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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W14 |
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管理番号 | 1388537 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-06-02 |
確定日 | 2022-08-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6366233号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6366233号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6366233号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「六一福」の漢字及び「LIU YIFU」の欧文字を二段に表してなり、令和2年7月7日に登録出願、第14類「貴金属,宝玉の原石,宝玉及びその模造品,キーホルダー,宝石箱,イヤリング,貴金属製き章,貴金属製バッジ,貴金属製ボンネットピン,ネクタイ止め,ネクタイピン,ネックレス,ブレスレット,ペンダント,宝石ブローチ,メダル,指輪,ロケット,身飾品,カフスボタン,時計」を指定商品として、同年3月2日に登録査定、同月19日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する標章 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する標章は、「六福珠寶」の文字よりなる標章(以下「使用標章」という。)であり、申立人の業務に係る「貴金属,キーホルダー,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,身飾品」(以下「申立人商品」という場合がある。)に使用し、当該商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていると主張するものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証(なお、甲各号証の表記にあたっては、「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。 (1)本件商標について 本件商標は、上段に「六一福」の漢字を横書きしてなり、下段に「LIU YIFU」の欧文字を横書きした二段併記の文字商標であり、前記漢字から「ロクヒトフク」、「ムイチフク」の称呼が生じ、前記欧文字から「リウイフ」の称呼が生じ、「六一福」、「LIU YIFU」は、辞書等に掲載された文字ではないため、特定の観念は生じない(甲1、甲2)。 本件商標の指定商品は、第14類に属する「貴金属,宝玉の原石,宝玉及びその模造品,キーホルダー,宝石箱,イヤリング,貴金属製き章,貴金属製バッジ、貴金属製ボンネットピン,ネクタイ止め,ネクタイピン,ネックレス,ブレスレット,ペンダント,宝石ブローチ,メダル, 指輪,ロケット,身飾品,カフスボタン,時計」であり、本件商標は、令和3年3月19日に商標登録され、現に有効に存続している。 (2)申立人の使用した商標 甲3ないし甲13には、使用標章が記載されており、甲4に表された使用標章を使用した商品は、第14類の「貴金属」、「キーホルダー」、「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」、「身飾品」に属する商品である。使用標章中「珠寶」の文字は、ジュエリー程度の意味を有する語であるため、本件商標を使用した商品との関係を考慮すると、使用標章の要部は「六福」である。 (3)使用標章を使用した商品 甲3、甲4には、使用標章を使用した商品が記載されており、これらの商品は、第14類の「貴金属」、「キーホルダー」、「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」、「身飾品」に属する商品である。 (4)使用標章の周知性 甲5には、申立人が、1994年に中華人民共和国における第1号店を開設し、現在までに2,440以上の店舗を中華人民共和国に開設したこと、また、世界各地に約2,510の店舗を開設したことが記載されている。そして、申立人が、2003年に自社製品の加工工場を中華人民共和国の広州市に開設したことが表されている。 甲6には、申立人が、1991年に第1号店を香港に開設し、2012年に店舗数が1,000を超えたこと、2019年に店舗数が2,000を超えたことが表されている。 甲7には、使用標章を使用した店舗が、中華人民共和国、香港特別行政区、マカオ特別行政区、シンガポール、マレーシア、カンボジア、フィリピン、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアの世界各地に所在することが表されている。 甲8には、中華人民共和国における店舗が、チベット、新疆ウイグル自治区、甘粛省、青海省、内モンゴル、安徽省、江西省、湖南、貴州、重慶、四川省、雲南省、広西チワン族自治区、広東省、海南省、寧夏、福建省、浙江省、上海、江蘇省、山東省、河北省、天津、北京、河南省、遼寧省、吉林省、黒龍江、山西省、陝西省、湖北省に所在することが表されている。 甲9には、平成19年8月29日に開催された、ジャパンジュエリーフェア2007ジュエリー業界国際セミナーにおいて、申立人は、使用標章を使用して、自己の商品及び事業に関して講演を行ったことが表されている。 甲10ないし甲12には、平成24年9月から11月にわたって、申立人が日本国内において、使用標章を付した多数のダイヤモンドなどの宝玉、金などの貴金属、ブローチやネックレスなどの身飾品を販売し、販売金額は536,694.74ドルであったことが表されている。 甲13には、平成30年8月28日に開催された、ジャパンジュエリーフェア2018ジュエリー業界セミナーにおいて、申立人は、使用標章を使用して、自己の商品及び事業に関して講演を行ったことが表されている。 