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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 039
管理番号 1389479 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-01-24 
確定日 2022-03-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4082999号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4082999号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成7年10月30日に登録出願、第39類「旅客車による輸送,貨物車による輸送,ケーブルカーによる輸送,モノレールによる輸送,ロープウェイによる輸送,車輛による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く)の代理・媒介又は取次ぎ,自動車の貸与」を指定役務として、同9年11月14日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年2月10日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年2月10日ないし令和2年2月9日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標は、その指定役務中、第39類「旅客車による輸送,貨物車による輸送,ケーブルカーによる輸送,モノレールによる輸送,ロープウェイによる輸送,車輛による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送」(以下「請求に係る指定役務」という。)について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
本件商標には、専用使用権者は存在せず(甲1)、通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しないところ、本件商標は、その請求に係る指定役務について、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者等」という場合がある。)のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
なお、請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して、何ら弁駁していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第51号証及び乙第56号証ないし乙第60号証を提出したところ、令和3年3月18日付け上申書において、乙第56号証ないし乙第60号証の数字は誤りであって、正しくは乙第52号証ないし乙第56号証である旨の上申がされたため、乙第56号証ないし乙第60号証は、乙第52号証ないし乙第56号証と読み替える(以下、証拠は「乙1」のように表記する場合がある。)。
1 審判事件答弁書の要旨
本件商標の商標権者であるバイア レイル カナダ インコーポレーテッド(以下「商標権者」という。)、すなわち「VIA鉄道(VIA Rail Canada)」は、要証期間に、日本国内において、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。以下同じ。)を、その請求に係る指定役務中「旅客車による輸送」(以下「使用役務」という場合がある。)の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に付している事実がある。
また、使用役務に関する広告、取引書類等に、本件商標を付して展示、頒布等し、これらを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供してきた事実がある。
これらは商標法第2条第3項第3号及び同項第8号に該当する行為であるから「商標の使用」に該当する。
(1)本件商標の説明
商標権者は、カナダの国営企業として1978年(昭和53年)に設立された輸送会社である。2013年(平成25年)4月30日に発行された10カナダドルの紙幣に、商標権者の鉄道の主要路線である大陸横断鉄道“カナディアン号“の絵柄がデザインされている。
