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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W30
管理番号 1387678 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-08 
確定日 2022-08-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第6421036号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6421036号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6421036号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和2年9月18日に登録出願、「茶,コーヒー,ココア」を含む第30類、第5類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同3年7月8日に登録査定、同月27日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第4280335号商標(以下「引用商標」という。)は、「でるでる」の文字を標準文字で表してなり、第30類「茶」を指定商品として、平成10年2月16日に登録出願し、同11年6月4日に設定登録され、現に有効に存続している。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、褐色の複数の円形を重ねてなるデザイン及び赤色系統のグラデーションによるメジャーらしきものをリボン状に描かれた絵を有する図形(以下、図形部分という)を背景に、平仮名による「でるでる」及び片仮名による「スラリ」の両語を上下二段に記してなる部分(以下、文字部分という)によって構成されたものであって、指定商品中には、第30類に属する「茶」及び「コーヒー,ココア」が含まれている。
(2)引用商標は、平仮名の「でるでる」を標準文字によって表記されたものであり、指定商品を「茶」とするものである。
そして、引用商標は、同大かつ同間隔に記載されたものであり、「デルデル」のように一連に称呼され得るものであって、その語は、辞書に載録されたものではなく、一種の造語と認識されるものであって、特定の観念を有するものではない。
(3)本件商標の図形部分は、褐色の円形模様とリボン状の絵の結合であって、このような図形から特定の称呼・観念を生じさせるものではない。
他方、文字部分は、平仮名による「でるでる」と片仮名による「スラリ」が上下二段に記されたものであり、背景として描かれている上記図形部分とは一体感なく、文字部分を目立たせる色彩としたものである。
上記のような構成から、図形部分は特別な意味合いを想起させるものではなく、専ら文字部分をもって自他商品の識別標識として使用しようとしているものとみるのが妥当である。
そして、文字部分に着目すれば、当該文字部分は、上段の「でるでる」は平仮名であるのに対し、下段の「スラリ」は片仮名である点で異なり、上下二段に書されていることと相まって、これらを一連に称呼し得るものではない。すなわち、字の種類が異なるうえ、一行に連続表記されたものではなくあえて二段に表記していることから、文字部分は明らかに二つの語を結合したものであり、両語のいずれもから個別の称呼、観念を生じさせるものと評価されるべきである。
さらに、上述の引用商標における場合と同様に、「でるでる」の部分は造語であるのに対し、「スラリ」は、辞書に載録される語であり、「スラリ」=「すらり」とは、「支障なく無事に運ぶさま。動きなどがなめらかで抵抗もないさま。すらすら。」等を意味する語である(岩波書店、広辞苑第七版)。
そうすると、「スラリ」の語を「茶」(及びコーヒー,ココア)において使用する場合には、抵抗なくなめらかな喉ごしの商品(茶等が喉で詰まることなくなめらかに飲み込むさま)を表現する語であるとの意味合いを有することとなる。
以上より、本件商標の文字部分のうち、「スラリ」は自他商品識別機能を発揮せず、結果として、「でるでる」の語のみが自他商品の識別標識としての機能を発揮するものであるから、本件商標の全体から「でるでる」を分離して類否判断し得るものと思料される。
仮に上記の主張が認められないとしても、本件商標の文字部分は、異なる二語が結合されたものであり、その二語の一方は、造語による「でるでる」であり、他方は、日本語としてなじみのある「スラリ」によるものであるから、必然的に自他商品識別力に軽重を生じさせ、当然に造語の「でるでる」が強い印象を与えるものである。
しかも、「でるでる」は語頭に配置されるものであって、第1に称呼され、「スラリ」は語尾として配置されるものであるから、商標全体の印象は、前半に配置されている「でるでる」が強くなるのは当然である。
そうすると、本件商標は、専ら「でるでる」が自他商品の識別標識としての機能を発揮させているものであると評価することが相当である。
(4)上記のとおり、本件商標からは、文字部分のうちの「でるでる」のみを分離して類否判断を行うことができることとなり、これと引用商標とを比較すれば、「でるでる」の部分において共通し、外観及び称呼において、同一又は類似する。また、観念については、同様に造語であるため特定の観念を有しないものである。
なお、図形部分は、背景として使用されていることから、外観上に僅かながら差違を生じさせるが、図形部分と一体感のない表示であるうえ、当該商標の中央に大きくかつ明瞭に記載される文字部分が本件商標の要部となるものであり、図形部分は評価に値するものではない。
したがって、本件商標は、専ら「でるでる」により自他商品識別機能を発揮させるものであるから、「スラリ」の語が追加され、また図形部分が存在するとしても、引用商標に類似するものである。
(5)以上より、本件商標は、引用商標に類似するものであり、その指定商品中の「茶,コーヒー,ココア」は、引用商標における「茶」と同一又は類似する商品であるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものである。
2 過去の裁判例等について
(1)例えば、知財高裁平成23年7月21日判決(平成23年(行ケ)第10087号)は、図形部分と二つの文字部分とが結合した商標と、当該文字部分の1つが引用商標と同じ語が使用された場合の類否に係る判断の指針を示すものである。
