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審決分類 |
審判 全部無効 外観類似 無効としない W05 |
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管理番号 | 1390653 |
総通号数 | 11 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2022-11-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2019-11-29 |
確定日 | 2022-04-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6109074号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6109074号商標(以下「本件商標」という。)は,「BREZTRI」の文字を標準文字で表してなり,平成30年2月23日に登録出願,第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を指定商品として,同年10月25日に登録査定,同年12月21日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が引用する商標は次のとおりであり(以下,それらをまとめて「引用商標」という。),いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 1 国際登録第884931号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成 ONBREZ 指定商品 第5類「Pharmaceutical preparations.」 国際登録日 2006年5月18日(優先権主張 2006年5月15日 Switzerland) 設定登録日 平成19年6月15日 2 国際登録第893313号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成 BREEZHALER 指定商品 第5類「Pharmaceutical preparations.」及び第10類「Medical apparatus and inhalers.」 国際登録日 2006年8月18日(優先権主張 2006年8月7日 Switzerland) 設定登録日 平成19年8月3日 第3 請求人の主張 請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は,被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を審判請求書及び令和2年8月28日付け上申書において要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第46条第1項の規定により無効とすべきである。 2 引用商標の周知性について 請求人は,スイスを拠点とし,医薬品の開発・製造販売を行っている。請求人の商品は世界中で8億人以上の人々に行き渡り,平成30年には51億9000万ドルの純利益を達成した(甲4)。 請求人は,気管支拡張剤の開発の一環として,慢性閉塞性肺疾患(以下「COPD」ということがある。)治療薬「Onbrez Inhalation Capsules 150μg(和名:オンブレス吸入用カプセル150μg,以下「オンブレス」という。)を開発した。オンブレスは専用の吸入器「Breezhaler(ブリーズヘラー)」を用いて吸入する(以下,あわせて「オンブレスブリーズヘラー」という。)。オンブレスブリーズヘラーは欧州連合において最初に承認・発売され,その後日本を含む100以上の国で承認を受けている(甲5,甲6)。以後,引用商標は,以下のとおり,請求人の業務に係る商品を示す商標として周知性を獲得している。 (1)日本における売上げ 日本においては,オンブレスは平成23年7月1日に製造販売承認が得られ,同年9月20日からオンブレスブリーズヘラーとして販売されており(甲6,甲7),引用商標はその包装や吸入器に使用されてきた(甲8)。平成23年から同24年にかけては,エーザイ株式会社(以下「エーザイ」という。)と請求人との間の共同プロモーション契約の下,オンブレスブリーズヘラーは大規模な病院からかかりつけ医まで数多くの医療機関に対してプロモーションが行われた(甲9,甲10)。 平成30年には,オンブレスブリーズヘラーの日本における売上げは1億5800万円,平成31年1月から8月にかけては,1億300万円の売上げを記録した。また,平成30年には,ICS(吸入ステロイド薬)又はLABA(長時間作用性β2刺激薬)を除いたCOPD治療薬の中で4.2%のシェアを占め,3万1150人の患者の治療に用いられた。 (2)広告・宣伝等 上記(1)のとおり,プロモーション活動及び薬剤の包装や吸入器への引用商標の使用に加え,オンブレスブリーズヘラーは請求人のウェブサイトで紹介されており,そこでも引用商標が表示されている(甲11)。 日本でオンブレスブリーズヘラーの広告及び宣伝に投入された費用は,全体で,平成26年から令和元年までで1億3600万円になる。 (3)小括 以上から,引用商標は,医療従事者及びCOPD患者からなる需要者の間で広く認識されていたといえ,請求人が製造販売するCOPD治療薬及び吸入器を示す商標として周知性を獲得するに至っていた。 