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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z1418
管理番号 1387568 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-04-09 
確定日 2021-10-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第1493277号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成31年3月29日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成31年(行ケ)第10059号,令和2年2月26日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第1493277号商標(以下「本件商標」という。)は,「COCO」の欧文字を横書きしてなり,昭和52年10月27日に登録出願,第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同56年12月25日に設定登録,平成14年3月20日に,指定商品を第3類「つけづめ,つけまつ毛」,第6類「金属製のバックル」,第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,マニキュアセット」,第10類「耳かき」,第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト」,第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」,第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」,第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第26類「腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花(「造花の花輪」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされ,同23年12月20日に,商品及び役務の区分を第14類,第18類,第25類及び第26類のみとする商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
その後,本件商標の商標権については,商標登録の取消審判により,指定商品中,第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品」及び第26類「衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,ボタン類」並びに第14類「貴金属製コンパクト」,第18類「携帯用化粧道具入れ」,第25類「全指定商品」及び第26類「腕止め,頭飾品,造花(「造花の花輪」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」について取り消すべき旨の審決がされ,同27年9月29日及び同年10月1日にその確定審決の登録がされたものである。
その結果,本件商標の指定商品は,第14類「貴金属製のがま口及び財布」及び第18類「かばん類,袋物」を指定商品として,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成27年4月23日にされた(以下,当該登録前3年以内を「要証期間」という。)。
なお,本件商標権は,「ピーアンドビー株式会社」を権利者として設定登録されたものであるが,平成20年3月6日受付で特定承継による本件商標権の移転登録がされ,「株式会社ダンエンタープライズ」が権利者となり(以下「旧商標権者」という。なお,要証期間における本件商標権者は,旧商標権者である。),その後,同29年4月17日受付で特定承継による本件商標権の移転登録がされ,株式会社イーカム(以下「イーカム社」という。)が権利者となった。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定商品中,第14類「貴金属製のがま口及び財布」及び第18類「かばん類,袋物」についての商標登録を取り消す,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第88号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中,第14類「貴金属製のがま口及び財布」及び第18類「かばん類,袋物」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用をしていないものであるから,その登録は,商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)商品化申請管理表について
商品化申請管理表(乙1)は,旧商標権者が作成したものであって,証拠としての客観性に欠ける。これには,発行日付が一切なく,商品の仕様,承認日,納期等を管理のために作成されたものと考えるが,納期,帳票の発行日付,承認印の印字欄等一切に日付が記載されていない。特に,承認印は,承認者と承認日付を明らかにして,後に残すものであるから,日付欄をあえてブランクにしているのは奇異であるし,いずれの点からも要証期間に本件商標を使用したことを立証するものではない。そして,当該管理表によって,承認された商品見本は12点あり,カラーは少なくとも7色あるが(WHITE,BLACK,PURPLE,PINK,KAHKI,BROWN,RED),他方で,販売計画数は5色のみである。また,品番も,「COC−COB01」と「COC−BGT01」と2つあって,どの商品がどの品番であるかが不明であり,おおよそ,管理表としての体をなしていない。
(2)旧商標権者による本件商標の使用について
被請求人は,乙第27号証ないし乙第31号証によって,本件商標は通常使用権者のみならず,旧商標権者によっても「使用されたことが明らかになった」という。これは,旧商標権者が撮影した写真(乙27〜30)のサンプル品に,商品製造業者に譲渡可能な証紙(以下「本件証紙」という。乙31)を,旧商標権者の取締役が自ら取り付けたというにすぎない(乙33)。これらの写真は旧商標権者の取締役が撮影し旧商標権者の社内で加工され,又は,旧商標権者の取締役によって作成されたものであって,客観性に欠ける。
また,写真(乙27〜30)の鞄類は,商品ではなくてサンプル品であるから,当該写真をもって,本件商標の使用が立証されたとはいえない(甲1,11〜13,15)。
被請求人は,本件証紙の存在自体が本件商標の使用になり,あるいは,本件証紙そのものが,本件商標を使用した商品の取引書類であると主張するが,下げ札や,商品と直接関連付かられていないタグ,包装紙,容器などは,そこに商標が表示されていても(それらが存在するだけでは),商標の使用の立証にはならない(甲19〜22)。
(3)株式会社ジーティーオー(以下「ジーティーオー社」という。)による本件商標の使用について
被請求人は,写真(乙6(上段),12,23)の撮影日付を明らかにする趣旨で写真(乙27〜31)と,陳述書(乙32)を提出した。これらの写真は,平成26年5月23日に旧商標権者の取締役によって撮影されたものであると説明されている。また,その陳述書も,旧商標権者の取締役が作成したものである。
上記写真は旧商標権者の取締役が撮影し,そのデータの加工も旧商標権者が行い,上記陳述書も旧商標権者の取締役の作成した書面である。したがって,写真(乙27〜31)に客観性はない。また,被請求人は,同一の証拠について,答弁書ではイーカム社による使用であると主張し,これが否定されると,今度はジーティーオー社による使用に当たると主張する。いずれにしても,写真(乙6(上段),12,23)に表された鞄類は,商品ではなくて見本品(サンプル品)であることは被請求人も認めるところであるから,これらの写真に撮影されたものは,いずれも商品ではない。そうであれば,ある時点で,サンプル品を企画したとしても,その写真をもって,ジーティーオー社による本件商標の使用が立証されたとはいえない(甲1,11〜13,15)。
(4)イーカム社による本件商標の使用について
ア 「物品受領書」(乙13〜19)の「取引先名」には,「株式会社イーカム」の社名と住所・電話番号等が記載されているが,いずれの物品受領書にも取引先コードはない。いうまでもなく,取引先コードは,それぞれの納入先において,当該取引先に対する支払をするためのキーである。したがって,通例,納品伝票には,納品元の取引先コードを記載する。しかるに,小売店5社のいずれについても,イーカム社の取引先コードがない(「000000」)のは,極めて奇異である。イーカム社の当該物品納品受領書全てについて取引先コードがないのは,そもそも,これらの企業に,イーカム社の納入実績が全くないと考えるのが自然である。
イ 「物品受領書」(乙13〜19)には,以下のような疑義がある。すなわち,一般的に納品受領書は,
(ア)納品した商品のサイズ,色,商品コード,
(イ)納品した商品のそれぞれの数量,
(ウ)納入金額,
(エ)納品日等を明らかにし,かつ,
(オ)後に納品した商品の数量等に疑義が生じた場合,又は,受領の有無が不明となったときのために,納品側(イーカム社)に保管される帳票である。
