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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W29
管理番号 1388550 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-10 
確定日 2022-08-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第6406210号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6406210号商標の指定商品中、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」についての商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第6406210号商標(以下「本件商標」という。)は、「飲むカレー」の文字を標準文字で表してなり、平成30年11月28日に登録出願、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」を指定商品として、令和3年5月11日に登録をすべき旨の審決、同年6月23日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、以下の理由から、商標法第43条の2第1号により、その指定商品中、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」についての登録は取り消されるべきであると申し立て、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第3条第1項第3号
本件商標は、その審決時(以下「本件審決時」という。)において、本件商標登録の指定商品中、「カレー・シチュー又はスープのもと」(以下「異議申立対象商品」という場合がある。)の属する分野における取引者、需要者の一般的な観点からして、「飲むことができるカレー」の意味合いをもって認識される「飲むカレー」の文字を、自他商品の識別機能を発揮する要素を付加せず「普通に用いられる方法で表示」し、標準文字として出願された商標である。また、異議申立対象商品の取引者、需要者は、当該商品の性格からして広く一般の最終消費者と考えられるところ、同取引者、需要者の一般的な認識からすると、本件商標より生じる「飲むことができるカレー」なる意味合いは、異議申立対象商品の品質等の内容を直接的かつ具体的に示したものと理解するに十分なものである。
したがって、本件商標は、異議申立対象商品との関係においては、その品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。
ア 「飲むカレー」の文字の意味合いについて
(ア)「飲む」の文字について
本件商標の構成中、「飲む」は、「飲食物を口から体内に送り込む」行為を意味することは顕著な事実である。したがって、飲食料品について使用される「飲む」の文字より、取引者、需要者は、「飲むことができる」、「飲むタイプの」飲食料品であると理解する。
実際に販売されるカレーその他飲食料品について、本件商標と同一の「飲むカレー」の構成からなる多くの表示が商品の説明として使用されている事実があり(甲2)、本件商標に係る商標登録出願の審決の前後を通じて、本件商標の権利者においても、本件商標を「飲むことができるカレー」を意図して、同意味合いに相応する商品について実際に使用している(甲3)。このような事実は、「カレー」と呼称されて想定できる商品全般との関係においては、本件商標は「飲むことができるカレー」なる商品の説明との理解で通用しており、上記説明は、カレーに関連する商品全般について十分にその商品の内容を示していると評価できるものである。したがって、本件商標の自他商品識別力は、異議申立対象商品との関係において否定されるべきことは明らかである。
他方、そもそも、飲食料品の分野において、「食べ物を飲む」といった趣旨の表現は、従前より慣用的に使用されるものである。すなわち、インターネットにて確認できる情報からすれば、遅くとも1980年代に男性タレントにより、同人がカレーを早く食する様への指摘を受けて、「カレーは飲み物です」と答えたことに端を発し、「○○(食品)は飲み物です」なる言い回しが多用されるに至っている(甲4)。その他、女性タレントが、自身が開設したインターネット上のブログを「マーボー豆腐は飲み物です」と称し、これが多くのフォロワーを獲得した結果、同ブログの管理会社の殿堂入りを果たした事実も確認できる(甲5)。
上記事実に基づけば、「○○は飲みもの」なる表現は、本来は咀嚼をして摂取する「食べ物」について、「飲むような速さで食べる」様を意図して用いられていると理解できる。よって、同表現は「食べ物」を対象として用いられることが通常といえる。
