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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0105
管理番号 1388555 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-15 
確定日 2022-09-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第6433230号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6433230号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6433230号商標(以下「本件商標」という。)は、「ベストスコア」の片仮名を標準文字で表してなり、令和3年2月10日に登録出願、第1類「化学品,植物成長調整剤類,肥料」及び第5類「薬剤」を指定商品として、同年7月16日に登録査定され、同年8月24日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれも申立人が「農薬(殺菌剤)」について使用し、我が国だけでなく世界的な規模で農薬の取引者及び需要者の間で周知著名であるとするものである。
(1)登録第2023677号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 「SCORE」と「スコア」の文字を2段に表してなるもの
指定商品 第1類「農薬(殺菌剤,除草剤,殺虫剤及び寄生生物駆除剤を除く。),植物成長調整剤類」及び第5類「薬剤」
登録出願日 昭和58年9月22日
設定登録日 昭和63年2月22日
(2)「スコア」の片仮名からなる商標(以下「引用商標2」という。)
(3)「SCORE」の欧文字からなる商標(以下「引用商標3」という。)
なお、申立人が引用する商標については、同人の主張及び証拠によっては引用商標1以外の商標の態様が明らかではないが、当審は、申立人の主張の全趣旨に鑑み、上記(2)及び(3)の商標を引用しているものと認めた。
また、引用商標1に係る商標権は現に有効に存続している。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第84号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、片仮名文字「ベストスコア」を横書きした構成からなるものである。
そして、本件商標の構成中「ベスト(best)」の語は、「最も優れたもの。最良。」といった意で我が国でも良く知られている平易な英単語であり(甲3、甲4)、商取引において、商品・役務の等級が優れていることやその商品を使用することにより最良の状態をもたらすことを示す形容詞として使用されることが少なくない。本件商標の構成中「スコア(score)」の語については、「スポーツやゲームの得点。競技の得点。」といった意で我が国でも良く知られている英単語である(甲5、甲6)。当該単語は、本件商標の指定商品との関係においては何らかの商品・役務内容を普通に表すような意味合いは特になく、取引において普通に用いられているといった事情もないから、当該商標の構成中、当該「スコア」の部分に強い識別性が認められるといえる。
加えて、「ベスト」の語は、「土壌、植物や作物等を最良な状態にする」ことを示唆し、「植物成長調整剤類」、「農薬」、「肥料」の商品名として採用されやすい語であり、現に、特許庁における登録例を参照してもこのような商標は多く存在する(甲7〜甲14)。これらの中には、特許庁により作成される参考称呼情報として、「ベスト」の文字部分を除いた文字の称呼が付されているものも存在し、この傾向は近年登録されたものに多く見受けられる。何よりも、特許庁において、本件商標の参考称呼として「ベストスコア」のみならず「スコア」の称呼が付与されている(甲1)。これらの例は、特許庁においても「ベスト」の語の識別力が弱いことを顕著な事実として認識されていることの証左である。
以上のとおり、本件商標の構成中の「ベスト」の文字は商標としての特徴が弱い部分であるから、本件商標の構成中の「スコア」の文字が「ベスト」と比較して商標としての特徴は強いと見るべきである。したがって、本件商標を他人の商標と比較して商標の類否判断をするに当たり、本件商標を一連一体の商標として捉えるのではなく、「スコア」の文字部分を要部として抽出するべきである。
イ 称呼及び観念における類似性
本件商標の要部である「スコア」の文字部分と、引用商標1の片仮名文字である「スコア」の文字は同一である。
また、本件商標と引用商標1はいずれも、「スポーツやゲームの得点。競技の得点。」の観念を想起させる。
したがって、本件商標に接する需要者及び取引者は、引用商標1と称呼及び観念上、混同して認識するものであるといえる。
以上より、本件商標と引用商標1は称呼及び観念において類似する商標である。
ウ 商品の類似性
