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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W1625
管理番号 1389955 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-05 
確定日 2022-09-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第6430672号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6430672号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6430672号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和2年12月9日に登録出願、第16類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同3年8月4日に登録査定され、同月18日に設定登録されたものである。

2 引用商標
(1)登録異議申立人「ルーツ コーポレイション」(以下「申立人1」という。)が引用する商標は次のとおりである。
ア 本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標
(ア)登録第5206626号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:ROOTS(標準文字)
指定商品及び指定役務:第25類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
登録出願日:平成19年8月27日
設定登録日:平成21年2月20日
(イ)登録第5943925号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:ROOTS(標準文字)
指定商品:第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成28年5月13日
設定登録日:平成29年4月28日
(ウ)登録第5947860号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:ROOTS(標準文字)
指定商品及び指定役務:第18類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
登録出願日:平成27年9月18日
設定登録日:平成29年5月19日
(エ)登録第4263352号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様:「ROOTS」と「ルーツ」の文字を2段に横書きしてなるもの
指定商品:第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成8年12月10日
設定登録日:平成11年4月16日
(オ)登録第5603084号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品及び指定役務:第4類、第5類、第12類、第14類、第16類、第20類、第21類、第26類、第28類ないし第31類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
登録出願日:平成25年3月11日
設定登録日:平成25年7月26日
(カ)登録第5963315号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第9類及び第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成28年11月21日
設定登録日:平成29年7月14日
イ 本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標
申立人1が、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、「Roots」の欧文字からなり、申立人1の業務に係る商品「各種アパレル商品、シューズ、バッグなど」を表示するものとして、カナダにおいて周知著名性を獲得していることが我が国の取引者、需要者の間においても認識されているとするもの(以下「使用商標」という。)である。
(2)登録異議申立人「アスコー・グループ・リミテッド」(以下「申立人2」という。)が引用する商標は次のとおりである。
ア 登録第2084299号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様:ROOS
指定商品:第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:昭和56年11月10日