しかるに,当該物品受領書には,上記(ア)も(オ)もない。特に,物品受領書にとって最も重要な受領印がなければ,そもそも「受領書」の意味がない。
この点は,商習慣に著しく反する。納品受領書は,商品納入時(又は検収時)に受領印(又はサイン)を押印して納品元に返却される。しかるに,当該物品受領書には,一切受領印がない。納品した物品の受領証明として使用されている,物品「受領書」に受領印がないというのは奇異である。
ウ 被請求人は,「物品受領書」(乙13〜19)に付記されている「COC−BGT」は,乙第1号証の左下の「COC−BGT01」のことであると答弁している。また,「COC−BGT」は,同時に「COC−BGT02」,「COC−BGT03」又は「COC−BGT04」のいずれかであるとも答弁しているが,不合理な説明である。これでは,一体,どの商品が実際に販売されたのか,判然としない。
答弁書には,「乙第13号証ないし第19号証により受領が証明される商品が『COC−BGT02』,『COC−BGT03』・・・のいずれかであったとしても,本件商標が付された商品『トートバッグ』がイーカム社から小売業者に販売されたことに変わりはない。」と記載されているが,現実の取引において,多種ある商品のなかで,いずれかの商品が納入されれば,「販売されたことに変わりはない。」などという暴論はあり得ないし,一定範囲の商品中のいずれかが納入されれば足りるというようなものでもない。
エ 店舗「グリーンペッツ(green pez)」(以下「グリーンペッツ」という。)の商品の納入について
(ア)「物品受領書」(乙37)も,受領印等はなく,商品が実際に納入されたかは不明である。
(イ)これに対応する請求書や預金通帳の写し(乙44,45)にも,商標や品名等の記載はないから,いかなる商品が授受されたか,いかなる商品の金員が振り込まれたのかが不明である。
したがって,イーカム社とグリーンペッツとの間に何らかの取引があったとしても,それが本件商標を使用した商品によるものであることが明らかではない。
(ウ)「物品受領証明書」(乙38)は,本件審判請求後に作成された書証であり,これも品番が表示されているにすぎない。また,「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−BGT03」,「COC−BGT04」を包括表示する「COC−BGT」などと,被請求人の主張に沿った表現が使われており,被請求人が起案した書面に何者かが日付を入れ,記名押印したものにすぎない。そもそも,グリーンペッツの「福岡市東区香椎に所在する店舗」は存在しないように思われる。「福岡市東区香椎に所在する」のは店舗ではなく民家である(甲25)。また,一般検索エンジン(Google)で調査する限り,福岡市東区には,「GREENPEZ」や「グリーンペッツ」の文字列からなる店舗は発見できない(甲26,27)。さらに,グリーンペッツ社の登記簿謄本の取得を法務局にて試みたが,該当するデータは存在しなかった(甲35)。
(エ)被請求人は,当初,このグリーンペッツは,「福岡市東区香椎3丁目48番23号に所在する店舗」であると説明していた。これに対して請求人が,この住所にあるのは民家であること,福岡市東区には「GREENPEZ」や「グリーンペッツ」の文字列からなる店舗は発見できなかったこと,登記簿謄本の取得もできなかったことを主張した。
すると被請求人は,前言を翻して,「零細な小売業者が実店舗を構えずにインターネット上の販売サービスやオークションサイトで商品を販売していることは今日珍しいことでも(ない)」と反論した。これに対して,更に請求人が,グリーンペッツについては,インターネット上の販売サービスやオークションサイト等の情報が一切検出されなかったと主張したところ,被請求人は,更に主張を翻して「親類・友人・知人等の間で使用する」等の「使い道が考えられる」が,被請求人は,この点には関知しないと主張している。
このように,被請求人の主張は,二転三転しており,信憑性に乏しい。
(オ)被請求人は,グリーンペッツの実体について,主張を更に四転させて,今度は,同社は問屋であるという。そして,この点は,旧商標権者が推測に基づいて誤った説明を行っていたことが原因であると述べた上で,証明書の内容については,記名者の意思を表示する有効なものとして取り扱われるべきで,これに疑義を呈する合議体の認定は失当であるとまで論難する。
(カ)「注文書」(乙81)は,グリーンペッツからの注文書として提出された証拠であるが,誰でも任意に作成できる書面である。押印もなく,社名は誤っている。また,販売金額は,原単価(利益ゼロ)である。グリーンペッツは,問屋であるとのことであるが,問屋に商品を卸すに際して,イーカム社が,原価格で納品するというのは,常識的には考えられない。
オ 商品カタログ及び会社概要について
(ア)イーカム社は,そのホームページで,同社の事業について「イーカムは企画から製造,卸までワンストップで提供しています。すべて自社で行っているため,高品質な商品を素早くお客様の元へお届けすることを可能にしています。」と述べている(甲28)。かかる社是をもったイーカム社が,旧商標権者及びジーティーオー社の企画・製造行為を介在させる理由がない。
(イ)イーカム社が,本件商標を使用した記事等も,乙第39号証を除けば,一切ない。すなわち,2015年8月10日時点のイーカム社のホームページ(甲6,7)や,2013年7月13日ないし2015年7月1日までの「お知らせ」欄等には,本件商標に関する情報は一切ない(甲8〜10)。しかしながら,突然,「株式会社イーカム会社概要」(乙40)が提出されたのは奇異である。当該概要の「展開ブランド」の記載がいつ時点で変更されたのか不明である。
(ウ)なお,2016年3月10日時点のイーカム社のホームページにおいてもイーカム社のブランド紹介欄には,本件商標の表示はない(甲29)。
(エ)イーカム社のホームページや「お知らせ」欄には,「株式会社イーカム会社概要」(乙40)の「展開ブランド」に掲示された商標等の中で,唯一,本件商標のみが表示されていない。かかる点からも,イーカム社が本件商標を使用した商品を販売した実績が無いことが強く推認される。
(オ)被請求人は,商品カタログ(乙39)及び会社概要(乙40)が,イーカム社ヘの注文のために配布されたと述べているが,実際に配布されたことの立証はなされていない。また,請求人は,この資料は,後に被請求人側で,作成された可能性の高い証拠であると考える。
カ 「アソート商品」及び「アソート注文」について
被請求人は,ウェブサイト上に「アソート注文」に関する説明文が1件あることで,「一般的に,大衆向けのかばん類などの取引において(は)・・・各色について数点ずつ納入すれば足り(る)」と主張する。しかしながら,色やサイズの全てについて全く管理せず,数点ずつ納入すれば足りるという「アソート注文」が「一般的」であるとはいえない。
被請求人は,48種(又は96種)の商品について,1型番しか存在しない点について,商品「トートバッグ」(以下「本件使用商品」という。)は「アソート商品」であり,「『アソート商品』については,色彩毎の注文個数を特定することができないことは明らかである」と主張する。趣味性の高い本件使用商品について,色彩等が特定できないことが何故「明らか」であるのか理由は不明である。証拠から明らかなように,全ての商品は,色彩別に仕訳され,若干のバラツキはあるものの切りの良い数量で輸入されている(甲64,68,69,71)。
さらに,仮に注文書(乙81〜83)が真正なものであるとすれば,受注に際しても,色彩が指定されている。したがって,仮に,それらの商品が現実に販売されたとすれば,発注書で指定された色彩の商品を納入しているはずである。数量が合致すれば,指定された色彩は無視するといった商売が成立するとは思われない。「COC−COB01」という商品と「COC−BGT−01」等の商品は,別商品であるとの疑いを拭えない。通例,型番が異なれば,商品も異なる。
キ イーカム社による別の取引先への販売について
「物品受領書」(乙73),「買掛金支払予定表」(乙74)及びその入金記録(乙75)は,株式会社多津屋(以下「多津屋」という。)に対するものであるところ,当該物品受領書に記載がある商品「ビッグトート」が,従来,被請求人が主張してきた「COC−BGT(ビッグトート(大))」と同一の商品であるという証拠はない。被請求人は,一貫して,ジーティーオー社に係る商品化申請管理表(乙1)に表された商品が,本件商標の本件使用商品であると主張しているところ,当該使用商品の上代(小売価格)は,1,900円に設定されている(乙3,84)。また,本件使用商品の原単価は,950円である(乙13〜19,37)。
しかるに,「物品受領書」(乙73)では,「ビッグトート(COC−BGT)」の上代は2,300円,原単価は,1,150円(平成14年10月)となっている。また,「物品受領書」(乙76)の「ビッグトート(COC−BGT)」の原単価も,1,150円(平成14年9月)である。被請求人の主張によれば,本件商標の本件使用商品は輸入品であり,そのほとんどが,ほぼ同一時期に輸入されたようである。そうすると,この取引分のみの原単価が変動するのは不自然である。また,上代1,900円と指定されている商品が,「物品受領書」(乙73)のみ2,300円に設定されているのも不自然である。このように,金額面がまちまちである点からも,「ビッグトート」なる商品が「COC−BGT」であり,さらに,これが同時に「COC−BGT02」,「COC一BGT03」又は「COC−BGT04」のいずれかであるという被請求人の主張に疑義が生じる。