本件商標の指定商品のうち第1類「植物成長調整剤類」及び第5類「薬剤」と引用商標1の指定商品とが、互いに抵触していることは明らかである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標1と類似しており、その一部の指定商品が引用商標1の指定商品と抵触する商品であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人について
申立人は、スイスに本拠地を置く、世界最大手の農薬メーカーとして世界的に周知かつ著名な存在である「シンジェンタ アーゲー(Syngenta AG)」企業グループの知的財産管理を担う法人である(以下、両者を総称して「申立人」ということがある。)。
申立人の歴史は、スイスのバーゼルにて化学薬品、染料を扱う貿易会社「ガイギー(Geigy)」が設立された1758年にまでさかのぼる。その後、合併などを経て、2000年に「ノバルティス(Novartis International AG)」と「アストラゼネカ(AstraZeneca PLC)」という大手製薬会社2社がそれぞれの長い歴史の中で培ってきたアグリビジネスを統合して誕生したのが、世界初のアグリビジネスに特化した企業「シンジェンタ(Syngenta)」である(甲15)。
本書面提出日現在、申立人はグループ全体で、世界100か国以上の国において約4.9万人もの従業員を抱える(甲16)。また、申立人は世界最高水準の研究拠点を世界20か国に設け、約5千名の研究スタッフが新規革新技術の開発に取り組んでおり、その研究開発に投入する金額は一日あたり約2億円にも上る(甲17)。
申立人の全世界における2013年から2020年までの過去8年における年間売上額(日本を含む。)は、151.3億USドルないし126.5億USドルである(甲18〜甲23)。
農薬業界においてこれらの数字は非常に高いものであり、世界の農薬売上高の企業シェアが2013年時点において19%、2020年時点において17.4%にも上る等、申立人は農薬業界において長年にわたってトップシェアを誇ってきた(甲24、甲25)。日本国内の農薬製剤市場においても、2014農薬年度には9%、2015年には8.8%ものシェア率を占めており(甲24、甲26)、これらの高い売上及びシェア率から、申立人は、各種媒体において、しばしば農薬業界を牽引する存在として取り上げられる(甲27、甲30)。
また、申立人の日本法人であるシンジェンタジャパン株式会社(甲46。以下「シンジェンタシャパン」という。)は、農薬流通関係者等に向けた各種啓発ポスターの配布、農業技術に関するマニュアルの提供、地域産業プロジェクトへの参画等、各方面から農業業界を支えており、農薬流通関係者や農業従事者の間で良く知られた存在である(甲31〜甲33)。
以上のように、申立人は、世界的な規模で事業を展開するアグリビジネスのグローバルリーディングカンパニーであり、特に農薬の研究開発、製造販売においては世界有数の規模を誇る存在として広く一般に知悉されている。
イ 申立人の商標「スコア」及び「SCORE」について
我が国では「スコア」シリーズは、1993年4月28日に農薬登録された「スコア水和剤10」を皮切りとして、「スコアMZ水和剤」「スコア顆粒水和剤」と長年にわたって商品が展開されてきた(甲34。本書面提出日現在、「スコア水和剤10」及び「スコアMZ水和剤」は「スコア顆粒水和剤」に商品の切り替えがなされている。)。
「スコア」シリーズのうち現在販売されている「スコア顆粒水和剤」は、病原菌の細胞膜に作用して殺菌効果を発揮する「DMI剤」のグループに属する殺菌剤であり、特に茶、果樹の栽培においては必要不可欠な薬剤として農業従事者の間では良く知られる商品である。このことは、自治体等が提供する農業従事者向けの各種農作物害虫等防除指針や説明文書、広報誌、その他農薬紹介ウェブサイトにおいて推奨薬剤として紹介されていることにも裏付けられる(甲35〜甲45)。
当該商品は、シンジェンタジャパンにより全国農業協同組合連合会の各本部や農薬販売代理店に販売され、その後直接農薬を扱う農業従事者へ販売され、あるいは、全国の農薬の小売店を通じて最終消費者である日本全国の農業従事者へ販売される。シンジェンタジャパンが当該商品を販売している農薬販売代理店は、例えば、和歌山県農業協同組合連合会、谷長商事株式会社、株式会社橋爪、全国農業協同組合連合会山形県本部などである。
シンジェンタジャパンは、商品の販売代理店、小売店へ宣伝広告として主にチラシ配布等を行っている。シンジェンタジャパンが2006年11月から本書面提出日までの期間において、作成、頒布したシリーズ各商品が掲載されている広告物、販促物の累計発行部数は362,820部にも上る(甲47〜甲74)。すなわち、これらの広告物、販促物が「スコア顆粒水和剤」の全国の販売先、小売店に頒布されてきたのである。この他、当該商品は申立人が農業従事者向けに発行する情報誌内でもしばしば取り上げられており、これらの情報誌は申立人のホームページ内のデジタル図書館「シンジェンタライブラリー」にて自由に入手可能となっている(甲75〜甲83)。
また、以下に示すとおり、諸外国においても「スコア(SCORE)」製品は農薬市場において極めて高いシェア率を長年維持してきており、当該製品及び「スコア(SCORE)」の商標は我が国においてだけでなく世界的に著名であるといえる。
【ジフェノコナゾール含有製品市場における「スコア(SCORE)」製品の市場シェア率】