設定登録日:昭和63年10月26日
イ 登録第4792611号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の態様:ROOS(標準文字)
指定商品:第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成15年9月26日
設定登録日:平成16年8月6日
なお、引用商標1ないし引用商標8に係る商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。また、以下、引用商標1ないし引用商標8をまとめていう場合は、「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
(1)申立人1の登録異議の申立ての理由
申立人1は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第47号証(枝番号を含む。以下、申立人1の提出に係る甲号証について、甲第1号証を「甲1A」のように末尾に「A」を付して表示する。また、枝番号全てを表示する場合は、枝番号を省略する。)を提出した。
ア 本件商標を商標法第4条第1項第11号により取り消すべき理由
本件商標に対する本号の適用においては、本件指定商品に使用された本件商標を目にした通常の注意力を有する需要者層に与える印象、記憶、連想等、本件指定商品に係る取引の実情を考慮して判断されるべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号、甲9A。商標審査基準、甲10A)。
(ア)商標の同一又は類似
a 本件商標は、別掲1の態様からなり、欧文字「Roots」に図形的要素を施し、当該文字をロゴ的に表示されたものと容易に認識される。
このため、本件商標からは、その構成文字部分に相応して、「ルーツ」の読み方(甲8A)、「根。起源。始祖。」(甲7A)の意味合いが生じる。
本件商標に描かれた図形的要素が、欧文字「Roots」に施されるものとして通常考え得る程度のものであり、このため、依然として、欧文字「Roots」と認識されることは、例えば、他者が、本件商標の登録出願以前に出願している商標(登録第6021231号商標)からも明らかといえる(甲47A)。
b 引用商標1ないし引用商標3(甲3A)は、標準文字で書された「ROOTS」の欧文字からなる。これらからは、「ルーツ」の読み方(甲8A)、「根。起源。始祖。」(甲7A)の意味合いが生じる。
引用商標4(甲4A)は、「ROOTS」と「ルーツ」の文字を2段に横書きしてなり、引用商標5及び引用商標6(甲5A、6A)は、別掲2及び3の態様からなる。引用商標4及び引用商標5からは「ルーツ」の読み方(甲7A)、「根。起源。始祖。」の意味合い(甲8A)が生じる。引用商標6からは、「ルート」の読み方、「根。起源。始祖。根元。」の意味合い(甲8A)が生じる。
c 本件商標と引用商標1ないし引用商標5を並べてみると、欧文字部分の一部が図形的要素とともに描かれている構成や2段構成、図形部分において、外観上、差異が認められるものの、両者は称呼「ルーツ」及び観念「根。起源。始祖。」において一致する。
また、本件商標と引用商標6を並べてみると、欧文字部分の一部が図形的要素とともに描かれている構成や「O」、「O」の欧文字部分がつながって描かれている態様において、外観上、差異が認められるものの、本件商標から生ずる称呼「ルーツ」と引用商標6から生ずる称呼「ルート」は全体の音調・音感が似通っており、また、観念「根。起源。始祖。」において、本件商標と引用商標6とは同一又は類似する。
「Root(s)」は、基本的な英単語として、本件指定商品に係る我が国の主たる需要者層(幅広い年齢層の一般消費者)に広く認識されている英単語の一つといえる。現に、学生向けの一般的な英和辞典において、「root(s)」は、重要頻出単語として掲載されており(甲7A)、我が国で一般に使われている片仮名語を掲載した辞典においても、「ルーツ(roots)」は「祖先、始祖、起源」を意味する語として掲載されている(甲8A)。
「Root(s)」が我が国の一般消費者に馴染みある英単語であるのに対し、「Roo」や「Roos」といったものは辞書等に掲載されていない。
また、「Root(s)」は「(植物の)根」を意味する英単語としても認識されているところ(甲7A)、本件商標は、「t」の欧文字部分を、虫に一部を食われたような葉一枚と、欧文字「R」の方に左下向きの緩やかな曲線により描かれており、当該図形部分からは植物の茎又は根が容易に連想されること、また、「t」以外の構成文字は容易に欧文字「R」、「o」、「o」及び「s」と認識されることから、通常の注意力を有する一般消費者であれば、本件商標を見て、「(植物の)根」を意味する欧文字「Roots」を図案化したものと認識することは明らかである。