なお,「物品受領書」(乙76)及び「請求書」(乙77)は,いずれも,イーカム社が任意に作成でききる帳票であるから,これらの書類に係る商
品が販売されたことの直接的な立証になっていない。
ク 物品受領証明書(乙38,80,82)について
物品受領証明書(乙38,80,82)は,3年以上も前の事実についての陳述であるうえ,あらかじめ活字で記載されて用意された用紙に日付と住所及び氏名並びに押印するだけのものであって,その信憑性が高いものとは到底いえるものではない(甲68〜76)。
(5)韓国企業ミラクル・チーム・コーポレーション(以下「ミラクル社」という。)からイーカム社への商品の引渡しについて
被請求人は,乙第33号証及び乙第41号証をもって,イーカム社が要証期間内に,「COC−BGT01」及び「COC−BGT02」の2商品を輸入したことから,「本件商標を使用していたといえる」と主張する。しかしながら,この「COC−BGT01」及び「COC−BGT02」がどのような商品であるかは明確でない。また,ジーティーオー社が支給する本件証紙も,輸入時点では,商品に付されていないと思われるから,下げ札が使用されているともいえない。加えて,送り状(乙33〜41。以下,併せて「本件インボイス」という。)は,「COMMERCIAL INVOICE」(商業送り状)であることが明らかであるから,本件インボイスのみでは,現実に「商品の輸入を行ったことも明らかである」ともいえない。また,仮に,商品の輸入を行ったとしても,現実に本件商標の使用をしたことの立証にはならない。
「COMMERCIAL INVOICE」(商業送り状)は,売買成立前(通関時にも添付される)に,輸出者側から発行される請求書・明細書として使用される書類であるから(甲31),本件インボイスのみでは,本件商標を使用した商品が実際に輸入されたことの立証にならない。したがって,一連の不使用取消審判事件においては,インボイスを単独で提出しても,商品が輸入されたことの証明(使用証明)とは認められていない。
(6)結言
以上より,被請求人の提出する証拠は,使用権者が変遷し,本件使用商品の特定ができず,実際に本件使用商品が販売された事実も立証されていないから,本件商標の登録は取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第150号証(枝番号を含む。なお,乙第148号証は提出されていない。)を提出した。
1 答弁の理由
本件商標(本件商標と社会通念上同一とみなされる商標を含む。以下同じ。)は,要証期間に,旧商標権者並びに通常使用権者であるジーティーオー社及びイーカム社によって,第18類「かばん類,袋物」に使用されていた。
(1)旧商標権者とジーティーオー社の取引関係について
旧商標権者は,少なくとも平成26年1月から現在に至るまで,東京都墨田区横川に所在するジーティーオー社に対して,本件商標の使用を許諾し,本件商標の使用が許諾されたことを証明する,商品製造業者に譲渡可能な本件証紙を販売している(乙1〜5)。
旧商標権者からジーティーオー社への具体的な本件証紙の販売手順については,まず,ジーティーオー社から旧商標権者に対して商品のデザインや仕様等を示して本件商標を付する予定の商品についての商品化申請が行われ(乙1),旧商標権者がこれに同意すれば承認番号が発行される。
また,本件証紙の仕様についても,商品化申請管理表(乙2)に示されるように,ジーティーオー社から旧商標権者に対して承認を求める申請が行われ,旧商標権者は申請に係る仕様を承認している。旧商標権者は商品化申請を承認した後には,本件証紙の販売の調整のために当該商品化申請の内容を保管して管理している。
次に,ジーティーオー社から旧商標権者に対して,上述の承認番号,小売価格,証紙枚数等を記載した証紙申請書(乙3)が提出されることにより,本件証紙の発行が依頼される。旧商標権者は,ジーティーオー社による本件証紙の発行依頼に応じて,添付する納品書(乙4)に記載された内容にて本件証紙を同社に納品する。
最終的には,旧商標権者は一定の期間に発行された本件証紙の枚数及び単価に従って,ジーティーオー社に対して本件商標の使用料を請求する(乙5)。
(2)旧商標権者による本件商標の使用について
ア 旧商標権者の取締役によるサンプル品に本件証紙を付した行為について
本件証紙は,旧商標権者からジーティーオー社に販売されており,販売前には旧商標権者によって所有されていた(乙4)。
また,写真画像のファイル更新日時及び撮影日時の表示(乙31)から明らかであるように,旧商標権者は平成26年5月23日の時点において本件商標が表示された本件証紙を所有していた。
写真(乙6(上段),12,23)に示された商品に本件証紙を付したのは,写真撮影日時に本件証紙を所有していた旧商標権者であり,旧商標権者の取締役は,自らが証紙を付して写真を撮影したことを陳述している(乙32)。
旧商標権者によって商標を付された商品がジーティーオー社から旧商標権者に引き渡されたサンプル品であったことは,当該商品が商標法第2条第3項の「商品」に該当することを否定する理由にはならない。当該商品はサンプル品ではあるが,写真撮影等が済んだ後に小売店の店頭で販売することも可能であったため,依然,独立して取引の対象となり得たことは明らかであるからである。なお,旧商標権者の取締役によれば,実際には写真撮影後のサンプル品は取引先に販促品として配布された。
したがって,旧商標権者の取締役が写真撮影のためにサンプル品に本件商標が表示された本件証紙を付した行為は,旧商標権者による本件商標の使用に該当する。
イ 旧商標権者による証紙の販売について
旧商標権者によるジーティーオー社への本件証紙の販売行為は,それ自体が「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」であるから,商標法第2条第3項第8号に規定される商標の使用に該当する。本件商標及び登録番号等を明示した本件証紙(乙7)は,商標法第2条第3項第8号に規定される取引書類の一種であると解される。
また,旧商標権者による本件証紙の販売を裏付ける証拠として,請求書(乙5)に係る金額108万円について,平成27年10月27日付けにてジーティーオー社から旧商標権者への入金があったことを示す売掛帳及び銀行預金通帳の写しから明らかである(乙42,43)。
(3)ジーティーオー社による通常使用権者としての本件商標の使用について
乙第6号証上段の写真(乙12,23)に示された商品は,いずれもイーカム社の指揮の下に製造され,その後,ジーティーオー社を通じて旧商標権者に引き渡されたサンプル品である。
商標法第2条第3項第2号によれば,商品に標章を付したものの引渡しは標章の使用に該当するため,ジーティーオー社による上記行為は本件商標の使用に該当する。
ジーティーオー社取締役の陳述書において,本件商標を付した商品を引き渡す行為は旧商標権者から当然に許諾されているものと考えていた旨を述べている(乙35)ため,ジーティーオー社が本件商標の通常使用権者であったと考えることは自然である。
また,陳述書(乙35)において,ジーティーオー社取締役は,ジーティーオー社と旧商標権者との間において商品化申請管理表(乙1,2,10,11,20)の書類の授受が行われたこと,及び写真(乙6(上段),12,23)に示される商品がジーティーオー社から旧商標権者に引き渡されたことを述べている。
(4)イーカム社による通常使用権者としての本件商標の使用について
ア 小売業者への商品の販売について
イーカム社は,スーパーマーケット,アパレル販売店等の小売業者(株式会社オークワ(以下「オークワ社」という。乙13),株式会社パレモ(以下「パレモ社」という。乙14,15),株式会社平和堂(以下「平和堂社」という。乙16,17)及び株式会社キャンパス(以下「キャンパス社」という。乙18,19)に対して,本件商標を付した商品を直接卸売している。
「物品受領書」(乙13〜19)の品名欄に記載された(COC−BGT)の文字は,商品化申請管理表(乙1)の左下部に記載の「COCOトートバッグ(大)」の品番「COC−BGT01」に対応している。また,前記各証の品名欄には「ビッグトート」の文字もあることから,当該物品受領書の品名欄に記載の商品が「COCOトートバッグ(大)」を指し示すことが推認される。
旧商標権者がイーカム社に対して本件商標の使用を許諾する「COC−BGT」の文字を含む品番の商品には,商品化申請管理表(乙20〜22)に示される,「COC−BGT02」,「COC−BGT03」及び「COC−BGT04」の各商品も存在するが,いずれも本件商標をプリントした商品「トートバッグ」である。
これらは,品番「COC−BGT01」のトートバッグと同様に,商品の写真(乙23)に示されるような本件証紙を付した態様にて販売されるため,「物品受領書」(乙13〜19)により受領が証明される商品が「COC−BGT02」,「COC−BGT03」及び「COC−BGT04」のいずれかであったとしても,本件商標が付された商品「トートバッグ」がイーカム社から小売業者に販売されていたことに変わりはない。
現在,多くのスーパーやデパートなどのチェーンストアにおいては,物品受領書の発行における担当者の作業負担を軽減するために,納入業者によりあらかじめ用意された複写式の物品受領書のうちの1枚を納入業者に返すことにより,物品受領書を発行したことにしている。その際,必ずしも担当者名の記載又は受領印の捺印は行われない。「物品受領書」(乙13〜19)の表示の上に「チェーンストア統一伝票」の表示があることからも推認できるように,かかる取引慣行はイーカム社と本件商標を付した商品の納入先の間の取引に限られたものではない。