3 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標に対する需要者・取引者の認識について 全ての商標が一体不可分の造語としてのみ認識されるとは限らないといえるところ,商標が需要者・取引者にどのように認識されるかは,例えば元の単語の原型がどの程度とどめられているか等の商標の構成によって異なってくる。 したがって,複数の語の組合せからなる商標の中には,造語と捉えられつつも,同時にその由来も想起され得るものがある。 本件商標は一体不可分ではなく,「Breeze」や「Breathe」に由来する「BREZ」の部分と,「Triple」に由来する「TRI」の部分の組合せであると認識される。 (2)本件商標と引用商標1とが類似すること ア 引用商標1は,「ONBREZ」の欧文宇からなるところ,これは,「1日1回(once daily)」の投与を示す「Once」や「One」を指すものと理解される「ON」と「そよ風(breeze)」に由来する「BREZ」を組み合わせたものである(甲6)。 1日1回の投与を意味する「ON」の部分は,指定商品の使用方法を指すものと理解されることから,当該部分は識別力がない又は識別力が低い。仮に,需要者が1日1回の意味と理解しない場合であっても,「ON」の語は指定商品との関係では特定のイメージと結び付けられるものではなく,依然として識別力は低いといえる。 これに対して,「BREZ」の部分は「そよ風」を意味し,指定商品との関係では暗示的であり,看者に強い印象を与える。よって,「BREZ」の部分が引用商標1の要部とされるべきである。 イ 本件商標は,「BREZTRI」の欧文字からなるところ,これは,「そよ風(Breeze)」及び「呼吸(Breathe)」に由来する「Brez」と3薬効成分を示す「triple」に由来する「tri」を組み合わせたものである(甲12)。 そして「TRI」の部分は末尾に位置しているものであるが,「triple」を意味するということは一般に日本の需要者にも理解され得るものであるから,商品の品質等を示すものと理解され,識別力がない又は識別力が低い。 よって,「BREZ」の部分が本件商標の要部とされるべきである。 ウ 以上より,本件商標と引用商標1とは,要部「BREZ」を共通にしており,「BREZ」はどちらの商標でも「ブレズ」と発音し,「そよ風(breeze)」を想起させる。これらの外観,称呼及び観念によって需要者に与える印象,記憶,連想等を総合的に勘案すると,両商標ともその構成の中で強い印象を与える部分を共通にすることから,本件商標は商品の出所について引用商標1と混同を生じさせるおそれがあり,引用商標1と類似する。 エ 医薬品の製造販売承認申請プロセスにおいては,新規承認医薬品の製品名の接頭語3文字が既存医薬品と同一の場合,そのような製品名は既存医薬品との類似度が高いとされ,医薬品の取り違えによる医療事故が発生する危険性が高いことから,製品名の変更を行う必要がある(甲13)。この点で,医薬品の製品名の類否判断において,接頭語3文字が類似するか否かは重要な事項である。 本件商標と引用商標1とでは「BREZ」の部分が共通し,当該部分は日本語では「ブレズ」の3文字として表されるところ,当該部分は,本件商標においては語頭に,引用商標1においては語尾にというように商標中での位置が異なる。しかし,上記の医薬品製品名の類否判断における慣行を踏まえると,本件商標は当該慣行を潜脱するような形で選択された製品名であると考えられ,語頭と語尾とで位置が異なるとしても,医薬品の製品名として混同される危険性が高いといえる。 なお,本件商標に対応する被請求人の製造に係る商品の和名表記は「ビレーズトリ」であるとしても,本件商標は「ブレズトリ」と発音するのが自然であり,音訳として対応関係にはない。 また,このような和名使用における本件商標に特殊な事情は,洋名の商標間の類否や商品の出所に混同を生じさせるおそれの有無に関する判断においては,何ら影響を与えるものではない。 さらに,被請求人の製造に係る商品は,和名と洋名で対応関係にないから,本件商標は,上記の新規承認医薬品の製品名に関する運用は和名についてのみ適用されるという,被請求人の指摘は,当たらない。 オ 指定商品の類否については,本件商標は第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を,引用商標1も第5類「Pharmaceutical preparations.」を指定しており,同一又は類似である。 (3)本件商標と引用商標2とが類似すること ア 引用商標2は,「BREEZHALER」の欧文字からなる。引用商標2の指定商品に「吸入器(inhaler)」が含まれるところ,「inhaler」や「haler」の語は,吸入器の製品名として語尾に用いられることが多い(甲14,甲15)。 そうすると,「haler」の語が「inhaler」の略語として辞書に採録されていないとしても,引用商標2の構成中「HALER」の部分は「吸入器」を指すものと理解され,吸入器とそれに関連する薬剤との関係では識別力を欠く。したがって,引用商標2の構成中「BREEZ」の部分が分離され,当該部分が本件商標中の「BREZ」の部分と比較されるべきである。 イ 引用商標2の「BREEZ」の部分は,「E」が2個であるという点でのみ本件商標の「BREZ」と異なるものの,この差異は語頭の「BRE」や語尾の「Z」が共通しているということに比べ目立ちにくいことから,当該「BREEZ」の部分は本件商標の「BREZ」の部分と外観において類似する。 