• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W141825
管理番号 1390649 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-10-04 
確定日 2022-05-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5623868号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5623868号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5623868号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成24年10月17日に登録出願され、第14類「フランス製の宝飾品,フランス製の宝玉,フランス製の宝玉の原石,フランス製の計時用具,フランス製の時計」、第18類「フランス製の革及び人工皮革,フランス製の獣皮,フランス製の皮革,フランス製のトランク,フランス製の旅行かばん,フランス製の傘,フランス製の日傘,フランス製の財布,フランス製の小銭入れ,フランス製のハンドバッグ」及び第25類「フランス製の被服,フランス製の履物,フランス製の運動用特殊靴,フランス製の帽子」を指定商品として、同25年10月18日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、令和元年10月18日になされたものであり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年(2016年)10月18日から令和元年(2019年)10月17日までの期間(以下「本件要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証(以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように、「第」及び「号証」を省略して記載する。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品(以下「本件指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人は、令和2年1月29日付け審判事件答弁書において、乙1ないし乙9を提出し、自身が、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件要証期間内に、日本国内において、本件指定商品中、第25類「フランス製の被服」について使用している旨主張しているが、以下に述べるように、これらの証拠からは、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、「フランス製の被服」について使用しているとは認められない。
(1)乙1ないし乙6について
被請求人は、乙1ないし乙6を提出して、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、第25類「フランス製の被服」に関する取引書類に使用している旨主張するが、失当である。
ア 被請求人が、乙1ないし乙6において使用を主張している商標は「I R O」である。
しかしながら、乙1及び乙4における「I R O」の表示は、その下に住所の表示があることからみて、注文先の宛名としての表示であることが明らかであり、当該表示は、商標として使用されているものではなく、注文先の社名として使用されている。乙2、乙3、乙5及び乙6における「I R O」の表示も、被請求人である「IRO」が送付した書類において、上部の中央に配置され、それと対応する下部の中央に住所等の表示が配置されていることから、当該表示は、商標というより、書類を送付した者の社名の表示として使用されていると理解できる。
乙1ないし乙6には、各商品の項目毎に、「VERONA」等の表示(乙1ないし乙3)及び「NOFIRA」等の表示(乙4ないし乙6)があり、これらの表示が、各商品の商標であると理解されるのが自然である。
イ そもそも、本件商標は、「I R O PARIS」であり、被請求人が使用を主張している「I R O」の表示は、本件商標とは異なる。
これに対し、被請求人は、本件商標「I R O PARIS」中の「PARIS」の部分は、商品の産地、販売地又は輸出地等を表示する部分として、本件指定商品について自他商品識別力を発揮する部分ではなく、「I R O」の部分が自他商品識別力を発揮する部分であるから、使用を主張している当該「I R O」の欧文字は、本件商標と社会通念上同一と認められる旨を主張している。
しかしながら、本件商標は、「I R O PARIS」の全体で一つの商標として登録されているから、被請求人が使用を主張している「I R O」の表示が、本件商標と異なることには変わりなく、本件商標の構成中、「PARIS」の部分を、自他商品識別力を発揮する部分ではないとして削除することは、本件商標をそれとは異なるものに変えてしまうことである。
したがって、被請求人が使用を主張している「I R O」の表示は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用とは認められない。
ウ 被請求人は、乙1ないし乙6の対象となっている商品について、フランスを本拠とする被請求人から東京都台東区に拠点を有する株式会社上野商会(以下「上野商会」という。)へ輸出されていることから、当該商品は広く「フランス製の被服」に該当する旨主張している。
