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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W11
管理番号 1387665 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-01 
確定日 2022-03-30 
異議申立件数
事件の表示 登録第6314639号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6314639号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6314639商標(以下「本件商標」という。)は、「Govee」の文字を標準文字で表してなり、令和元年12月17日に登録出願、第11類「移動式蒸気浴室,ガス浄化装置,蓄熱器,化学繊維製造用乾燥機,ベニヤ製造用乾燥機,移動式金属加熱炉,加熱用ボイラー,乗物用除霜装置,乗物用暖房装置,水用冷却設備,美容院用頭髪乾燥機,美容院用頭髪蒸し器,水道用栓,蛇口,汚水浄化槽,太陽熱利用温水器,上水用浄水設備,殺菌灯,太陽灯,探照灯,自転車用方向指示灯,自動車用ライト,照明用器具及び装置,クリスマスツリー用電気式ランプ,白熱電球,頭部装着用電灯,美容用又は衛生用の家庭用電熱用品類,家庭用超音波美顔器,家庭用ヘアドライヤー,家庭用浄水器(電気式のものを除く。),ちょうちん,懐炉,洗面所用消毒剤ディスペンサー,便器,便座,浴槽類,浴槽,洗面台(衛生設備用品の部品),浴室用装置」を指定商品として、同2年10月7日に登録査定、同年11月10日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する商標は、「Govee」の欧文字からなるもの(以下「引用商標」という。)であり、申立人が、申立人の取扱いに係る商品「LEDテープライト、デジタル温湿度計、LED電球、車用ライト、デジタルフォトフレーム、警備用センサー,アプリケーションソフトウェア」(以下「申立人商品」という。)に使用し、需要者の間に広く知られていると主張するものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に違反するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第76号証を提出した。
1 申立人について
申立人は、2017年11月に中華人民共和国深せん市において設立され、申立人商品等の販売及び提供を行っている(甲2、甲3)。
2 引用商標について
(1)引用商標は、英和辞書に載録がなく(甲4)、特定の観念を暗示させることのない、申立人によって創作された独創性のある造語である。
申立人は、引用商標をハウスマークと位置づけて、会社概要や会社エントランス等の最も目立つ位置に、大々的に使用している(甲2、甲5)。
(2)申立人は、世界各国で、引用商標が付された申立人商品を販売しており(甲6〜甲13)、引用商標についての登録出願及びソフトウェアに関する著作権登録等を、本件商標の登録出願日前に行っている(甲14〜甲36)。
(3)申立人商品は、我が国においても電気用品安全法に基づく安全基準を満たしており、アメリカの連邦通信委員会が設ける安全基準や、カナダやドイツ等における安全基準を満たした上で各国にて販売されている(甲38)。
3 引用商標の使用及びその周知性について
(1)引用商標は、2018年から中国及びアメリカにおいて同時に使用が開始され、本件商標の登録出願日以前には、中国及び世界各国に使用が拡大されている。
通販サイトであるアマゾンのLEDテープライト市場における申立人の取扱いに係るLEDテープライトのシェアは約80%であり、年間売上額は2019年12月には6,500万ドルを超えている(甲2)。
当該売上額は、監査報告書(甲39)において人民元換算の金額が記載されている。
(2)甲第40号証は、2019年及び2020年の売上高及びアマゾンにおける広告費並びにオフラインの広告費を示している。
インターネット上の通販サイトであるアマゾンのアメリカにおける注文管理情報(甲41、甲42)により、引用商標を使用した申立人の取扱いに係るLEDテープライトが堅調に販売されていることを示している。
2019年4月ないし9月における、引用商標を使用したLEDテープライトの販売情報(甲41)により、僅か6か月の期間において、18,109件もの販売があり、これは1か月あたり平均約3,000件の注文があったといえる。また、2019年4月から9月までにおける引用商標を使用したデジタル室内温湿度計の販売情報(甲42)により、同期間だけで4,090件もの注文があり、1か月あたり平均約680件の注文があったことがわかる。
日本においても、アマゾンにおける販売記録や広告キャンペーンの費用から、堅調に商品の販売や広告が行われていることが明らかである(甲43〜甲46)。
(3)申立人は、アマゾンにおいて他社が模倣品を販売することを阻止するTransparency制度を利用しており、申立人の販売量に比例したアマゾンへのその利用料は、2019年7月から12月にかけて月平均7,995ドルを支払っている(甲47〜甲50)。
そして、本件商標の登録出願日以前である2018年から2019年にかけて、既にアマゾンにおいて、引用商標を用いた申立人の取扱いに係る商品(LEDテープライト、デジタル温湿度計、車用LEDライト、LED電球等)については、多くの高い顧客評価を得ていた(甲51、甲52)。
