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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 042
管理番号 1389470 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-09-30 
確定日 2022-05-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第3209077号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3209077号商標の指定役務中、第42類「医業,健康診断,歯科医業,調剤,患者の介護又は機能回復訓練,予防医学的健康指導」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3209077号商標(以下「本件商標」という。)は、「Blue Cross」の欧文字を横書きしてなり、平成4年9月30日に登録出願、第42類「あん摩,マッサ―ジ及び指圧,きゅう,柔道整復,はり,医業,健康診断,歯科医業,調剤,患者の介護又は機能回復訓練,予防医学的健康指導,栄養の指導,老人の養護,妊娠・出産に関する指導」を指定役務として、同8年10月31日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、令和元年10月11日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の平成28年10月11日から令和元年10月10日までを以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第42類「医業,健康診断,歯科医業,調剤,患者の介護又は機能回復訓練,予防医学的健康指導」(以下「請求に係る指定役務」という。)について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人の答弁に対して、請求人は何ら弁駁するところがない。

第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、令和2年1月21日付け審判事件答弁書(以下「答弁書1」という。)、同3年1月29日付け審判事件答弁書(以下「答弁書2」という。)及び同年8月17日付け回答書(以下「回答書」という。)において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 答弁書1の要旨
(1)被請求人は、要証期間内である2017年7月12日に医療報酬に係るInvoice(請求書)(以下「インボイス(請求書)」という。)を発行している(乙1)。当該医療は、高血圧治療に係るものであり、高血圧の治療薬であるミコンビ配合錠BPが処方販売されている(乙2)。
当該インボイス(請求書)は、「東京メディカルアンドサージカルクリニック」(以下「東京メディカル」という。)が「BUPA International」宛に発行したものであり、東京メディカルは実在する医療法人である(乙3)。
(2)当該インボイス(請求書)の宛先人であるBUPA Internationalは、被請求人の包括的なパートナーであって、通常使用権者と同一視することができる(乙4)。
被請求人及びBUPA Internationalは、共同して世界規模の医療サービスを提供している。乙第5号証には、両社が提供する企業向けの医療サービスプランが説明されている。両社は共同して高品質の医療商品及びサービスを提供しており、顧客は、米国内にある被請求人のネットワーク及び米国外のBUPA Internationalのネットワークを介して世界中の医療機関にアクセスすることができる。サービス内容は契約条件によって異なるが、例えば、被請求人とBUPA Internationalが共同して提供している医療サービスの契約をしている会社の従業員が米国外である日本国に出張した際に、何らかの疾患を患い診療が必要となった場合、その従業員は、被請求人とBUPA Internationalが共同して提供しているウェブサイトの会員専用ページにアクセスし(乙6)、被請求人とBUPA Internationalの出先機関となっている医療機関を検索することができる。
検出された中で最もその従業員のニーズに適した医療機関で従業員が診療を受けると、診療費については、当該従業員が所属している会社が被請求人とBUPA Internationalが提供する医療サービスの契約者となっているため、診療した医療機関はBUPA Internationalに医療費を請求し、BUPA Internationalは契約内容に応じて医療費を負担し、不足分については、契約者である法人に請求することとなっている。
(3)乙第1号証は、上記のように診療を受けた契約会社の従業員の診療に係る請求書であり、当該インボイス(請求書)の発行者でありBUPA Internationalの日本国内における出先医療機関が、請求に係る指定役務中、「医業」を業として行ったことは明白である。
乙第1号証には、本件商標は表示されていないが、当該インボイス(請求書)の発行者である医療機関は、乙第6号証の検索結果に表示されており、乙第6号証の会員専用ページ及び乙第5号証の医療サービスプランの説明には、本件商標「BlueCross」が表示されている。