本件商標は、商標権者が、日本の個人顧客に対して「旅客車による輸送」等の役務を提供するにあたり、その出所標識として、日本で取引書類等に関して使用し、広告するために、日本で登録したものである。
そして、遅くとも1995年(平成7年)以降、要証期間を含み今日に至るまで、本件商標は、商標権者が、日本の個人顧客・取引者向けに日本語で運営している使用役務の提供に関する公式ウェブサイト「カナダ大陸横断鉄道 日本公式サイト」(以下「本件ウェブサイト」という場合がある。)や、各種広告媒体、取引先の旅行会社等を通じて、日本国内で、使用役務について長年にわたり使用されているものである。
(2)本件商標の使用(商標法第2条第3項第8号
商標権者は、使用役務に関する広告、価格表、取引書類を内容とする情報に、本件商標を付して、電磁的方法により提供している。
ア 本件ウェブサイトの全てのページには、商標法第70条に規定される「色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められる」商標(以下「本件商標」という場合がある。)が独立して、商標を意味する「TM」の表示とともに自他役務識別力を発揮する態様で使用されている(乙1、乙3〜乙10、乙12〜乙16)。
そして、本件ウェブサイトは、「予約の仕方」、「乗車料金」、「お食事の有無」、「手荷物と預け入れ荷物」、「列車遅延について」等について懇切丁寧に使用役務の提供を受けるにあたり必要な情報が記載されている「よくあるご質問」のページ(乙14)や、「ツアー情報」に関するページ(乙15)を含むものであり、本件ウェブサイトの内容全体として、使用役務中「旅客車による輸送」ないしこれに関する広告、価格表、取引書類を内容とする情報の提供に関するものである(乙1、乙3〜乙10、乙12〜乙16)。
インターネット上の情報を扱うデジタルアーカイブであるWayback Machine(以下「Wayback Machine」という。)によると、本件ウェブサイトのトップ画面は、要証期間である、少なくとも2017年(平成29年)3月4日(乙3)、同年8月16日(乙4)、同年9月10日(乙5)及び2019年(平成31年)1月20日(乙6)に掲載されていたことが明らかである。
さらに、本件ウェブサイトの下段に「1995−2020 VIA Rail Canada Inc.」の記載があるところ、本件ウェブサイトは、遅くとも1995年(平成7年)から、要証期間をはさみ、今日に至るまで間隙なく運営されている(乙1、乙3〜乙10、乙12〜乙16)。
イ 本件ウェブサイトの「列車のご案内」のページには、VIA鉄道の主要路線が、カナダの地図と共に紹介されている(乙7)。
これによって、日本の個人顧客・取引者は、「旅客車による輸送」の提供を受けるに際し、どの路線に乗るべきか容易に確認することができる。
ウ 本件ウェブサイトの「VIA鉄道ニュース」のページには要旨以下の内容が紹介されている(乙16)。
(ア)旅行読売出版の「旅行読売」の2019年8月号で、本件商標が付されて運行され「旅客車による輸送」を提供する「カナディアン号」が紹介されている(乙17)。
(イ)Webマガジン「TABIZINE」(2019年7月発行)でバンクーバーからジャスパーまでの1泊2日の旅、すなわち、商標権者が、本件商標を付して「旅客車による輸送」を提供する内容が紹介されている(乙18)。
(ウ)テレビ朝日のテレビ番組「世界の車窓から」(2018年11月〜2019年3月放送)において、「カナダ東部 秋の紅葉とメープル街道の旅」と題して商標権者が、本件商標を付して「旅客車による輸送」を提供する様子が紹介されている(乙19)。
(エ)NHK総合のテレビ番組「有村架純 カナダ大自然の旅」(2017年12月放送)において、商標権者が、本件商標を付して「旅客車による輸送」を提供する様子が紹介されている(乙21)。
エ 商標権者によるカタログ
(ア)本件ウェブサイトにおいて、使用役務に関する広告を内容とするカタログ情報が多数掲載されている(乙22)。
その中で「カタログダウンロード」のページからは、以下(a)ないし(c)のカタログをダウンロードして入手することができ、プリントアウト(印刷)することによって、物理的有体物としてのカタログを入手することができる。これらのカタログには、本件商標が一際目を引く態様で配され、使用役務に関する広告を内容とする情報が掲載されている(乙23、乙25、乙26)。
(a)カタログ「カナダ最高の車窓へ」
本カタログの発行日が、「2016年2月」と記載されていることから、本カタログが2016年(平成28年)2月から現在に至るまで間断なくこのサイト上で掲載されてきたことは容易に推認でき、これに反する客観的証拠もない。また、本カタログは、トレードショー等を通じて日本国内で1000部以上頒布されたものである。