したがって,担当者名及び受領印の記載がないことのみをもって,「物品受領書」(乙13〜19)の証拠力を否定することは妥当ではない。少なくとも,イーカム社が小売店に販売する目的で実際の本件商標を付した多数の商品を保有していたことは,「ファクシミリ書簡」(乙9)の中央部左に「イーカム分」の文字が見られること,当該書簡に記載された品番「COC−MBBKD01」,「COC−MBBKD02」(審決注:「COC−MBBKD02」の右から3文字目の「D」は「W」の誤記と認める。)が商品化申請管理表(乙10〜11)に記載された本件商標を付する商品に対応していること,並びに「納品書(控)」(乙4)に示されるようにジーティーオー社が本件証紙を大量に購入していたことなどからも明らかである。
イ グリーンペッツへの商品の納入について
(ア)「物品受領書」(乙37)は,福岡市東区香椎に所在するグリーンペッツにより,要証期間の2015年(平成27年)2月23日に発行されたものである。
当該物品受領書が本件商標を付された商品である品番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−BGT03」及び「COC−BGT04」に係る商品160点をグリーンペッツが受領したことを示すものであることは,グリーペッツ担当者山崎(「崎」の旁(つくり)の上部は,「立」(「崎」の異字体)である。以下同じ。)氏による「物品受領証明書」(乙38),請求書(乙44)及びイーカム社銀行預金通帳の写し(乙45)により証明される。
請求書(乙44)には品番の記載はないが,記載された伝票番号(008250)は「物品受領書」(乙37)のものと一致しているため,当該請求書が品番「COC−BGT」に係るものであることには疑いがなく,品番「COC−BGT」が「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−BGT03」及び「COC−BGT04」の各品番を包括表示していることは「物品受領証明書」(乙38)により証明されている。
(イ)請求人は,グリーンペッツの所在地に存在するのは民家であって,同店は法人登記をしていない点を指摘するが,零細な小売業者が実店舗を構えずにインターネット上の販売サイトやオークションサイトで商品を販売していることは今日珍しいことでもなく,また,小規模な自営業者は法人登記を行っていないのが普通である。
(ウ)グリーンペッツ担当者がイーカム社から引き渡された上記商品をどのように使用又は処分するかは,基本的に旧商標権者及びイーカム社の関知するところではなく,担当者の自由である。請求人は,インターネット上においてグリーンペッツの名称を使用して当該商品が販売された形跡がないことのみをもって,グリーンペッツの実体が存在しないかのような説明を行っているが,担当者が実際に商品を購入しており,少なくともイーカム社の取引相手としての実体を有していたことは入金記録(乙45)からも明らかである。
(エ)「green pez」(グリーンペッツ)こと山崎氏は,問屋である。
旧商標権者が推測に基づいて誤った説明を行っていた理由は,イーカム社が山崎氏の業務内容について旧商標権者に情報を与えなかったからであり,旧商標権者は山崎氏の直接の取引先ではないため山崎氏の業務内容を知らなかったことは特段不自然ではない。
なお,イーカム社においても,「green pez」こと山崎がどのような取引先に商品を卸しているのかは関知していないが,これも特段不自然なことではない。
ところで,「物品受領証明書」(乙38)は,イーカム社から山崎氏に依頼して取得されたものであるが,入金記録(乙45)等に示されるとおり,山崎氏はイーカム社から商品を購入して代金を支払う立場にあるので,証明書の内容に関してイーカム社から山崎氏に対して圧力を掛けることは不可能である。
ウ イーカム社の商品カタログ及び会社概要について
乙第39号証は,小売店によるイーカム社への注文のためにイーカム社により提供されていた商品カタログである。同カタログには,品番「COC−BGT01」を始めとする本件商標が付されていた商品のほか,「MAJOR LEAGUE BASEBALL」(米国プロ野球メジャーリーグ),「BATMAN」(映画「バットマン」),「S」(映画「スーパーマン」のロゴマーク)及び「PLAYBOY」(雑誌「プレイボーイ」)といった著名商標に係る商品が掲載されている。
イーカム社が本件審判の請求の登録前から本件商標や上記各著名商標を付した商品を相当の規模にて販売していたことは,イーカム社作成の会社概要(乙40)記載の各商標,西暦年(2012〜2015),出展実績等より明らかである。
エ 多津屋への商品の販売について
イーカム社は,平成26年10月28日に,本件商標が付された品番「COC−BGT」に係る商品(注:品番「COC−BGT01」〜「COC−BGT04」のいずれかに係る商品)を,多津屋に納入している(乙73〜75)。
オ マスヤ商事株式会社(以下「マスヤ商事」という。)への商品の販売について
イーカム社は,平成26年9月12日に,本件商標が付された品番「COC−BGT」に係る商品(注:品番「COC−BGT01」〜「COC−BGT04」のいずれかに係る商品)を,マスヤ商事に納入している(乙76〜78)。
(5)物品受領書及び商品化申請管理表における品番の関係について
物品受領書に品番「COC−BGT」に続く「01」〜「04」の型番及び色が記載されていないのは,当業者間において型番及び色を特定する必要が必ずしもないからである。一般に,大衆向けのかばん類などの取引において詳細な型番及び色が特定されていない場合には,納入者(本件の場合にはイーカム社)が各型番に対応する商品を各色について数点ずつ適宜選択して納入すれば足り,これによって小売店において商品購入者の多様な商品形態及び色の嗜好に対応することが可能となる。
本件における型番「COC−BGT」に対応する商品のように複数の色や形態をそろえた商品は,服飾業界等においては「アソート商品」と呼ばれている。また,色や詳細な型番を特定しない注文は「アソート注文」と呼ばれている(乙46)。
上記事情より,本件における型番「COC−BGT」に対応する商品について,各当事者が詳細な型番及び色を特定せずに商品の注文及び納入を行うことは十分可能であったということができ,詳細な型番及び色が特定されていないから取引が実在しなかったと認定することは明らかに不当である。
(6)ミラクル社からイーカム社への商品の引渡しについて
韓国企業ミラクル社から発送された商品について,仮にイーカム社による受領が証明されていないとしても,物品受領書(乙13〜19,37)や商品化申請管理表(乙1,20〜22)等によって,イーカム社が要証期間に本件商標の付された商品を所持していたことは明らかである。
商品化申請管理表に示されるような本件商標の付された商品を所持するためにはイーカム社自身によりそのような商品を製造するか,いずれかの製造者からそのような商品を受領することが必要であると考えられるところ,ミラクル社からの輸入送り状(乙33,41)が存在していることから,イーカム社が所持していた本件商標の付された商品の少なくとも一部はミラクル社から送付されたものであると考えるのが自然である。
そうであるならば,上記輸入送り状によりミラクル社が発送していることが証明されている商品は,特に反証がない限りイーカム社が受領したものと考えるのが自然である。請求人は,上記輸入送り状による取引が中断したことを特に証明していないので,イーカム社による本件商標が付された商品の受領(輸入)を否定することはできない。
また,本件商標を付した品番「COC−BGT01」及び「COC−BGT02」に対応する商品について,日本国内に所在する企業によって販売の申出が行われていたことは明らかであるから,ミラクル社によって発送されていた,本件商標を付した商品の多くはイーカム社によって日本に輸入されていたと推認されるべきである。
複合運送船荷証券(乙63)は,大韓民国ソウル瑞草区に所在する運送会社デーウォン・ロジピア株式会社のものである。
当該複合運送船荷証券は,荷送人,着荷通知先及び船舶/航海番号等が,輸入送り状(乙41)と全て一致しており,当該複合運送船荷証券の信用状番号も当該輸入送り状と一致している。
梱包明細書(乙64)は,輸入送り状(乙41)に係る輸入取引の梱包内容の詳細を示すものである。当該梱包明細書の記載は,当該輸入送り状の記載と一致しているから,これらは同一の輸入取引に係るものであることは明らかである。
また,「LC付き輸入船積書類」(乙68)に記載の銀行番号の下8桁は「利息手数料計算書」(乙66)及び「輸入手形及び同計算書」(乙67)に記載の番号と一致しており,金額及び取引銀行・支店についても一致している。
(7)結語
本件商標は,要証期間に,旧商標権者並びに通常使用権者であるジーティーオー社及びイーカム社によって,少なくとも第18類「かばん類,袋物」に使用されていた。したがって,本件商標の登録を取り消す根拠は見いだせず,本件審判の請求は棄却されるべきである。
2 回答書(令和2年12月23日付け)の要旨
(1)本件商標を付した商品の輸入,販売等
ア 本件商標の許可申請の流れ
(ア)本件商標は,要証期間中は被請求人が権利者ではなく,旧商標権者が権利者であった。
そして,被請求人が旧商標権者から本件商標の使用許諾を得る際には,同社の商標権の使用許諾の窓口であるジーティーオー社に使用許諾の申請を行い,ジーティーオー社から使用許諾を証明する「証紙」を購入するという手続きを取っていた。
