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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 005
管理番号 1389556 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2021-01-14 
確定日 2022-05-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第3102237号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3102237号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおり「Sankin」の欧文字と「サンキン」の片仮名を2段に書してなり,平成4年12月10日に登録出願,第5類「消化器官用薬剤,外皮用薬剤,血液用剤,診断用薬剤,歯科用材料,衛生マスク,絆創膏」を指定商品として,同7年11月30日に設定登録がされ,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,令和3年2月1日である。
なお,本件審判において,商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは,平成30年(2018年)2月1日ないし令和3年(2021年)1月31日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する令和3年6月3日付け及び同4年2月14日付け弁駁書において要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 弁駁書における主張
(1)使用商標1について
ア 本件商標権者に係る商品カタログ(以下「本件カタログ」という。乙1)には,歯科用ステンレス合金として「三金ネット」なる商品名の商品(以下「使用商品1」という。)が記載され,使用商品1の写真内の包装に「SANKIN NET」との文字列がある。
しかし,本件カタログに記載されている商品名は,あくまで「三金ネット」という漢字表記と一般名称が結合した名称であり,本件商標との同一性はない。そうすると,当該商品包装内の「SANKIN NET」との記載は,単に「三金ネット」なる商品の商品名のローマ字表記を表すものにすぎない。
したがって,「SANKIN NET」なる記載は,識別能力を有するものではなく,「SANKIN NET」の記載がなされたことは,何らかの商標が利用されたものと評価すべきものでもない。
また,使用商品1の写真内における包装に付された文字列は「三金ネット」とは異なるし,加えて,すべて大文字として使用されている包装に付された文字「SANKIN NET」と大文字と小文字からなる本件商標である「Sankin」は外観上も異なることから,商標としての識別標識機能を果たす態様での使用とはいえず,登録商標としての使用には該当しない。
そして,被請求人は,「SANKIN NET」の「NET」部分に識別力を有しないか,有するとしても極めて僅少である旨主張するところ,現実に,頒布されたか否かはさておき,商品の包装(乙1)において,「SANKIN」の記載がなされているものは存在しない。
そうすると,「SANKIN NET」はあくまで,「SANKIN NET」として認識されるものであり,「SANKIN」の文字からなる商標(以下「使用商標1」という。)とは異なる観念を有するものと考えられる。
イ 本件カタログが要証期間内に頒布されたことの証明がないことについて
被請求人は,ウェブサイトを通じて,本件カタログを公開していた旨主張しているが,ウェブサイトの写し(乙8,乙9)は,いずれも発行日が不明である。
したがって,要証期間に,本件カタログを頒布していたことの証明はなされていない。
ウ 被請求人は,返品証明書(乙5),納品書(乙6),請求書(乙7)(以下,これらをまとめて「使用商品1書類」という。)をもって,使用商標1の取引が存する旨主張するが,そもそも,使用商品1書類は,被請求人から提出されたのみで,実際に商品の取引や商品自体の存在が推認されることはない。
そうすると,被請求人は,使用商品1の製造や販売について,立証していない。
したがって,使用商品1自体が存在していないと考えられるから,当然,使用商標1がその「包装」に使用されていることもない。
エ 以上のとおり,本件商標は,使用商品1に使用されておらず,加えて,そもそも使用商品1は存在しないことから,本件カタログの写真中に「SANKIN NET」との記載があったとしても,指定商品である「歯科用ステンレス合金」について,「広告」に付して使用していたとはいえず,使用商標1を本件商標の指定商品に使用していたとはいえない。
オ 仮に,使用商品1書類をもって要証期間の取引が推認されたとしても,かかる取引は,いわゆる駆け込み使用(商標法50条3項)にあたり,商標法第50条第1項に規定する登録商標の使用には該当しないものである。
(ア)被請求人は,使用商品1書類の作成日は,令和2年12月と主張するところ,本件審判請求日は令和3年1月14日である。
そうであれば,使用商標1は,「審判の請求前3月からその審判の請求の登録の日までの間」に使用されたものであることは明らかである。