そのような中にあって、「○○は飲みもの」と共通の説明的な意味合いを持つ本件商標「飲むカレー」は、これを食べ物である「カレー」について使用しても、取引者、需要者からして、自他商品の識別標識としての特徴のある表現としては理解されないことは明らかである。
(イ)「カレー」の文字について
本件商標の構成中、「カレー」の文字について、飲食料品の分野において同文字が使用される場合には、取引者、需要者は、「料理の一種としてのカレー」を想起することが通常といえる。これに関し本件商標の権利者は、その拒絶査定不服審判にて提出した手続補正書にて、辞書に掲載される「カレー」に関する複数の意味合いを挙げて、同語からは多義的な意味合いを生じるから、指定商品の品質等を直接的・具体的に表示するものではないと主張する。また、本件商標自体が辞書に掲載されていないなどの事実から、本件商標は造語であり、当該文字からは多様な観念が生じるから、商品の品質を何ら直接的かつ具体的に表示するものではないなどと主張する。
しかしながら、本件異議申立対象商品の取引の場面において、取引者、需要者が辞書に書いてある複数のカレーの意味合いを想起しこれを念頭に置いて上で、あるいは、辞書を調べたり、インターネット上で検索しながら本件商標に接することはあり得ない。また、カレーは、ごく一般的な料理の代表格であり、我が国の同商品の潜在的な取引者、需要者が皆知っており、体質的に食べる事ができないなどの事情がない限り、誰しもが一度は食したことのある料理といっても過言ではない。そのような世間的に広く浸透した料理名を飲食料品の分野で使用すれば、同料理に関連するもの、あるいは、カレー味の飲食料品との意味合いで理解されると考えることが自然であるし、当該意味合いの理解で十分であるため、それ以上の意味合いを詮索することは通常は考えられない。
また、仮に、「カレー」より複数の意味合いが生じるとしても、結果として「料理のカレー」に関連するものであることに変わりはない。すなわち、本件商標の権利者が複数挙げる意味合いは、「狭義のカレー」、「カレー粉」、「カレー粉を用いてつくった料理」、「カレーライスの略称」などであるが、結局、これらは全て、本件異議申立対象商品について使用すれば、「カレー味の料理」又は「カレー味」であることの説明である。また、「カレー」についての細かな意味合いを取引者、需要者が知っていたとしても、異議申立対象商品の取引・購入の場面でそのような知識をもとにわざわざ商標の意味合いを詮索することは一般的には想定できない。すなわち、取引者、需要者の脳裏にそのような細かな意味合いに関する知識があったとしても、それらは自他商品の選択のために本件商標に接する際には利用されないため不必要な情報であるし、そのような情報があるから「飲むことができるカレー」から素直に理解できる意味合い以上の細かな意味合いを看取することはあり得ない。
さらに、本件商標の権利者は、本件商標は、一連一体、一体不可分の造語からなる商標であり、特定の観念を生じさせるものではないこと、本件商標の構成より「飲む」と「カレー」の文字を分離してそれぞれから意味合いを認定する根拠はないなどとも主張するが、本件商標が辞書等に掲載されている事実はないこと、一連一体に表示したことのみを持って造語であるとの主張には全くの根拠がない。また、「造語は特定の観念を有しない」との趣旨の主張についても、造語であることをもって本件商標から全く観念が生じないというわけではない。さらに、本件商標を構成文字に分離して意味合いを抽出する手法については、日本語を理解できる者であれば、本件商標は、特段の説明なく二語より構成される表示と理解する。すなわち、本件商標が使用される飲食料品の分野においては、その摂取方法を示す「飲む」なる文字と一般的に料理の一名称と理解される「カレー」の文字の二語からなることを誰しもが理解できる。
以上より、異議申立対象商品の分野における取引者、需要者の観点からすれば、商標の語尾に「カレー」の文字を配してなる商標から認識される意味合いは、同表現が使用される飲食料品が「料理のカレーの一種であること」あるいは「カレー味の飲食料品」であることを一義的に直感させるものである。またこれ以外の意味合いは生じない。
(ウ)以上によれば、本件商標の構成文字より、取引者、需要者が、「飲むことができるカレー」なる意味合いを認識することは明らかである。よって、本件商標「飲むカレー」は、異議申立対象商品との関係において、取引者、需要者からして、商品の内容を具体的かつ端的に示す説明的な表示として理解され、本件商標を異議申立対象商品について使用した場合、自他商品役務の識別標識として機能しない。
イ 本件商標の使用事実の有無と商標法第3条第1項第3号該当性