「証紙」の実物は,乙第101号証の下げ札の裏面の右下隅に貼られている「COCO(R)」(審決注:○の中に「R」の文字,以下同じ。)と記載された,1センチくらいの小さなシールである。
(イ)具体的な申請,許諾の手続きとしては,以下のとおりである。
まず,被請求人が「商品化申請管理表」(乙lなど)の書式に,許諾を求めたい商品の図柄などを記入した上で,これをジーティーオー社に提出する。
ジーティーオー社は,受け取った「商品化申請管理表」を旧商標権者に送付し,同社は,「商品化申請管理表」に承認番号を記載し,これをジーティーオー社経由で被請求人に連絡する。
そして,被請求人は,「証紙申請書」に受領した承認番号や商品の小売価格,「証紙」を必要とする数量を記載し,これをジーティーオー社経由で旧商標権者に送り,「証紙」を実際に納付してもらう。
(ウ)a 実際に本件商標の独占使用等が被請求人に許諾された経緯は以下のとおりである。
まず,平成25年9月3日から同月4日にかけて,被請求人が,ジーティーオー社に対して,使用商標(審決注:別掲2の各トートバッグに表示された「COCO」の文字部分と思われる。以下同じ。)を付したかばんのデザインをメールで送り,商品化への同意を求めている(乙89の1,乙90の1)。
対象となる商品は,「COC−COB0l」(乙89の2),「COC−CV0l」(乙89の3),「COC−COB02」(乙90の2),「COC−CV02」(乙90の3)で,同メールでは,それぞれ使用商標を使用した4商品(以下「本件4商品」という。)のデザイン画像を実際に並べてある。
b 旧商標権者は,ジーティーオー社経由で上記商品の商品化に同意し,被請求人との間で,平成25年9月30日,期間を平成25年10月1日ないし同28年9月30日,使用許諾地域を日本国内とした上で,本件商標権を独占的に被請求人が使用し,本件商標を付した商品を製造,販売できることを許諾する旨の商標使用権許諾契約(以下「本件使用許諾契約」という。)を締結している(乙24)。
c 本件使用許諾契約で独占的に本件商標を使用する権利を得た被請求人は,その後ジーティーオー社から入手した「商品化申請管理表」に必要な情報を記入した上で,これをジーティーオー社に提出し,平成26年1月10日付けメール(乙102)において,ジーティーオー社の担当者から,承認番号を受領している。
同メールには,
品番 承認No.
COC−COB01 ・・・ 44515
COC−CV01 ・・・ 44516
COC−COB02 ・・・ 42831
COC−CV02 ・・・ 42832
等と記載されているところ,これらの承認番号は,商品化申請管理表を提出して初めて付くものであるので,乙第1号証を始めとする商品化申請管理表は,少なくとも上記メールを受領した平成26年1月10日までに作成されたものであることが明らかであり,当該メールと同一の承認番号が記載されている「商品化申請管理表」(乙1:44515,乙20:42831)において,「COC−COB0l」の商品のことを「COC−BGT01 本番こちらの品番となります。」(乙1)と記載してあり,同じく「COC−COB02」の商品のことを「COC−BGT02 本番こちらの品番になります。」と記載してあり(乙20),これらが同一の商品であることが分かるから,この承認番号と照らし合わせることで,「COC−COB01」の商品が「COC−BGT01」と同一の商品であること,「COC−COB02」の商品が「COC−BGT02」と同一の商品であることも証明できる。
d 上記のとおり,承認番号を知った被請求人は,平成26年1月16日にジーティーオー社経由で旧商標権者に対して証紙申請を行い,同月20日,合計22,600枚の「証紙」を受領している(乙3,4)。
e その後,ミラクル社から本件4商品を輸入した被請求人は,商品に付けられていた下げ札に,旧商標権者から購入した証紙を貼付した(乙101)。
イ ミラクル社への商品発注
(ア)商品サンプルの発注
まず,被請求人は,平成25年10月29日に韓国にあるミラクル社に対して,本件商標を付した4種類のバッグ(「COC−BGT01,02」,「COC−CV01,02」(合わせて「本件4商品」))のサンプル作成を依頼している(乙91の1)。
サンプルは大中2サイズ,「WHITE(生成り)とBLACK」の2種類で,それぞれ詳細な指示書を添付している(乙91)。
被請求人は,届いたサンプルを基に,ミラクル社に対して,本件4商品を発注している。
(イ)ミラクル社への本件4商品の発注
a 被請求人は,平成25年12月3日から4日にかけて,ミラクル社に対し,「COC−BGT01」と「COC−BGT02」のWHITEとBLACKをそれぞれ1,000枚,PURPLE,PINK,REDをそれぞれ500枚ずつの合計3,500枚,「COC−CV01」と「COC−CV02」のWHITE,BLACK,PURPLE,PINK,REDをそれぞれ500枚ずつの合計2,500枚,発注する旨のメールを送り,本件4商品を発注した(乙92,93)。
b また,発注後,実際に商品が作成されるまでの間に,被請求人はミラクル社との間で,本件4商品について必要な情報をメールでやり取りしている(乙116の1,116の3,116の4,117の2,120〜122)。
被請求人は,ミラクル社との間で,本件4商品について,それが本件商標を付したものであることを,画像をもって双方が特定した上で,具体的なやり取りを複数回繰り返しており,これは,被請求人が,実際にミラクル社に対して,本件4商品を発注している事実を示すものである。
ウ ミラクル社による本件4商品の中国の工場における製造
(ア)ミラクル社は,発注を受けた本件4商品について,中国にある工場に製造を指示し,生産を依頼している(乙126)。
(イ)実際にミラクル社が中国の工場に製造を指示する際には,乙第94号証ないし乙第97号証のように,製造指示書によって,中国の工場に指示を出し,当該指示書に沿って商品が製造され,最上部に記載されているコンテナ納入期限に合わせて,商品が出荷されている。
そして,中国の工場で生産され,完成した商品は,下げ札(乙98〜100など)を取り付けた上で,ミラクル社に納品される。
エ 本件4商品等の輸入
(ア)コマーシャルインボイスとパッキングリストの詳細
a ミラクル社は,本件4商品を含む商品を輸出するに当たり,乙第130号証の2のコマーシャルインボイスを作成した(乙130の4は訳文)。当該コマーシャルインボイスは,「荷送人/輸出者」をミラクル社,「買い手名」を被請求人,「積荷港」を中国の「上海」,「最終仕向港」を日本の「博多」,「出港予定日」を「2014年4月19日」,「インボイスNo.&作成日」を「MC140417 2014年4月17日」,「LCNo.&日付」を「L/C:211−612−14457」,「品名の詳細」を「鞄 COC−BGT01 424枚 USD 2,035.20」「鞄 COC−BGT02 390枚 USD 1,872.00」「鞄COC−CV01 131枚 USD 524.00」「鞄 COC−CV02 195枚 USD 780.00」とする記載がなされている。
b 輸出品の梱包明細である「パッキングリスト」には,商品の詳細が記載されており,それぞれ「COC−BGT01,02」「COC−CV01,02」のカラー・ホワイトの商品が上記数量梱包されていることが記載されている(乙130の2,130の4は訳文)。
c 以上のとおり,ミラクル社は,「COC−BGT01,02」「COC−CV01,02」の白色の商品を,平成26年4月19日に上海を出港し,博多港に到着する便で輸出したのである。
(イ)博多港での輸入及び引き渡し
a 被請求人は,平成26年4月28日に,輸入者を被請求人,輸入取引者をミラクル社,積出地を上海,船卸港を博多港,仕入書番号を「MC140417」とする貨物の輸入について,博多税関支署長から輸入許可を受けた(乙130の3)。
これが,上記コマーシャルインボイスでミラクル社が輸出した本件4商品を含む商品である(仕入書番号とコマーシャルインボイスのナンバーが一致する)。
b 同日,被請求人は,乙仲業者(海運貨物取扱業者)であるSGHグローバルジャパン株式会社(以下「SGH社」という。)に対し,輸入関税,消費税,船社立替金等の費用を支払い,上記本件4商品を含む商品の引き渡しを受けた(乙130の1)。
オ 被請求人によるユニーヘの販売
(ア)被請求人は,平成26年10月14日,ユニーからメールで,「COC−CV01」,「COC−CV02」のバッグの発注を受け(乙107),ユニーからは,同年10月19日までに納品するように依頼され,それに対して,被請求人は,同月15日にメールで,「値札,伝票が届きましたら,催促にて出荷させて頂きます」と回答し(乙108),出荷に取り掛かった。
(イ)乙第108号証のメールに記載されている「伝票」の一部が,乙第110号証及び乙第111号証の「物品受領書」や「納品書(控)」である。
これらの伝票は,元々,「仕入伝票1」「仕入伝票2」「仕入伝票3」「物品受領書」「納品書(控)」の5枚組だったが,仕入伝票1ないし3は既にユニーに送付しているため,被請求人の元には「物品受領書」と「納品書(控)」が残されている。
上記「物品受領書」と「納品書(控)」には,同一の内容が印字されている。
(ウ)被請求人は,上記「物品受領書」や「納品書(控)」のとおり,ユニーに「COC−CV01」「COC−CV02」の商品を納品した後,平成26年10月20日にユニーに対して,その他の商品に代金も含めた請求書を送付している(乙112)。金額に訂正があったため,ユニーに対して実際に請求したのは下部に手書きで書かれている金額であり,これは,ユニーが支払い時に送付してきた支払明細書(乙113)の最下部の「御請求額」欄に,同金額が記載されていることからも,明らかである。