・ブラジル連邦共和国(2013年〜2020年)83%〜43%
・中華人民共和国(2013年〜2020年) 24%〜6%
・インドネシア共和国(2013年〜2020年)85%〜48%
以上のように、申立人の「スコア顆粒水和剤」は、日本全国の農薬販売代理店を通じて日本全国の農薬の小売店や農業従事者に販売されているものであり、当該商品の全国的な販売地域、宣伝広告、販促物の累計発行部数、シンジェンタジャパンその他各種自治体等が提供する各種広報誌、ウェブサイトでの紹介記事及びシンジェンタ社の世界的な著名性に照らせば、本件商標の出願日及び設定登録日において、「スコア」及び「SCORE」の商標が申立人の業務に係る商品の名称として、我が国ばかりでなく、世界的な規模で農薬の取引者及び需要者の間で周知著名であったことは明らかである。
ウ 商標の類似性
本件商標と引用商標1とが称呼及び観念において類似の商標であることは、上述(1)イのとおりである。
エ 商品の類似性
本件商標と引用商標1とが、第1類「植物成長調整剤類」及び第5類「薬剤」の商品において、互いに抵触していることは、上述(1)ウのとおりである。
オ 小括
以上のとおり、本件商標は、申立人の業務に係る商品の出所表示として需要者の間に広く認識されている引用商標1と類似する商標であって、かつ、申立人の業務に係る商品と同一である商品について使用されるものであるため、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本号にいう「混同を生ずるおそれ」の解釈及び判断基準については、最高裁判決(平成10年(行ヒ)第85号)において判示されている(甲84)。
ア 本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標と引用商標とが、称呼及び観念において類似することは、上述(1)イのとおりである。
イ 引用商標の周知著名性の程度
本件商標の出願時及び査定時において、「スコア」及び「SCORE」の商標が申立人の業務に係る商品の名称として、世界的な規模で、農薬の取引者及び需要者の間で周知著名であるといえることは、上述(2)イのとおりである。
ウ 引用商標の独創性の程度
「スコア」の商標は、本件商標の指定商品との関係においては、何らかの商品・役務内容を普通に表すような意味合いはなく、取引において普通に用いられているといった事情もないから、極めて独創性の高い商標であるといえる。
エ 商品の取引者及び需要者の共通性
申立人の業務に係る商品「スコア」は、主に野菜、果樹、茶の病害に対応した殺菌剤であるから、本件商標が「(殺菌剤を含む)農薬」、「除草剤」、「植物成長調整剤類」の商品に使用された場合、その取引者及び需要者が共通することは明らかである。すなわち、商品の主な取引者は、農業協同組合(JA)、農薬の卸売業者及び農薬の販売店であり、主な需要者層は、業として農業に従事する農業従事者である。上述のとおり、これらの取引者及び需要者の間では「スコア」及び「SCORE」の商標は申立人の業務に係る商品の名称として周知著名であるから、本件商標がその指定商品について使用された場合、取引者及び需要者は、例えば「最高の品質を有する「SCORE」殺菌剤」、「最高の品質を有する「SCORE」農薬」、「最高の品質を有する「SCORE」植物成長調整剤」のように、当該商品が申立人の製造、販売に係る商品であると誤認することは明らかである。
また、本件商標が、例えば「家庭用の殺菌剤」、「殺虫剤」、「肥料」、「化学品」等の上記以外の商品について使用された場合にあっても、これらの取引者及び需要者の中には当然に農業従事者も含まれるのであり、著名商標に馴染みのあった農業従事者が本件商標に触れた場合、本件商標が申立人あるいは申立人と経済的又は組織的・人的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、その出所について混同を生じるおそれは大いに存在する。
オ 小括
以上の各事情を考慮すれば、本件商標がその指定商品について使用された場合には、当該商品は、申立人の業務に係る商品であるかのごとく認識され、その出所について混同を生じるおそれのあることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
ア 「不正の目的」について
本号に係る商標審査基準に沿って、以下検討する。
引用商標が申立人の周知・著名商標であること及び本件商標が引用商標と称呼及び観念において類似することは、上記したとおりである。また、引用商標は、「植物成長調整剤類」、「薬剤」等の商品について使用する商標としては極めて独創的なものである。このような状況の下、審査基準に掲げられている例のとおり、本件商標は他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものであると認められるべきである。
そのうえ、本件商標権者は、家庭園芸・緑地管理用薬品及び用品の製造販売を行っている法人であり、申立人の著名な引用商標を知らずに本件商標を採択したとは到底考えにくい。