商標法第3条第1項第3号の規定の適用に際して、出願商標が使用されている事実は不要であり、商標の構成文字が本来的に持つ意味合いや取引実情等より、当該商品の取引者、需要者が当該商標及びその構成文字より具体的にどのような意味合いを認識し得るかを検討すべきである。本件商標の権利者は、その審査経過において、本件商標が使用されているか否かについての議論にも終始しているが、そもそも商標法第3条第1項第3号の適用に際してそのような事実認定は必須ではない。
申立人は、「飲むタイプのカレー」なる商品が広く流通している事実が存在し(甲2)、本件商標は、取引者、需要者からして、異議申立対象商品の具体的な内容説明と理解できることをもって、本件商標の使用の独占を一私人に許容すべきでないことは明らかと考える。また、「飲むタイプのカレー」を説明する際に、「飲むカレー」以上の端的な表現は存在しない。
よって、異議申立対象商品の分野において、商品の説明的表現として実際に使用され、仮に使用されていないとしてもそのような意味合いで通用することが容易に想定できる本件商標「飲むカレー」について商標権を付与し、独占権的使用を一私人に容認することは、正当な競業秩序を乱し、ひいては、産業の発展を害することに繋がり、到底認められるべきものではない。実際に、「飲むカレー」の表示を使用する多くの者や異議申立対象商品の取引者、需要者からしても、本件商標の独占を許容し維持することは、商品の流通秩序を乱す一因となることは明白である。以上より、本件商標「飲むカレー」は、商標法第3条第1項第3号に規定する商標に該当する。
(2)商標法第3条第1項第6号該当性
仮に本件商標が第3条第1項第3号には該当しないと判断される場合であっても、「飲むカレー」は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標に該当すると考える。
上述のとおり、異議申立対象商品が属する広く飲食料品の分野においては、「飲むタイプの商品」や「飲むことのできる商品」を説明するに際して「飲むカレー」の他(甲2)、「飲むヨーグルト」など「飲む○○」なる構成の表示が用いられることが一般的である。この点、昨今においては、空いた時間に空腹を満たすため、携帯式の簡易に食することができる飲食料品が多く販売されている事実がある。また、「食べ物」については、正確な日本語表現では、「飲む」なる言葉は用いられないものであるが、飲食料品の分野においては、短時間で手短に摂ることができる食料品であることを指して、「飲む○○」などといった表現が多く用いられている(甲10)。
そして、本件商標の構成中、「カレー」の文字は、飲食料品の分野で使用されれば、常識的に見て、「カレー味」であることや「料理の一種類」として理解される。
そうすると、「飲む」と「カレー」の語を組み合わせた本件商標一連の表示からは、異議申立対象商品の特長を端的に謳う宣伝をする際に広く用いられている語として認識するにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはない。
よって、本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当する。

3 取消理由の通知(要旨)
当審において、本件商標は、その指定商品中、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」との関係において、その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから商標法第3条第1項第3号に該当する旨の取消理由を本件商標権者に対し令和4年3月28日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。

4 本件商標権者の意見(要旨)
上記3の取消理由に対して、本件商標権者は、令和4年5月8日付け意見書において、要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
取消理由通知における証拠には、「飲むカレー」を、商標的に使用しているもの、過去の使用事例及び架空の情報が含まれるから、当該文字が、本件審決時において、広く使用されていたとの認定は誤りである。また、ある商標が商標法3条第1項第3号に該当するか否かの判断において、判決(平成30年(行ケ)第10143号)によれば、商標が「数多く使用されていた」ことを要すると解される。そうすると、取消理由通知において開示された証拠をもって本件商標の同号該当性を判断することは不適切である。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 商標法第3条第1項第3号の趣旨