しかしながら、フランスを本拠とする被請求人であっても、被服を取り扱う業界では、その商品が実際には他国で製造されていることはあり得るから、フランスを本拠とする被請求人から上野商会へ輸出されていることだけでは、当該商品が「フランス製」であることの証明にはならない。
よって、乙1ないし乙6は、「フランス製の被服」についての使用を証明するという点においても不足している。
エ 以上のことから、乙1ないし乙6からは、「フランス製の被服」に関する取引書類に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用しているとは認められない。
(2)乙7ないし乙9について
被請求人は、乙7ないし乙9を提出して、本件商標は、被請求人のウェブサイトのドメイン名「https://www.iroparis.com」の要部として使用されていること、ファッション雑誌に、被請求人に係る「I R O」ブランドの被服等が紹介されており、被請求人のウェブサイトのドメイン名が「www.iroparis.com」として併記されているものがあることから、当該ドメイン名の要部である「iroparis」は、自他商品識別標識の一種として認識され、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当する旨主張するが、失当である。
ア まず、ドメイン名は、インターネット上の住所表示といえるものにすぎず、当該使用は、商標としての使用とは認識されない。
イ また、そもそも、本件商標は「I R O PARIS」であるところ、被請求人が使用を主張している「www.iroparis.com」のドメイン名の表示は、本件商標とは異なる。
これに対し、被請求人は、当該ドメイン名から「iroparis」の部分を要部として抽出した上で、当該要部が本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当する旨主張している。しかしながら、当該ドメイン名は、あくまで「www.iroparis.com」の全体で一つのドメイン名として使用されているから、本件商標と異なることに変わりはない。
さらに、被請求人が主張している乙9における表示の態様は、「IRO(www.iroparis.com)」であるから、なおさら本件商標とは異なる。
したがって、この場合においても、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用は認められない。
ウ また、被請求人が主張している当該ウェブサイトや雑誌で扱われている商品が「フランス製」の被服であることの証明はされていない。
エ 以上のことから、被請求人が主張しているウェブサイトのドメイン名の要部としての使用により、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、「フランス製の被服」について使用しているということは認められない。
オ また、被請求人が主張している上記のファッション雑誌における「I R O」の表示も本件商標とは異なるものであり、当該雑誌で扱われている商品が「フランス製」の被服であることの証明もされていないから、その使用によっても、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、「フランス製の被服」について使用しているとは認められない。
(3)まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、商標権者が、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件要証期間内に、日本国内において、本件指定商品について使用しているとは認められない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙12を提出している。
1 答弁の理由
商標権者である被請求人は、フランス人のデザイナーであるビトン兄弟により2005年に設立されたアパレルブランドである。
被請求人は、本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標を、本件要証期間内に、日本国内において、本件指定商品中、第25類「フランス製の被服」等に該当する商品(以下「本件商品」ということがある。)又はその包装に付し、本件商品又はその包装に本件商標を付したものを譲渡等し又は電気通信回線を通じて提供し、さらに本件商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に本件商標を付して展示し、若しくは頒布等し、又はこれらを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供した事実がある。
(1)本件要証期間内における本件商品についての本件商標の使用の事実を証明するために、被請求人は、乙1ないし乙6を提出する。
ア 乙1ないし乙6からは、以下の事実を認めることができる。
(ア)乙1
乙1は、上野商会(UENO SHOKAI CO., LTD.)から被請求人へ送付された「注文書/ORDER FORM亅の写し(以下「乙1注文書」ともいう。)である。
作成日(Creation Date)は2017年10月10日(1ページ右上参照)、送信日は2017年10月12日(1ページ左下参照)、商品発送(予定)日は2018年1月15日から2018年3月31日まで(1ページ右上参照)となる。