(エ)請求書には,「請求明細書」が添付されており,そこには検収日,店コード,伝票No.(左詰)や売上額を記載してある。
(オ)その後,ユニーは,被請求人からの請求を元に,乙第113号証の「御支払明細書」のとおり,伝票代やPOS値札代などの相殺分の計算,仕入伝票未達分などのロス分,手数料などを調整した金額を被請求人に支払っている(乙114)。
カ 本件商標の使用行為該当性について
(ア)使用商標は,本件商標と書体は多少違うものの,形状,使用言語をほぼ同一とするものであり,社会通念上,同一の商標であるといえる。
(イ)上記のとおり,ミラクル社から使用商標を付した本件4商品を輸入する行為及びユニーヘ使用商標を付した「COC−CV01,02」の商品を販売した行為は,商標法第2条第3項第2号の「商品に標章を付したもの」の「輸入」及び「譲渡」に該当する。
(ウ)また,乙第1号証を始めとした使用商標を付した商品の商品化申請管理表への記載,ミラクル社を通じての使用商標を付した本件4商品の中国の工場における製造行為は,商標法第2条第3項第1号の「商品に標章を付する行為」に該当する。
そして,本件4商品の下げ札に本件商標が付された証紙を貼付した行為は,商標法第2条第3項第1号の「商品の包装に標章を付する行為」に該当する。
(2)本件商標を付した商品のカタログの作成及び頒布行為
ア 日本PMS及び株式会社埼京三喜(以下「埼京三喜」という。)に対するカタログの送信
(ア)日本PMSに対するカタログの送信
a 被請求人社員は,平成26年3月25日,取引先の日本PMSの部長に対して,「いつもお世話になっております。(株)イーカムの・・・でございます。早速ではございますが,【COCO絵型】を添付しております。何卒よろしくお願い致します。」とメールを送った(乙127の1)。
【COCO絵型】とは本件商標である「COCO」のロゴを使った商品のカタログのことを指し,同メールに添付されていたのが,乙第127号証の2のカタログ(以下「本件カタログ」という。)である。
b 本件カタログには,「COCOビッグトートNo.1」と称して「COC−BGT01」の商品が,「COCOビッグトートNo.2」と称して「COC−BGT02」の商品が,「COCOキャンバストートNo.1」と称して「COC−CV01」の商品が,「COCOキャンバストートNo.2」と称して「COC−CV02」の商品の,各色の画像がそれぞれ添付されている(乙127の2)。
c 添付の本件カタログデータは,十分にカタログの機能を果たしている取引書類といえるものであり,当該カタログに「COC−BGT01,02」,「COC−CV01,02」の画像が表示されている以上,本件カタログ(取引書類)に本件商標が付されて頒布されているといえる。
(イ)埼京三喜に対するカタログの送信
a 被請求人社員は,平成26年4月23日,取引先の埼京三喜に対しても,「昨日はお電話頂きましてありがとうございます。早速ではございますが,【COCO絵型】を添付しております。」とメールを送って(乙128の1),本件4商品のカタログデータをメール添付で送っている(乙128の2)。
b こちらのカタログも,納期等に差異はあるが,内容は日本PMSに対して送信したものとほぼ同一であり,本件4商品の画像がSTYLE No.(COC−BGTやCOC−CVの商品番号)と共に表示されたものとなっている。
c したがって,被請求人は,埼京三喜に対しても,カタログという取引書類に本件商標を付して頒布しているといえる。
イ 本件商標の使用行為該当性について
使用商標が,本件商標と社会通念上同一の商標であるという点は,上記の輸入,販売行為と同じである。
そして,上記のとおり,被請求人が日本PMSと埼京三喜に対して,メール添付で本件4商品のカタログを送付した行為は,商標法第2条第3項第8号の「取引書類に商標を付して頒布する行為」に該当する。

第4 当審の判断
1 認定事実
被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)ア 被請求人であるイーカム社は,平成19年9月に設立された,衣料品及び服飾雑貨の企画,製造,卸を事業内容とする株式会社である(乙40)。
イ 旧商標権者である株式会社ダンエンタープライズは,要証期間(平成24年4月23日から平成27年4月22日までの間)において,本件商標権の商標権者であった。
ウ ジーティーオー社は,旧商標権者の有する商標権(本件商標権を含む。)の使用許諾の窓口として,旧商標権者から購入した使用許諾を証明する「証紙」を使用許諾先に販売する業務を行っていた。一方,旧商標権者は,ジーティーオー社から,「商品化申請管理表」及び「証紙申請書」の提出を受けて,商標を付する予定の商品を確認して,商標の使用を承認した上で,商品化権使用料名義で商標の使用料を受け取り,「証紙」をジーティーオー社に引き渡していた(乙32,乙35)。
(2)ア 被請求人は,平成25年9月3日及び4日,ジーティーオー社に対し,被請求人が商品化を企画している「COCO」の欧文字を付した4種類のトートバッグの商品(「COC−COB01」,「COC−COB02」,「COC−CV01」,「COC−CV02」)のデザイン及び12種類のカラーのデータ画像を添付したメール(乙89,90,134,135)を送信し,本件商標の使用許諾を求める旨の申請をした。
その後,被請求人と旧商標権者は,平成25年9月30日,期間を同年10月1日から3年間,商品の区分を第14類,第18類,第25類及び第26類,指定商品を「身飾品他」,使用許諾地域を「日本国内」の約定で,旧商標権者が被請求人に対し,本件商標権の使用権を独占的に許諾し,被請求人が本件商標を付した「かばん・小物類」の商品を製造及び販売することを許諾する旨の本件使用許諾契約(乙24)を締結した。
イ 被請求人は,平成25年10月29日,韓国のミラクル社(乙124の2,124の3)に対し,「2013.10.」,「COC−BGT01」,「COC−CV01」,「COC−BGT02」,「COC−CV02」との表示の下に,「COCO」の欧文字が付されたトートバッグのデザイン及び寸法等を記載した画像データ(乙91の2,91の3,136)を添付した,「COCOバッグサンプル作成のお願いになります。」,「指示書添付致します。」,「大,中2サイズでWHITE(生成り)とBLACKで作成お願いします。」などと記載したメール(乙91の1)を送信した。
ウ 被請求人は,平成25年12月4日,ミラクル社に対し,「Re:商品発注になります:COCOバッグ発注」との件名で,「商品発注の件」と題する書面2通(乙93の2,93の3,137)を添付した,「発注書2件添付しております。」,「COC−BGT」,「COC−CV」,「納期が確定しましたら教えて下さい。」などと記載したメール(乙93の1)を送信した。上記添付書面中には,「(COC−BGTビッグトート)1st」として品番「COC−BGT01」のカラー5色を3,500枚,品番「COC−BGT02」のカラー5色を3,500枚の合計7,000枚を単価US4.8ドルで発注(乙93の2,137の1)し,「(COC−CVキャンバストート)1st」として品番「COC−CV01」の5色を2,500枚,「COC−CV02」の5色を2,500枚の合計5,000枚を単価US4.0ドルで発注(乙93の3,137の2)する旨の記載がある。
エ 被請求人は,平成25年12月27日,ミラクル社に対し,「付属指示:COCOビッグトート修正」との件名で,<1>作成日「2012.12.25」,品番「COC−BGT01,02/COC−CV01,02」,ブランド「COCO」と記載した「付属仕様書」(乙116の2,139の1),<2>「2013.12.25」,「COC−BGT02」,「COC−CV02」,「COC−BGT01」,「COC−CV01」との表示の下に,「COCO」の欧文字が付されたトートバッグのデザイン等を記載した画像データ(乙116の3,116の4,139の2,139の3)を添付した,「COCO付属の指示になります。」,「混率修正致しました。」などの記載のあるメール(乙116の1)を送信した。上記「付属仕様書」には,「COCO」の欧文字,品番,素材等を記載したステッカーの仕様が記載されていた。
オ ジーティーオー社は,被請求人の依頼を受けて,平成26年1月17日付けの証紙申請書(乙3)を作成し,旧商標権者に対し提出した。上記申請書には,「株式会社ダンエンタープライズの許諾により『COCO』の商品化権を下記掲載の商品に使用致しますので証紙の発行を依頼いたします。」との記載に続き,以下の記載がある。
「商品名 承認NO. 製造数量
COCOトートバック(中) 44516 1,900
COCOトートバック(中) 42832 1,900
COCOトートバック(大) 44515 1,900
COCOトートバック(大) 42831 1,900
COCOエコバッグ 43015 15,000
(合計) 22,600」
カ ジーティーオー社は,平成26年1月20日,旧商標権者から,乙第3号証の証紙申請に係る証紙合計22,600枚の納品(乙4)を受け,その頃,被請求人に対し,上記証紙を引き渡した。
(3)ア 被請求人は,平成26年3月25日,日本PMSに対し,「※再送です【COCO 商品のご案内】【E−COME】」との件名で,「Cocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名及び「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータ(乙127の2)等を添付した,「再送致します。現状では,圧倒的にトート・ミニトートの方が予約段階での付きは良い状況です。」,「早速ではございますが【COCO絵型】を添付しております。何卒よろしくお願い致します。」などと記載したメール(乙127の1)を送信した。
「Cocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名のPDFデータ(乙127の2の1枚目)には,「Coco ビッグトートNo.1」,「Coco ビッグトートNo.2」との表題の下に表が記載され,表の枠内には,「STYLE.NO」欄に「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「納期」欄に「4月上旬頃〜随時発送予定 下代@990−」とする「COCO」の欧文字が表示されたそれぞれカラー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外にはトートバッグを持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標登録番号:第1493277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)ダンエンタープライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を独占契約した正規国内ライセンス商品です。」との表示がある。
また,「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータ(乙127の2の2枚目)には,「Coco キャンバストートNo.1」,「Coco キャンバストートNo.2」との表題の下に表が記載され,表の枠内には,「STYLE.NO」欄に「COC−CV01」,「COC−CV02」,「納期」欄に「4月上旬頃〜随時発送予定 @930−」とする「COCO」の欧文字が表示されたそれぞれカラー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外にはトートバッグを持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標登録番号:第1493277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)ダンエンタープライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を独占契約した正規国内ライセンス商品です。」との表示がある。
イ 被請求人は,平成26年4月23日,埼京三喜に対し,「【COCO絵型】【イーカム】」との件名で,「Cocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名及び「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータ(乙128の2)等を添付した,「早速ではございますが【COCO絵型】を添付しております。」,「こちらの商品の中の,トート2アイテムに関しましては5月GW明け納期商品となっております。」などと記載したメール(乙128の1)を送信した。
「Cocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名のPDFデータ(乙128の2の1枚目)には,「Coco ビッグトートNo.1」,「Coco ビッグトートNo.2」との表題の下に表が記載され,表の枠内には,「STYLE.NO」欄に「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「納期」欄に「5月中旬頃〜随時発送予定 下代@1134−」とする「COCO」の欧文字が表示されたそれぞれカラー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外にはトートバッグを持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標登録番号:第1493277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)ダンエンタープライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を独占契約した正規国内ライセンス商品です。販売許諾地域:日本国内限定 商品可能化アイテム:かばん,小物類」との表示がある。
また,「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータ(乙128の2の2枚目)には,「Coco キャンバストートNo.1」,「Coco キャンバストートNo.2」との表題の下に表が記載され,表の枠内には,「STYLE.NO」欄に「COC−CV01」,「COC−CV02」,「納期」欄に「5月中旬頃〜随時発送予定 下代@1026」とする「COCO」の欧文字が表示されたそれぞれカラー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外にはトートバッグを持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標登録番号:第1493277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)ダンエンタープライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を独占契約した正規国内ライセンス商品です。販売許諾地域:日本国内限定 商品可能化アイテム:かばん,小物類」との表示がある。
(4)ミラクル社は,<1>「荷送人/輸出者」欄に「ミラクルチームコーポレーション」,「買い手名」欄に「株式会社イーカム」,「積荷港」欄に「中国,上海」,「最終仕向港」欄に「日本,博多」,「出港予定日」欄に「2014年4月19日」,「インボイスNo.&作成日」欄に「MC140417 2014年4月17日」,「L/CNo.&日付」欄に「L/C:211−612−14457」,「品名の詳細」欄に「鞄 COC−BGT01 424枚 USD 2,035.20」,「鞄 COC−BGT02 390枚 USD 1,872.00」,「鞄 COC−CV01 131枚 USD 524.00」,「鞄 COC−CV02 195枚 USD 780.00」などと記載された「コマーシャルインボイス」(乙130の2,130の4),<2>「パッキングリスト詳細」欄に「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」,「COC−CV02」の「カラー」が「ホワイト」である旨の記載のある「パッキングリスト」(乙130の2,130の4)を発行した。
被請求人は,平成26年4月28日,輸入者を被請求人,ミラクル社を輸入取引者,積出地を上海,船卸港を博多,仕入書番号を「MC140417」とする貨物の輸入について,博多税関支署長から,輸入許可(乙130の3)を受けた。
被請求人は,同日,乙仲業者のSGH社に対し,輸入関税,費用等(乙130の1)を支払い,上記貨物の引渡しを受けた。
(5)被請求人は,平成26年10月14日,ユニーから,「ディズニー,COCO,スクールの発注明細を添付します。確認をお願いします。本日,伝票発行しました。」,「10/19までに納品をお願いします。」などと記載したメール(乙107の1)を受信した。上記メールの添付ファイル(乙107の2)には「COCOキャンバストート COC−CV01 各色20」,「COCOキャンバストート COC−CV02 各色20」との記載がある。
被請求人は,平成26年10月15日,ユニーに対し,上記発注の内容を確認し,商品確保が完了した旨のメール(乙108)を送信し,同月18日,ユニーに対し,「COCOキャンバストート COC−CV01」及び「COCOキャンバストート COC−CV02」を納品(乙110,111)した。
2 被請求人による本件4商品の輸入及び販売の事実の有無等について
(1)被請求人による輸入について