商標法第3条第1項第3号が、「その商品の・・・品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、・・・」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録を受けることができない旨規定しているのは、このような商標は、指定商品との関係で、その商品の品質、形状その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによるものと解される。そうすると、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、本件審決時において、本件商標が、その指定商品との関係で、その商品の品質、形状その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本件商標の指定商品の取引者、需要者によって本件商標がその指定商品に使用された場合に、将来を含め、商品の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(平成27年(行ケ)第10107号、平成27年10月21日判決参照)。
イ 本件商標について
(ア)本件商標は、上記1のとおり、「飲むカレー」の文字を標準文字で表してなるから、その構成文字を普通に用いられる方法で表示する標章であることは明らかである。
(イ)本件商標の構成中の「飲む」の文字は、「口に入れて噛まずに食道の方に送る。喉に流し入れる。」の意味を有する語であり(「広辞苑第七版」株式会社岩波書店)、「カレー」の文字は、「カレー粉」及び「カレー粉を用いてつくった料理。特にカレーライスのソース。」の意味を有する語(前掲書)であって、いずれも一般に親しまれた語であることから、両語を結合してなる本件商標は、全体として「かまずに喉に流し入れる(飲む)タイプのカレー」程の意味合いが容易に理解されるものである。
ウ 「飲むカレー」の文字の使用状況についての事実認定
申立人の提出に係る証拠及び職権による調査によれば、「飲むカレー」の文字の使用状況に関し、本件審決日以前にウェブサイト等に掲載された情報として別掲(1)ないし(8)があることが認められ、これより、次の事実が認められる。
(ア)「2007/09/28」の日付が記載された「四国新聞社」のウェブサイトにおいて、スープカレーを再現した温かい缶飲料についての記事が掲載され、その見出しに「飲むカレー」の文字が用いられている(別掲(1))。
(イ)平成25年5月5日に作成された「街はぴ」のウェブサイトの記事において、グラス入りのストローで飲むタイプのカレーが飲食店で提供されていることが紹介されており、「飲むカレー」の文字は、その紹介文において「本当にあった!飲むカレー」の見出しの下、「・・・本当に飲むカレーを出しているお店があるということで、行ってきました。・・・飲むカレーは、カクテルグラスに入っていて、色のコントラストがとってもきれいです!・・・ストローが付いているので、本当に飲んで頂けるカレーです。」のように用いられている(別掲(2))。
(ウ)平成28年7月6日に更新された「まとめまとめ」のウェブサイトにおいて、2015年8月号の雑誌「danchu」で特集した「飲むカレー」が商品化されたこと及び同雑誌が主催した食のイベント「danchu祭り2016」において、飲み物としてのカレーが現実の商品として販売されることが紹介されており、「飲むカレー」の文字は、その紹介文において「【飲むカレー】『カレーは飲み物』がついに実現!?」の見出しの下、「飲み物としてのカレー・・・その名も『飲むカレー』がお目見えするようです。」のようの用いられており、「飲むカレー」のサンプル商品を表示したものと認められる、表面にカレーライスを表す図及び「飲む/カレー」の文字が記載された紙パックの写真や、当該紙パックの図が大きく表示された2015年8月号の雑誌「danchu」の表紙と認められる画像が掲載されている(別掲(3))。
(エ)「2018.09.29」の日付が記載された「居酒屋革命 酔っ手羽」(飲食店)のウェブサイトにおいて、「飲むカレー」の文字は、2018年の秋冬版のメニューとして、「カクテル」、「テキーラ・ソフトドリンク・ワイン・日本酒」等の項目と並んで項目名として用いられており、また、当該「飲むカレー」の内容を示したものと認められる、ジョッキ入りの液体状のカレーの写真が掲載されている(別掲(4))。
(オ)平成30年12月31日に公開された「ippin」のウェブサイトの記事において、パウダー状のカレーをお湯に溶かして飲むタイプの「ドリンカレー」という名称の食品が紹介されており、「飲むカレー」の文字は、その紹介文において「驚きのインスタントコーヒー感覚。飲むカレーの決定版!」の見出しの下、「カレーは飲み物、なんていうシャレを芸人さんが言っていた頃があった。もともと煮込み料理だし、種類によってはスープに近い仕上がりのものもあるカレーという食べ物。そしてスープは『飲む』という表現することが当たり前。・・・そんな中で『飲むカレー』というキーワードが目に飛び込んできた。件のフィードのリンクを辿ると『ドリンカレー』というものらしい。そう、カレーは飲み物、ではなく、飲むカレーであった。」のように用いられている(別掲(5))。