(イ)しかも,請求人と本件商標権者は,令和2年中に事業譲渡に関する交渉を行っており,これが妥結しなかったものであり(甲2),これは本件商標権者が認識しているところである。
かかる状況下では,請求人が本件商標について,取消請求を行うことは,当然の帰結というべきであり,かかる取引は,「その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知った後」になされたものであるというべきである。
(2)使用商標2について
ア 本件カタログにおいて「ワックス/その他ワックス関連製品/アタッチメント/その他C&B関連製品」として歯科用ワックスが掲載されている(乙1)ところ,同頁には,「サンキン ペイントワックス」との商品名は存在しない。
イ 歯科用ワックスに係る請求書に記載のある「サンキン ペイントワックス」なる商品名の商品(以下「使用商品2」という。乙2〜乙4)は,その名称からペイントワックスであることはわかるものの,これが歯科用ワックスであるかどうかは不明である。また,ペイントワックスは,通常,歯科用に用いられるものではない。
本件商標権者作成の「添付文書」(乙10)は,客観的な資料とはいえず,「ペイントワックス」が「歯科技工物を作製するため」のものであるかは不明である。
しかも,当該書証の作成時期は平成29年1月であり,要証期間に作成されたものではない。とすれば,「ペイントワックス」という名称の物品が要証期間に歯科用材料として使用されていたということはできない。
したがって,使用商品2は,「歯科用材料」として使用されたとはいえない。
ウ 発注データ及び納品書(乙11〜乙16)によっては,請求書(乙2〜乙4)が実際に福井県,山口県,析木県の顧客に頒布されたか不明であることについて
(ア)まず前提として,本件受発注システムを通じた受発注のプロセスが被請求人主張のとおりであることが証明されていない。
(イ)仮に,本件受発注システムを通じた受発注のプロセスが被請求人主張のとおりであり,請求書(乙2〜乙4)と発注データ及び納品書(乙11〜乙16)の対応関係が被請求人の主張のとおりであったとしても,商品を購入したとされる者が当該商品を受領した旨を示すような書面が提出されたものではなく,当該請求書,発注データ及び納品書によって,「ペイントワックス」に関する一連の取引が示されたとはいえない。
これに加えて,被請求人は,ペイントワックスなる商品の実際の画像等を一切提出しておらず,ペイントワックスを商品として流通させているという証拠及びペイントワックスが存在していることに関する証拠を何ら提出していないものである。
そもそも,被請求人が提出した証拠は,「ペイントワックス」なる文字列が記載された本件商標権者作成にかかる請求書等にすぎず,ペイントワックスなる商品の写真,包装を証拠として提出したものではない。単に請求書上に,文宇列として本件商標権者が記載しただけではその商品が実在していることを証明しているとはいえないものである。
この点,実際にペイントワックスなる商品が存在し,要証期間内に「サンキン」の文字からなる商標(「以下「使用商標2」という。)を使用していたのであれば,商品の実際の画像や包装等の提出は,容易であるはずなのに,これを提出していないことこそ,商品自体が存在せず,かつ,商標の使用もしていないことの証左といえる。
エ よって,使用商標2が歯科用ワックスの名称として使用されていることは何ら立証されておらず,使用商標2を本件商標の指定商品に使用していたとはいえない。
(3)結語
以上から,本件商標が要証期間にその指定商品中の「歯科用材料」に,商標的使用がされているとの証明は一切されていない。
また,被請求人の主張からみても,本件商標の取消しを退けるほどの態様による使用はしておらず,商標権による保護を与える必要性もない。
よって,本件商標は取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,答弁書及び審尋に対する回答書において,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第16号証を提出した。
本件商標権者は,要証期間において,使用商標1を,本件商標権者の製造及び販売する商品である歯科用ステンレス合金の商品カタログ及び商品の包装に付して使用し,また,使用商標2を,本件商標権者の製造及び販売する商品である歯科用ワックスの取引書類に付して使用していた。
1 歯科用ステンレス合金に関する使用商標1の使用
(1)使用商品1について
本件カタログに掲載された使用商品1の商品写真中の商品の包装において使用商標1が付され,また,商品写真の脇にも使用商標1が表示されている。
本件カタログは,その最終ページの右下に「製造販売元」として本件商標権者の名称と住所が表示されており,また6頁の「表示価格は,2018年12月現在のメーカー希望小売価格で消費税は含まれておりません。」等の表示から2018年12月に本件商標権者が発行した商品カタログである。
そして,本件カタログには,2020年頃に受賞したデザイン賞に関して言及されている記載があることから,少なくとも2020年9月まで使用されていた(乙1)。
なお,本件カタログは,主に本件商標権者のウェブサイトを通じて公開されていたものである(乙8,乙9)。
