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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W01060709111935 |
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管理番号 | 1386405 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-10-04 |
確定日 | 2022-06-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6415342号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6415342号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6415342号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおり,「PARKER ENGINEERING」の欧文字を横書きしてなり,令和2年2月18日に登録出願,第1類「塗料分解用微生物(医療用のものを除く。)」,第6類「金属製荷役用パレット,荷役用ターンテーブル,荷役用トラバーサー,金属製人工魚礁,金属製セメント製品製造用型枠,金属製の吹付け塗装用ブース」,第7類「塗装機械器具並びにその部品及び附属品,粉体の空気式搬送装置並びにその部品及び附属品」,第9類「オゾン発生器,電解槽,救命用具,火災報知機・ガス漏れ警報器,盗難警報器,消火器・消火栓・消火ホース用ノズル・スプリンクラー消火装置,管およびホースに設置する粉体流及び液体流検知装置」,第11類「乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,減圧蒸留装置」,第19類「人工魚礁(金属製のものを除く。),セメント製品製造用型枠(金属製のものを除く。),吹付け塗装用ブース(金属製のものを除く。)」及び第35類「販売を目的としたインターネットウエブサイトを介して行う商品の紹介」を指定商品及び指定役務として,同3年7月6日に登録査定,同月13日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において,引用する商標は以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第4061562号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成よりなり,平成7年5月26日に登録出願,第9類「測定機械器具,救命用具,オゾン発生器,電解槽,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気式ワックス磨き機,電気掃除機,電気ブザー,火災報知機,盗難警報器,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置」を含む第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同9年10月3日に設定登録されたものである。 (2)登録第4066289号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおりの構成よりなり,平成7年5月26日に登録出願,第11類「飼料乾燥装置,牛乳殺菌機,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,家庭用電熱用品類」を含む第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同9年10月9日に設定登録されたものである。 (3)登録第4172474号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲2のとおりの構成よりなり,平成7年5月26日に登録出願,第17類「消防用ホース,石綿製防火幕」を含む第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同10年7月31日に設定登録されたものである。 (4)登録第4405466号商標(以下「引用商標4」という。)は,別掲2のとおりの構成よりなり,平成7年5月26日に登録出願,第7類「金属製及び非金属製(金属で補強されたものを含む。)ホース・管用切断機及びその他の金属加工機械器具並びにそれらの部品及び付属品,土木機械器具並びにそれらの部品及び付属品,荷役機械器具並びにそれらの部品及び付属品,化学機械器具並びにそれらの部品及び付属品,繊維機械器具並びにそれらの部品及び付属品,食料加工用又は飲料加工用の機械器具並びにそれらの部品及び付属品,製材用・木工又は合板用の機械器具並びにそれらの部品及び付属品,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具並びにそれらの部品及び付属品,印刷用又は製本用の機械器具並びにそれらの部品及び付属品,農業用機械器具並びにそれらの部品及び付属品,漁業用機械器具並びにそれらの部品及び付属品,ガラス器製造機械並びにそれらの部品及び付属品,靴製造機械並びにそれらの部品及び付属品,製革機械並びにそれらの部品及び付属品,電気洗濯機並びにそれらの部品及び付属品,電気ミキサー並びにそれらの部品及び付属品,塗装機械器具並びにそれらの部品及び付属品,ろ過器(機械又は機関の部品)」を含む第7類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同12年8月4日に設定登録されたものである。 (5)登録第1696367号商標(以下「引用商標5」という。)は,別掲3のとおり「PARKER」の欧文字を横書きしてなり,昭和46年9月1日に登録出願,第9類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同59年6月21日に設定登録され,その後,平成18年1月18日に第6類,第7類,第12類及び第17類に属する商標登録原簿に記載の商品とする指定商品の書換登録がされたものである。 (6)登録第713922号商標(以下「引用商標6」という。)は,別掲4のとおり「PARKER−HANNIFIN」の欧文字及び記号を横書きしてなり,昭和40年1月6日に登録出願,第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同41年7月20日に設定登録され,その後,平成20年4月9日に第7類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。 