さらに,引用商標2の「BREEZ」と本件商標の「BREZ」とは,「ブリーズ」と「ブレズ」というように称呼が若干異なるものの,その差異は語中の「リー」と「レ」の違いであり,ともにラ行の語であることから,両部分の称呼は識別が困難である。しかも,両部分とも「そよ風」を想起させる。よって,両商標の語尾「HALER」及び「TRI」の部分は,識別力がない又は識別力が低いことに加えて,他の商標と識別するに当たりより重要な語頭の部分が類似することから,本件商標は引用商標2に類似する。 ウ 指定商品の類否については,本件商標は第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を指定し,これは引用商標2の指定商品第5類「Pharmaceutical preparations.」と同一又は類似である。さらに,「薬剤」と第10類「Medical apparatus and inhalers.」とは同一の業者によって同一の需要者に対して販売され,同一の目的の下で同時に使用され得る。 本件の場合でいえば,COPD治療薬及び吸入器は,同一の製薬会社によってCOPDを扱う医療従事者やCOPD患者からなる需要者に対して販売され,その薬剤は気管支痙攣による症状を緩和させるために吸入器を使って投与される。したがって,本件商標の指定商品は引用商標2の第10類の指定商品とも類似する。 (4)需要者の注意力 本件商標に係る指定商品の需要者・取引者は,医療従事者や患者であって,高度の注意力をもって商品に接するとしても,本件商標の要部である「BREZ」の部分が引用商標と共通し類似することを踏まえれば,混同のおそれがあるといえる。 (5)小括 以上より,本件商標は引用商標と類似し,その指定商品も互いに同一又は類似である。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)本件商標と引用商標の類似性 上記2のとおり,本件商標は引用商標と類似する。 (2)引用商標の周知性及び特徴 上記2のとおり,引用商標は本件商標の登録出願時において周知であり,現在においても,請求人の商品のCOPD治療薬及び吸入器を示すものとして広く認識されている。 引用商標1は,1日1回(once daily)投与の「ON」と,「そよ風(breeze)」の「BREZ」を組み合わせた造語であり,本件商標も「そよ風(breeze)」を想起させる語と「吸入器(inhaler)」を想起させる語を組み合わせた造語である。COPD治療薬との関係では,「そよ風」を想起させるような語は,気道閉塞性障害による症状が緩和され空気が優しく流れるというようなイメージを伴うものであり,看者に強い印象を与える。 (3)商品間の関連性,需要者の共通性及び取引の実情 上記3(2)オ及び(3)ウのとおり,本件商標の指定商品は引用商標が使用される商品と同一又は類似である。吸入器についての「BREEZHALER」の使用については,上記3(3)ウのとおり,薬剤も吸入器も,製造販売を行う業者,対象,及び使用目的は同一となりうるから商品間の関連性は強く,薬剤への本件商標への使用は吸入器との関係でも出所について混同を生じさせる。 需要者の共通性については,本件商標の指定商品は「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」であり,特に本件商標はCOPD治療薬に使用されている。そのため,両商標とも,医師や薬剤師といった医療従事者及び患者が需要者となる。よって,本件商標と引用商標は需要者を共通にする。 (4)小括 上記の事情を考え併せると,本件商標をその指定商品に使用した場合,引用商標の周知性に鑑みれば,これに接する需要者は,特に「BREZ」の部分に着目して,本件商標から引用商標を連想し,指定商品が同一又は類似であることも踏まえれば,商品の出所について需要者が混同するおそれがあり,又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者による商品であると誤認混同するおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 被請求人の主張 被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標の由来と需要者・取引者の認識の関係について 我が国において,複数の言語要素の組合せに由来する商標は存在するが,取引の実際において,これらの商標に接した需要者・取引者は,これらを一体不可分の一つの造語商標として認識して取引に当たっているのが実情であり(乙5),需要者・取引者が,商標の構成要素を特定の意味を有する言葉であると認識さえしない場合には,なおさらである。 我が国の需要者・取引者は,本件商標の背景に何らかの意味を認識することはなく,本件商標に,特定の観念を想起する特定の構成要素を見出すことはない。 まず,本件商標中「BREZ」は既成語ではないため,英語を母国語としない我が国の需要者・取引者が,「BREZ」に接して直ちに「Breeze(そよ風)」や「Breathe(呼吸)」を想起することはない。そもそも,構成文字「BREZ」は,英単語「Breeze」や「Breathe」とは称呼を異にするものである。よって,消費者・需要者が,本件商標から「BREZ」の文字を殊更に分離抽出する理由はない。 