(4)世界的に著名な経済雑誌であるForbesのウェブサイトにおいて、2018年12月付けで引用商標を使用した申立人の取扱いに係るデジタルフォトフレームの紹介がされている(甲53、甲54)。
また、RollingStoneという若者のカルチャー情報を伝えるウェブサイトにおいても、2019年11月に申立人の取扱いに係るLEDテープライトの紹介がされている(甲55)ほか、TechRadarというテクノロジー関連情報を扱うウェブサイトにおいても、2019年8月に申立人の取扱いに係るLEDテープライトが紹介されており、その他多数の媒体にて申立人商品が紹介されている(甲56〜甲62)。
(5)申立人のブランドを支持する多くの影響力のある「キーオピニオンリーダー(KOL)」が動画配信サービスのYouTube、写真・動画投稿用SNSのInstagram、短い動画用SNSのTikTok等において投稿を行っており、一回の投稿で平均して10万アクセスがある(甲2)。
(6)申立人は、2019年12月11日及び12日に上海で開催された、約一万企業及び約一万人の参加者が参加しているアマゾングローバルストアオープニングクロスボーダーサミットにも参加している(甲63、甲64)。
さらに、中国においては、引用商標を使用した申立人商品の模倣品が通販サイトにおいて多く出回っており、同事実は、引用商標の知名度の高さを示している(甲65)。
(7)以上より、引用商標は、本件商標の登録出願時には、既に多くの商品の販売により人気を博し、様々なメディアにおいても取り上げられた結果、少なくとも中国及びアメリカにおいては、対象商品の需要者・取引者の間で広く知られており、周知・著名であったことは明らかである。
4 商標法第4条第1項第19号該当性
(1)本件商標と引用商標は、同一である。
(2)申立人は、2018年から中国及びアメリカにおいて引用商標の使用を開始し、引用商標は本件商標の登録出願日より前から申立人の業務に係る商品を表示するものとして、少なくとも中国及びアメリカにおける需要者の間には既に広く認識され、その周知著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していた。
(3)本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、申立人と同じ深せん市に居住しており、インターネット上の情報及び申立人らの販売活動などを通じて、地元企業でもある申立人の引用商標の周知著名性は十分認識しうる立場にあったことは容易に推測できる。
(4)本件商標権者自身が何らかの事業を行っているかは不明であるところ、本件商標以外にも、様々な分野にて既に世の中で使われている商標を自らの名義で登録出願している(甲66〜甲70)が、いずれも使用しているのは本件商標権者とは関連性を見いだせない他社である(甲71〜甲74)。
通常、このように多岐にわたり互いに関連性の無い分野の商品を指定した登録出願を同一の出願人が行うことは珍しく、また、本件商標権者は個人であることから、本件商標権者が上記商標を全て用いて事業を行うことは考え難い。
したがって、本件商標権者は、自ら本件商標及び他の登録商標を使用する意思がないにもかかわらず、これらの商標が我が国で登録出願されていないことを奇貨として自ら先取り的に登録出願する意思を持って登録出願したと考えるのが自然である。
(5)本件商標についても、既に申立人が複数の国で使用をしており、日本及び他の複数国において登録出願をおこなっていた2019年12月に、申立人が商品を展開していた第11類の「自動車用ライト,照明用器具及び装置,クリスマスツリー用電気式ランプ,白熱電球」等を指定して登録出願を行っていることは、偶然の一致とは考え難い。
(6)引用商標と同一の商標を採択した本件商標権者は、引用商標の有する周知著名性へのフリーライドの意図を有し、引用商標が我が国において第11類の商品について登録されていないことを奇貨として、その参入を阻害するために、不正の目的をもって申立人が引用商標を使用していた商品を指定して登録出願したものであると考えざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 商標法第4条第1項第7号該当性
(1)本件商標は、引用商標と同一であって、特定の観念を有さない造語である本件商標と偶然に一致して採択したとは考えられず、本件商標権者が引用商標の存在を知っていたことは明白である。
すなわち、本件商標権者は、引用商標に依拠し、本件商標を剽窃的に採択し、登録出願した蓋然性が高く、また、本件商標に係る登録出願に際し、承諾を受けていたと認める事実もない。
したがって、本件商標は、引用商標の顧客吸引力に便乗し、不当な利益を得る目的で登録出願した商標といわざるを得ない。
(2)かかる状況において、本件商標の登録出願日において引用商標が日本ないし外国において十分に周知されるに至っているか否かにかかわらず、先願主義の原則に拘泥し、本件商標を正当化すれば、商標登録制度に対する信頼は損なわれ、また、市場流通秩序を乱し、需要者を混乱に陥らせることになりかねない。
そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くというべきであり、商標法の予定する秩序に反する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば以下のとおり判断できる。