乙1注文書においては、上野商会から被請求人に対して、セーター(「WM12VERONA」XSサイズ)6点を含む計18点が注文されている事実が認められる。
(イ)乙2
乙2は、被請求人から上野商会へ送付された、乙1注文書に対する受領確認書(「ACKNOWLEDGEMENT OF ORDER」)の写し(以下「乙2受領確認書」ともいう。)である。
(ウ)乙3
乙3は、被請求人から上野商会へ送付された、乙1注文書に対する2018年2月27日付で発行された「請求書/INVOICE」の写し(以下「乙3請求書」ともいう。)である。
乙1ないし乙3における注文内容は、商品アイテム及び点数ともに一致している。
(エ)乙4
乙4は、上野商会から被請求人へ送付された「注文書/ORDER FORM」の写し(以下「乙4注文書」ともいう。)である。
作成日(Creation Date)は2017年10月1日(1ページ右上参照)、送信日は2017年10月12日(1ページ左下参照)、商品発送(予定)日は2018年3月1日から2018年3月31日まで(1ページ右上参照)となる。
当該注文書においては、上野商会から被請求人に対し、セーター等の被服が注文されている事実が認められる。
(オ)乙5
乙5は、被請求人から上野商会へ送付された、乙4注文書に対する受領確認書(「ACKNOWLEDGEMENT OF ORDER」)(以下「乙5受領確認書」ともいう。)の写しである。
(カ)乙6
乙6は、被請求人から上野商会へ送付された、乙4注文書に対する2018年2月27日付で発行された「請求書/INVOICE」の写し(以下「乙6請求書」ともいう。)である。
イ 本件商品に関する取引書類に該当する乙1ないし乙6の左上又は中央上には、被請求人の名称であるとともに本件商品のブランド名である「I R O」が大きく表示されている。
この点、本件商標は「I R O PARIS」であるが、本件商標の構成中、「PARIS」の部分は、被請求人の住所であるフランスの首都パリを示し、本件商品の産地、販売地又は輸出地等を表示する部分として、本件商品について自他商品識別力を発揮する部分でないことは明らかである。
すなわち、本件商標の構成のうち、取引者、需要者に対して自他商品識別力を発揮する部分は「I R O」の部分にあると考えるのがごく自然であるから、乙1ないし乙6に大きく表示されている「I R O」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するといえる。
また、乙1ないし乙6の対象となっている商品は、上野商会の注文に基づき、フランスを本拠とする被請求人から上野商会へ輸出されているから、当該商品が広く「フランス製の被服」に該当することも明らかである。
ウ 以上のとおり、乙1ないし乙6により、被請求人が、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件要証期間内に、日本国内において、本件指定商品中、第25類「フランス製の被服」に関する取引書類に付して展示し、若しくは頒布等し、又はこれらを内容とする情報に付して電磁的方法により提供していたことは明らかである。
また、上記取引の事実にかんがみれば、被請求人は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件要証期間内に、日本国内において、本件指定商品中、第25類「フランス製の被服」に該当する本件商品又はその包装に付し、本件商品又はその包装に付したものを譲渡等し又は電気通信回線を通じて提供したといえる。
すなわち、上記の行為は、商標法第2条第3項第1号、第2号及び第8号に該当する行為である。
(2)本件商標は、被請求人のウェブサイトのドメイン名「http://www.iroparis.com」の要部として使用され、日本からもアクセスが可能であり、当該ウェブサイトからは、被請求人ブランドの新作被服等に関する情報を入手することができる。
また、我が国で発行された周知著名なファッション雑誌「ELLE JAPON/エル・ジャポン」の2018年1月号及び2019年3月号、並びに、「VOGUE JAPAN/ヴォーグ・ジャパン」の2017年8月号のファッションページでは、被請求人に係る「I R O」ブランドの被服等が紹介されており、被請求人のウェブサイトのドメイン名が「www.iroparis.com」として併記されているものもある(乙7ないし乙9)。
そうとすれば、取引者、需要者は当該ドメイン名の要部である欧文字「iroparis」を自他商品識別標識の一種として認識し、「iroparis」をきっかけとして被請求人のウェブサイトにアクセスし、被請求人に係る「I R O」ブランドの被服等に関する情報を入手することができるといえる。
なお、「iroparis」は、本件商標を構成する欧文字を全て小文字で表記したものであるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当することは明らかである。
以上によれば、被請求人は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である「I R O」及び/又は「iroparis」を、本件要証期間内に、日本国内において、本件指定商品中、第25類「フランス製の被服」等に関する広告、価格表若しくは取引書類に付して展示し、若しくは頒布等し、又はこれらを内容とする情報に付して電磁的方法により提供していたといえる。