次に,後半の構成文字「TRI」も,それ自体は既成の英単語ではない。 本件商標中の「TRI」は,本件商標の語尾に位置しており,接頭辞「tri」の本来の用法とは異なる(乙6)。したがって,本件商標の「TRI」の部分は,本件商標の語尾に一連一体の態様で付されているため,本件商標に接した需要者・取引者が,「TRI」を独立して認識することはなく,「TRI」の部分のみをもって需要者・取引者が直ちに3薬効成分に想到することもあり得ない。 本件商標の構成文字より請求人の主張するような二つの観念(「BREZ」から「Breeze(そよ風)」や「Breathe(呼吸)」,「TRI」から「3薬効成分」)が直ちに想起されない以上,商標の類否に当たり,本件商標を,請求人主張のネーミングの由来に基づいて二つの構成文字要素に分離すること自体が失当である(乙7)。 (2)要部抽出の可否について 上記のとおり,本件商標は一体不可分の一つの造語としてのみ認識されるべきものであるが,万が一,仮に本件商標が「BREZ」と「TRI」を結合した結合商標であると認識できると仮定しても,「BREZ」の部分を要部抽出して商標の類否を判断することはできない(乙1)。 ア 本件商標は,標準文字で同書同大で横書きされ,全体が等間隔にて横一列にまとまりよく表示されている。特定の部分,すなわち「BREZ」の部分だけが独立して看者の注意をひくように構成されているわけではない。 また,仮に「BREZ」の部分から請求人の主張するような「Breeze(そよ風)」や「Breathe(呼吸)」の観念が生じ得るとしても,本件商標がCOPD治療薬に使用されるものであり,気道閉塞性障害の緩和による「空気,呼気の流れ」のようなイメージを暗示するものであることを考えると,指定商品との関係においては,商品の効能,用途に係るものであり,格別識別力が強いわけではない。 よって,「BREZ」の部分の識別力が非常に強く,支配的な印象を与えるとの事実は認められない。 イ 次に,「TRI」の部分について検討すると,「TRI」の語を「三,三重」等の意味で語尾に付加して使用する用法はないのであるから(乙6),語尾に位置する「TRI」の語は,ある造語の一部として理解されるのが最も自然である。したがって,語尾に位置する「TRI」の部分が「三,三重」等の意味であり商品の品質等を表示する言葉であるとして直ちに捨象されることはあり得ない。 これは,請求人の主張する需要者の「BREZ」に対する認識が正しいと仮定すれば,当該「BREZ」の部分が,「TRI」に比べてより高い識別力があるとはいえないため,なおさらである。つまり,「TRI」の部分も指定商品との関係で自他商品を識別する機能を有していると認められる。 よって,「TRI」の部分が識別力が弱く,商標として機能するような称呼や観念が生じないとの事実は認められない。 ウ したがって,仮に本件商標が結合商標として認識されるとしても,本件商標と引用商標の類否を判断するに当たり,本件商標の「BREZ」の部分だけを分離抽出し,本件商標と引用商標の類否を判断することは許されない。 (3)本件商標の構成について ア 外観上の特徴 本件商標は,「BREZTRI」の文字を標準文字にて同書同大同間隔にて横一列にまとまりよく表示してなる。 イ 観念上の特徴 本件商標の構成文字「BREZTRI」は既成語ではないため,特定の観念を想起しない造語としてのみ認識される。 ウ 称呼上の特徴 本件商標の構成文字「BREZTRI」は既成語ではないため,我が国において広く親しまれている英語又はローマ字の読みに倣い,構成文字「BREZTRI」に相応して「ブレズトリ」との称呼が生じる。該称呼は5音構成であり,よどみなく一連に称呼し易いものである。 (4)引用商標1の構成について ア 外観上の特徴 引用商標1は,欧文宇「ONBREZ」を同書同大同間隔にて横一列にまとまりよく表示してなる。 イ 観念上の特徴 まず,前半の構成文字「ON」については,そもそも構成文字が「ONCE(一回)」や「ONE(一つ)」ではなく,「〜の上」等を意味する英語の前置詞「ON」(乙8)であるから,需要者・取引者が「1日1回の投与」との観念を想起することはあり得ない。 さらに,後半の構成文字「BREZ」は既成語ではない。よって,英語を母国語としない我が国の需要者・取引者が,「BREZ」に接して直ちに「Breeze(そよ風)」を想起することはない。よって,引用商標1は,本件商標と同様に,請求人の主張するネーミングの由来に関わらず,特定の観念を想起しない一体不可分の造語としてのみ認識されるものと考える。 ウ 称呼上の特徴 引用商標1からは,構成文字「ONBREZ」に相応して「オンブレズ」との称呼が生じる。該称呼は5音構成であり,よどみなく一連に称呼し易いものである。 (5)本件商標と引用商標1の類否について 両商標の外観について比較すると,両商標は全体として異なる印象を与える。両商標の構成文字は,本件商標,引用商標1がそれぞれ有する「TRI」と「ON」において顕著に異なり,外観上大きく相違する。 両商標は,構成文字を共通にする部分を有するが,本件商標においては,「BREZ」が語頭に位置しており,引用商標1においては,「BREZ」が語尾に位置しているため,その共通部分の位置は異なる。本件商標は7文字,引用商標1は6文字という比較的少ない文字構成にあって,共通する構成文字部分の位置の相違,及び,その他の構成文字である「TRI」及び「ON」の顕著な相違は,商標全体の外観に大きな影響を与え,両商標に接する看者をして全く別異の印象を抱かせるものである。