以下,引用商標1ないし引用商標5をまとめていうときは「11号引用商標」といい,引用商標1ないし引用商標6をまとめていうときは「全引用商標」という。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第8号,同項第10号,同項第11号及び同項第19号に該当するため,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであるとし,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号に該当する理由 本件商標は,欧文字「PARKER」と「ENGINEERING」が構成するところ,「ENGINEERING」の表示は,一般的には科学(自然科学のほか社会科学や人文科学も含む)や数学の知識を主に物理的・化学的に応用して,実用的・有用なものや環境・システムなどを「計画」「設計」「製造」「構築」すること,あるいはその学問を意味する。 一方,本件商標が含む「ENGINEERING」は,本件商標の指定商品との関係においては,指定商品の「設計」「製造」の意味を表示し,指定役務との関係においては,当該役務の「計画」や役務を提供する仕組みの「構築」などの意味を表示する。 そこで,本件商標における「ENGINEERING」と本件商標の指定商品及び指定役務との関係を検討するに,本件商標中の「ENGINEERING」の表示は,上述の本件商標の指定商品の「設計」「製造」の意味に通じ,また,本件商標の指定役務の「計画」や役務を提供する仕組みの「構築」を意味する表示である。 また,我が国において,「ENGINEERING」及び「エンジエアリング」の語は会社名(商号)の一部に多用され,受託設計業務を「エンジエアリング業務」,「エンジニアリング事業」と呼称し,また,かかる受託設計業務を営む会社を「エンジニアリング会社」などと呼称する事例は枚挙に暇が無い。 以上から,本件商標における「ENGINEERING」の表示は,指定商品及び指定役務との関係において自他商品及び自他役務の識別力を発揮しない部分である。 よって,本件商標において商標の自他商品及び自他役務の識別力を発揮する商標の要部は,「PARKER」の部分である。 本件商標の要部は「PARKER」の表示であるところ,11号引用商標は「PARKER」の文字からなる,若しくは,「PARKER」の文字を含む商標である。 よって,本件商標は,11号引用商標と同一若しくは類似であり,本件商標の指定商品は,11号引用商標の指定商品と同一若しくは類似の商品である。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第8号に該当する理由 申立人の商号は「パーカー インタンジブルズ エルエルシー」である。そして,申立人は,その日本法人として「パーカー・ハネフィン日本株式会社」(以下「パーカー・ハネフィン日本社」という。)を1976年10月29日に設立登記し,現在も事業を展開している(甲7,甲8)。 また,パーカー・ハネフィン日本社,並びに,その親会社であるアメリカのパーカー・ハネフィン社は,モーション・コントロール・テクノロジーの分野で多角経営を行う,世界のトップメーカーである。多岐にわたる産業車両用,工業用及び航空機器の市場を対象として,システム化された精密エンジニアリング・ソリューションを提供している企業である。パーカー社の製品は,モーション・コントロールを必要とするあらゆる装置に不可欠であり,原材料や耐久資材の製造,加工からインフラ整備に欠くことのできない重機や各種輸送機器に至るまであらゆる産業をカバーする製品ラインナップを有している。 よって,我が国おいて,本件商標は,申立人の著名な略称である「パーカー」並びに「パーカー・ハネフィン日本社」の著名な略称である「パーカー」を含むものである。さらに,本件商標の権利者は,申立人及び「パーカー・ハネフィン日本社」の承諾を得ずに登録したものである。 その結果,本件商標は,他人,すなわち申立人及び「パーカー・ハネフィン日本社」の著名な略称「パーカー」と実質的に同じ表示であるPARKERを含む商標であって,他人の承諾を得ていないものであることが明らかである。 したがって,本件商標は,その登録出願時及び登録査定時において,商標法第4条第1項第8号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第10号に該当する理由 本件商標は,申立人及び申立人の関連会社である「パーカー・ハネフィン日本社」が全引用商標の指定商品及び指定役務について使用し,本件商標の登録出願時及びに登録査定時において,全引用商標の指定商品及び指定役務について,取引者,需要者において広く認識されていた商標「PARKER」と類似する。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第19号に該当する理由 本件商標は,申立人が日本及び海外において使用を行い,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,日本及び外国において広く認識されていた商標「PARKER」に類似する商標である。 一方,本件商標の商標権者は,申立人及びその日本法人が,多岐にわたる産業車両用,工業用及び航空機器の市場を対象として,システム化された精密エンジニアリング・ソリューションを提供していることは知り得たはずである。 よって,本件商標は,他人,即ち,申立人及び申立人の関連会社である「パーカー・ハネフィン日本社」の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,日本国内又は外国における取引者,需要者の間に広く認識されている商標「PARKER」と類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするものであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,以下のとおりである。 (ア)申立人の日本法人とされる「パーカー・ハネフィン日本社」は,昭和35年9月2日に設立された「油圧機器及び気圧機器,それらの器具部分品,付属品及び補器の製造,輸入及び販売」等を目的とする会社であり,その本店は東京都品川区にある(甲7)。 (イ)「パーカー・ハネフィン日本社」の親会社とされる「パーカー・ハネフィン社」は,モーション・コントロール・テクノロジーの分野で経営を行う企業であり,産業車両用,工業用及び航空機器の市場を対象として,システム化された精密エンジニアリング・ソリューションを提供している企業である(甲8,申立人の主張)。 