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)も、ウェブサイト(甲11A)において、本件商標が欧文字「Roots」を図案化したものであると公言している。さらに、本件商標権者は、本件商標を出願した直後、本件商標と同じ指定商品において、「Roots」の文字からなる商標を出願していることから(商願2020−158297、甲12A)、本件商標は「Roots」を図案化したものであることが、当該事情からも推察される。
なお、特許庁は、商願2020−158297は引用商標1ないし引用商標6と類似するとして、商標法第4条第1項第11号の拒絶理由を通知した(甲13A)。
d 従前より、商標の一部の文字をレタリングしたり、図案化して表すことは普通に行われているところ(甲16A、18A)、当該事情に馴染みある一般消費者であれば、本件商標は、欧文字「Roots」の一部の文字をレタリングしたり、図案化して表したものにすぎないと認識することは明らかである。
現に、特許庁においても、商標構成中の一部の文字をレタリングしたり、図案化して表されたものとの商標の類否が争われた次の審判事件において、両商標は類似すると判断した。
・不服2020−1196号(甲14A)
・不服2013−15027号(甲15A)
・不服2011−16407号(甲16A)
・不服2005−14106号(甲17A)
・平成10年審判第35514号(甲18A)
このように、たとえ、構成文字の一部にレタリングや図案化が施されていたとしても、前後の欧文字との関係から、商標全体として特定の欧文字を表したものと認識される場合においては、特許庁は、外観における差異を有するとしても、つづりを共通にしており、称呼及び観念が同一であることから、両商標は類似すると判断されている。
本件に翻ってみるに、本件商標権者自らが「Roots」を図案化したと認めており、また、上述したとおり、「Root(s)」は、本件指定商品の主たる需要者に馴染みある基本的な英単語の一つであり(甲7A、8A)、本件商標構成中の前後の欧文字との関係からも、当該文字を表したものと需要者が容易に認識できるものである。そうすると、本件に限って、上記審決例と異なって取り扱うべき取引の実情等は認められず、外観において差異を有するとしても、称呼及び観念が同一であることから、両商標は類似すると判断されてしかるべきである。
(イ)商品の同一又は類似
本件商標の指定商品中「ジャージー製運動用衣服,運動着,帽子,ジャージー製被服,被服,スニーカー,履物」(以下「本件商品1」という。)は引用商標1ないし引用商標3の指定商品及び指定役務と、同じく「ジャージー製運動用特殊衣服」(以下「本件商品2」という。)は引用商標4の指定商品と、同じく「ステッカー,シール,しおり,文房具類」(以下「本件商品3」という。)は引用商標5の指定商品と、同じく「絵はがき,カレンダー,出版物,小冊子,ポスター,印刷物,書画,写真,写真立て」(以下「本件商品4」という。)は、引用商標6に係る指定商品と、それぞれ類似群コードが一致しており、両商品は同一又は類似している。
(ウ)小括
本件商標と引用商標1ないし引用商標5とは、外観においては相違するとしても、「ルーツ」の称呼、「根。起源。始祖。」の観念を同一にする商標であり、かつ、その指定商品についても、本件商品1ないし本件商品3は、引用商標1ないし引用商標5の指定商品・指定役務と同一又は類似の商品を含むものである。
また、本件商標と引用商標6とは、外観において相違するとしても、本件商標から生ずる称呼「ルーツ」と引用商標6から生ずる称呼「ルート」は全体の音調・音感が似通っており、また、観念「根。起源。始祖。」において同一又は類似しており、かつ、本件商品4は、引用商標6の指定商品と同一又は類似している。
したがって、本件商標は、その指定商品全てにおいて、商標法第4条第1項第11号に該当する。
イ 本件商標を商標法第4条第1項第15号により取り消すべき理由
本件商標に対する本号の適用においては、本件商標の登録出願時及び登録査定時を判断時期とし、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号。東京高裁平成2年(行ケ)第183号。東京高裁平成16年(行ケ)第85号)。
(ア)使用商標「Roots」の周知著名性
a 申立人1は、1973年に設立以来、革製品、アクティブなアスレチックウェア、ヨガウェア、アクセサリー、家具等の製造販売事業を世界各国で展開しており、カナダを代表するライフスタイルブランドとして、カナダを始め世界各国で広く認識されている。トロントの小さな店からスタートし、現在では、カナダと米国に120以上の小売店を持ち、アジアに40以上の小売店を有するに至っている(甲19A)。
申立人1は、1973年8月、トロントに、Boa Shoe Company製シューズを販売する店舗を最初にオープンし、1977年までに、北米とヨーロッパに65を超える店舗を構え、シューズだけでなくハンドバッグや各種革製品の商品化を進めた。これらの革製品は、ノードストロームやホルトレンフリューといった大手流通業者を通じて販売された。