よって,需要者・取引者は,外観上,明確に両者を区別できる。 次に,観念について比較すると,両商標とも特定の観念を想起しない造語であり,観念上対比すべくもない。よって,両商標は,観念上,相紛れるおそれはない。 最後に,称呼について比較すると,本件商標から生じる「ブレズトリ」の称呼と,引用商標1から生じる「オンブレズ」は,ともに5音という比較的短い音数で構成されており,引用商標1の語頭「オン」の音において差異を有すると同時に,本件商標においては,語頭の「オン」の音がない代わりに,語尾に「トリ」の音を有する。ここで,5音構成という比較的短い音構成からなる称呼において,上記音構成の差異は,両称呼全体に大きな影響を及ぼす。さらに,両商標は,語尾にも2音の差異音を有しており,これら両称呼を称呼したとき,その音調,音感は全く異なり,称呼上,聞き誤るおそれはない。 以上より,本件商標と引用商標1は,外観,観念,称呼のいずれについても相紛れるおそれのない非類似の商標である。 (6)引用商標2の構成について ア 外観上の特徴 引用商標2は,欧文字「BREEZHALER」を同書同大同間隔にて横一列にまとまりよく表示してなる。 イ 観念上の特徴 まず,「そよ風」を意味する英単語は「BREEZE」であり,引用商標2の構成文字「BREEZ」とは語尾の「E」の有無で相違する(乙9)。そもそも我が国の需要者・取引者が,単語の「breeze」に馴染みがあるのか疑問である。 また,「HALER」は既成語として存在するが,その意味は「ハレシュ(チェコスロバキアの少額貨幣雇位)」である(乙10)。なお,「inhaler(吸入器)」を「haler」として省略可能である旨の記載を辞書で発見することはできない。したがって,英語を母国語としない我が国の需要者・取引者が「BREEZ」及び「HALER」に接して,「そよ風」及び「吸入器」を直ちに想起することはなく,「BREEZ」又は「HALER」のどちらか一方が捨象されることはない。よって,引用商標2は,特定の観念を想起しない一体不可分の造語としてのみ認識される。 ウ 称呼上の特徴 引用商標2は,その構成文字「BREEZHALER」に相応して「ブリーズヘラー」又は「ブリーズハラー」との称呼が生じる。該称呼は長音を含めても7音構成であり,格別冗長でなく,よどみなく一連に称呼し易いものである。 (7)本件商標と引用商標2の類否について 両商標の外観について比較すると,語頭の「BRE」の文字を共通にするものの,本件商標は7文字構成,引用商標2は10文字構成であり,文字数及び構成文字において外観上大きく相違する。よって,需要者・取引者は,外観上,明確に両商標を区別できる。 次に,観念について比較すると,両商標とも特定の観念を想起しない造語であり,観念上対比すべくもない。よって,両商標は,観念上,相紛れるおそれはない。 最後に,称呼について比較すると,本件商標から生じる「ブレズトリ」の称呼と,引用商標2から生じる「ブリーズヘラー」又は「ブリーズハラー」は,本件商標が5音構成,引用商標2が7音構成であり,構成音数及び構成音において大きく相違する。よって,需要者・取引者は,両商標を明確に聴別し得る。 なお,請求人の主張するように,仮に引用商標2の要部が「BREEZ」であるとしても,本件商標「BREZTRI」と「BREEZ」は,外観が著しく相違し,観念も本件商標からは特定の観念が想起されず,引用商標2からも特定の観念が想起されないから,相紛れるおそれはない。さらに,称呼上も,本件商標から生じる「ブレズトリ」と引用商標2から生じる「ブリーズ」は音数が異なり,構成音も大きく相違する。 よって,本件商標と引用商標2は,外観,観念及び称呼のいずれについても相紛れるおそれのない非類似の商標である。 (8)取引の実情について 本件商標に対応する被請求人の製造に係る商品は,2019年6月18日付けで製造販売承認を受けており,その販売名の和名表記は「ビレーズトリ」である(甲12,乙11)。そして,当該製品の製品パッゲージにおいては,和名の「ビレーズトリ」が正面略中央に顕著な態様で表示してある(乙11,乙12)。 一方で,引用商標に対応する請求人製品の販売名和名表記はそれぞれ「オンブレス」及び「ブリーズヘラー」である(甲6,甲7)。また,製品パッケージにおいては,同様に,和名の「オンブレス」や「ブリーズヘラー」が顕著な態様で大きく表示してある(甲8)。このように,本件指定商品に係る取引の実際においては,洋名よりも和名で取引が通常行われている。 上述(5)及び(7)のとおり,そもそも洋名「BREZTRI」と,「ONBREZ」や「BREEZHALER」自体が外観,観念,称呼において相紛れるものではない上に,本件に係る商品の具体的な取引の状況をみると,その実情は商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれを,なお一層減殺するものである。このように,本件商標に対応する被請求人製品は和名「ビレーズトリ」で流通し,引用商標に対応する請求人製品は和名「オンブレス」及び「ブリーズヘラー」で流通している取引の実情に鑑みると,本件商標及び引用商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,取引の実際において,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれは,なおさらあり得ない。 (9)新規承認医薬品の名称類似判断について 医薬品の製品名の類否判断において頭文字3文字が類似するか否か等が問題となるのは,和名についてである(乙13)。