前記1の認定事実を総合すれば,<1>被請求人は,平成25年9月30日,旧商標権者との間で,期間を同年10月1日から3年間,使用許諾地域を日本国内の約定で,旧商標権者が被請求人に対し,旧商標権者が有する本件商標権の使用権を独占的に許諾し,被請求人が本件商標を付した「かばん・小物類」の商品を製造及び販売することを許諾する旨の本件使用許諾契約(乙24)を締結した後,同月29日,韓国のミラクル社に対し,「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」,「COC−CV02」との表示の下に,「COCO」の欧文字が付されたトートバッグのデザイン及び寸法等を記載した画像データ添付したメール(乙91)で,「COCOバッグ」のサンプル品の作成を依頼したこと,<2>被請求人は,同年12月4日,ミラクル社に対し,品番「COC−BGT01」のカラー5色を3,500枚,品番「COC−BGT02」のカラー5色を3,500枚,品番「COC−CV01」のカラー5色を2,500枚,「COC−CV02」のカラー5色を2,500枚の合計12,000枚のトートバッグ(「COCOバッグ」)をメール(乙93)で発注し,同月27日,ミラクル社に対し,「付属仕様書」と「COCO」の欧文字が付されたトートバッグのデザイン等を記載した画像データを添付したメール(乙116)で,品番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」の仕様,デザイン等について指示をしたこと,<3>被請求人は,平成26年3月25日,日本PMSに対し,「Cocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名及び「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータを添付したメール(乙127)で,品番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」のトートバッグの商品の案内をし,また,被請求人は,同年4月23日,埼京三喜に対し,「Cocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名及び「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータを添付したメール(乙128)で品番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」のトートバッグの商品の案内をしたこと,<4>上記<3>の各PDFデータには,「COCO」の欧文字がそれぞれ表示されたカラー5色のトートバッグの写真が掲載され,そのうちの一つには,別掲2の「COCO」の欧文字の標章が付されていたこと,<5>ミラクル社は,「荷送人/輸出者」欄に「ミラクルチームコーポレーション」,「買い手名」欄に「株式会社イーカム」,「積荷港」欄に「中国,上海」,「最終仕向港」欄に「日本,博多」,「出港予定日」欄に「2014年4月19日」,「インボイスNo.&作成日」欄に「MC140417 2014年4月17日」,「品名の詳細」欄に「鞄 COC−BGT01 424枚 USD 2,035.20」,「鞄 COC−BGT02 390枚 USD 1,872.00」,「鞄 COC−CV01 131枚 USD 524.00」,「鞄 COC−CV02 195枚 USD 780.00」などと記載された「コマーシャルインボイス」(乙130の2,乙130の4)及び「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」,「COC−CV02」の「カラー」が「ホワイト」である旨の記載のある「パッキングリスト」(乙130の2,130の4)を発行した後,被請求人は,平成26年4月28日,輸入者を被請求人,ミラクル社を輸入取引者,積出地を上海,船卸港を博多,仕入書番号を「MC140417」とする貨物の輸入について,博多税関支署長から,輸入許可を受け(乙130の3),同日,上記貨物の引渡しを受けたこと,<6>被請求人が輸入許可を受けた品番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」の「ホワイト」の「鞄」は,上記<3>の各PDFデータに掲載された「COCO」の欧文字を付した白色のトートバッグの画像の商品と同一の商品であることが認められる。
以上によれば,被請求人は,平成26年4月28日,ミラクル社から,「COCO」の欧文字からなる別掲2のとおりの標章を付したトートバッグである本件4商品(品番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」)を輸入したことが認められる。
(2)被請求人のユニーへの販売について
前記1の認定事実及び前記(1)の認定事実を総合すれば,<1>被請求人は,平成26年10月14日,ユニーに対し,「COC−CV01」及び「COC−CV02」の商品を販売し,同月18日,これを納品したこと,<2>上記「COC−CV01」及び「COC−CV02」の商品は,乙127の2,128の2のPDFデータに掲載された「COCO」の欧文字を付した各トートバッグの画像の商品と同一の商品であることが認められる。
上記によれば,被請求人は,平成26年10月14日に,ユニーに対し,「COCO」の欧文字からなる標章(別掲2)を付した「COC−CV01」及び「COC−CV02」の商品を販売したことが認められる。
3 本件商標の使用について
(1)使用者について
前記2(1)によれば,被請求人は,要証期間に本件商標の権利者であった旧商標権者との間で,平成25年9月30日に,期間を同年10月1日から3年間,使用許諾地域を日本国内の約定で,本件商標権の使用権を独占的に許諾し,被請求人が本件商標を付した「かばん・小物類」の商品を製造及び販売することを許諾する旨の本件使用許諾契約(乙24)を締結していることから,被請求人は,要証期間において,本件商標の通常使用権者であったと認められる。
(2)使用商標について
トートバッグである本件4商品(品番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」,以下,これらをまとめていうときは「使用商品」という。)には「COCO」の欧文字からなる別掲2のとおりの標章(以下「本件使用商標」という。)が表示されているところ,本件使用商標は,別掲1のとおり「COCO」の文字からなる本件商標とは書体は異なるものの,そのつづりを同じくする社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用商品について
本件使用商標が付された使用商品であるトートバッグは,本件審判の請求に係る指定商品中,第18類「かばん類」の範ちゅうの商品と認められる。
(4)使用時期及び使用行為について
被請求人は,平成26年4月28日,ミラクル社から,本件使用商標を付した使用商品を輸入したこと並びに被請求人は,同年10月14日,ユニーに対し,使用商品のうち,「COC−CV01」及び「COC−CV02」の商品を販売したことが認められる。
そして,被請求人による本件使用商標を付した使用商品の輸入並びに使用商品のうちの「COC−CV01」及び「COC−CV02」の販売は,商標法第2条第3項第2号の「商品に標章を付したもの」の輸入及び譲渡に該当するものと認められる。
また,被請求人が本件使用商標を付した使用商品を輸入した平成26年4月28日並びに使用商品のうちの「COC−CV01」及び「COC−CV02」をユニーに対して販売した同年10月14日は,いずれも要証期間内である。
(5)小括
そうすると,要証期間内に,本件商標の通常使用権者であった被請求人が,日本国内において,本件審判の請求に係る指定商品中,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を付した第18類「かばん類」に含まれる「トートバッグ」を輸入及び販売したものと認められる。
なお,本件審判事件においては,乙第148号証であるUSBメモリーの提出はないが,当該USBメモリーは,証拠説明書の記載によれば,乙第134号証ないし乙第147号証の元になっている乙第89号証ないし乙第91号証,乙第93号証,乙第107号証,乙第116号証,乙第117号証,乙第120号証ないし乙第122号証,乙第124号証,乙第126号証ない乙第128号証及び乙第132号証に係るメールデータを添付ファイルごとに保存したものであり,本件審判事件に係る審決取消訴訟において,当該USBメモリーについては,印刷された各メールの本文にそれぞれの添付ファイルを印刷した書面が添付されていた事実が確認されている。
そして,審決取消しの判決が確定したときには,再度の審理ないし審決には行政事件訴訟法第33条第1項の規定により上記審決取消し判決の拘束力が及ぶことから,当審においては,当該USBメモリーについては,その内容の確認をする必要まではないものと判断した。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,通常使用権者が,その請求に係る指定商品中の第18類「かばん類」に含まれる商品「トートバッグ」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したとものと認められる。
したがって,本件商標の指定商品中,第14類「貴金属製のがま口及び財布」及び第18類「かばん類,袋物」の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(本件使用商標:下記各トートバッグに表示された「COCO」の欧文字部分)







(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。

審判長 冨澤 美加
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2021-04-28 
結審通知日 2021-05-13 
審決日 2021-06-02 
出願番号 1977076062 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z1418)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 馬場 秀敏
中束 としえ
登録日 1981-12-25 
登録番号 1493277 
商標の称呼 ココ 
代理人 日高 雅之 
代理人 田中 克郎 
代理人 蜂谷 英夫 
復代理人 宮川 美津子 
復代理人 佐藤 俊司 
復代理人 小林 彰治 
代理人 稲葉 良幸 
復代理人 池田 万美 
代理人 鶴田 信一郎 

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