(2)上記の知財高裁判決の判旨に従って本件について考察すれば、本件商標は、「でるでる」及び「スラリ」の二つの文字部分が結合しており、2個以上の称呼、観念を生じるものであり、そのうちの1つである「スラリ」は前述のとおり、辞書に載録された意味を有するものであって、これを付して販売に供する商品が「抵抗なくなめらかな喉ごしの商品」等であることの意味合いを持たせ、「スラリ」という文字自体が自他商品の識別のために格別の意義を有するものでないと評価されるべきである。
そうすると、造語である「でるでる」をもって引用商標との間で類否を判断すべきものであり、両者は、同じ称呼を生じさせ、いずれも特定の観念を有しないものとなる。
(3)上記の知財高裁判決と同様の理由により、二つの文字部分が結合し、2個以上の称呼、観念を生じさせる場合において、類似と判断された審決例としては、無効2015−890044号があり、また、異議2016−900262号がある。
これらの審決例は、構成文字が造語ではないけれども、自他商品の識別標識として機能する構成部分を他から分離して類否判断している。このように、構成文字を個別に評価して、自他商品識別カを発揮させる構成文字のみを抽出して判断することは商標の類否判断において重要な観点である。
3 以上より、本件商標における自他商品を識別する機能を有する要部としては、「でるでる」の文字部分であると認定すべきであり、その結果として両者を比較すれば明らかに両者は類似するものと判断されることとなる。
また、指定商品も同一又は類似のものを含むから、当該指定商品の範囲において商標法第4条第1項第11号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲のとおり、褐色の複数の円からなる図形(以下「円形図形」という。)で図形全体の縁に黄色の線を描き、その円形図形の中に白抜きで「でるでる」及び「スラリ」の文字を二段に表し、円形図形右端に目盛りのついたピンク色のリボン状の図形(以下「リボン図形」という。)を配した構成からなるところ、構成文字は、円形図形内に同書同大でまとまりよく一体に表され、特段「でるでる」の文字部分が強い印象を与えるような態様ではなく、また、当該文字全体から生じる「デルデルスラリ」の称呼も格別冗長というべきものでもなく、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、かかる本件商標の構成にあっては、これに接する取引者、需要者が、殊更に「スラリ」の文字を省略して、「でるでる」の文字部分に着目するというよりは、むしろ、「でるでるスラリ」の構成文字全体をもって認識し、把握するとみるのが自然であり、また当該文字は、辞書等に載録がなく、何らかの意味合いを理解させるものでもないから、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。
さらに、本件商標構成中の円形図形は、背景図形以上の意味合いを有するものでなく、リボン図形は単なる装飾と認識されるものであるから、特定の称呼及び観念は生じない。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「デルデルスラリ」の称呼のみを生じるものであり、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、「でるでる」の文字を標準文字で表してなるから、その構成文字に相応して、「デルデル」の称呼が生じるものである。そして、「でるでる」の文字は、辞書等に載録されているものではなく、何らかの意味を理解させるものでもないから、特定の観念を生じない。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 外観について
本件商標と引用商標の外観を比較すると、両者の構成は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりであるところ、本件商標は、色彩を有する円形図形やリボン図形と白抜きで表された「でるでるスラリ」の文字からなるのに対し、引用商標は標準文字で表した「でるでる」の文字のみからなり、図形の有無や文字の態様、「スラリ」の文字の有無と明らかに異なるものであるから、判然と区別し得るものである。
イ 称呼について
本件商標よりは「デルデルスラリ」の称呼を生じ、引用商標よりは「デルデル」の称呼が生じるものであるから、両者は、後半部分において「スラリ」の音の有無という顕著な差異を有するから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、明瞭に聴別し得るものである。
ウ 観念について
本件商標及び引用商標は、ともに特定の観念を生じないから比較することはできない。
エ そうすると、本件商標と引用商標とは、観念について比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(5)申立人の主張
申立人は、本件商標は、「でるでる」及び「スラリ」の文字は、平仮名、片仮名の文字の種類が異なるうえ、二段に表されており、「スラリ」の文字が辞書に載録があって、「茶」に使用する場合には「抵抗なくなめらかな喉ごしの商品」であることを表現するから、自他商品の識別標識としての機能を発揮するのは、「でるでる」の文字である旨主張する。
しかしながら、「スラリ」の文字に語義があるとしても、申立人が主張するような意味合いで取引者、需要者に商品の品質として認識されていると認めるに足る客観的な事実は見あたらないし、その他に当該文字が、指定商品との関係で商品の直接的な品質等を表すとみるべき事情も見いだせないから、上記(1)で判断したとおり、本件商標は、その構成文字全体をもって認識されるものというのが相当である。
2 むすび
以上のとおり、本件商標は、申立に係る商品について、商標法第4条第1項第11号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲(本件商標:色彩については原本参照。)



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異議決定日 2022-07-27 
出願番号 2020116610 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W30)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 清川 恵子
馬場 秀敏
登録日 2021-07-27 
登録番号 6421036 
権利者 株式会社日本薬健
商標の称呼 デルデルスラリ、デルデル、スラリ 
代理人 井川 浩文 
代理人 弁護士法人柴田・中川法律特許事務所 
代理人 服部 京子 
代理人 清水 三沙 
代理人 齊藤 整 
代理人 徳永 弥生 

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