1979年には、メンズテーラードウェアに着目し、「Roots Design」ラインを追加した。1980年に、申立人1のロゴが入ったTシャツとスウェットシャツの生産を開始、アパレルとアウトドア用品のラインを展開し、2年後には、「ルーツビーバーアスレチックス」という名前で「aj アスレチック」レーベルを立ち上げた(甲20A)。
このように、申立人1は、小規模な靴メーカーからスタートし、数十年かけて、カナダを代表する小売業界のリーダーとしての地位を確立してきた。1998年には、長野で開催された冬季オリンピックにおいて、申立人1のウェアが、カナダのオリンピック代表選手団のユニフォームとして採用されたことで(甲21A〜25A)、その人気は不動のものとなり、カナダにおいては、今や、誰もが知る有名アパレルブランドとして、広く認識されるに至っている(甲19A〜40A、46A)。
例えば、カナダ観光局が日本人向けに情報を発信する公式サイトにおいて、「カナダを代表するアパレルブランド「ROOTS(ルーツ)」」と紹介されている(甲26A)。また、JETROが2014年3月に発行したカナダに関する刊行物において、「カナダ、米国合わせて120店舗以上構えるカナダのアイコン的なカジュアルファッションブランドの『Roots Canada』」、「カナダ土産として旅行者にも大人気だ。」と、使用商標とともに紹介されている(甲27A)。
b 申立人1の年間売上げ(事業年度)は、2017年が4,664.0万米国ドル、2018年が5,324.9万米国ドル、2019年が7,388.2万米国ドル、2020年が1億380.2万米国ドルと順調に増えており、本件商標が出願された2020年の年間売上は、100億円を超えている(甲28A)。
使用商標は申立人1の社名商標にも相当するところ、ビーバー(動物)のロゴマークに併記して、又は文字単独で、申立人1の事業に係る店舗やウェブサイト、SNS、各種商品において使用されている(甲19A〜27A、29A〜40A、42A〜46A)。
使用商標がカナダを始め、世界各国において人気を博していることは、申立人1のSNSのフォロワー数、具体的にはTikTokが9.3万人、Facebookが28.3万人、Twitterが7.6万人、Instagramが23.1万人からも明らかといえる(甲42A〜45A)。
カナダは、多くの日本人旅行者や観光客、学生が訪れる人気滞在国の一つであるところ、コロナ禍前の2015年ないし2019年には、毎年30万人近くの日本人がカナダを訪れている(甲41A)。
カナダに滞在経験のある我が国の一般消費者が現地で知り得た情報やカナダに関する情報を掲載したウェブサイトには、使用商標が極めて有名である事情が述べられている(甲21A〜25A、29A〜34A)。
カナダ国内外での人気も相まって、「Roots/ルーツ」の商品は、力ナダ旅行時の人気オススメお土産品として、常に紹介されている(甲35A〜40A)。
c このように、使用商標は、カナダを代表するアパレルブランドとして、カナダ国内外において高い人気を博しており、その事情は、毎年30万人近くカナダを訪問する日本人旅行者や観光客、学生等を通じて、我が国の取引者、需要者の間でも広まっている。
申立人1の商品は、オンライン海外通販サイト「BUYMA」等を通じて、被服、パーカー、Tシャツといった各種アパレル商品に限らず、バッグ、財布、ペット用被服、帽子、キーチェーン、眼鏡ケースなどといった商品まで、我が国の需要者向けに現に販売されている(甲46A)。
また、申立人1のウェブサイトには、アパレル商品以外にも、各種バッグ、革製のペン立てやペンケースといった文具や革製のアクセサリー等も販売されている(甲19の2A)。
d そうすると、使用商標「Roots」は、各種ウェア、アパレル商品、シューズ、バッグ、革製の小物や文具、アクセサリー等の出所表示として、外国において長年にわたり広く認識されており、当該事情は、インターネットやカナダを訪問する日本人旅行者や観光客、学生等を通じて、我が国の一般消費者の間にも認識されているものといえる。
(イ)本件商標と使用商標との類似性の程度
上述したとおり、本件商標は、欧文字「Roots」に図形的要素を施し、当該文字をロゴ的に表示されたものと容易に認識されるところ、当該欧文字のつづりが使用商標と一致することから、外観上の類似性が認められる。また、本件商標から生ずる称呼「ルーツ」及び観念「根。起源。始祖。」と、使用商標から生ずる称呼及び観念とは一致することから、商標全体の類似性の程度は極めて高い。
(ウ)使用商標の周知著名性及び独創性の程度