(カ)令和元年5月10日付け「中日新聞朝刊 地方版」において、岐阜県関市の異種事業者の会が、「関“のむ”牛乳カレー」という名称の飲むタイプのカレーを開発中である旨の記事が掲載され、「飲むカレー」の文字は、その見出しに「『飲むカレー』作ってみた」のように用いられている(別掲(6))。
(キ)「2019.9.10」の日付の記載がある「株式会社ADKホールディングス」のウェブサイトの記事において、カレーショップが紹介されており、「飲むカレー」の文字は、その紹介文において「看板メニューのポークビンダルーカレーも手頃なサイズで食べられますし、今回用に開発した『飲むカレー』もあります。」のように用いられ、また、グラス入りの液体状のカレーの写真が掲載されているところ、それを説明する記載として「鰹・昆布・鶏の3種のダシが香る『飲むカレー』」のように用いられている(別掲(7))。
(ク)「チャンピオンカレー」のウェブサイトにおいて、「飲むカレー」の文字が、「全カレーファン待望、飲むカレー『チャンタピ』登場!」の見出しや、プラスチックカップ入りの液体状のカレーの写真とともに「みんな大好き♪飲むカレーにタピオカがイン!!」のように用いられており、また同ウェブサイトには、「全カレーファン待望、飲むカレー『チャンタピ』が本日から発売となりましたのでお知らせいたします。/【商品概要】◯販売開始:2020年4月1日(水)・・・古来から言われる通り、『カレーは飲み物』もう恥ずかしくなんてない!」の記載がある(別掲(8))。
エ 判断
上記ウの認定事実によれば、本件審決時には、カレーに関する飲食物の提供及び飲食料品の分野において、「飲むカレー」の文字が、スープカレーを再現した缶飲料、紙パック入りの飲むタイプのカレー、ジョッキ・グラス・カップ入りの飲むタイプのカレー料理、飲むタイプのカレー用のパウダー状カレー等、液体状の「飲むタイプのカレー」全般を表示するものとして用いられていたことが認められ、これより、「飲むカレー」の文字は、上記のような飲食物の提供及び飲食料品の分野において、「飲むタイプのカレー」程の意味合いを表す語として一般に理解されていたというのが相当である。
そして、本件商標の指定商品中、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」の取引者、需要者には、カレーの飲食物の提供者である飲食店や、その提供を受ける一般消費者等が含まれると考えられるところ、上記イのような本件商標を構成する「飲む」及び「カレー」の各語の意義に加え、「飲むカレー」の文字の上記のとおりの一般的な理解の内容に照らすと、本件商標は、本件審決時において、これに接する取引者、需要者によって、「飲むタイプのカレー」を意味するものとして、一般に認識されるものであったというのが相当である。
そうすると,本件商標は、本件審決時において、本件商標の指定商品中、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」に使用されたときは,当該商品が「飲むタイプのカレーのもと」であるという、本件指定商品の品質を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであり、かつ、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであったというのが相当であるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他商品識別力を欠くものというべきである。
加えて、上記イ(ア)のとおり、本件商標は、その構成文字を普通に用いられる方法で表示する標章である。
したがって、本件商標は、その指定商品中、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」との関係においては、その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本件商標権者の主張について
本件商標権者は、「取消理由通知における証拠には、「飲むカレー」を、商標的に使用しているもの、過去の使用事例及び架空の情報が含まれるから、当該文字が、本件審決時において、広く使用されていたとの認定は誤りである。また、ある商標が商標法3条第1項第3号に該当するか否かの判断において、判決(平成30年(行ケ)第10143号)によれば、商標が「数多く使用されていた」ことを要すると解される。そうすると、取消理由通知において開示された証拠をもって本件商標の同号該当性を判断することは不適切である」旨主張する。