これらの事情を考慮すると、本件商標権者は、既に著名である引用商標に、より上位の等級を表す「ベスト」の語を付加することにより、申立人の著名な商標に化体した業務上の信用及び莫大な顧客吸引力にフリーライドし、不正の利益を得ることを目的として、本件商標の出願に及んだものであるといわざるを得ない。
イ 小括
以上のとおり、本件商標は、著名な申立人の引用商標と類似する商標を不正の目的をもって出願したものと認められるものであり、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、スイスに本拠地を置く「シンジェンタ アーゲー(Syngenta AG)」グループ(以下「申立人グループ」という。申立人及びシンジェンタジャパンを含む(申立人主張、甲2、甲46、他)。)は、世界100か国以上の国において4.9万人の従業員を抱えていること(甲16)、全世界における2013年から2020年までの年間売上額(日本を含む。)は、151.3億USドルないし126.5億USドルであること(甲18〜甲23)、世界における農薬売上高シェアは2013年が19%、2020年が17.4%であったこと(甲24、甲25)、及び、我が国の農薬製剤市場においては、2014農薬年度には9%、2015年には8.8%のシェアを占めていたこと(甲24、甲26)が認められる。
また、我が国において、申立人グループの商品と認められる殺菌剤「スコア水和剤10」が1993年(平成5年)4月に農薬登録されたこと(甲34)、同じく殺菌剤「スコア顆粒水和剤」が遅くとも2012年(平成24年)から現在まで販売されていること(甲70〜甲74、他、職権調査)、当該「スコア顆粒水和剤」の包装には遅くとも2015年から「スコア」の文字(引用商標2)が大きく表示されていること(甲68、甲69、甲71〜甲74、他)及び「スコア顆粒水和剤」を農作物の病害虫の防除用の薬剤として紹介する自治体等があること(甲35〜甲45)などが認められる。
しかしながら、「スコア顆粒水和剤」など「スコア」の文字を使用した商品(以下「使用商品」という。)の我が国及び外国における販売量、シェアなど販売実績を示す証左は見いだせない。なお、申立人はブラジル、中国及びインドネシアにおける「スコア(SCORE)」製品の市場シェアを述べているが、それを裏付ける証左は見いだせないから、かかる数値を採用することはできない。
また、我が国において引用商標1及び3が使用されている事実及び外国において引用商標が使用されている事実は、いずれも確認できない。
イ 上記アのとおり、申立人グループは、我が国において遅くとも2012年から現在まで使用商品を販売していることなどが認められるものの、使用商品の我が国における販売実績を示す証左は見いだせないから、使用商品及びそれに使用されている「スコア」の文字(引用商標2)は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人グループの業務に係る商品として及び同商品を表示するものとして、いずれも我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
加えて、我が国において引用商標1及び3が使用されている事実及び外国において引用商標が使用されている事実は確認できないから、引用商標はいずれも本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人グループの業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり「ベストスコア」の片仮名を標準文字で表してなり、該文字に相応し「ベストスコア」の称呼、「ベストスコア(最高のスコア、最高の得点)」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
イ 引用商標1
引用商標1は、上記2(1)のとおり「SCORE」及び「スコア」の文字を2段に表してなり、該文字に相応し「スコア」の称呼、「スコア、得点」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標1の類否
本件商標と引用商標1の類否を検討すると、両者の上記のとおりの外観は構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
次に、本件商標から生じる「ベストスコア」の称呼と引用商標1から生じる「スコア」の称呼を比較すると、両者は語頭における「ベスト」の音の有無という差異を有するから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標が「ベストスコア(最高のスコア、最高の得点)」の観念を生じるものであるのに対し、引用商標1は「スコア、得点」の観念を生じるものであるから、相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標1は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者は非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標1が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 申立人の主張について