これらの表示は、商標法第2条第3項第8号にいう役務に関する広告若しくは取引書類に付された標章に該当し、これらの広告若しくは取引書類は、会員専用ページのウェブサイト上で365日24時間掲載されているものであるから、本件商標は要証期間内に医療サービスに使用されている。
2 答弁書2の要旨
(1)東京メディカルとBritish United Provident Association(以下「BUPA」という。)との関係について
東京メディカルは、本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)の直接的な通常使用権者ではなく、本件商標権の通常使用権者であるBUPAの日本国内における出先医療機関であり、BUPAの一部と同視すべき者である。
BUPAは、世界中で、健康保険事業及び医療提供サービスを展開しており、病院や外来専門クリニック等による健康提供サービスがBUPAの事業歳入の18%を占めている(乙7)。
しかしながら、日本国内においては、健康提供サービスを展開するための病院等の医療機関を有していないことから、BUPAの医療提供サービスを日本において提供すべき出先医療機関として、東京メディカルを医療提供サービスの「提供者」とするための契約を締結している。
乙第8号証は、2010年2月1日にBUPAと東京メディカルとの間で締結された合意書の写しである。
当該合意書では、「提供者」である東京メディカルが、BUPAの医療プランに加入しているBUPA会員(以下「BUPA会員」という。)へ「サービス」(医療を含む治療)を、上記合意書に基づき提供することが取り決められている。
したがって、東京メディカルがBUPAの出先医療機関である以上、東京メディカルが提供する医療サービスは、BUPAが提供するものと同一視できるものであり、BUPAがその出先機関を介して日本国内で医療を提供したと考えられる。
(2)BUPAと商標権者との関係
商標権者とBUPA間で2013年11月7日に締結された商標使用許諾合意書の写しを提出する(乙9)。
当該商標使用許諾合意書は、本件商標の商標権者がライセンサー(商標使用許諾者)、BUPAをライセンシーとして締結されたものであり、現に有効なものとなっている。
当該合意書において使用許諾されている商標は、「許諾商標」の定義に「BLUE CROSS」商標が含まれていることから、本件商標が使用許諾の対象の一つであることは明白である。
また、許諾地域は、目録Cに記載される「指定国」とされているが、目録Cには日本国が記載されている。
そして、日本国で許諾商標を使用できるのは、「個人及び小規模グループ国外移住者用商品」と規定されているが、これは、「国際的な個人又はグループ用健康管理プランその他の商品及びサービス(20名以下の雇用者向け)であって、ライセンサーに許可されたものであり、包括的な健康、歯科、視力、患者後送、医療補助を含み」と、合意事項の定義規定の中で定義されている。
さらには、BUPAのみならず、BUPAの「指定系列会社」(以下「BUPA指定系列会社」という。)が許諾商標を使用することも許可されており、「BUPA指定系列会社」が記載された目録Bには、上述の東京メディカルを医療提供サービスの「提供者」とするための契約書(乙8)の契約締結相手であるBUPA INSURANCE SERVICES LIMITED、BUPA INSURANCE LIMITED及びUSA MEDICAL CORPORATION(以下「BUPAグループ」という。)が記載されている。
すなわち、本件商標の直接のライセンシーであるBUPA指定系列会社が、日本国でのBUPAのサービスを提供するための「提供者」に東京メディカルを認定すべく契約を締結したこととなる。
以上からすれば、BUPAが本件商標権者の通常使用権者であることは明らかである。
(3)乙第5号証について
乙第5号証はパンフレットであり、日本国内に居住している商標権者の会員(商標権者の医療サービスを受ける契約をしている個人又はそうした契約をしている法人の従業員)に配布されているものである。
商標権者が提供するサービスは、基本的には医療保険であって、乙第5号証は、企業向けの医療保険の内容を説明するものである。商標権者が提供するサービスは、単なる医療保険にとどまらず、契約企業の従業員の肉体的・精神的な健康状態をサポートするために、医療のセカンドオピニオンやカウンセリングの様々なプログラムを提供している。
(4)乙第6号証について
会員専用ウェブサイト(乙6)は、遅くとも2017年には運営が開始されており、商標権者の会員が医者を必要とするときに、商標権者及びBUPAの出先機関となっている医療機関を検索するために使用されるものであり、当該使用は、運営者が提供する医療サービスの広告と考えられるので、商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。
運営者は、商標権者のライセンシーである、ワールド・ワイド・インシュアランス・サービシィズ(以下「ワールドワイド社」という。)であり、同社については、乙第9号証の商標権者とBUPA間の商標使用許諾合意書において、商標権者と商標使用許諾契約書を締結している旨が言及されている。
(5)小括
