3)であり、本件納品書の「品名」欄に記載されている納品物は「KAND ブラザー対応 純正互換トナーカートリッジ TN−27J」及び「KAND キャノン用 BCI−350/351 6色セット」(乙1、乙2)並びに「KAND ブラザー対応 純正互換トナーカートリッジ TN−27J」(乙3)であり、納品日を2019年7月31日とする納品書には、合計の金額として「¥15,640」の記載がある(乙2)。
また、取引先(アジアンクローゼット社)の代表取締役が作成したとされる「証明書」(作成日 2022年2月22日)には、代表取締役の記名、捺印の下、「2019年7月31日、トラアークス株式会社様に、「KAND ブラザー対応 純正互換トナーカートリッジ TN−27J」及び「KAND キャノン用 BCI−350/351 6色セット」を注文し、現金で15640円を支払いました。上記の商品は2019年7月31日を受け取りました。」旨の陳述が記載されている(乙7:以下「本件証明書」という。)。
そして、本件納品書及び本件証明書に記載された注文に係る商品(以下「注文品」という。)については、その品名中に「KAND」の文字が含まれることや、注文品の納品日、合計金額が一致するものの、本件納品書及び本件証明書の記載内容からは、注文品に具体的にいかなる形で本件商標が使用されていたかを確認することはできない。
(2)「販売商品の写真」について
「販売商品の写真」とされる画像(乙4:以下「本件写真」という。)には、カートリッジ状の6つの箱に「KAND」、「互換インクカートリッジ」、「C−350」、「C−351」、「ブラック」、「イエロー」等の文字の表示が確認できるものの、本件写真の撮影日は「2021年6月」であり、本件写真に写るカートリッジ状の6つの箱が本件商標権者の取り扱いに係る商品であることなど詳細な説明は何ら示されていない。
(3)「Amazonブランド承諾書」について
被請求人が主張する「Amazonブランド承諾書」(乙5、乙6:以下「本件承諾書」という。)は、その記載内容から2021年4月27日に「ブランド名:KAND」について、「Amazonブランド登録」が承認されたことがうかがえるものの、その内容は何ら示されていない。
(4)上記の他に、本件商標の指定商品について、本件商標権者により、要証期間に本件商標が使用されていたことを示す証拠の提出はない。
2 上記1によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)本件商標の使用について
本件納品書の納品日が2018年10月18日(乙1)、2019年7月31日(乙2)及び2019年8月30日(乙3)であり、これらはいずれも要証期間の日付であり、本件納品書の「品名」欄に本件商標の構成中の欧文字「KAND」と同一の構成文字である「KAND」の文字が表記されているものの、本件納品書に記載された商品が、本件写真の撮影対象であることは何ら立証されていないから、本件写真が要証期間に納品されたとされる本件納品書に記載された商品と同一の商品であるとはいえない。
さらに、本件承諾書からは本件商標をその指定商品について使用したことを確認することもできない。
したがって、被請求人が提出した証拠によっては、要証期間に本件商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第2条第3項各号にいう本件商標の使用があったことを認めることはできない。
(2)被請求人の主張について
被請求人は、本件納品書(乙1〜乙3)で主張、立証しようとする行為は、商標権者による、商標法第2条第3項第8号の使用行為、すなわち、「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」である旨主張する。
しかしながら、商標法第2条第3項第8号は、「商標の広告的使用」を定義したものであるところ、それは、取引書類でいえば、書式中に定型的に表示された企業名、企業ロゴ、商品ブランド等の使用をいうのが相当であって(例えば、FAX送信状の下部に付された企業ロゴの使用)、本件納品書のように企業の担当者間の領収書において個別の商品を示すために記載された文字のみをもって直ちに同号にいう標章の使用であるというのは相当ではない。
また、商標の使用があるとするためには、当該商標が、必ずしも指定商品そのものに付せられて使用されていることは必要でないが、その商品との具体的関係において使用されていなければならないところ(最高裁昭和42年(行ツ)第32号 同43年2月9日第二小法廷)、本件納品書に記載された商品について、被請求人が提出した全ての証拠を参照しても、本件商標が具体的にどのように使用されたのかが不明であって、実際に本件商標を付した商品が譲渡や引き渡しされたこと、商品の取引に当たって本件商標を付した広告が提供されたこと等、その具体的な商標の使用事実を裏付けることができないから、本件納品書によって本件商標の使用があるとすることはできない。
さらに、被請求人は、本件納品書の内容を裏付けるものとして、取引先の代表取締役の陳述が記載された本件証明書を提出しているが、登録商標の使用の事実の証明は、新聞、雑誌等への広告の事実、取引の際使用される納品伝票、仕入伝票等の取引書類の提示その他、登録商標が使用されていた事実を客観的に認め得るに足るような資料によってなされるべきであると解されるところ、私人の陳述は、それが真実、陳述者の認識を述べたものであるとしても、上記のような取引資料等を補強するためには有効なものとはなり得ても、当該陳述のみによっては、登録商標の使用の事実を客観的に把握することは困難である。
そして、上記(1)のとおり、本件納品書によって本件商標の具体的な使用事実が証明されたとはいい難いものである。
したがって、被請求人のかかる主張は採用できない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが、その請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明したものということができない。
また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲(本件商標)


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-06-22 
結審通知日 2022-06-24 
審決日 2022-07-06 
出願番号 2017099188 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (W02)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小林 裕子
鈴木 雅也
登録日 2018-04-20 
登録番号 6037028 
商標の称呼 ケイアンド、カンド 
代理人 辻田 朋子 
代理人 中川 慶太 
代理人 石田 耕治 
代理人 天野 一規 
代理人 樋口 頼子 
代理人 池田 義典 
代理人 下田 一徳 

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