したがって,本件商標権者は,要証期間において,使用商標1を,義歯の部材のために使用される歯科用ステンレス合金であって,義歯の本体部分に使用されることが想定された「歯科用材料」である使用商品1の包装及びその広告に付して使用していた(商標法第2条第3項第1号及び同項第8号)。
そして,使用商品1は実際に取引されていた商品である(乙5〜乙7)。
(2)本件商標の使用について
ア 請求人は,「本件カタログにおける使用商品1の商品名「三金ネット」と本件商標とは異なるから,本件商標の使用が認められない」と主張するが,使用商品1において使用する商標は「SANKIN」(使用商標1)であって,請求人が指摘する「三金ネット」ではない。
イ 「SANKIN NET」と「Sankin」が外観上異なるとしても,それは使用商品1の包装に付されている「SANKIN」ないし「SANKIN NET」の表示が識別標識機能を果たす態様での使用でないという主張の根拠には全くならない。
「SANKIN」ないし「SANKIN NET」は,商品名として,商品の包装に付された標識であるから,商標として機能している。
また,使用商品1は,義歯の部材のために使用されるネット(網)状の歯科用材料であって,かかる商品の名称として「NET」(網)という文字列を使用しても,当該文字部分は識別力を全く有しないか,有するとしてもそれは極めてわずかである。したがって,使用商品1の包装に付されている「SANKIN NET」のうち,出所表示機能を有する部分は「SANKIN」である。
以上より,本件商標権者は,要証期間に,指定商品中の「歯科用材料」について,使用商標1を使用していた。
2 歯科用ワックスに関する使用商標2の使用
(1)本件商標権者は,要証期間に使用商品2を製造及び販売しており,当該取引に係る請求書において,使用商標2を付して使用していた。すなわち,本件商標権者は,2018年6月6日,福井県に所在する取引先に対し,2019年9月24日,山口県に所在する取引先に対し,及び,2020年9月11日,栃木県に所在する取引先に対し,歯科用ワックスを販売したが,各取引に係る請求書のお買上明細の「品名」欄に,使用商標2が付されていた(乙2〜乙4)。これらの請求書の作成日自体は明らかでないものの,これらの請求書に対応する取引期間は,請求金額欄のすぐ上にある括弧書の「期間」の記載から確認することができ,それぞれ,「2018年5月21日〜2018年6月20日」,「2019年9月21日〜2019年10月20日」,及び,「2020年8月21日〜2020年9月20日」の期間に対応する請求書であることが分かる。
個別の取引の日付については,お買上明細の「月日」欄の数字から確認することができ,いずれも要証期間の取引であることは明らかである。
(2)本件商標権者は,取引先との受発注をEDI(Electronic Data Interchange)のシステム(以下「本受発注システム」という。)を通じて行っているため,紙媒体や電子メ−ルでのやりとりは発生しない。
本件商標権者の取引先の発注データ(乙13)による注文を受けて本件商標権者は取引先に商品を納品するところ当該発注データ(乙13)の左上の,「販売注文」下部に記載された番号は,かかる発注に対応する納品書(乙14)の右上部分の伝票番号に対応する。
また,納品書(乙14)の二行目の伝票番号は,請求書ごとに付番された番号であり,これは請求書(乙3)の「お買上明細」の「サンキンペイントワックス」(使用商品2)の行に記載された伝票番号に対応する。
かかる伝票番号を追跡することにより,請求書(乙3),発注データ(乙13)及び納品書(乙14)が,一連の取引に関する取引書類であることを容易に確認可能である。
(3)使用商品2は,その添付文書に説明されているとおり,「歯科技工物を作製するために補助的に用いる多目的ワックス」である(乙10)から,使用商標2が「歯科用材料」であることは明らかである。
(4)したがって,本件商標権者は,要証期間において,使用商標2を,指定商品中の「歯科用材料」について,本件商標権者の製造及び販売する商品の取引書類に付して使用していた(商標法第2条第3項第8号)。
3 商標の同一性について
上記1及び2のとおり,本件商標権者は,要証期間において,使用商標1及び使用商標2を本件商標の指定商品中の「歯科用材料」について使用していたものであるところ,これらの商標は,本件商標と社会通念上同一の商標である。
まず,本件商標は「SANKIN(審決注:「Sankin」の誤記と認められる,以下同じ。)」と「サンキン」とを二段に構成してなる商標であるところ,その構成中「SANKIN」の欧文字は,辞書類に載録されている既存の語ではなく,特定の意味合いを生ずることのない一種の造語であり,「サンキン」の片仮名は,欧文字部分から生ずる自然な読みに従って振り仮名を表記したものと理解,認識されるから,本件商標は,その全体から「サンキン」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。
一方,使用商標1は,本件商標の欧文字部分とそのつづりを同一とし,片仮名部分とは片仮名とローマ字を相互に変換するもので,共に「サンキン」の称呼を生じ,観念における相違はないものである。
また,使用商標2については,本件商標と片仮名部分のつづりを同一とし,欧文字部分とは片仮名とローマ字を相互に変換するもので,共に「サンキン」の称呼を生じ,観念の相違はないものである。