上述したとおり、使用商標は、それ自体、辞書等に掲載された馴染みある英単語の一つであり、独創性の程度は高くないものの、申立人1の業務に係る商品(ウェア、各種アパレル商品、シューズ、バッグ、革製の小物や文具、アクセサリー等。以下「申立人1商品」という。)を表示するものとして、本件商標の登録出願時以前より、カナダにおいて周知著名性を獲得しており、当該事情は、我が国の取引者、需要者の間においても認識されている。
(エ)本件商標の指定商品と申立人1商品との関連性
本件商品2ないし本件商品4は、引用商標1ないし引用商標3に係る指定商品・指定役務とは非類似であるものの、本件商品2に関してはスポーツ用品メーカーが、スポーツ用途に限らず、一般向けのウェアを多数販売している取引の実情が認められることから、アパレル商品との関連性は極めて高いものといえる。また、申立人1商品には、革製のペン立てやペンケースが含まれているところ(甲19の2A)、本件商品3にも該当することから、両商品は同一といえる。さらに、本件商品4については、申立人1商品と同じく日常的に使用されるものであり、また、近接する販売場所や同一店舗内で提供されることもあり、さらに、商品の選択・購入に際して払う注意力が高いとはいえない一般消費者を需要者とする点でも共通する。
そうすると、本件商標に係る上記指定商品と申立人1商品との関連性の程度は高い。
(オ)混同を生ずるおそれ
上記の事情を総合すると、使用商標が、カナダを代表するアパレルブランドとして、カナダ国内外で長年にわたり広く認識されており、当該事情が我が国の一般消費者の間でも認識されるに至っていることに照らせば、両商標の外観において差異が認められるとしても、本件商標が申立人1商品と同一又はこれと深く関連する本件商品2ないし本件商品4に付して使用された場合には、一般消費者の注意力などをも考慮すると、これに接する我が国の取引者、需要者は、外国において周知著名となっている使用商標を連想、想起し、当該商品が申立人1又は同人との間に緊密な営業上の関係若しくは同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがある。
(カ)小括
以上を案ずるに、本件商標が、その指定商品中、第16類「ステッカー,シール,しおり,文房具類,絵はがき,カレンダー,出版物,小冊子,ポスター,印刷物,書画,写真,写真立て」及び第25類「ジャージー製運動用特殊衣服」(本件商品2〜本件商品4)について使用された場合、これに接する取引者、需要者は、本件商標の登録出願前から、申立人1の業務に係る商品を表示する商標として、カナダ国内外において周知著名な使用商標を連想、想起し、当該商品が申立人1又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)申立人2の登録異議の申立ての理由
申立人2は、本件商標はその指定商品中第25類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(以下、申立人2の提出に係る甲号証について、甲第1号証を「甲1B」のように末尾に「B」を付して表示する。)を提出した。
ア 本件商標と引用商標7及び引用商標8の類似性
(ア)本件商標は、その構成の左から順に、「R」の欧文字、「O」、「O」の欧文字、葉と茎からなる図形、「S」の欧文字を並べた構成からなるものである(甲1B、2B)。
ここで、「R」の欧文字においては、左側の縦線の部分は、下に行くほど幅を広く表しており、上部の半円状の部分は、両端をとがらせた幅のある曲線で表しており、右下の線の部分は、葉の形のように、両端に行くほど幅を狭く表している。
「O」、「O」の欧文字は、縦長の楕円形で、右側を黒塗りの太い線で表しているものを二つ並べて表している。
葉と茎からなる図形は、「R」の欧文字の右下の線の部分の延長上を図案化したものと認識できるところ、左下から右上に向かって、茎を曲線で表した部分と、その上に右側の一か所が欠けている葉の図形を組み合わせてなる。
「S」の欧文字は、両端をとがらせた幅のある黒塗りの曲線で表している。
(イ)これに対して、引用商標7は、「ROOS」の欧文字を同一の書体かつ同一の大きさで横書きにしたものである(甲3B、4B)。
また、引用商標8は、「ROOS」の欧文字を同一の書体かつ同一の大きさで横書きにした標準文字からなる(甲5B、6B)。
(ウ)そこで、本件商標と引用商標7及び引用商標8を比較してみると、まず、本件商標の構成において、これに接する需要者が文字部分であると認識できる部分は、その構成中、葉と茎からなる図形と認識できる部分を除き、左から順に、「R」の欧文字、「O」、「O」の欧文字、「S」の欧文字である。
ここで、「R」の欧文字は一番大きく表されており、「O」、「O」の欧文字と「S」の欧文字は共通して黒塗りの幅がある部分があり見やすいことから、「R」、「O」、「O」及び「S」の欧文字が左から順に無理なく目につくため、容易に「ROOS」の欧文字の並びを認識できる。
したがって、本件商標からは、これらを並べた「ROOS」の欧文字に相応して、「ルース」の称呼が生じる。
これに対して、引用商標7及び引用商標8からも、その「ROOS」の欧文字に相応して、「ルース」の称呼を生じる。