すなわち、上記の行為は、商標法第2条第3項第8号に該当する行為である。
(3)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件要証期間内に、日本国内において、本件指定商品中、第25類に属する指定商品「フランス製の被服」等について、商標法第2条3項1号、第2号又は第8号に規定されている本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたものである。
2 令和2年9月2日付け審尋に対する令和2年10月28日付け回答書及び同年12月2日付け上申書
被請求人は、「フランス製の被服」等について、本件商標を使用していると主張しているところ、取引書類に不明確な点があること及び使用に係る商品(本件商品)が「フランス製」であることが確認できない旨の合議体からの審尋に対し、被請求人は要旨以下のとおり回答した。
(1)乙1ないし乙6について
ア 乙1ないし乙3並びに乙4ないし乙6の内容及び相互関係について
(ア)乙1注文書の1ページ上部の「Delivery address(配送先住所)」及び「Invoice address(請求書住所)」には、「UENO SHOKAI CO.,LTD.」と明記されているから、「UENO SHOKAI CO.,LTD.」(上野商会)が注文者であることは明らかである。
乙1注文書の1ページの中央やや下にある「Date and place」欄及び「Customer’s signature」欄が未記入であるが、乙1注文書は、当事者間で電子メールによりやり取りされたものであるため、実際の署名並びに署名日及び署名場所の記入は省略されている。
乙2受領確認書の1ページ中央上部には、「ORDER No.(オーダー番号)0145352」に続けて「12/10/17」と記載されているが、これが同書の発行日である2017年10月12日を示すことは明らかである。また、乙2受領確認書の1ページ上部左に「DELIVERY(配送先)」として「UENO SHOKAI CO.,LTD.」と明記されているから、「UENO SHOKAI CO.,LTD.」(上野商会)が注文者であることは明らかである。
乙3請求書の上部には、「DELIVERY(配送先)」として「UENO SHOKAI CO.,LTD.」と明記されているから、「UENO SHOKAI CO.,LTD.」(上野商会)が注文者であり、この請求書の宛先であることは明らかである。
乙3請求書の中央部には、「Order No.(オーダー番号):0145352」と記載されており、これと同じオーダー番号は乙2にも記載されているから、乙3請求書が乙2受領確認書、ひいては乙1注文書に対応するものであることも明らかである。
以上については、乙4ないし乙6についても同様である。
(イ)乙1ないし乙3と乙4ないし乙6には、すべて、被請求人による事務処理において「UENO SHOKAI CO.,LTD.」(上野商会)に付与された「19109」という数字5桁の「CUSTOMER CODE(顧客コード)」が記載されている。この「19109」が「UENO SHOKAI CO.,LTD.」(上野商会)に付与されていることは、被請求人の顧客順位に関するリスト抜粋(乙10)から明らかである。
そして、乙3請求書及び乙6請求書の冒頭において、「Paid by 19109(l9109により支払われる)」と明記されていることから、乙3及び乙6の「被請求人から注文者宛ての請求書」には、「UENO SHOKAI CO.,LTD.」(上野商会)に対して発行され、「UENO SHOKAI CO.,LTD.」(上野商会)により支払われることが示されている。
(ウ)乙1注文書の作成日と乙2受領確認書における注文日(YOUR ORDER)は2017年10月10日で一致し、乙1注文書と乙2受領確認書における各アイテムの数量及び金額は一致するから、乙2受領確認書が乙1注文書に対するものであることも明らかである。
他方、乙4注文書中のいくつかの商品が乙5受領確認書及び乙6請求書に含まれていないが、これは、「UENO SHOKAI CO.,LTD.」(上野商会)により注文されたものの、当時、被請求人側に在庫がなかったため、追って納品及び請求がなされたことがその理由である。乙4注文書が乙5受領確認書及び乙6請求書に記載された商品種別/個数/金額と同一の内容を包含していることを考慮すれば、これらが一連の取引に関する書類であることは明らかである。
イ 本件商品が「フランス製」のものかについて
(ア)上記証拠方法にかかる本件商品(被服)は、フランス以外の国で製造されたものではある。しかしながら、当該被服は、フランス国パリにある被請求人の本社の従業員(デザイナー)によりデザインされ、フランス国法人としての被請求人による厳格かつ恒常的な品質管理の下、被請求人の指示に従って生産されたものである。
乙11は、乙1ないし乙6に記載された当該被服に関するデザインの創作日(著作権の発生日)を証明するために、被請求人が「FIDEALIS SAS」に登録した内容に応じて発行された「Timestamp receipt(タイプスタンプ・レシート)」のフランス語版及び英語版である。ここで、「FIDEALIS SAS」は、フランスにおける著作権発生日を証明するために広く使用されている、著作権の認証・登録サービスを提供している企業である(https://www.fidealis.com/en/)(乙12)。