しかしながら、上記(1)エで説示したとおり、本件商標は、本件審決時において、本件商標の指定商品中、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」に使用されたときは、当該商品が「飲むタイプのカレーのもと」であるという、本件指定商品の品質を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであり、かつ、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであったというのが相当であるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他商品識別力を欠くものというべきである。そして、本件商標が現に第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」の品質を表示するものとして取引上数多く使用されていたかどうかや、本件商標が現実に取引される商品の品質を表示するものとして需要者によって認識されていたかどうかは、上記認定判断を直ちに左右するものではない。また、上記(1)ウの認定事実によれば、「飲むカレー」の文字は、本件商標の指定商品中、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」と関連の深いカレーに関する飲食物の提供及び飲食料品の分野において、液体状の「飲むタイプのカレー」全般を表示するものとして用いられていたと認められるのであって、商品や役務の出所を表示するための識別標識として使用されていた(商標的に使用されていた)と認めることはできない。
したがって、本件商標権者の上記主張は、採用することができない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、結論掲記の指定商品については、商標法第3条第1項3号に該当し、その登録は同条同項に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲 本件商標の指定商品中、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと」と関連の深いカレーに関する飲食及び飲食料品の分野における、「飲むカレー」等の文字の使用状況
(1)「四国新聞社」のウェブサイトにおいて、「飲むカレー/日本たばこ産業/2007/09/28 15:08」の見出しの下、「日本たばこ産業は、温かい缶飲料『スープカレー』を10月1日発売する。札幌が発祥の地とされ、各地に専門店もできて人気のスープカレーを再現。具は入っていないが香辛料の風味を利かせ、とろみも持たせた。」の記載がある。
(http://www.shikoku-np.co.jp/national/economy_new_products/article.aspx?id=20070928000275)
(2)「街はぴ」のウェブサイトにおいて、「本当にあった!飲むカレー/※この記事は2013.05.05に作成された記事です。」の見出しの下、「『カレーは飲み物』という言葉にもありますが(笑)、本当に飲むカレーを出しているお店があるということで、行ってきました。・・・テイクアウトもできますが、今回は店内で、飲むカレーのセットを食べてみました。セット内容は、飲むカレー、ナン2枚、サラダ、ラッシー、ドリンク、デザートです。飲むカレーは、カクテルグラスに入っていて、色のコントラストがとってもきれいです!・・・オレンジ色はトマト風味のカレー、白色はお豆腐のカレー、緑色はほうれん草とブロッコリーのカレーだそうです。・・・ストローが付いているので、本当に飲んで頂けるカレーです。」の記載がある。
(https://www.happy-town.net/archive/16668)
(3)「まとめまとめ」のウェブサイトにおいて、「2016年07月06日更新/【飲むカレー】『カレーは飲み物』がついに実現!?築地で開催のイベントにて販売決定!みんなの反応まとめ」の見出しの下、「ウガンダ・トラは言った、『カレーライスは飲み物である。』と・・・食のエンターテインメント雑誌『danchu』が主催の食のイベント『danchu祭り2016in築地』にて、飲み物としてのカレー・・・その名も『飲むカレー』がお目見えするようです。」の記載があり、また、「danchu祭り2016にて、2015年8月号で特集した『飲むカレー』が現実の商品に」の項に、「飲むカレーは300円で販売とのこと。・・・例えば一例をチラリ。2015年8月号のカレー特集で世間をザワザワ(?)させた、dancyuカレー部公認レシピ『飲むカレー』が・・・現実のものとなります!先ほど編集部に到着した、サンプルの様子がこちらです・・・」の記載及び「『飲むカレー』の起源は2015年8月号の特集だった・・・『dancyuカレー部の夏合宿「カレーは飲み物」を検証する』8月号の特集として登場し、公認レシピが考案されていました。」の記載とともに、以下の画像がある。
