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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W30
管理番号 1388464 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-05 
確定日 2022-08-08 
事件の表示 商願2020−27876拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 手続の経緯
本願は,令和2年3月13日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年8月28日付け:拒絶理由通知
令和3年1月7日 :意見書の提出
令和3年4月26日付け:拒絶査定
令和3年8月5日 :審判請求書の提出
令和4年2月2日付け:審尋
令和4年3月14日 :回答書の提出

2 本願商標
本願商標は,「発酵だしシリーズ」の文字を標準文字で表してなり,第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,パスタソース,食用酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用グルテン,食用粉類」を指定商品として登録出願されたものである。

3 原査定の拒絶の理由の要点
本願商標は「発酵だしシリーズ」の文字を標準文字で表してなるところ,構成中「発酵」の文字は「一般に,酵母・細菌などの微生物が,有機化合物を分解してアルコール・有機酸・炭酸ガスなどを生じる過程。」の意味を有する語として,「だし」の文字は「出し汁」の略として知られており,くわえて,発酵によって製造されただしが「発酵だし」と呼ばれている実情もみられる。また,本願商標の構成中「シリーズ」の文字は「連続性を持つ一連のもの。」を意味する語であり,飲食料品に関する業界において,共通する用途やコンセプトなどを有する一連の商品群を表す際に「シリーズ」の文字が広く用いられていることから,本願商標は全体として「食材を微生物の働きによって発酵させて製造するだしのシリーズ」の意味合いが容易に認識されるものというのが相当である。そうすると,本願商標をその指定商品中,例えば「発酵によって製造された出汁を使用した商品」に使用しても,これに接する需要者・取引者は,係る品質の商品であることを認識するにとどまるというのが相当であるから,単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものといわざるを得ない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記品質に照応しない商品(発酵によって製造された出汁を使用していない商品)に使用するときは,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第16号に該当する。

4 当審における審尋
当審において,令和4年2月2日付け審尋で,別掲に示すとおりの事実を示した上で,本願商標は,その指定商品中,「だし汁,だしの素」に使用しても,単に商品の品質,原材料及び製造方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるもので,自他商品の識別標識とは認識しないものと判断するのが相当であるから,商標法第3条第1項第3号に該当するものである旨の見解を示し,期間を指定して,これに対する回答を求めた。

5 審尋に対する請求人の回答の要旨
請求人は,前記4の審尋に対して,要旨以下のように回答した。
(1)「発酵だし」に関する別掲1の情報について
ア 「発酵だし」なる語が「原材料に発酵食品を使用しただし汁又はだしの素」及び「製造過程に「発酵」を取り入れただし汁又はだしの素」ほどの意味合いで使用されている事例として適切であるとはいい難い上,そもそも,本願商標は,別掲1に列挙される「発酵だし」の語単体とは異なる構成からなる別商標であって,これらの記事が本願商標の識別力の判断を左右するものとはいい難い。
イ 本願商標の識別性の判断は,全体的な観察をもって行うべきであり,特定の部分を抜き出して,その箇所の使用例や識別力を部分的に判断するのは妥当ではない。
(2)「〇〇だしシリーズ」に関する別掲2の情報について
識別力のない「○○」の文字と「シリーズ」の文字を一連にした「○○シリーズ」としたときには,識別力が認められている。
イ 本願商標を「発酵」と「だしシリーズ」という2語に分離観察するという視点を取った場合は,「発酵」させた「だしシリーズ」は品質表示にも製法にもあたらず,その結果,本願商標は全体として造語である。
そして,「○〇だしシリーズ」のように「○○」と「だしシリーズ」をあえて限定的に分離した場合に,「〇〇」が指定商品との関係において,必ずしも識別力が高いとも言えず,ある種,品質表示的,役務の内容表示にも思われる語であったとしても,結合した「○○だしシリーズ」が一連で需要者にとって識別力がないものとして明確に認識されていない限り,「〇〇だしシリーズ」なる語には全体として識別力がある。
識別力を有する「発酵だし」の「シリーズ」である「発酵だしシリーズ」なる語も識別力を有する。
エ 別掲2に係るウェブサイトには「発酵だしシリーズ」なる語は記載されていないから,別掲2は「発酵だしシリーズ」の識別力の判断において何ら関係はない。