そこで、本件商標と引用商標7及び引用商標8の称呼を比較してみると、各称呼は上記のとおりであるところ、本件商標と引用商標7及び引用商標8は、いずれも「ルース」の称呼を生じることから、称呼において同一である。
(エ)なお、念のため、本件商標における、葉と茎からなる図形と認識できる部分は、上記のとおり、一見したところ「R」の欧文字の右下の線の部分の延長上を、葉と茎からなる図形のように図案化したものと認識される。
万が一、この部分について、何らかの文字を図案化したものであると本件商標権者が意図していたとしても、一見したところでは、葉と茎からなる図形に見えるのが自然であり、また、しばらく時間をかけて凝視したとしても、何の文字であるか判別することは難しいことから、ある特定の文字を図案化したものであるとまで明確に識別し理解することは困難な程度まで図案化されているというべきである。
したがって、この部分については、葉と茎からなる図形と認識するのが自然であり、何らかの特定の文字であるとまでは埋解されないから、この部分を何らかの特定の文字と理解した上で、「ROOS」(ルース)以外の称呼が生じることは考えられない。
この点、特許庁における審決(不服2015−18776。甲7B)においても、商標の構成中の図形部分について、一見しただけではいかなる文字を表しているか理解しにくいほど図案化したものといえるとして、その図形部分からは特定の称呼は生じない旨が判断されている。
(オ)また、木件商標と引用商標7及び引用商標8の外観を比較してみても、上記のとおり、本件商標の構成において、これに接する需要者が文字部分であると、外観上、認識できる文字は「ROOS」の欧文字であることから、引用商標7及び引用商標8における「ROOS」の欧文字と同一である。
したがって、本件商標は、引用商標7及び引用商標8とは、外観上、その欧文字を共通にすることから、本件商標が、葉と茎からなる図形の部分を有しているとしても、その文字部分により外観において近似した印象を与えるため、外観においても類似するといえる。
なお、本件商標と引用商標7及び引用商標8は、「ROOS」の欧文字が特定の観念を生じないことから、観念においては比較すべくもない。
(カ)以上のことから、本件商標は、引用商標7及び引用商標8とは,称呼において同一であり、外観においても近似した印象を与え類似することから、観念においては比較すべくもないとしても、これに接した需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、本件商標は、引用商標7及び引用商標8とは相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(キ)なお、特許庁における審決、異議決定(不服2018−1167、不服2018−8522、異議2017−900255。甲8B〜10B)においても、対比する商標の構成中に図形部分を有していても、文字部分のつづりを共通にする場合は、称呼が同一であり、その文字部分により外観上近似した印象を与えるから、観念において比較できないとしても、これらを総合的に勘案すれば、互いに相紛れるおそれのある類似の商標であると判断されている。
したがって、本件においても同様の趣旨から、本件商標は、引用商標7及び引用商標8とは相紛れるおそれのある類似の商標である。
イ 本件商標と引用商標7及び引用商標8の指定商品の類似性
本件商標と引用商標7及び引用商標8の指定商品は、同一又は類似のものを有する(甲1B〜6B)。
また、引用商標7及び引用商標8は、本件商標の先願、先登録に係るものである(甲1B〜6B)。
ウ 結び
上記したとおり、本件商標は、引用商標7及び引用商標8とは称呼において同一、外観において類似することから類似の商標であり、また、その指定商品も引用商標7及び引用商標8の指定商品と同一又は類似のものを有する。また、引用商標7及び引用商標8は、本件商標の先願、先登録に係るものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録された。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
(ア)本件商標は、別掲1のとおり、縦長の略三角形状の図形、三日月状の図形及び流線形状の図形を「R」字状に表し、その右に2つの右側が太く表された縦長の楕円を、その右下に長い縦長の曲線とその上部に短い横長の曲線を、その上部に一部が欠けた木の葉状の図形を、さらに、その右下に太い「S」字状の図形を配してなるものであり、かかる構成態様から、特定の称呼及び観念を生じないものと判断するのが相当である。