以上により、商標権者の通常使用権者であるBUPAの日本における出先機関である東京メディカルは、日本において医業サービスを提供し、商標権者から一定の医療サービスの提供を受けるべく商標権者と契約している会員又はその従業員が、BUPAの日本における出先機関で病気治療を受けるために、会員専用ウェブサイトであるGeoBlueを用いて条件に合った出先機関を検索したところ、東京メディカルを治療先と決めて実際に病気治療を受けたのであり、当該病気治療を受けたのは要証期間内である2017年7月12日であり、上記会員専用ウェブサイトには、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されている。
3 回答書の要旨
(1)当事者の契約と本件商標の使用者について
商標権者も東京メディカルが本件商標の通常使用権者とは認識しておらず、本件商標の通常使用権者は、乙第9号証に記載されているBUPAであると考えている。東京メディカル自体は、日本における出先機関であり、日本国内に医療機関を有していないBUPAが日本国内で医療サービスを提供するための「提供者」となっている者である。
したがって、東京メディカルが日本国内で提供した医療サービスは、BUPAが提供したものと同一視されるべきである。
(2)本件商標を使用している役務及び商標の使用について
ア 乙第5号証のパンフレットは、会員に郵送等されるものではなく、商標権者の通常使用権者であるBUPAが運営する会員専用ウェブサイトに会員がアクセスしてダウンロードするものである。
当該ウェブサイトの存在を立証する証拠(乙10)中、乙第10号証の1は、ログインページのプリントアウトであり、当該ウェブページ中「MembersWorld」の部分をクリックすると、乙第10号証の2に示す「Sign in」ページに移動し、ログインのためのメールアドレスやパスワード等を入力すると会員専用ページに移動する。
また、乙第10号証の3は、ログイン後のページのプリントアウトであり、会員は、このウェブページから各種の情報を得ることができ、本件パンフレットもこのウェブページからダウンロードできる。
そして、会員専用ページにログインすれば、各会員が自由に必要なパンフレットをダウンロードできる。日本在住の会員が要証期間中にダウンロードしたことを証明することは困難であるが、当該会員専用ページは世界中からアクセスできるので、少なくとも、商標権者の会員が日本に在住していたことは乙第1号証からも明らかであるから、当該パンフレットが日本国内でダウンロードされ得たことは明白である。
イ 乙第6号証のウェブサイトについては、当該ウェブサイトヘのログインページのプリントアウトにURLの記載がある(乙11)。
また、この種のウェブサイトは会員の便宜向上のために適宜改訂されるものであるため、4年前の提供について立証することは困難であるが、少なくとも、商標権者の母国である米国は、インターネットの発祥国であり、商標権者程度の規模の法人であれば、相当以前からウェブサイトを活用していたことは容易に推認されるべきである。
(3)本件商標と使用商標の同一性について
「BlueCross BlueShield」の全体が、商標権者の名称を想起させるといい得るが、商標権者の名称は、「ブルー・クロス・アンド・ブルー・シールド・アソシエーション」であり、これを直訳すると、「青十字(ブルークロス)及び青盾(ブルーシールド)の協会」となり、「ブルークロス」の文字部分が「ブルーシールド」の文字部分と等しく独立しているものであることを表している。
また、乙第6号証の訳文において、「ブルー・クロス・アンド・ブルー・シールド・アソシエーションは、別個独立のブルー・クロス会社とブルー・シールド会社からなる協会である。」と記載されているとおり、ブルー・クロス会社とブルー・シールド会社は別個独立の協会である。
ブルー・クロスは、1929年に設立され健康保険の協会として事業を発展させてきた。一方、ブルー・シールドは、1939年に製材業及び鉱業の従事者のための医療保険として発展したが、両者は、1982年に合併して現在の商標権者の協会となった。
したがって、商標権者設立の歴史からしても、「BlueCross」の商標は、「Blue Shield」の商標とは別個独立のものとしてみるべきである。
また、乙第5号証及び乙第6号証に記載されている「BlueCross」及び「BlueShield」は、二つの青色の図形の右横に位置しており、これら二つの青色の図形は、一方が青色の十字図形の内部に人型の図形を配してなり、他方は、青色の盾の中に杖に巻き付く蛇のような図形を配してなる(以下「使用商標」という。)。
したがって、青色の十字図形は「ブルークロス(BlueCross) 」を呼び名とする一方、青色の盾の図形は「ブルーシールド(BlueShield) 」を呼び名とするものである。
そうすると、二つの青色図形がそれぞれ別個独立した商標として認識されるのと同程度に「BlueCross」の商標と「BlueShield」の商標は、それぞれが独立した商標として認識されるべきことに疑いの余地はない。
したがって、乙第5号証及び乙第6号証に表示されている使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものとして認められるべきである。
(4)小括
以上のとおり、不明とされたパンフレット(乙5) の配信方法も明確となり、不明とされたウェブサイト(乙6) のアドレスも明確となり、さらに、使用商標が本件商標と社会通念上同一性を有するものであることも明らかである。

第4 当審の判断
1 認定事実