したがって,使用商標1及び使用商標2はいずれも,本件商標と社会通念上同一の商標である。
4 結語
以上より,本件商標は,要証期間内に,本件商標権者によって,指定商品中の「歯科用材料」について使用されている。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者は,歯科医療機器及び歯科材料を製造・販売する企業である(乙5)。
(2)本件商標権者と福井県福井市の顧客との取引について
ア 本件商標権者の発注データ(販売注文 00569615)において,本件商標権者は,2018年6月6日に「顧客ID」を「100469」とする顧客より,「品目番号」を「N17226071111」,「品目名」を「サンキン ペイントワックス」,「数量」を「1」とする商品等の注文を受け,同日に出荷した(乙11)。
イ 本件商標権者は2018年6月6日付けで福井市の顧客(番号100469)に対し,「品目番号」を「N17226071111」,「バーコード」を「212821018」,「品目名称」を「サンキン ペイントワックス」,「数量」を「1」,「JANコード」を「4987741051965」とする商品等の納品書を作成した(乙12)。なお,当該納品書には伝票番号「00569615」及び「06422123」が記載されている。
ウ 本件商標権者は,福井県の顧客(お客様コード100469)宛てに,期間を2018年5月21日ないし2018年6月20日とする買上において,6月6日,伝票番号「06422123」,品名「4987741051965 212821018 サンキン ペイントワックス」,数量「1」の商品等に対する請求書を作成した(乙2)。
エ 発注データ,納品書,請求書において,発注データの顧客IDと納品書及び請求書における顧客の番号,各書証の商品名及び数量が一致し,発注データと納品書の品目番号,納品書バーコードの番号及びJANコードの番号と請求書の品名に付されている番号が一致する。
(3)本件商標権者と山口県の顧客との取引について
ア 本件商標権者の発注データ(販売注文 00865149)において,本件商標権者は,2019年9月24日に「顧客ID」を「100508」とする顧客より,「品目番号」を「N17226071111」,「品目名」を「サンキン ペイントワックス」,「数量」を「1」とする商品等の注文を受け,同日に出荷した(乙13)。
イ 本件商標権者は2019年9月24日付けで山口県の顧客(番号100508)に対し,「品目番号」を「N17226071111」,「バーコード」を「212821018」,「品目名称」を「サンキン ペイントワックス」,「数量」を「1」,「JANコード」を「4987741051965」とする商品等の納品書を作成した(乙14)。なお,当該納品書には伝票番号「00865149」及び「11575178」が記載されている。
ウ 本件商標権者は,山口県の顧客(お客様コード100508)宛てに,期間を2019年9月21日ないし2019年10月20日とする買上において,9月24日,伝票番号「11575178」,品名「4987741051965 212821018 サンキン ペイントワックス」,数量「1」の商品等に対する請求書を作成した(乙3)。
エ 発注データ,納品書,請求書において,発注データの顧客IDと納品書及び請求書における顧客の番号,各書証の商品名及び数量が一致し,発注データと納品書の品目番号,納品書バーコードの番号及びJANコードの番号と請求書の品名に付されている番号が一致し,また,発注データの伝票番号と,請求書の伝票番号のそれぞれが納品書に記載されている。
(4)本件商標権者の作成に係る「歯科材料07 歯科用ワックス 一般医療機器 歯科用ユーティリティーワックス 70896000 ペイントワックス」の届出書(2017年1月(第1版))には「【使用目的又は効果】」として「歯科技工物を作製するために補助的に用いる多目的ワックス。[使用目的]本品は,PCデンチャーシステムの技工ステップで使用する塗布タイプの歯科用ワックスである。」及び「【製造販売業者及び製造業者の氏名又は名称等】」として「製造販売業者 デンツプライシロナ株式会社」の記載がある(乙10)。
2 上記1の認定事項に基づき,以下判断する。
(1)本件商標の使用者について
品名もしくは品目名称に「サンキン ペイントワックス」の文字(以下「使用商標」という。)が記載されている納品書及び請求書の作成者は本件商標権者と認められるから,使用商標の使用者は本件商標権者である。
(2)使用商品について
被請求人が使用商品と主張する「ペイントワックス」は,一般医療機器の届出書(乙10)の説明によると,表題に「歯科用材料」の文字及び使用目的に「歯科用ワックス」である旨の記載があるから,「歯科用材料」に含まれる商品と認められ,当該歯科用材料は本件商標の指定商品(請求に係る商品)の範ちゅうの商品である。
(3)本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について
ア 本件商標は,別掲のとおり,「Sankin」の欧文字と「サンキン」の片仮名を2段に書してなるところ,下段の片仮名は上段の欧文字の読みを表したものと,無理なく認識できるものであるから,本件商標からは「サンキン」の称呼が生じる。
イ 他方,納品書及び請求書の品名として表示されている「サンキン ペイントワックス」の文字(使用商標)の構成中「ペイントワックス」の文字は,使用商品の名称を表すものであって識別標識として機能しないか,又は極めて弱いというべきである。