(イ)申立人1は、本件商標はその構成態様から、並びに、本件商標権者は本件商標が欧文字「Roots」を図案化したものであるとウェブサイトで公言していること、及び、「Roots」の文字からなる商標を登録出願していることから、本件商標は欧文字「Roots」に図形的要素を施し、当該文字をロゴ的に表示されたものと容易に認識される旨、また、申立人2は、本件商標はその構成中、文字部分と認識できる部分は左から「R」、「O」、「O」及び「S」の欧文字であり、容易に「ROOS」の欧文字の並びを認識できるものである旨主張している。
そこで検討すると、別掲1のとおりの構成からなる本件商標は、申立人1及び申立人2(以下、両者を併せて「申立人」という。)が主張するように、「Roots」及び「ROOS」の文字を図案化したものとみることができなくはない。しかしながら、本件商標は、上記(ア)のとおりの構成からなるものであって、その構成態様からすれば、近時、文字商標を図案化して表すことが普通に行われていることを考慮しても、看者をして「Roots」及び「ROOS」の文字を認識させることなく、むしろ、全体が一体不可分の図形商標と把握、認識させるものと判断するのが相当である。
また、商標からどのような称呼、観念が生じるかは、当該商標に接する取引者及び需要者の認識によって判断されるべきものであり、商標権者の意図によって左右されるものではない。
したがって、申立人のかかる主張はいずれも採用できない。
イ 引用商標
(ア)引用商標1ないし引用商標3は、上記2(1)ア(ア)ないし(ウ)のとおり「ROOTS」の欧文字を標準文字で表してなり、当該文字に相応し「ルーツ」の称呼、「起源(ルーツ)」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
(イ)引用商標4は、上記2(1)ア(エ)のとおり「ROOTS」と「ルーツ」の文字を2段に横書きしてなり、当該文字に相応し「ルーツ」の称呼、「起源(ルーツ)」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
(ウ)引用商標5は、別掲2のとおり、「Roots」の欧文字の上部に図形を配してなり、その構成中の文字に相応し「ルーツ」の称呼、「起源(ルーツ)」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
(エ)引用商標6は、別掲3のとおりの態様からなり、「ROOT」の欧文字を図案化して表したものと容易に認識させるから、当該文字に相応し「ルート」の称呼、「根、起源」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
(オ)引用商標7は上記2(2)アのとおり「ROOS」の欧文字からなり、引用商標8は上記2(2)イのとおり「ROOS」の欧文字を標準文字で表してなり、いずれもそれら文字に相応し「ルース」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標とを比較すると、上記のとおり両者の外観は構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
次に称呼においては、本件商標が特定の称呼を生じないのに対し、引用商標は「ルーツ」、「ルート」又は「ルース」の称呼を生じるものであるから、相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は「起源(ルーツ)」又は「根、起源」の観念を生じるもの、又は特定の観念を生じないものであるから、両者は相紛れるおそれのないもの、又は比較できないものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において相紛れるおそれのないもの又は比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 使用商標の周知性について
(ア)申立人1の提出に係る甲各号証及び同人の主張によれば、申立人1は1973年にトロントに1号店を設立以来、現在までに使用商標(大文字と小文字が異なるものを含む。)を付した革製品、被服、アクセサリー等を製造、販売し、カナダ、米国を始め世界に200以上の店舗を展開していること(甲22A、25A、45A)、1998年の長野冬季オリンピックにおいて、申立人1のウェアがカナダ選手のユニフォームとして採用されたこと(甲21A〜25A)、申立人1のブランド「Roots」は、JETROなど相当数のウェブサイトにおいて使用商標とともに紹介等されていること(甲21A〜27A、29A〜40A)、申立人1のSNSのフォロワー数は、TikTokが9.3万人、Facebookが28.3万人、Twitterが7.6万人、Instagramが23.1万人であること(甲42A〜45A)、申立人1の商品(被服、バッグ、アクセサリーなど)は、我が国においても、使用商標の使用の下、オンライン通販サイト「BUYMA」を通じて販売されていること(甲46A)、申立人1の我が国における2017年から2020年までの年間売上げは、2.5万ないし5.1万米国ドルであること(甲28A)などが認められる。