被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)東京メディカルは、日本国所在の医療機関であって、要証期間内の2017年(平成29年)7月12日付けで、イギリス国所在のBUPA International宛に、高血圧症治療薬であるミコンビ配合錠BPの処方販売に係る医療費のインボイス(請求書)を発行しているが、当該インボイス(請求書)に本件商標の記載はない(乙1〜乙3)。
(2)乙第5号証は、BUPA Internationalと商標権者が共同で提供する企業向けの医療サービスプランが説明されたパンフレット(以下「パンフレット」という。)であるとするところ、当該パンフレットの表紙の右上及び最終葉の右下に、使用商標の記載、当該パンフレットの表紙の左下に「1 April 2019」の記載がある。
また、3葉目に「グローバルヘルスケアの分野で最も巨大かつ最も信頼できる名前の2社」の見出しの下、BUPA Internationalと商標権者が高品質のヘルスケア商品及びサービスを提供するために団結し、顧客は、米国内の商標権者のネットワーク及び米国外のBUPA Internationalのネットワークの両方を利用して、世界中のヘルスケア提供者にアクセスすることができる」旨が記載されている。
さらに、5葉目に「健康プログラムの提供」、「世界的ネットワークの医者にアクセス」及び「医療的ガイダンスやコンサルティングを提供」等の記載がある。
なお、乙第10号証は、乙第5号証のパンフレットをダウンロードすることができるBUPAの運営する会員専用ウェブサイトの写しであるとするところ、当該ウェブサイトが、乙第5号証とどのような関係にあるのか不明であり、当該証拠の印刷日(2012/08/17)も要証期間外であり本件商標の記載もない。
(3)乙第6号証は、ワールドワイド社が運営する、商標権者及びBUPAの出先機関となっている医療機関を検索してより適した医療機関情報を会員に提供するための会員専用ウェブサイトの写し(以下「ワールドワイド社のウェブサイト」という。)であるとするところ、1葉目の上部に使用商標の記載があり、「GeoBlue」の見出しの下、検索結果と思われる箇所に、インボイス(請求書)(乙1)の発行者である東京メディカルの名称及び住所の記載のほか、日本国内の他の医療機関の名称及び住所の記載がある。
また、乙第11号証は、乙第6号証のワールドワイド社のウェブサイトのログイン画面の写しであるとするところ、当該ウェブサイトの1葉目に使用商標(色彩が異なるもの)の記載はあるものの、当該ウェブサイトが、乙第6号証とどのような関係にあるのか不明であり、当該ウェブサイトの印刷日(2021/07/20)も要証期間外である。
(4)乙第8号証は、BUPAと東京メディカルの間で締結された合意書の写しであるとするところ、2010年(平成22年)2月1日に、BUPAグループ及びIHI BUPAと東京メディカルとの間で合意書が締結され、当該合意書において、BUPAグループ及びIHI BUPAは、東京メディカルを一定の健康管理サービスのBUPAの医療プランに加入している会員への提供者と認定することに合意し、東京メディカルは、当該合意書の条件に従って、BUPA会員へ治療を含む医療サービスの提供に従事する者であり、その施設で健康管理サービスにBUPA会員がアクセスできるように整備すること等が取り決められているが、当該合意書の当事者としてBUPAの記載も商標権者の記載もない。
さらに、当該合意書には、本件商標の商標権についての使用許諾について何ら記載されていない。
(5)乙第9号証は、商標権者とBUPAとの間で締結された商標使用許諾合意書の写しであるとするところ、2013年(平成25年)11月7日に、商標権者とBUPAとの間で、「BLUE CROSS」及び「BLUE SHIELD」等を含む商標の商標使用許諾合意書が締結され、当該合意書には、商標使用許諾合意書の当事者として、商標権者、BUPA及びワールドワイド社の記載がある。
なお、当該合意書には、BUPAのほかに、BUPA Internationalを含む「BUPA指定系列会社」も商標を使用することを許可されるとするが、BUPA指定系列会社には東京メディカルは含まれていない。
2 判断
上記1のことから以下のことが判断できる。
(1)使用商標について
本件商標は、「Blue Cross」の欧文字からなるのに対し、パンフレット(乙5)及びワールドワイド社のウェブサイト(乙6)に記載された使用商標は、別掲に示すとおり、二つの青色の図形(以下「図形部分」という場合がある。)とその右横に「BlueCross」及び「BlueShield」の文字を二段に配してなるものである。
そして、使用商標の構成中の図形部分と「BlueCross」及び「BlueShield」の文字部分とは、やや間隔を設けて配されており、色彩も異なることから、視覚上、両者は分離して看取され得るものである。
また、「BlueCross」及び「BlueShield」の文字部分は、二段に同一の大きさ、同一の書体で、外観上まとまりよく一体的に表してなるものである。
そして、「BlueCross」及び「BlueShield」の文字は、商標権者の名称又は略称を想起させることも相まって、「BlueCross」の文字部分のみが独立して、取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえず、請求に係る指定役務との関係において、「BlueShield」の文字部分から役務の出所識別標識としての称呼、観念が生じないとみるべき事情は発見できない。