(b)カタログ「列車で旅するカナダ」
本カタログの発行日が「2012年4月」と記載されていることから、本カタログが2012年(平成24年)4月から現在に至るまで間断なくこのサイト上で掲載されてきたことは容易に推認でき、これに反する客観的情勢も証拠もない。
(c)カタログ「憧れの寝台列車の旅へ」
(イ)商標権者は、上記(ア)の本件ウェブサイトに現在掲載されている(a)ないし(c)のカタログに加えて、本件商標を、商標的態様で表紙に付し、使用役務中「旅客車による輸送」に関する情報提供ないし広告を内容とする日本語カタログを、日本において頒布、掲載している(乙27)。このカタログの発行は「2019年5月」と示されているところ、このカタログ頒布ないし掲載が要証期間のものであることは明白である。
オ したがって、商標権者は、本件商標を、使用役務について、要証期間に、商標法第2条第3項第8号に規定する使用を行っている。
(3)本件商標の使用(商標法第2条第3項第3号
商標権者は、本件ウェブサイトにおいて、「旅客車による輸送」にかかる搭乗券の個人顧客向けの販売を行っており、「旅客車による輸送」を提供する商標権者が、自己の提供する当該輸送にかかる搭乗券の販売を行うことは、「旅客車による輸送」自体に包含される行為である。
ア 本件ウェブサイトの「予約のご案内」の項には、日本の個人顧客が、「旅客車による輸送」にかかる搭乗券を発注し、購入するための案内文が、日本語で懇切丁寧に記載されている。これにより、日本の個人顧客は、日本国内に居ながらにして、商標権者に対して、使用役務の提供を直接発注し、支払いをなし、使用役務の提供にかかる搭乗券を入手することが可能である(乙8〜乙10)。
イ 搭乗券の予約方法は2つあり、商標権者の提携先である日本の旅行会社経由で予約することもできるが、個人顧客は、「オンライン予約」の手段によって、「旅客車による輸送」にかかる搭乗券を予約し、容易に入手できる(乙8)。
ウ 本件ウェブサイトの例では「2015年10月27日バンクーバーからジャスパー(片道)まで大人二人分のチケットを購入」とあり、「ステップ1 A:片道か往復かを選択、乗車駅を選択、降車駅を選択、出発日を選択、利用者及び乗車人数を選択」、「ステップ2 区間の表示、列車番号、出発日時と到着日時、乗車時間の表示、クラスをプルダウンメニューから選択、選択して次に進む」、「ステップ3 乗車する列車の詳細の表示、料金及び消費税の表示と払い戻しとチケット交換に関しての情報表示、荷物に関しての注意事項、次へ進む」、「ステップ4 予約を行っている方の情報を入力、次へ進む」、「ステップ5 乗車する方の名前を人力、次へ進む」、「ステップ6 乗車する列車の詳細の表示、料金の表示、支払方法はクレジットカード払いを選択、クレジットカード会社を選択し、クレジット情報を入力、次へ進む」、「ステップ7 乗車する列車の詳細の表示、料金の表示、荷物に関しての注意事項、搭乗券の引き換えは、クレジットカード情報の表示」と、搭乗券の購入方法について、項目ごとに詳細な日本語の案内がある。
そして、搭乗券の購入後について、「手続き完了」の項目にて「予約番号の表示、搭乗券をプリントする、行程表と領収書をプリントする」等の項目とともに、「手続きが完了したら、顧客の連絡先メールアドレスに、QRコード付きの搭乗券(e−boarding pass)が送られてきます。プリントアウトしたe−boardingpass、もしくは、そのQRコードを表示したスマートフォンを、搭乗口で提示してください。本人確認のため、パスポートとクレジットカードを忘れずにお持ちください。」と、詳細な日本語の案内がされている。
このように日本の個人顧客が、本件ウェブサイトを通して、商標権者に対して日本国内において、直接発注し、支払い手続を完了した結果、使用役務にかかる搭乗券を入手することができる(乙9)。
エ 本件ウェブサイトの該当ページを、Wayback Machineで検索するに、要証期間である「2019年1月22日」に掲載され、日本国内の誰しもがアクセスでき、商標権者から直接、使用役務にかかる搭乗券を購入できる状況になっていたことが明らかである(乙10)。
また、使用役務の提供を受けた日が要証期間であることを条件として検索して印刷した、日本の個人顧客リスト(乙11)中、「Departure date」(日本語訳「出発日」)に着目すれば、本件商標の商標法第2条第3項第3号に規定する使用が、要証期間に間断なく日本国内において行われていたことが明確に表されている。
オ 以上のとおり、この搭乗券を、日本の個人顧客が印刷することで、日本国内において入手することができるのであり、商標法第2条第3項3号に規定する「使用役務(旅客車による輸送)の提供に当たりその提供を受ける者(日本在住の個人顧客)の利用に供する物」に、該当する。