しかしながら、申立人1の店舗が我が国に存在することは確認できず、申立人1の我が国における売上げもさほど高いとはいえない。また、申立人1のブランド「Roots」が相当数のウェブサイトにおいて使用商標とともに紹介等されているものの、ほとんどは、当該ブランドがカナダにおいて人気のブランドであること、及びカナダにおける観光情報や土産物の紹介としての記事であり、我が国における人気などに関する記事は見当たらない。
(イ)上記(ア)のとおり、申立人1は、1973年にトロントに1号店を設立以来、使用商標を使用して革製品、被服、アクセサリーなどを販売し、現在ではカナダ、米国を始め世界に200以上の店舗を展開し、申立人1のブランド「Roots」は相当数のウェブサイトで紹介等され、使用商品は我が国においてもオンライン通販サイトを通じて販売されていることなどが認められることからすれば、使用商品及びそれに使用される使用商標は、申立人1の業務に係る商品及び同商品を表示するものとして需要者の間にある程度知られているということができる。
しかしながら、申立人1の店舗が我が国に存在することは確認できず、また、申立人1の我が国における売上げもさほど高いとはいえず、さらに、申立人1のブランド「Roots」が相当数のウェブサイトにおいて使用商標とともに紹介等されているものの、ほとんどは、当該ブランドがカナダにおいて人気のブランドであること、及びカナダにおける観光情報や土産物の紹介としての記事であり、我が国における人気などに関する記事は見当たらないことからすると、カナダへの日本人訪問者数(甲41A)や申立人1のSNSフォロワー数などを考慮しても、使用商品及びそれに使用される使用商標は、申立人1の業務に係る商品及び同商品を表示するものとして、いずれも需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
イ 本件商標と使用商標の類否について
本件商標は、別掲1のとおりの構成からなり、上記(1)アのとおり特定の称呼及び観念を生じないものである。
使用商標は、上記2(1)イのとおり、「Roots」の欧文字からなり、該文字に相応し「ルーツ」の称呼、「起源(ルーツ)」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
そこで、本件商標と使用商標とを比較すると、両者の上記のとおりの外観は構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
次に称呼においては、本件商標が特定の称呼を生じないのに対し、使用商標は「ルーツ」の称呼を生じるものであるから、両者は相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、使用商標は「起源(ルーツ)」の観念を生じるものであるから、両者は相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と使用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者は非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
ウ 混同のおそれ
上記アのとおり使用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記イのとおり本件商標は、使用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして使用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人1)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同項に違反してされたものとはいえない。
他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標5)


別掲3(引用商標6)



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異議決定日 2022-09-07 
出願番号 2020152004 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W1625)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 豊田 純一
特許庁審判官 山田 啓之
杉本 克治
登録日 2021-08-18 
登録番号 6430672 
権利者 中島 微
商標の称呼 ルーツ 
代理人 小出 俊實 
代理人 幡 茂良 
代理人 橋本 良樹 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 三上 真毅 

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