そうすると、「BlueCross」及び「BlueShield」の文字は、一体不可分のものとしてみるのが自然であるから、当該構成文字より「ブルークロスブルーシールド」の称呼を生じるものである。
また、本件商標は、上記第1のとおり、「Blue Cross」の欧文字を横書きしてなるところ、当該構成文字より「ブルークロス」の称呼が生じるものである。
そして、「BlueCross」及び「BlueShield」の文字部分の構成全体をもって、一体の商標と認識させる使用商標と「BlueCross」の文字のみからなる本件商標とは、上記のとおり外観及び称呼が明らかに異なるものである。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標とは認められないものである。
なお、被請求人は、商標権者の設立の歴史や使用商標中、二つの図形部分がそれぞれ別個独立した商標として認識されるから、「BlueCross」及び「BlueShield」それぞれが独立した商標として認識されるべきである旨主張するが、上記のとおり、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標とは認められないものであり、商標権者の設立の歴史等の事実が、本件商標と使用商標の同一性の判断に影響を及ぼすものではないから、当該主張を採用することはできない。
(2)使用者及び使用役務について
BUPA Internationalと商標権者が提供したとされるパンフレット(乙5)には、使用商標が記載され、要証期間内である2019年(平成29年)4月1日の日付が記載されているが、上記(1)のとおり、当該パンフレットに表示された使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められないものであり、かつ、当該パンフレットに、「医業」に相当する具体的な業務の記載も見いだせない。
また、本件商標の使用許諾契約を締結しているワールドワイド社(乙9)が提供するウェブサイト(乙6)には、使用商標が表示されているが、上記(1)のとおり、当該ウェブサイトに記載された使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められないものである。
そして、当該ウェブサイトには、日付の記載はなく、かつ、当該ウェブサイトは、日本における医療機関を検索してより適した医療機関情報を会員に提供するために使用されるとみるのが自然であって、当該ウェブサイトによって提供される役務は、「医業」の範ちゅうに属する役務とみることはできない。
なお、合意書(乙8)の条件に従って、東京メディカルが、要証期間内に医業の範ちゅうである役務を提供したとしても、商標使用許諾合意書(乙9)において、当該合意書の当事者である商標権者、BUPA及びワールドワイド社と東京メディカルが、本件商標の使用許諾に関する契約を結んだ事実は確認できないことから、東京メディカルを本件商標の通常使用権者と認めることはできない。
したがって、被請求人が提出した証拠からは、商標権者又は通常使用権者が、「医業」の役務の提供を行っていたと証明することはできない。
(3)小括
上記(1)及び(2)のとおり、被請求人が提出した証拠から認定できる使用商標は、いずれも本件商標と社会通念上同一の商標とは認められないものであり、かつ、要証期間内に日本国内において、商標権者及び専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定役務について、本件商標を使用していたことも認められないものである。
その他、本件商標権に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者による本件商標の使用事実を証明する証拠の提出はない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定役務のいずれかについて、本件商標を使用していることを証明したものとは認められない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定役務中、「結論掲記の指定役務」について、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲(使用商標)(乙5、乙6:色彩は原本を参照。)



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。

審判長 榎本 政実
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2021-11-29 
結審通知日 2021-12-02 
審決日 2021-12-20 
出願番号 1992281456 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (042)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小俣 克巳
小田 昌子
登録日 1996-10-31 
登録番号 3209077 
商標の称呼 ブルークロス 
代理人 神林 恵美子 
代理人 中越 貴宣 
代理人 村田 実 

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