6 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は,上記1のとおり,「発酵だしシリース」の文字を標準文字で表してなるところ,その指定商品中には「だし汁,だしの素」を含む第30類「調味料」を有している。
ところで,本願商標の構成中の「発酵」の文字は「一般に,酵母・細菌などの微生物が,有機化合物を分解してアルコール・有機酸・炭酸ガスなどを生じる過程。」の意味を有する語として,「だし」の文字は「鰹節・昆布・椎茸などを煮出した汁。」を意味する「出し汁」の略として,また,「シリーズ」の文字は「連続性を持つ一連のもの。」(いずれも広辞苑第6版)を意味する語である。
そして,「発酵だし」の文字は,必ずしも明確に統一された意味ではないものの,本願の指定商品に係る業界において,「原材料に発酵食品を使用しただし,だし汁又はだしの素」,「製造過程に『発酵』を取り入れただし汁又はだしの素」等を表す文字として使用されていることが認められる(原審における提示,別掲1)。
また,一の製造者の製造に係る複数のだし汁又はだしの素の商品群や,用途等を同じくする複数のだし汁又はだしの素の商品群を総称して「○○だしシリーズ」と称している例が認められる(別掲2)。
以上のことからすると,本願商標をその指定商品中「だし汁,だしの素」に使用しても,これに接する需要者には,「原材料に発酵食品を使用した又は製造過程に『発酵』を利用した,だし汁又はだしの素に関する一連の商品群」すなわち「発酵だし」という「だし汁又はだしの素に係る商品群」ほどを認識するにとどまるというべきであるから,本願商標は,単に商品の品質,原材料及び製造方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるもので,自他商品の識別標識とは認識しないものと判断するのが相当である。
また,本願商標を「だし汁,だしの素」以外の調味料に使用するときは,商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,これを「だし汁,だしの素」以外の調味料に使用するときは,商品の品質の誤認を生ずるものであるから同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,原審及び当審における審尋において示した事実に表示されている「発酵だし」なる語が「原材料に発酵食品を使用しただし汁又はだしの素」及び「製造過程に「発酵」を取り入れただし汁又はだしの素」ほどの意味合いで使用されている事例として適切であるとはいい難い上,そもそも,本願商標は,別掲1に列挙される「発酵だし」の語単体とは異なる構成からなる別商標であって,これらの記事が本願商標の識別力の判断を左右するものとはいい難い旨主張している。
しかしながら,原審及び当審における審尋において示した事実における「発酵だし」の文字に係る商品が,終売していたり,一般には別の名称の商品であるとしても,これらの事例は「発酵だし」の文字を品質,製造方法等として使用している事例であるから,本願商標の「発酵だし」の文字部分が,本願の指定商品との関係において「原材料又は製造過程に『発酵』を利用しただし汁又はだしの素」であることを表示していることには変わりはない。
イ 請求人は,「発酵だし」の語を,「キッコーマンが独自に提供する特定のだし商品」を表す語として,すなわち自他商品の識別標識としての機能を有している語として認識し,使用している旨主張している。
しかしながら,上記(1)のとおり,「発酵だし」の文字は,本願商標の指定商品に係る業界において,「原材料に発酵食品を使用しただし,だし汁又はだしの素」,「製造過程に『発酵』を取り入れただし汁又はだしの素」等を表す文字として使用されていることが認められ,さらに別掲1(5)のとおり,請求人に係る「発酵だし」も「発酵技術でとった新しいだしです。」旨の説明をしていることからすれば,「製造過程に『発酵』を取り入れただし汁又はだしの素」であるといえる。
ウ 請求人は,別掲2の事例が「○○だしシリーズ」であることから,本件商標を「発酵」と「だしシリーズ」という2語に分離観察したものとしてみた場合には,「発酵」させた「だしシリーズ」は品質表示にも製法にもあたらず,その結果,本願商標は全体として造語である旨,また,本願商標の識別性の判断は,全体的な観察をもって行うべきであり,特定の部分を抜き出して,その箇所の使用例や識別力を部分的に判断するのは妥当ではない旨主張している。
しかしながら,上記(1)のとおり,本願商標全体を見た場合,これに接する需要者に「原材料又は製造過程に『発酵』を利用しただし汁又はだしの素に関する一連の商品群」すなわち「発酵だし」という「だし汁又はだしの素に係るシリーズ(商品群)」であることを認識させるものであり,「発酵」させた「だしシリーズ」を認識させるものとはいえない。
エ 請求人は,識別力のない「○○」の文字と「シリーズ」の文字を一連にした「○○シリーズ」の登録商標の例を多数挙げ,本願商標も同様に自他商品識別力を認められるべき商標である旨主張する。
しかしながら,登録出願に係る商標が登録され得るものであるか否かの判断は,指定商品,指定役務等の取引の実情を考慮し,当該商標の全体の構成に基づいて,個々の商標ごとに個別具体的に検討,判断されるべきものであり,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについての判断が,商標の構成中,その一部において同じ文字を含むとしても,その全体の構成を異にする他の商標登録の例に左右されるものではない。
オ 請求人は,本願商標の構成中の「発酵だし」という語を検索してヒットする記事の大半,および本願商標である「発酵だしシリーズ」という語を検索してヒットする記事の全ては,出願人の商品に係る記事であるから,「発酵だし」の文字が商品の品質を表示したものとはいえない旨主張する。
しかしながら,商標法第3条第1項第3号に該当するためには,本願商標がその指定商品に使用された場合,取引者,需要者によって,商品の品質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りるとされているから,本願商標や「発酵だし」の文字の使用の多寡が同号の判断に影響を与えるものではない。
カ したがって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。