そして、当該搭乗券の右上部分にも本件商標と同一と認められる商標「VIA」が明確に付されているのであるから(乙9)、これは本件商標の商標法第2条第3項第3号に規定する「使用」に該当する。
けだし、日本の個人顧客が、本件ウェブサイトを通じて、日本に居ながらにして、使用役務の提供を受けるための「発注」を行い、当該役務の提供の対価である料金を「支払い」、当該輸送にかかる「搭乗券を入手する」という一連の行為が全て「日本国内において」完結している。
本件ウェブサイトにおいて、日本の個人顧客によって行われた本件商標を付した「旅客車による輸送」の役務の提供を受けるための搭乗券の「発注」、「支払い」、その結果としての「搭乗券の入手」という一連の行為を通じて、日本国内で商業的効果が発揮されていることは如実であり、特に、要証期間だけでも、約20,000名を超える日本の個人顧客が上記搭乗券を購入したという事実や要証期間の日本の個人顧客からの売上げが毎年年間1億円を大幅に超えるという事実からも、上記商業的効果は顕著である。
カ したがって、本件商標が使用役務の提供について商標法第2条第3項第3号に規定する使用をされたことは明らかである。
(4)商標権者の提携先の旅行代理店による本件商標の使用
ア 商標権者は、日本国内の大手旅行会社等と、使用役務の利用に関する契約(鉄道旅客輸送用の座席割当の契約)を長年締結しており(乙28)、本件商標を使用役務との関係で広告宣伝等することについて事実上の使用許諾をしている。
これらの契約書の内容は、契約期間について、A社の場合、「第2条」で「2018年4月1日から2019年12月31日」とあり、B社の場合、「第2条」で「2020年1月1日から2024年12月31日」とある。
したがって、上記事実上の使用許諾期間は、要証期間である。
イ 本件商標を付した本件ウェブサイトに「ツアー情報」として日本における提携先旅行代理店のツアー情報が紹介されていることは上記(2)アのとおりである(乙15)が、商標権者の提携先の旅行代理店も、「旅客車による輸送」等を内容とする広告、価格表等に本件商標を付して頒布等を行っている(乙29〜乙50)。
これらの中には、一見「旅行の手配」の役務に関するものと解釈し得るものも含まれているものの、カナダ全土を横断するVIA鉄道を利用する旅行は、必然的に「旅客車による輸送」を中核とするものとなるため、事実上かつ実体上、「旅客車による輸送」に該当するということができる。
また、日本の個人顧客からすれば、日本において、上記旅行代理店が日本語で頒布、掲載等している以下のパンフレット・カタログ類にある本件商標が付された広告ページ及びそこの価格表をみて「旅客車による輸送」ないしそれに包含されるべき「旅客車による輸送の手配」を申込み、日本において支払いをなし、その結果として「搭乗券」ないし「旅客車による輸送の手配」を受けるための取引書類を受け取ることになるため、一連の商業的行為そして当該商業的効果が、日本国内で完結しているといえる。
そうすると、これら商標権者の提携先の日本の旅行代理店による使用役務に関する本件商標の使用も「日本における使用」に他ならない。
ウ したがって、商標権者ないしその事実上の商標使用権者である提携先の旅行代理店等によるウェブサイトやパンフレット・カタログ類等は、使用役務に関する広告、価格表、取引書類を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供する行為に該当するから、商標権者及び商標使用権者は、本件商標を、使用役務について、要証期間に、商標法第2条第3項第8号に規定する使用を行っている。
2 令和3年3月4日付け回答書の要旨
合議体は、被請求人が提出した証拠から、本件ウェブサイトの所在や、本件ウェブサイトを通じた日本に居住する顧客に関係する販売実績等を把握することができないことから、要証期間に、商標権者等が、本件商標を、その請求に係る指定役務について、使用したことを認めることができない旨の審尋を行ったところ、被請求人は以下のとおり回答した。
(1)本件ウェブサイトの所在について
ア 本件ウェブサイトのサーバーは、日本に所在し、株式会社プロリンク(東京都千代田区)によって運営されている(乙52)。同社社長により、「WCS」こと「株式会社ワールドコミュニケーションシステム」(東京都新宿区。乙54。以下「WCS社」という。)の「データサーバー」を管理・運営していることが2021年(令和3年)2月12日付書面にて陳述されている(乙53)。
イ 本件ウェブサイトのアドレス中の「wcs」は、「株式会社ワールドコミュニケーションシステム」(WCS社)の略称である。同社は、平成8年3月6日に設立され、過去おおよそ30年間にわたり、商標権者を筆頭とする、カナダ企業のマーケティングサービスを請け負っている。