甲5ないし甲8に表された申立人の店舗に関する情報と、甲9ないし甲13に表された申立人の使用標章の使用の事実を総合的に判断すると、使用標章は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く知られた商標である。 (5)商標法第4条第1項第10号について 上述したように、使用標章は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く知られた商標である。本件商標は、「六一福/LIU YIFU」の漢字及び欧文字よりなるから、これより「ロクヒトフク」の称呼が生じる。他方、使用標章の要部は「六福」の漢字よりなるから、これにより「ロクフク」の称呼を生じる。 してみれば、本件商標と使用標章は、称呼において「ロク」及び「フク」の称呼が共通し、外観において「六」及び「福」の漢字が共通するため、両商標は称呼及び外観が近似する類似商標である。そして、本件商標の指定商品と使用標章の商品は、共に第14類の「貴金属」、「キーホルダー」、「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」、「身飾品」に属する商品であるため、本件商標の指定商品は使用標章の商品と同一又は類似の商品である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第15号について 上述したように、使用標章は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く知られた商標である。本件商標と使用標章は、称呼において「ロク」及び「フク」の称呼が共通し、外観において「六」及び「福」の漢字が共通するため、両商標は類似する商標である。 そして、本件商標の指定商品と使用標章の商品は、共に第14類の「貴金属」、「キーホルダー」、「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」、「身飾品」に属する商品であるため、本件商標の指定商品は使用標章の商品と同一又は類似の商品である。そのため、本件商標の指定商品への使用は、需要者に対して、申立人商品を連想させて商品の出所について混同を生じさせる可能性や、申立人と本件商標の商標権者に資本関係があるなど、広義の混同を生じさせる可能性がある。さらに、本件商標の指定商品への使用は、申立人の顧客吸引力へのただ乗りや、希釈化を招く可能性もある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (7)商標法第4条第3項について 上述したように、申立人は、世界各地に多数の店舗を設けているが、これらの店舗は、本件商標の出願日より前に開設されたものであり、本件商標の査定日までに、使用標章の周知性が失われるような事情は生じていない。したがって、使用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の商標として需要者に広く知られている。 (8)結び 本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号の規定に違反してなされたものであるから、取消されるべきである。 4 当審の判断 (1)使用標章の周知性について 申立人の提出した証拠及び主張によれば、以下のとおりである。 ア 申立人は、1991年に香港で設立された宝飾品の調達、デザイン、卸売り等を行う企業であり、1994年に中華人民共和国で第1号店が設立されて以来、同国における店舗総数は、31地域、2,440店舗以上、世界における販売拠点は、中華人民共和国や香港特別行政区を含めて10か国、約2,510か所であることがうかがえるが、申立人の店舗は、中華人民共和国内が大部分を占めており、日本には申立人の店舗はない(甲5〜甲8)。 イ 申立人が自身のウェブサイトにおいて、使用標章を表示し、申立人商品に含まれるネックレス、指輪、イヤリング等を紹介していることは確認できるが、当該ウェブサイトは、主に英語で作成されており、打ち出しの日付は本件商標の登録査定後のものである(甲3、甲4)。 ウ 申立人は、2007年のジャパンジュエリーフェアにおけるジュエリー業界国際セミナーにおいて、使用標章を使用して、自己の商品及び事業に関して講演を行った旨主張するが、当該証拠には使用標章が確認できない(甲9)。 また、2018年8月28日に、東京ビッグサイトにおいて開催されたジュエリー業界セミナー(定員100名)において、申立人が、使用標章を使用して、申立人商品及び事業に関して講演を行ったことがうかがわれる(甲13)。 エ 2012年9月から11月まで東京で開催された「保税展」という宝飾品展示会において、総額536,694.74ドル相当のダイヤモンドやひすい等の宝飾品を納入することを内容とした契約が2012年9月22日付けで申立人と日本の宝飾品輸入業者との間で締結されたこと、当該展示会において、使用標章の表示の下、宝飾品が販売されたことがうかがえる(甲10〜甲12)。 オ 上記アないしエによれば、申立人は、自身のウェブサイトにおいて、使用標章を表示し、申立人商品に含まれるネックレス、指輪、イヤリング等を紹介していることは確認できるが、当該ウェブサイトは、本件商標の査定後に打ち出されたものである上、英語で作成されていることから、我が国の需要者に向けたものとはいえず、使用標章に対する我が国の需要者の認識の度合いを裏付けるものとはいえない。 また、2018年8月28日に東京で開催された「ジュエリー業界セミナー」において、申立人が、使用標章を使用して、申立人商品及び事業に関して講演を行ったことはうかがわれるものの、当該セミナーの定員は100名と記載されており、その数はさほど多いとはいえない。 さらに、2012年9月から11月まで東京で開催された宝飾品展示会において、使用標章の表示の下、申立人商品に含まれる宝飾品が販売されたことはうかがえるが、当該展示会の開催時期は、本件商標の登録出願時及び登録査定時の約10年前であり、また、当該展示会において、総額536,694.74ドル相当の宝飾品が販売されたとしても、それのみでは、販売規模を評価し得ず、当該展示会の入場者数も確認できない。 