イ 上記アによれば,申立人の日本法人とされる「パーカー・ハネフィン日本社」が東京都品川区に存在し,「油圧機器及び気圧機器,それらの器具部分品,付属品及び補器の製造,輸入及び販売」等の業務を行っていること,また,「パーカー・ハネフィン日本社」の親会社である「パーカー・ハネフィン社」がモーション・コントロール・テクノロジー分野のメーカーであって,産業車両用,工業用及び航空機器の市場を対象として,システム化された精密エンジニアリング・ソリューションを提供している企業であることはうかがえるものの,これら企業と申立人がどのような関係にあるのかについては,それを示す客観的な証拠の提出はなく不明である(以下,申立人,「パーカー・ハネフィン日本社」及び「パーカー・ハネフィン社」をまとめて「申立人ら」という。)。 そして,申立人が提出する証拠からは,申立人らが全引用商標をその業務に係る商品について使用している事実は見いだせないうえ,全引用商標を使用した申立人らの業務に係る商品についての販売数量,売上高,市場シェアなどの販売実績や広告宣伝の方法等,その周知性を客観的に判断するための具体的な証拠の提出はないから,本件商標の登録出願時及び登録査定時における全引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。 そのほか,申立人提出に係る甲各号証を総合してみても,全引用商標及び「PARKER」の文字が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で,申立人らの業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。 また,「PARKER」の文字が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人らの略称を示すものとして,需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りる事実を見いだすこともできない。 したがって,申立人から提出された証拠によっては,全引用商標が,我が国において,申立人らの業務に係る商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識され,本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認めることができないものであり,かつ,「PARKER」の文字が申立人らの著名な略称ということもできない。 (2)本件商標と全引用商標について ア 本件商標 本件商標は,別掲1のとおり,「PARKER ENGINEERING」の欧文字を横書きしてなるところ,その構成文字は,同じ書体,同じ大きさをもって,視覚上まとまりよく一体的に表されているものであって,その構成全体から生じる「パーカーエンジニアリング」の称呼も,冗長ではなく,よどみなく一連に称呼し得るものである。 そして,本件商標の構成中「PARKER」の文字は「パーカー:米国のジャズサクソホーン奏者・作曲家。」等の意味を有する語として辞書に掲載はあるものの,その意味まで一般に知られているとはいい難いものであるから,当該文字は,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語であると理解されるものである。また,「ENGINEERING」の文字は「工学」等の意味を有する語である(いずれも「ランダムハウス英和大辞典第2版」株式会社小学館)。 さらに,上記(1)のとおり,「PARKER」の文字は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人らの業務に係る商品を表すものとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり,他に本件商標の構成中「PARKER」の文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りるべき事情も見いだせない。 してみれば,本件商標の上記構成及び称呼からすれば,これに接する取引者,需要者は,殊更に「PARKER」の文字部分のみに着目することなく,本件商標の構成全体をもって,特定の観念を想起させることのない一体不可分の造語を表したものとして認識し,把握するというのが自然である。 そして,特定の語義を有しない欧文字からなる商標については,我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから,本件商標からは「パーカーエンジニアリング」の称呼を生じるものとみるのが相当である。 そうすると,本件商標は,その構成文字全体に相応して「パーカーエンジニアリング」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものである。 イ 全引用商標 (ア)引用商標1ないし引用商標4 引用商標1ないし引用商標4は,別掲2のとおり,黒色の横長長方形の内部に,白抜きで「Parker」の文字を横書きし,左辺中央から「P」の文字を貫くように白色の横長長方形を配してなるものである。 そして,引用商標1ないし引用商標4の構成中「Parker」の文字は,上記アのとおり,当該文字は,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語であると理解されるものである。 また,上記アのとおり,特定の語義を有しない欧文字からなる商標については,我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから,引用商標1ないし引用商標4からは「パーカー」の称呼を生じるものとみるのが相当である。 したがって,引用商標1ないし引用商標4は,その構成文字に相応して「パーカー」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。 (イ)引用商標5 引用商標5は,「PARKER」の欧文字を横書きしてなるところ,当該文字は,上記(ア)のとおり,当該文字は,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語であると理解されるものである。 そして,上記(ア)と同様に,引用商標5からは「パーカー」の称呼を生じるものとみるのが相当である。 したがって,引用商標5は,その構成文字に相応して「パーカー」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。 (ウ)引用商標6 引用商標6は,「PARKER−HANNIFIN」の欧文字及び記号を横書きしてなるところ,その構成文字及び記号は,同じ大きさで,等間隔に表されており,外観上まとまりよく一体的に看取されるものである。 そして,引用商標6の構成中「PARKER」の文字は,上記ア,イ(ア)及びイ(イ)と同様に,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語であると理解されるものである。また,「HANNIFIN」の文字は,辞書等に掲載がないものであって,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。 さらに,上記ア及びイ(ア)のとおり,特定の語義を有しない欧文字からなる商標については,我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから,引用商標6からは「パーカーハニフィン」の称呼を生じるものとみるのが相当であって,その称呼は,冗長なものではなく,よどみなく一連に称呼し得るものである。 また,上記(1)のとおり,全引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人らの業務に係る商品を表すものとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり,他に引用商標6の構成中「PARKER」の文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りるべき事情も見いだせない。 してみれば,引用商標6の上記構成及び称呼からすれば,これに接する取引者,需要者は,殊更に「PARKER」の文字部分のみに着目することなく,本件商標の構成全体をもって,特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識し,把握するというのが自然である。 そうすると,引用商標6は,その構成文字全体に相応して「パーカーハニフィン」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と全引用商標との類否 本件商標と全引用商標とは,それぞれ上記ア及びイのとおりの構成であって,外観においては,図形の有無及びその構成文字数,書体など明らかな差異を有するものであるから,外観上,いずれも判然と区別し得るものである。 そして,称呼においては,本件商標は「パーカーエンジニアリング」の称呼を生じるものであるのに対し,全引用商標は「パーカー」又は「パーカーハニフィン」の称呼を生じるものであり,その音数及び音構成が明らかに異なるものであるから,本件商標と全引用商標は,いずれも明瞭に聴別し得るものである。 また,観念においては,本件商標と全引用商標は,いずれも特定の観念は生じないものであるから比較することはできない。 そうすると,本件商標と全引用商標とは,観念においては比較できないとしても,外観においては判然と区別し得るものであり,称呼においても明瞭に聴別し得るものであるから,これらが需要者に与える印象,記憶,連想等を総合してみれば,これらの商標は,いずれも相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。 (3)商標法第4条第1項第11号該当性について 上記(2)のとおり,本件商標と11号引用商標とは,いずれも非類似の商標であるから,本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品の類否について論ずるまでもなく,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第10号該当性について 全引用商標は,上記(1)のとおり,申立人の業務に係る商品を表すものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであって,また,上記(2)のとおり,本件商標と全引用商標とは,いずれも非類似の商標である。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。 (5)商標法第4条第1項第19号該当性について 上記(1)のとおり,全引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人らの業務に係る商品を表示するものとして,我が国及び外国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 また,本件商標と全引用商標とは,上記(2)のとおり,いずれも非類似の商標であって別異の商標というべきものであり,かつ,本件商標は全引用商標を連想又は想起させるものでもない。 さらに,本件商標権者が,不正の利益を得る目的,他人に損害を与える目的,その他不正の目的をもって本件商標を出願し,登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (6)商標法第4条第1項第8号該当性について 「PARKER」の文字は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人らの名称の略称として著名となっていたと認めることはできない。 そうすると,本件商標は,その構成中に「PARKER」の文字を含むとしても,本件商標を申立人らの略称を含むものと認識し,把握されることはないから,他人の著名な略称を含む商標であるとは認められない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。 (7)まとめ 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号,同項第10号,同項第11号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標1ないし引用商標4) 別掲3(引用商標5) 別掲4(引用商標6) (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2022-06-07 |
出願番号 | 2020017290 |
審決分類 |
T
1
651・
23-
Y
(W01060709111935)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
佐藤 松江 |
特許庁審判官 |
小俣 克巳 須田 亮一 |
登録日 | 2021-07-13 |
登録番号 | 6415342 |
権利者 | パーカーエンジニアリング株式会社 |
商標の称呼 | パーカーエンジニアリング |
代理人 | 中村 知公 |
代理人 | 前田 大輔 |
代理人 | 伊藤 孝太郎 |
代理人 | 朝倉 美知 |