ウ 商標権者とWCS社は、日本における20年以上にわたるビジネスパートナーであって、業務提携契約を締結している。2017年(平成29年)10月に締結された最新のサービス契約の有効期間は、2017年(平成29年)7月1日から2022年(令和4年)6月30日となっており、これは要証期間と重複する。
サービス契約書において、WCS社は、商標権者(VIA社)に対して、日本において週4日間、「日本に居住する個人顧客や日本にベースを置く航空会社、都道府県及び国に対するVIAの代理」、「日本国内ツアーオペレーターヘのVIAのサービスも含めた新しいパッケージ企画の紹介及び当該ツアーオペレーターとの協働」、「日本におけるVIAに対する認知度向上やVIAの広報活動拡大に向けて旅行関連メディアとの関係維持及び拡大」及び「必要に応じ、定期的に日本におけるVIAに対する興味、活動、認知に関するソーシャルメディアのオンライン監視を行い、指示された場合、対応する」等を含めた業務を、商標権者(VIA社)を代理して活動することが規定されている。これらのサービスは、商標権者(VIA社)の国内・国際営業のシニアマネージャー若しくは指名された商標権者(VIA社)の代理人の管理・監督のもとで提供される(乙55)。
エ 本件ウェブサイトについて、WCS社の本件ウェブサイトの管理者によると、2017年度は、39,975ユーザーのうち72.92%が、2018年度は、32,409ユーザーのうち66.92%が、2019年度は、29,992ユーザーのうち66.67%が、日本の居住者である。
(2)本件ウェブサイトを通じた日本の顧客に関係する販売実績等
本件ウェブサイトを通して搭乗券を購入する際、「居住国」の入力欄はあるものの、入力をすることは義務付けられていない。
したがって、日本の個人顧客の人数に関しては、要証期間だけでも、約20,000名以上である可能性が十分にある。
(3)搭乗券を購入した者の居住国について
ア 日本の個人顧客リスト(乙11)の作成者はVIA Rail Customer Relationship(顧客対応部門)とLoyalty Management Data Analysis Analist(ロイヤリティ管理分析部門)であり、2020年(令和2年)6月に作成されたものである。
イ 乙第11号証の証拠について、文字を拡大し、個人顧客の住所の一部の情報を追記した証拠を新たに乙第56号証として提出する。
ウ 本件ウェブサイトを通じて搭乗券を購入した個人顧客が、実際に日本に居住していることを示すために、乙第56号証に、使用役務を利用した日本居住顧客の名字部分を明らかにするととともに、ランダムに居住地の一部を開示した。例えば、「長崎市」、「豊田市」、「東京」、「奈良市」、「埼玉」、「日野」、「横浜市青葉区」、「墨田区」及び「神戸」等、一見して明らかに日本の地名と認識できる地名が多数開示されている。
したがって、商標権者が、日本に居住する個人顧客に向けて、要証期間にその請求に係る指定役務について本件商標の使用をしたものであることは明らかである。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について、被請求人の主張及びその提出に係る乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)「カナダ大陸横断鉄道 日本公式サイト」(日本語によるもの)のウェブサイトには、本件商標の商標権者の英語の名称である「VIA Rail Canada Inc.」の記載がある(乙1、乙3〜乙10、乙12〜乙16、乙22)。
(2)本件ウェブサイトは、商標権者と業務提携契約を締結し、商標権者を代理して、日本に居住する商標権者の個人顧客や取引者等を対象としたマーケティングサービスの業務を行っているWCS社(東京都新宿区)のデータサーバーに所在し、WCS社の依頼によって、株式会社プロリンク(東京都千代田区)が管理、運営している(乙52〜乙54)。
(3)商標権者は、カナダの大陸を横断する鉄道である「VIA鉄道」を運行しており、日本において、本件ウェブサイトを保有し、「VIA鉄道」に顧客が乗車する行程を中心としたカナダの旅についての紹介を行っている(乙1、乙3〜乙7等)。そして、本件ウェブサイトには、「VIA鉄道」の8つの路線の乗車料金の種類(乙12)、その予約方法や利用に際し生じる疑問などのよくある質問の紹介とその回答(乙14)、日本の旅行会社を通じて申し込むことができる「VIA鉄道」を行程に含むパッケージツアーの情報(乙15)等が、日本語で詳細に記載されている。