乙11においては、乙1ないし乙6に記載された当該被服について、そのデザインの創作日(著作権の発生日)として、すべて2017年9月15日(Date of time−stamping: 15/09/2017)が記録されているから、当該商品は、本件要証期間内に、被請求人によりフランスでデザインされ生産されたものであることが明らかである。
そうすると、上記証拠方法により示される本件商標の使用にかかる当該被服は、「フランス製の被服」と同視されてしかるべきものといえる。
(イ)これは、商願2020−39671号に係る商標「MEDIKA ITALIA」(出願時の指定商品:第25類「履物,運動用特殊靴」)につき、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるとして商標法第4条第1項第16号に該当する旨の拒絶理由が通知されたのに対して、その指定商品を「イタリアにてデザインされイタリア国法人として出願人による厳格かつ恒常的な品質管理の下で出願人の指示に従って生産された履物,イタリアにてデザインされイタリア国法人として出願人による厳格かつ恒常的な品質管理の下で出願人の指示に従って生産された運動用特殊靴」に補正することにより当該拒絶理由の解消が審査官により認められていることを考慮しても、妥当な結論であると考える。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、乙1ないし乙6における「I R O」の表示は、その下に住所などの表示が配置されていることから、商標としての使用ではなく注文先又は書類を送付した者の社名の表示として使用されているものである旨主張している。
この点、乙1ないし乙6は、本件商標の指定商品の取引に関する注文書や請求書等の取引書類であるところ、当該書類の冒頭に、その下の住所表示等と比べて極めて大きく目立つように「I R O」と表示されているから、当該表示は、被請求人の名称であるとともに当該商品全体のブランド名/商標として、取引者により把握・認識されると考えるのが自然である。
そして、商標「I R O」は、本件商標「I R O PARIS」から商品の産地又は販売地等として認識される部分を除いた、本件商標について自他商品識別力を発揮する要部であるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標と考えるのが妥当である。
イ 請求人は、ドメイン名は、本来インターネット上の住所表示といえるものにすぎず、当該使用は、商標としての使用とは認識されないものである旨主張している。
この点、我が国で発行された著名なファッション雑誌に掲載された被請求人の商品を紹介するページに記載された被請求人のウェブサイトのドメイン名である「www.iroparis.com」に接する我が国の取引者・需要者は、当該商品紹介のページと相侯って、当該ドメイン名の要部である欧文字「iroparis」を一種の自他商品識別標識として認識した上で「iroparis」をきっかけとして被請求人のウェブサイトにアクセスし、被請求人が提供する「I R O」ブランドの被服等に関する情報を入手することができると考えるのが相当である。
また、「iroparis」は、本件商標の構成要素の欧文字を全て小文字で表記したものであるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当することはいうまでもない。
以上によれば、被請求人は、日本国内において、本件要証期間内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である「iroparis」を、本件指定商品に関する広告等に付して展示し、若しくは頒布等し、又はこれらを内容とする情報に付して電磁的方法により提供していたと考えるのが妥当である。

第4 当審の判断
1 認定事実
被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)被請求人である「IRO」は、フランス国パリ所在のアパレルブランドである。
(2)2017年10月1日及び同月10日に上野商会は、フランス国パリを住所とする被請求人宛てに「18SWM12NOFIRA」及び「18SWM12VERONA」の品番の被服(以下「使用商品」という。)の注文書を作成し、同月12日にこれらが被請求人に送付されたところ、上記書類には、それぞれの商品について被服の図が表示されている。
そして、上野商会からの注文に対し、被請求人は同社宛てに、2017年10月12日に受領確認書を、2018年2月27日に請求書をそれぞれ作成したことが認められ、当該書類には上部に大きく「IRO」の文字が表示されている(乙1ないし乙6)。
(3)乙11は、使用商品に係るデザインの創作日(著作権の発生日)を証明するために、被請求人が「FIDEALIS SAS」に登録した内容に応じて発行された「Timestamp receipt(タイムスタンプ・レシート)とされるものであるところ、これは、2017年9月15日をタイムスタンプの日付とする被服の写真である(乙11)。
(4)雑誌「エル・ジャポン」(2018年1月号(乙7))及び雑誌「ヴォーグ・ジャパン」(2017年8月号(乙9))には、被服その他の写真に加えて、「・・・スカート/IRO・・・」(乙7)並びに「・・・ベルト/IRO(www.iroparis.com)」及び「ドレス/IRO(www.iroparis.com)」(乙9)との記載がある。
なお、雑誌「エル・ジャポン」(2019年3月号)の一部分の写しである乙8には、「IRO」の文字の記載は見いだせない。
2 判断