また、申立人商品の売上高、市場シェアなどの具体的な販売実績並びに広告宣伝費などについては、その事実を客観的に把握することができる証拠は提出されていない。 なお、申立人の世界における販売拠点が、中華人民共和国や香港を含めた10か国、約2,510か所存在しているとしても、日本には申立人の店舗がないことから、少なくとも我が国の需要者が使用標章を表示した申立人商品を店舗で購入することはできないものであり、当該事実のみをもって、我が国における使用標章を表示した申立人商品の周知性を推し量ることはできない。 その他、使用標章を表示した申立人商品が我が国の取引者及び需要者の間に広く知られていることを客観的に示す証拠はないから、使用標章が、我が国の需要者にどの程度認識されているのか把握、評価することができない。 してみると、提出証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用標章が他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認めることはできない。 (2)本件商標と使用標章との類似性の程度について ア 本件商標 本件商標は、別掲のとおり、「六一福」の漢字及び「LIU YIFU」の欧文字を二段に表してなるところ、「六一福」及び「LIU YIFU」の文字は、いずれも一般的な辞書に載録がなく、また、特定の意味合いを有する語として知られているとも認められないものである。 そして、必ずしも下段の「LIU YIFU」の欧文字が上段の「六一福」の漢字の自然な読みを表したものとはいえないから、両文字部分がそれぞれ独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。 そうすると、本件商標は、上段の「六一福」の文字に相応して「ロクイチフク」、下段の「LIU YIFU」の文字に相応して「リウイフ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 イ 使用標章 使用標章は、「六福珠寶」の漢字を、同書同大に、外観上まとまりよく一体に表されており、構成文字全体から生じる「ロクフクジュホウ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。 また、「六福珠寶」の文字は、一般的な辞書等に載録がなく、また、特定の意味合いを有する語として知られているとも認められないものである。 そうすると、使用標章は、その構成文字に相応して「ロクフクジュホウ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。 なお、使用標章の構成中の「珠寶」の文字は、「真珠や宝玉のアクセサリー」(「超級クラウン中日辞典」株式会社三省堂)の意味を有する中国語であるとしても、一般に親しまれた語とはいえないし、仮に使用標章から、「六福」の文字を要部として抽出した場合、使用標章は、「六福」の文字に相応して「ロクフク」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 ウ 本件商標と使用標章の類否について 本件商標と使用標章とを比較すると、外観において、本件商標は、「六一福」の漢字及び「LIU YIFU」の欧文字を二段に表してなる一方、使用標章は、「六福珠寶」の漢字からなることから、両者は、「六」及び「福」の文字を共通にするとしても、構成する文字の種類及び文字数の明確な差異により、両者は、外観上明確に区別できるものである。 また、称呼において、本件商標から「ロクイチフク」及び「リウイフ」の称呼を生ずる一方、使用標章からは、構成全体として「ロクフクジュホウ」の称呼を生じ、その構成中の「六福」から「ロクフク」の称呼を生じるとしても、本件商標から生じる称呼と使用標章の構成全体及び「六福」から生じる称呼とは、その音数及び音構成において明らかな差異を有するものであるから、それぞれを称呼するときは、明瞭に聴別し得るものである。 さらに、観念においては、本件商標と使用標章の構成全体及び要部として抽出した場合の「六福」は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することはできない。 そうすると、本件商標と使用標章とは、観念において比較することができないとしても、その外観及び称呼において、相紛れるおそれのないものであるから、これらを総合して勘案すれば、非類似の商標というべきである。 (3)商標法第4条第1項第10号該当性について 使用標章は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。 また、本件商標と使用標章とは、上記(2)のとおり、非類似の商標である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものであるから、同号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第15号該当性について 使用標章は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。 また、本件商標と使用標章とは、上記(2)のとおり、非類似の商標であるから、類似性の程度は低いものである。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、使用標章を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように認識することはないから、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2022-01-14 |
出願番号 | 2020083982 |
審決分類 |
T
1
651・
25-
Y
(W14)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
佐藤 淳 |
特許庁審判官 |
渡邉 潤 小田 昌子 |
登録日 | 2021-03-19 |
登録番号 | 6366233 |
権利者 | 翁 建凡 |
商標の称呼 | ロクヒトフク、ムイチフク、リウイフ |
代理人 | 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所 |