別掲
別掲1 「発酵だし」の文字が,「原材料に発酵食品を使用しただし汁又はだしの素」及び「製造過程に『発酵』を取り入れただし汁又はだしの素」ほどの意味合いで使用されている例
(1)「からだの為の素朴食 豆麦房」のウェブサイトにおいて,「発酵だしの素(動物性)」の見出しの下,「新鮮なカツオやイワシ,牡蠣,海藻,椎茸,大豆を発酵させて作った完全無添加の天然旨味調味料です。」の記載がある。
(https://www.toubakubou.com/shopItems/26547391)
(2)「わくわく株式会社」のウェブサイトにおいて,「飯のだし【20g】(1人約1.5か月分)」の見出しの下,「『飯のだし』は,鮒寿司を発酵させる時に使用したご飯を使用しています。/鮒寿司は,塩漬けにしたフナを炊いたご飯で漬けて発酵させたものです。その発酵したご飯の部分を『飯(いい)』と言います。その飯をそのまま乾燥して風味豊かな発酵だしを作りました。」の記載がある。
(https://wk2nanairo.theshop.jp/items/24168352)
(3)「Amazon」のウェブサイトにおいて,「商品の説明」の見出しの下,「国産天然8素材を,特殊な技術で共生発酵させて完成した,発酵だしです。」の記載がある。
(https://www.amazon.co.jp/dp/B01C8HPPPM)
(4)「合名会社まるはら」のウェブサイトにおいて,「まるはら秘伝 四醤合わせ/黒だし」の見出しの下,「千年前から伝わる四種の醤油から生まれた『四醤合わせ 黒だし』。砂糖・食塩以外,すべて発酵により作られた国内唯一の発酵だしです。白だしと同様にお使い下さい。」の記載がある。
(http://www.soysauce.co.jp/recipe/kurodashi/)
(5)請求人のウェブサイトにおいて,「キッコーマンの“発酵だし”シリーズとは?」の見出しの下,「『発酵だし』は,しょうゆ醸造で培ったキッコーマン独自の発酵技術でとった新しいだしです。独自の麹のチカラで,大豆やかつお節などのたんぱく質を分解し,旨みのもとを生み出しました。」の記載がある。
(https://www.kikkoman.co.jp/kikkoman/hakkoudashi/index.html)
(6)2012年11月4日付日刊スポーツに「情報プラザ3日」の見出しの下,「秋田▽比内地鶏の発酵だし 仙北市の安藤醸造は,比内地鶏のささみに米こうじを加えて発酵させた『鶏鍋のだし』を10月から売り出した。一般的な鶏がらのスープと比べ,肉のうま味が強いのが特徴。調味料としても使える。「みその液体版。くせもなく上品なので,いろんな料理に使って」と担当者。1本230グラム入りで525円。」の記載がある。

別掲2 「○○だしシリーズ」の文字が,製造者における複数の製造に係るだし汁又はだしの素の商品群や,用途等を同じくする複数のだし汁又はだしの素の商品群を表示する語として使用されている例
(1)「久原本家茅乃舎」のウェブサイトにおいて,「お好みやご用途でお選びください。茅乃舎のだしシリーズをご紹介します。」の見出しの下,「茅乃舎かつおだし」,「野菜だし」及び「煮干しだし」が紹介されている。
(https://www.kayanoya.com/dashi/)
(2)「味の兵四郎」のウェブサイトにおいて,「好みに合わせて使い分ける兵四郎のだしシリーズ」の見出しの下,「あご入兵四郎だし」,「あご入減塩だし」,「あご入素材だし」,「野菜の旨みだし」,「たもぎ茸入きのこの旨みだし」及び「とり枯れ節だし」が紹介されている。
(https://www.ajino-hyoshiro.co.jp/free_page.php?fid=132)
(3)「株式会社フタバ」のウェブサイトにおいて,「素材調味だしシリーズ」の見出しの下,「素材調味だし 牡蠣400ml」,「素材調味だし はまぐり400ml」,「素材調味だし はまぐり(1L)」,「素材調味だし あさり400ml」及び「素材調味だし あさり(1L)」等の商品が紹介されている。
(https://shop.futaba-dashi.com/list.php?c_id=72)
(4)「株式会社スカイフード」のウェブサイトにおいて,「だしシリーズ」の見出しの下,「四季彩々 和風だし」,「四季彩々 和風だし 食塩無添加」,「四季彩々 あごだし」,「四季彩々 欧風だし」,及び「四季彩々 中華だし」等の商品が紹介されている。
(https://www.sky-food.jp/%E5%95%86%E5%93%81%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%83%AD%E3%82%B0/%E3%81%A0%E3%81%97%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA/)
(5)「味の素株式会社」のウェブサイトにおいて,「味の素KK 中華だしシリーズ」の見出しの下,「丸鶏がらスープ」,「Cook Do 香味ペースト」,「丸鶏がらスープ <塩分ひかえめ>」,「味の素KK 中華あじ」及び「味の素KK 干し貝柱スープ」が紹介されている。
(https://www.ajinomoto.co.jp/chukadashi/)

(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-06-07 
結審通知日 2022-06-10 
審決日 2022-06-27 
出願番号 2020027876 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W30)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 大森 友子
小俣 克巳
商標の称呼 ハッコーダシシリーズ、ハッコーダシ、ハッコー 

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