そうすると,使用商標の構成中,自他商品を識別する標識として機能する部分は「サンキン」の文字部分にあるというべきである。
ウ 本件商標と使用商標の構成中,自他商品を識別する標識として機能する「サンキン」の文字についてみるに,「サンキン」の文字は本件商標と称呼を同一にし,また,本件商標の下段の片仮名と同一の文字からなるものであるから,「サンキン」の文字は本件商標と社会通念上同一であり,当該文字に商品の名称を付加した使用商標も本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(4)商標の使用及び使用時期について
ア 本件商標権者は,福井県福井市の顧客より2018年(平成30年)6月6日に使用商品の注文を受け,同日に当該顧客に商品を発送し,その後,当該商品に係る請求書を送付したものと認められ,当該取引に不自然なところはない。そして,上記商品の発送における納品書には,「品目名称」の欄に「サンキン ペイントワックス」が記載されていることから,本件商標権者は,福井県福井市の顧客にペイントワックス(使用商品)を納品する際に,納品書に,当該ペイントワックスに関して「サンキン ペイントワックス」との標章を付したものと認められる。
イ 本件商標権者は,山口県の顧客より2019年(令和元年)9月24日に使用商品の注文を受け,同日に当該顧客に商品を発送し,その後,当該商品に係る請求書を送付したものと認められ,当該取引に不自然なところはない。そして,上記商品の発送における納品書には,「品目名称」の欄に「サンキン ペイントワックス」が記載されていることから,本件商標権者は,山口県の顧客にペイントワックス(使用商品)を納品する際に,納品書に,当該ペイントワックスに関して「サンキン ペイントワックス」との標章を付したものと認められる。
ウ そうすると,本件商標権者は,2018年(平成30年)6月6日及び2019年(令和元年)9月24日,上記福井県福井市及び山口県の顧客に対し,使用商品に係る取引書類(納品書)に,「サンキン ペイントワックス」(使用商標)との標章を付してそれぞれ頒布しているものと認められ,上記日付けは要証期間内である。
(5)小括
以上によれば,本件商標権者は,要証期間に日本国内において,本件審判の指定商品に含まれる「ペイントワックス」の取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したものと認められる。
本件商標権者による上記使用行為は,商標法第2条第3項第8号にいう「商品の取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
請求人は,「ペイントワックス」の説明書は,客観的な資料とはいえず,また当該説明書の作成時期は平成29年1月であり,要証期間に作成されたものではないから,「ペイントワックス」という名称の物品が要証期間に歯科用材料として使用されていたということはできない旨主張する。
しかしながら,当該説明書は使用商品を製造販売するための説明資料であって,作成時期の平成29年1月を本件商標の使用の証拠とするものではない。また上記2(4)のとおり,福井県福井市及び山口県の顧客に対し,「ペイントワックス」に係る納品書が要証期間に頒布されているものと認められる。
したがって,請求人の主張は採用できない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標権者が本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「ペイントワックス」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したというべきである。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲
別掲(本件商標)


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,この審決に係る相手方当事者を被告として,提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-03-08 
結審通知日 2022-03-10 
審決日 2022-03-31 
出願番号 1992321562 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (005)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 平澤 芳行
特許庁審判官 佐藤 松江
大森 友子
登録日 1995-11-30 
登録番号 3102237 
商標の称呼 サンキン 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 渡辺 翔 
復代理人 佐藤 力哉 
代理人 山口 現 
復代理人 栗林 知広 
代理人 簗田 真也 
代理人 村瀬 純一 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 田中 克郎 

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