ア 申立人は、会社紹介(甲2)及び会社のエントランスの写真(甲5)を提出し、「2017年11月に中華人民共和国深せん市において設立された法人であり、引用商標をハウスマークとして使用している」旨主張し、また、申立人は、会社紹介(甲2)の記載内容から「通販サイトであるアマゾンのLEDテープライト市場における申立人の取扱いに係るLEDテープライトのシェアは約80%であり、年間売上額は2019年12月には6,500万ドルを超えている。」旨主張するが、これらの証拠には、申立人の名称の記載がないため、これらの証拠が申立人のものであることは確認できない。
イ 申立人は、引用商標についての登録出願及びソフトウェアに関する著作権登録等を、本件商標の登録出願日前に行っている(甲14〜甲36)。
ウ 申立人は、「世界各国で、引用商標が付された申立人商品を販売しており、2018年から中国及びアメリカにおいて同時に使用が開始され、本件商標の登録出願日以前には、中国及び世界各国に使用が拡大されている」旨、「引用商標を使用した申立人の取扱いに係るLEDテープライトは、6か月間に、18,109件の販売があり、2019年4月から9月までにおける引用商標を使用したデジタル室内温湿度計は、4,090件の注文があった」旨及び「2018年から2019年にかけて、アマゾンにおいて、引用商標を用いた申立人の取扱いに係る商品(LEDテープライト、デジタル温湿度計、車用LEDライト、LED電球等)については、多くの高い顧客評価を得ていた」旨を主張し、証拠として甲第6号証ないし甲第13号証、
甲第41号証及び甲第42号証、並びに甲第51号証及び甲第52号証を提出するが、これらの証拠に掲載された商品が、申立人の取扱いに係る商品であることは確認することができない。
エ 申立人は、2019年及び2020年の売上高及びアマゾンにおける広告費並びにオフラインの広告費を示すものとして、甲第40号証を提出するが、当該証拠には、申立人の記載や引用商標の記載もなく、これらの証拠に記載された売上高や広告費等が申立人の取扱いに係る商品に関するものであることが確認することができない。
オ 申立人は、「アマゾンにおける販売記録や広告キャンペーンの費用から、申立人の商品の販売や広告が行われていることは明らかである」旨主張し、証拠として、甲第43号証ないし甲第46号証を提出するが、これらの証拠が、申立人の取扱いに係る商品に関するものであることは確認することができない。
カ 申立人の主張によると、アマゾンにおいて他社が模倣品を販売することを阻止するTransparency制度を利用しており、申立人の販売量に比例したアマゾンへのその利用料は、2019年7月から12月にかけて月平均7,995ドルを支払っている(甲47〜甲50)。
キ 申立人は、多数の媒体において、申立人商品が紹介されている旨主張し、証拠として甲第55号証ないし甲第62号証を提出しているが、これらの証拠に掲載された商品が、申立人の取扱いに係る商品であることは確認することができない。
(2)上記(1)からすると、申立人は、通販サイトの一つであるアマゾンを利用していることは推認できるものの、アマゾンに掲載された商品が申立人の取扱いに係る商品であることは確認できず、商品の売上高等の主張も申立人の取り扱う商品であることが確認できない。
また、引用商標を使用した申立人の取扱いに係る商品の販売実績を示す証拠は確認できず、申立人の取扱いに係る商品のアメリカ及び中国並びに我が国における市場シェア、広告宣伝の規模、売上等の事実を裏付ける具体的な証拠の提出はなく、それらの詳細が確認できない。
他に、引用商標を使用した商品の販売額など販売実績を示す証左は見いだせない。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、申立人は、引用商標は中国、アメリカ及び我が国において広く認識されている旨述べるが、それを認めるに足りる証拠は確認できない。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第19号及び同項第7号該当性について
本件商標は、上記第1のとおり、「Govee」の文字を標準文字で表してなるから、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様のものではなく、その指定商品について使用することが、社会の一般的道徳観念に反するものや、法律により禁止されているもの又は国際信義に反するものでもないことは明らかである。
また、本件商標及び引用商標はともに「Govee」の文字よりなり、その構成文字を同じくするものであるから、両商標は、同一又は類似する商標であるとしても、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことからすると、本件商標は、本件商標権者が引用商標の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって、その指定商品に使用するものと認めることはできない。
さらに、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2021-12-02 
出願番号 2019159239 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W11)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2020-11-10 
登録番号 6314639 
権利者 匡 想利
商標の称呼 ゴビー、ゴービー 
代理人 久保 怜子 
代理人 山尾 憲人 
代理人 田中 陽介 

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