(4)本件ウェブサイトの各ページの左上には、別掲2のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)が表示されている(乙1、乙3〜乙10、乙12〜乙16、乙22)。
そして、本件ウェブサイトの各ページの下段には、「1995−2020 VIA Rail Canada Inc.」の記載があり、1995年(平成7年)から2020年(令和2年)にかけて、同ウェブサイトが存在していたものと推認できる(乙1、乙7〜乙9、乙12、乙14、乙15)。
また、Wayback Machineにより日付入りで出力した本件ウェブサイトのうち、乙第3号証ないし乙第5号証は、日付の記載がない乙第1号証(「VIA鉄道について」と題するページ)、乙第14号証(「よくある質問/FAQ」と題するページ)、乙第15号証(「ツアー情報/Tour information」と題するページ)に、乙第13号証は、日付の記載がない乙第12号証(「料金について/Price」と題するページ)にそれぞれ対応するものであり、本件ウェブサイトにおいて、VIA鉄道やそのツアー情報、搭乗料金、よくある質問等の情報のページが平成29年3月4日(乙3)、同年8月16日(乙4)、同年9月10日(乙5)及び平成30年10月17日(乙13)に存在していた。
(5)商標権者がカナダで運行する「VIA鉄道」の搭乗券(以下「本件搭乗券」という。)は、顧客が日本の旅行会社を通じて、又は、オンラインにて、日本で購入することができる(乙8、乙9、乙56)。
そして、商標権者は、本件ウェブサイトにおいて、顧客が本件搭乗券をオンラインにて購入する手順を、各操作画面の画像と共に日本語で詳細に説明するとともに、購入後に、QRコード付きの本件搭乗券(e−boarding pass)が顧客のメールアドレスに送られてくること、及び、その右上に使用商標を付した本件搭乗券の画像を示している。
また、オンラインにて購入した本件搭乗券は、日本又は外国にて、搭乗前に印刷した紙媒体、又は、そのQRコードを表示したスマートフォンを、搭乗口で提示することにより、顧客が「VIA鉄道」に乗車することができる(乙8、乙9)。
さらに、Wayback Machineにより日付入りで出力した本件ウェブサイトのうち、乙第10号証は、日付の記載がない乙第8号証及び乙第9号証(「予約のご案内」と題するページ)に対応するものであり、本件ウェブサイトにおける本件搭乗券の購入手順や、その右上に使用商標を付した本件搭乗券の画像が、平成31年1月22日(乙10)に存在していた。
(6)平成29年1月から令和元年12月の3年間を出発日とする本件搭乗券を、約16,000人の日本に居住する者が購入した(乙56)。
2 上記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)本件商標と使用商標について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、ややデザイン化した「VIA」の欧文字を黒色で横書きしてなるものである。
イ 使用商標について
(ア)使用商標は、別掲2のとおり、上段に、ややデザイン化した「VIA」の欧文字を黄色で横書きしてなる(以下「黄色文字部分」という。)ものであり、その右に赤色の楓の葉の図形(以下「図形部分」という。)、下段に、黒色で「VIARailCanada」の文字を横書きしてなる(以下「黒色文字部分」という。)、文字と図形の結合商標である。
(イ)使用商標は、外観上、黄色文字部分、図形部分及び黒色文字部分の3つが、いずれも重なること無くバランスよく配置された構成からなるものである。
そして、各文字部分と図形部分は、文字と図形の違い、色彩の違いがあるところ、各文字部分同士については、それらの大きさ、構成文字やその書体が大きく異なっており、各文字部分と図形部分は、視覚的に分離して観察されるものであるから、黄色文字部分のみも独立して自他役務の識別標識を有するものである。
(ウ)使用商標の構成中、要部の一である黄色文字部分は、色彩は異なるものの、上記アの本件商標と同じ書体からなる「VIA」の欧文字から構成されるものである。
ウ 本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について
本件商標と使用商標の要部「VIA」とを対比すると、両者は、ややデザイン化した「VIA」の欧文字を横書きしてなるものであって、色彩について、黒色か黄色かの差異があるものの、文字の書体を同じくしているから、外観において同視されるものであり、称呼及び観念において異なるところはない。
そうすると、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる。
(2)使用役務及び使用時期について