申立人は、本件商標の構成中「ベスト」の文字は「最も優れたもの」などの意で我が国でも良く知られている語であり商品・役務の等級が優れていることなどを示す形容詞として使用されることが少なくない、同文字は「土壌、植物や作物等を最良な状態にする」ことを示唆し「植物成長調整剤類」「農薬」などの商品名として採用されやすい、本件商標の参考称呼として「ベストスコア」のみならず「スコア」の称呼が付与されているなどから、「ベスト」の語の識別力は弱く、他方「スコア」の文字は「スポーツやゲームの得点」といった意で我が国でも良く知られている語であるが、本件商標の指定商品との関係においては商品の内容などを表すような意味合いはなく、取引において普通に用いられているといった事情もなく、当該「スコア」の部分に強い識別性が認められるから、本件商標はその構成中「スコア」の文字部分を要部として抽出するべきである旨主張している。
しかしながら、「スコア」の語は、我が国で親しまれた外来語であり創造性の程度が高いものとはいえず、また、上記(1)のとおり、申立人又は申立人グループの業務に係る商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものとも認められないものである。
そして、本件商標の構成中「ベスト」の文字に申立人が主張するような意味などがあるとしても、本件商標の構成文字「ベストスコア」は、標準文字で同書、同大、等間隔にまとまりよく一体に表され、これから生じる「ベストスコア」の称呼は無理なく一連に称呼し得るものであって、かつ、全体として上述のとおり「ベストスコア(最高のスコア、最高の得点)」の観念を生じるものであるから、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして「ベストスコア」の構成文字全体をもって、一つの語を表したものとして認識、把握させるものとみるのが相当である。
その他、本件商標は、その構成中「スコア」の文字部分を分離抽出し、他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第10号について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人又は申立人グループの業務に係る商品を表示するものとして、いずれも我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標1は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
さらに、本件商標と、上記2(2)及び(3)のとおり、「スコア」及び「SCORE」の文字からなり、いずれも「スコア」の称呼、「スコア、得点」の観念を生じると認められる引用商標2及び3とは、上記(2)と同様の理由などから相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人又は申立人グループの業務に係る商品を表示するものとして、いずれも我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、上記(3)のとおり、本件商標と引用商標は、別異の商標というべきものであるから、類似性の程度が高いとはいえない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人又は申立人グループ)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(5)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)のとおり引用商標は、いずれも申立人又は申立人グループの業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(3)のとおり、本件商標と引用商標は別異の商標であって、本件商標は引用商標を連想又は想起させるものでもない。
そうすると、本件商標は、引用商標に化体した業務上の信用及び顧客吸引力にフリーライドするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。
(6)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-09-02 
出願番号 2021016073 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W0105)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 小松 里美
青野 紀子
登録日 2021-08-24 
登録番号 6433230 
権利者 レインボー薬品株式会社
商標の称呼 ベストスコア、スコア 
代理人 中村 稔 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 國分 孝悦 
代理人 ▲吉▼田 和彦 
代理人 藤倉 大作 
代理人 南林 薫 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 松尾 和子 

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