よって,本件商標と引用商標1が,「BREZ」の文字部分において共通することは,医薬品の製造販売承認申請プロセスにおける製品名類似の問題とは何ら関係がない。しかも,医薬品名称においては頭文字3文字以上一致している場合に,名称類似医薬品と取違える危険性が高いと判断されているところ,共通部分の「BREZ」の位置自体,そもそも語頭と語尾とで異なっている。 なお,被請求人製品の和名は「ビレーズトリ」であり,一方で請求人製品の和名は「オンブレス」であるので,頭文字に共通点がー切ない。 (10)需要者の注意力について 本件商標の指定商品の需要者・取引者は,医療従事者や患者であるところ,医薬晶の販売名については,これらの間で薬剤取違えが起こった場合,医療事故につながる蓋然性が高いため,従前より医療従事者の間では,類似名称に関するヒヤリ・ハット事例を分析,周知することによって注意喚起を常に促している(乙13の1)。また,患者においても,自分が摂取する薬剤は直接自分の健康,時には生命に影響するものであるから,商品が日用品である場合などと比較して,より高度の注意力をもって商品に接するであろうことは想像に難くない。 よって,本件指定商品の需要者・取引者たる医療従事者や患者の「通常有する注意力」とは,商品が日用品等である場合に比してより高度のものであるから,本件商標及び引用商標に接する需要者・取引者が商品の出所につき誤認混同するおそれはない。 (11)小括 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,観念,称呼において相紛れるおそれのない非類似の商標であり,さらに,本件に係る商品の取引実情及び需要者の通常有する注意力に鑑みれば,本件商標を指定商品に使用した場合に引用商標と出所混同が生ずるおそれはない。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第15号について (1)本件商標と引用商標との類似性の程度 上記1(5)及び(7)のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,観念,称呼において相紛れるおそれのない商標である。すなわち,本件商標と引用商標との類似性の程度は著しく低い。 (2)本件商標の周知度 請求人の主張する,引用商標の周知性の獲得を証する証拠には,引用商標ではなく,対応する和名が使用されているものもあって,引用商標の周知性を立証する証拠として不適切である。 (3)商品等の需要者の共通性その他取引の実情 上記1(8)のとおり,本件に係る商品の取引の実際において,本件商標に対応する被請求人製品は和名「ビレーズトリ」で流通しており,一方で,引用商標に対応する請求人製品は和名「オンブレス」及び「ブリーズヘラー」で流通している。 よって,そもそも洋名「BREZTRI」と,「ONBREZ」や「BREEZHALER」自体が外観,観念,称呼において相紛れるものではない上に,本件に係る商品の具体的な取引の実情においては,類似の程度のより低い和名が主に商品等識別標識としての役割を担っている。 また,上記1(10)のとおり,本件商標に係る指定商品の需要者・取引者は医療従事者や患者であるところ,医薬品の販売名については,これらの間で薬剤取違えが起こった場合,医療事故につながる蓋然性が高いため,従前より医療従事者の間では類似名称に対する問題意識が高く,医療従事者は極めて高度の注意力をもって取引に接している実情があり,また,患者においても,自分が摂取する薬剤は直接自分の健康,時には生命に影響するものであるとの認識が高く,商品が日用品である場合などと比較してより高度の注意力をもって商品に接している。 (4)検討 本件商標と引用商標の類似性は認められず,引用商標の周知性獲得も証明されておらず,また,取引の実情においても,本件商標に係る商品分野では,出所混同を排除する積極的なアプローチがあえてなされている状況がうかがえる。 したがって,本件商標においては,これらの事実をもって商品等の出所の混同のおそれは十二分に否定されている。また,既に混同が生じているような事実も請求人から客観的な証拠資料をもって立証されてはいない。 以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 第5 当審の判断 請求人が本件審判を請求するにつき,利害関係について争いがないから,本案について判断する。 1 引用商標の周知性について (1)請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば,以下の事実を認めることができる。 ア 請求人は,スイスにある,医薬品の開発・製造販売を行っている会社であって,請求人の製品は世界中で8億人以上の人々に行き渡り,2018年(平成30年)には51億9000万ドルの純利益を達成した(甲4)。 イ 請求人はCOPD治療薬として「Onbrez Breezhaler(オンブレスブリーズヘラー)」を販売し,当該治療薬は現在において世界100以上の国で承認を得ている。 我が国において,当該治療薬は,請求人の日本法人であるノバルティスファーマ株式会社(以下「ノバルティスファーマ社」という。)が2011年(平成23年)9月20日に「オンブレス吸入用カプセル150μg」の名称(以下「請求人治療薬」という。)で販売を開始した。請求人治療薬は,専用の吸入器「ブリーズヘラー」を用いて吸入するとある(甲5〜甲7)。 