(1)本件商標の使用に係る商品が本件指定商品の範ちゅうの商品であるか否かについて
被請求人は、本件商標を本件指定商品中、「フランス製の被服」について使用している旨主張しているから、以下、検討する。
(2)前記1(2)及び(3)によれば、2017年10月12日に上野商会からフランス国パリ所在の被請求人に宛てに「18SWM12NOFIRA」及び「18SWM12VERONA」の品番の被服(以下「使用商品」という。)が注文され、これに対し、被請求人が2017年10月12日に受領確認書を、2018年2月27日に請求書を作成しており、上記書類は作成後本件要証期間内に上野商会に送付されたものと推認することができる。また、使用商品はフランス国でデザインされたものであることがうかがわれることから、当該商品は、フランス国においてデザインされた商品であるといい得るものである。
しかしながら、被請求人が本件商標を使用していると主張する商品は「フランス製の被服」であり、「製」の文字は、「つくること。つくったもの(中略)『イギリス製』」(広辞苑第7版(株式会社岩波書店))を意味する語であるから、使用商品が「フランス製」であるというためには、当該商品がフランス国で作られたものであること、すなわち、フランス国で製造された商品であることを要すると解されるところ、被請求人は、使用商品が「フランス製」であることを確認できない旨の当審からの審尋に対し、使用商品がフランス国以外の国で製造されたものであると自認しており、使用商品がフランス国内で製造されたことについての主張及び立証をしていない。
(3)小括
したがって、使用商品は、本件指定商品中、「フランス製の被服」の範ちゅうの商品と認めることができない。
その他、被請求人の提出に係る証拠をみても、本件商標(社会通念上同一と認められるものを含む。)が本件指定商品中のいずれかの商品に使用されたことを認めるに足る証拠は見いだせない。
3 被請求人の主張について
被請求人は、使用商品はフランスを本拠とする被請求人から上野商会へ輸出されているのであるから、当該商品は広く「フランス製」に該当することは明らかである旨及び当該商品はフランス国パリにある被請求人の本社の従業員(デザイナー)によりデザインされ、フランス国法人として被請求人による厳格かつ恒常的な品質管理の下、被請求人の指示に従って生産されたものであると主張する。
しかしながら、前記2のとおり、商品が「フランス製」であるというためには、フランス国において製造された商品であることが必要と解されるところ、たとえ、使用商品がフランス国所在の被請求人から我が国へ輸出されたとしても、また、フランス国においてデザインされ、同国の法人である被請求人の品質管理の下、同人の指示に従って生産されたものであるとしても、そのことをもって、当該商品がフランスで製造された商品であると認めることはできず、被請求人の提出に係る証拠によっては、使用商品が「フランス製」であると認めることができないことは、前記2のとおりである。
また、被請求人は、地名を含む他の出願例を挙げているが、本件審判事件は、商標法第50条第1項に基づき、商標登録の取消を求めるものであり、当該出願例は本件審判事件に何ら影響を与えるものではない。
したがって、被請求人の主張はいずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人が、本件指定商品のいずれかについての本件商標(本件商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したとはいえないから、商標法第50条第2項に規定されているその他の使用の要件について論及するまでもなく、被請求人の提出に係る証拠によっては、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件指定商品のいずれかについての本件商標(本件商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを被請求人が証明したとはいえない。
また、被請求人は、当該使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたともいえない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲 本件商標


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。

審判長 中束 としえ
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2021-02-15 
結審通知日 2021-02-17 
審決日 2021-03-24 
出願番号 2012083848 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (W141825)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 山村 浩
板谷 玲子
登録日 2013-10-18 
登録番号 5623868 
商標の称呼 イロパリス、アイロパリス、イロ、アイロ、アイアアルオオ、アイアアルオオパリ、イロパリ 
代理人 小出 俊實 
代理人 青木 篤 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 外川 奈美 
代理人 田島 壽 
代理人 幡 茂良 
代理人 橋本 良樹 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