(https://matomame.jp/user/gorogoro/680efe464f698e33350a)


(4)「居酒屋革命 酔っ手羽」のウェブサイトにおいて、「[秋冬版]2018年 酔っ手羽 グランドメニュー ドリンク/2018.09.29」の見出しの下、「カクテル」、「テキーラ・ソフトドリンク・ワイン・日本酒」等の項目と並んで「飲むカレー」の項目があり、その下に、以下の画像とともに「飲むカレー」の記載がある。
(https://www.yotteba.co.jp/introduce/gurando_dorinku/)

(5)「ippin」のウェブサイトにおいて、「驚きのインスタントコーヒー感覚。飲むカレーの決定版!/2018/12/31公開」の見出しの下、「カレーは飲み物、なんていうシャレを芸人さんが言っていた頃があった。もともと煮込み料理だし、種類によってはスープに近い仕上がりのものもあるカレーという食べ物。そしてスープは『飲む』という表現することが当たり前。・・・そんな中で『飲むカレー』というキーワードが目に飛び込んできた。件のフィードのリンクを辿ると『ドリンカレー』というものらしい。そう、カレーは飲み物、ではなく、飲むカレーであった。ご縁が繋がりドリンカレー、手元にやってきた。パッケージの言葉を借りれば、『ドリンカレー』は、インスタントコーヒーのようにカレーのパウダーを、さっとお湯に溶かして飲む、新しいタイプのホットドリンクです。“飲むカレー”として、スパイスを摂取できる『ドリンカレー』で毎日をもっとHOTにお過ごしください・・・もしかするとカレー粉とどこが違うの、と勘違いしてしまう人もいるかもしれない。しかし、カレー粉をお湯で溶かしてもカレーにはならないのだ。きちんと調味を考えないとカレーという味にはならない。・・・パッケージを裏返してみると原材料などが書いてある。なるほど、スパイスだけではない。野菜パウダーやチキンコンソメなども入る。これらがないとカレーとして完成しないであろうことは容易に想像がつく。」の記載がある。
(https://ippin.gnavi.co.jp/article-15958/)
(6)2019年5月10日付け「中日新聞朝刊 地方版」において、「『飲むカレー』作ってみた 関の異種事業者コラボし開発中 来月のグルメ大会向け 地元産牛乳と蜂蜜を融合」の見出しの下、「【岐阜県】関市本町通りで6月に開催される『日本ど真ん中「関」ご当地グルメ大会』に向けて、市内の異種事業者でつくる服部会が『関“のむ”牛乳カレー』を開発中だ。・・・からし色のカレーを一口飲むと、まろやかな優しい甘さが広がり、次の瞬間にスパイスのインパクトが来る。口当たりは牛乳のように滑らかで、するすると喉に入る。」の記載がある。
(7)「株式会社ADKホールディングス」のウェブサイトにおいて、「2019.9.10/Article Title/CHERRYがカレーショップをプロデュース!期間限定で新虎通りにOPEN」の見出しの下、「このお店は、・・・日替わりの店長によっておいしいカレーとお酒が振舞われています。」の記載、「Q.『六▲加里▼縁日』の見どころ/特徴は?」の項には、「看板メニューのポークビンダルーカレーも手頃なサイズで食べられますし、今回用に開発した『飲むカレー』もあります。」の記載があり、「鰹・昆布・鶏の3種のダシが香る『飲むカレー』」の記載の上に以下の画像がある。
(https://www.adk.jp/news/592/)

(8)「チャンピオンカレー」のウェブサイトにおいて、「全カレーファン待望、飲むカレー『チャンタピ』登場!」の見出しの下、「みんな大好き♪飲むカレーにタピオカがイン!!」の文字を含む以下の画像があり、その下に、「全カレーファン待望、飲むカレー『チャンタピ』が本日から発売となりましたのでお知らせいたします。/【商品概要】◯販売開始:2020年4月1日(水)・・・古来から言われる通り、『カレーは飲み物』もう恥ずかしくなんてない!」の記載がある。
(https://chancurry.com/news/2438/)



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-06-29 
出願番号 2018146361 
審決分類 T 1 652・ 13- Z (W29)
最終処分 06   取消
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 渡邉 あおい
鈴木 雅也
登録日 2021-06-23 
登録番号 6406210 
権利者 株式会社フェリシモ
商標の称呼 ノムカレー、ノム 
代理人 中村 知公 
代理人 朝倉 美知 
代理人 前田 大輔 
代理人 伊藤 孝太郎 

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