ウ 請求人治療薬の包装箱には「オンブレス」の片仮名が大きく目立つように表示されており,当該片仮名の右上に「(R)(「R」の丸囲み文字,以下同じ。)」が表示されている。そして当該「オンブレス」の片仮名の右上方に「onbrez(R)」の欧文字と「breezhaler(R)」の欧文字が当該片仮名より小さく2段に表示されている(甲8)。 また「オンブレス吸入用カプセル150μg専用吸入器」(以下「請求人吸入器」という。)の包装箱には「ブリーズヘラー」の片仮名が大きく目立つように表示されており,当該片仮名の右上に「(R)」が表示されている。そして当該「ブリーズヘラー」の片仮名の右上方に「onbrez(R)」の欧文字と「breezhaler(R)」の欧文字が当該片仮名より小さく2段に表示されている(甲8)。 エ ノバルティスファーマ社とエーザイは,2011年(平成23年)11月より2012年(平成24年)12月まで,請求人治療薬についての共同プロモーション活動を行った(甲9,甲10)。 オ ノバルティスファーマ社のウェブサイトには,請求人治療薬及び請求人吸入器が掲載されている(甲11)。 (2)上記(1)によれば,請求人の日本法人であるノバルティスファーマ社は,我が国において,2011年(平成23年)9月より請求人治療薬及び請求人吸入器を販売し,同社のウェブページで紹介していること及び,同年11月から2012年(平成24年)12月には,請求人治療薬についてエーザイと共同プロモーション活動を行っていたことがうかがえる。 しかしながら,請求人治療薬について,ノバルティスファーマ社とエーザイとの共同プロモーション活動の具体的内容を把握することはできない。 また,請求人治療薬の宣伝,広告費については,平成26年から令和元年までで1億3600万円になる旨の主張にとどまり,それを裏付ける客観的な証拠の提出はない。 さらに,請求人治療薬の売上高など販売実績も,平成30年の1億5800万円,平成31年1月から8月の1億300万円及び平成30年の吸入ステロイド薬及び長時間作用性β2刺激薬を除いたCOPD治療薬のシェアが4.2%である旨の主張にとどまり,それを裏付ける客観的な証拠の提出もない。 以上よりすると,請求人治療薬及び請求人吸入器に使用されている引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品(請求人治療薬及び請求人吸入器)を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は,上記第1のとおり,「BREZTRI」の文字を標準文字で表してなるところ,当該文字は同書,同大,同間隔でまとまりよく表されており,当該文字から生ずる「ブレズトリ」及び「ビレーズトリ」の称呼も冗長ではなく,一気一連に称呼できるものである。また,当該文字は,辞書等に採録されていない造語であって,本件商標の指定商品を取り扱う分野において特定の意味合いを表す語として使用されている実情も見受けられない。 そうすると,本件商標は,「ブレズトリ」及び「ビレーズトリ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について ア 引用商標1について 引用商標1は,上記第2の1のとおり「ONBREZ」の欧文字を書してなるところ,当該文字は同書,同大,同間隔でまとまりよく表されており,当該文字から生ずる「オンブレズ」の称呼も冗長ではなく,一気一連に称呼できるものである。また,当該文字は,辞書等に採録されていない造語であって,引用商標1の指定商品を取り扱う分野において特定の意味合いを表す語として使用されている実情も見受けられない。 そうすると,引用商標1は,「オンブレズ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 イ 引用商標2について 引用商標2は,上記第2の2のとおり「BREEZHALER」の欧文字を書してなるところ,当該文字は同書,同大,同間隔でまとまりよく表されており,当該文字から生ずる「ブリーズハラー」の称呼も格別冗長ではなく,一気一連に称呼できるものである。また,当該文字は,辞書等に採録されていない造語であって,引用商標2の指定商品を取り扱う分野において特定の意味合いを表す語として使用されている実情も見受けられない。 そうすると,引用商標2は,「ブリーズハラー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 ア 本件商標と引用商標1について 本件商標と引用商標1とを比較するに,外観においては,本件商標の語頭4文字と引用商標1の語尾4文字の「BREZ」の文字を共通にするものの,当該文字の位置が語頭と語尾であるうえに,両者は,当該「BREZ」の文字以外の構成文字及び構成文字数を異にするものであるから,外観上,相紛れるおそれはない。 次に,本件商標から生じる「ブレズトリ」の称呼と,引用商標1から生じる「オンブレズ」の称呼とは,本件商標の語頭3音と引用商標1の語尾3音の「ブレズ」の称呼を共通にするものの,当該音が語頭と語尾であるうえに,両者は,当該「ブレズ」の音以外の音に差異を有するものであるから,称呼上,明瞭に聴別し得るものである。 また,本件商標から生ずる「ビレーズトリ」の称呼と引用商標1から生ずる「オンブレズ」の称呼とは,構成音,構成音数が明らかに相違するものであるから,称呼上,明瞭に聴別できるものである。 そして,本件商標及び引用商標1は,いずれも特定の観念は生じないものであるから,両商標は,観念上,比較することができない。 