ア 上記1(3)のとおり、商標権者が運行し、カナダの大陸を横断する鉄道は、本件搭乗券を購入した顧客を輸送するものであるから(乙1、乙3〜乙7)、請求に係る指定役務中、第39類「旅客車による輸送」の範ちゅうの役務である。
イ 商標権者は、上記1(1)ないし(5)のとおり、平成7年から現在に至るまで、そのサーバーが日本に所在する本件ウェブサイトを通じて、「旅客車による輸送」の役務の提供に関連する日本語による各種情報を詳細に発信しており、これは日本の個人顧客・取引者向けのものといえる(乙1、乙3〜乙10、乙12〜乙16、乙22)。
そして、本件ウェブサイトのうち、VIA鉄道やそのツアー情報、搭乗料金、よくある質問等の情報が、要証期間である平成29年3月4日(乙3)、同年8月16日(乙4)、同年9月10日(乙5)及び平成30年10月17日(乙13)に存在していたところ、各ページの左上に使用商標が表示されている。
そうすると、商標権者が、要証期間に、「旅客車による輸送」の役務を提供するに当たり、役務に関する広告(本件ウェブサイト)を内容とする情報に使用商標が付され電磁的方法により提供する行為がされたものといえる。
ウ 上記1(5)のとおり、商標権者が、本件ウェブサイトにおいて、本件搭乗券のオンラインでの購入方法等を日本語で詳細に説明しており、上記1(6)のとおり、実際に、要証期間である平成29年1月から令和元年12月の3年間を出発日とする本件搭乗券が、約16,000人の日本に居住する顧客によって、商標権者から購入された(乙56)。
そして、購入後には、QRコード付きの本件搭乗券(e−boarding pass)が各顧客のメールアドレスに送られ、各顧客は、日本に居ながら、搭乗前に、本件搭乗券を紙媒体に印刷できる状態にあった、又は、本件搭乗券のQRコードをスマートフォンで表示することができる状態にあったということができる。
また、要証期間である平成31年1月22日(乙10)に存在していた本件ウェブサイトの本件搭乗券の画像の右上に、使用商標が表示されていることから(乙8、乙9)、各顧客によって購入された本件搭乗券にも、使用商標が表示されていたものとみて差し支えない(乙8、乙9)。
そうすると、商標権者が、要証期間に、「旅客車による輸送」の役務を提供するに当たり、役務に関する広告(本件ウェブサイト)若しくは取引書類(搭乗券)を内容とする情報に使用商標が付され電磁的方法により提供する行為がされたものといえる。
(3)小括
以上によれば、商標権者は、要証期間に、本件審判の請求に係る指定役務中、第39類「旅客車による輸送」の提供に当たり、役務に関する広告(本件ウェブサイト)若しくは取引書類(搭乗券)を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標が付され電磁的方法により提供する行為がされたものと認めることができる。
そして、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「役務に関する広告、若しくは取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、その審判の請求に係る指定役務中、第39類「旅客車による輸送」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の請求に係る指定役務についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲
別掲1 本件商標


別掲2 使用商標(色彩は原本参照)





(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。

審判長 齋藤 貴博
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2021-09-16 
結審通知日 2021-09-22 
審決日 2021-10-28 
出願番号 1995112567 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (039)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 小俣 克巳
山根 まり子
登録日 1997-11-14 
登録番号 4082999 
商標の称呼 バイア、ビア 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
復代理人 山口 健司 
代理人 青木 篤 
代理人 外川 奈美 

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