してみれば,本件商標と引用商標1とは,観念において比較することができないとしても,外観において相紛れるおそれのないものであり,称呼においても明瞭に聴別できるものであるから,両商標が需要者に与える印象,記憶,連想等を総合してみれば,両商標は,非類似の商標というべきである。 イ 本件商標と引用商標2について 本件商標と引用商標2を比較するに,外観においては,語頭の「BRE」の文字が共通するものの,それ以外の構成文字,構成文字数は明らかに相違するものであるから,外観上相紛れるおそれはない 次に,本件商標から生ずる「ブレズトリ」の称呼と,引用商標2から生じる「ブリーズハラー」の称呼とは,1音目の「ブ」の音のみを共通にするにすぎず,他の構成音,構成音数は明らかに相違するから,称呼上,明瞭に聴別し得るものである。 また,本件商標から生ずる「ビレーズトリ」の称呼と引用商標2から生ずる「ブリーズハラー」の称呼とは,構成音,構成音数が明らかに相違するものであるから,称呼上,明瞭に聴別できるものである。 そして,本件商標及び引用商標2は,いずれも特定の観念は生じないものであるから,両商標は,観念上,比較することができない。 してみれば,本件商標と引用商標2とは,観念において比較することができないとしても,外観において相紛れるおそれのないものであり,称呼においても明瞭に聴別できるものであるから,両商標が需要者に与える印象,記憶,連想等を総合してみれば,両商標は,非類似の商標というべきである。 (4)小括 以上よりすると,本件商標と引用商標とは,非類似の商標というべきであるから,本件商標と引用商標の指定商品が同一又は類似のものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 引用商標は,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品(請求人治療薬及び請求人吸入器)を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。また,本件商標は,上記2(3)のとおり,引用商標とは非類似の商標であって別異の商標というべきである。 そうすると,本件商標は,本件商標権者が,これをその指定商品について使用をしても,取引者,需要者が,引用商標を連想又は想起することはなく,その商品が請求人又は同人らと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他,本件商標が引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 請求人の主張について 請求人は,本件商標は,「BREZ」と「TRI」及び引用商標1は,「ON」と「BREZ」,引用商標2は,「BREEZ」と「HALER」のそれぞれ2語を組み合わせたものであるから,本件商標及び引用商標1から「BREZ」の文字部分を,また,引用商標2から「BREEZ」の文字部分をそれぞれ抽出し,それらの文字部分を比較して本件商標と引用商標が類似である旨主張する。 しかしながら,仮に本件商標及び引用商標がそれぞれ2語を組み合わせたものであったとしても,上記2(1)及び(2)のとおり,本件商標及び引用商標は,それぞれの構成及び称呼の観点から,それぞれの構成全体をもって一連一体として認識されるべきものであるから,両商標から「BREZ」又は「BREEZ」の文字部分を抽出しなければならない理由はない。 したがって,請求人の主張は採用できない。 5 まとめ 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものでなく,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものではないから,同法第46条第1項により,その登録を無効とすることはできない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,この審決に係る相手方当事者を被告として,提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 審判長 岩崎 安子 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2020-10-28 |
結審通知日 | 2020-10-30 |
審決日 | 2020-11-11 |
出願番号 | 2018022287 |
審決分類 |
T
1
11・
261-
Y
(W05)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
平澤 芳行 大森 友子 |
登録日 | 2018-12-21 |
登録番号 | 6109074 |
商標の称呼 | ブレズトリ、ブレツトリ |
代理人 | 今井 優仁 |
代理人 | 門田 尚也 |
代理人 | 乾 裕介 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 岡本 岳 |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 深津 拓寛 |
代理人 | 本阿弥 友子 |
代理人 | 西尾 隆弘 |
代理人 | 鈴木 佑一郎 |
代理人 | 窪田 英一郎 |
復代理人 | 野崎 智裕 |
代理人 | 中岡 起代子 |
代理人 | 堀内 一成 |
代理人 | 加藤 ちあき |