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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W36
管理番号 1386400 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-08-17 
確定日 2022-07-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第6395792号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6395792号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6395792号商標(以下「本件商標」という。)は、「野村バブコックアンドブラウン株式会社」の文字を標準文字で表してなり、令和2年5月21日に登録出願、第35類、第36類及び第39類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同3年5月14日に登録査定、同月31日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当するとして引用する登録第6152364号商標は、「BABCOCK & BROWN」の欧文字及び記号を横書きしてなり、平成30年6月21日登録出願、第36類「投資及び銀行業務,金融又は財務に関するコンサルティング,金融・財務分析,投資,投資資金及びプライベートエクイティファンドの管理,アセット・バックト・ファイナンス、プロジェクト・ファイナンス、レバレッジド・リース、セール・アンド・リースバック、リース又は融資された資産のポートフォリオ、セキュアード・デット、タックス・アドバンテージド・ファイナンスの分野における金融又は財務に関する助言,ファイナンシング・イクイップメント・パーチェシング、ファイナンシング・イクイップメント・リーシング、及びファイナンシング・イクイップメント・セールスの分野における金融又は財務に関する助言,金融又は財務に関する助言,投資の管理」を指定役務として、令和元年6月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定役務中、第36類「投資,投資の管理,投資に関する助言,投資に関する媒介・取次ぎ又は代理,投資リスク管理についての評価,投資分析,金融又は財務に関する助言,金融又は財務に関する調査,金融又は財務に関する評価,金融・財務分析,金融又は財務に関する情報の提供,金融又は財務並びに投資に関する市場リスクの分析・評価及び予測,資金の貸し付け,預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,前払式支払手段の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,商品代金の徴収の代行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等清算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,建物又は土地の情報の提供,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古航空機の評価,中古自動車の評価,中古鉄道車両の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機の貸与,現金自動預け払い機の貸与」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標権者について
本件商標権者は、昭和61(1986)年3月3日、野村グループと米国のリース・ファイナンス分野でトップクラスのバブコック・アンド・ブラウン社(米国)との合弁会社として設立された法人であり、航空機等の大型物件の国際リース取引の組成等を行っているものである(甲2)。
「バブコック・アンド・ブラウン社(米国)」は、1977年に、米国でJames BabcockとGeorge Brownによって設立された法人Babcock & Brown LPのことである(以下「B&B LP」という。)。B&B LPは、1990年代初頭まで、航空機などの機器のリースに焦点を当てた企業アドバイザリー会社として運営されており、1982年にシドニーにオフィスを開設して、不動産市場に参入し、かなりの成功を収めた。
この間、本件商標権者は、1998年に、B&B LPとの資本提携を解消し、その後2010年までその他の契約に基づいて資本提携以外の協力関係を継続していた。その他の契約書には「BABCOCK & BROWN」に関する商標の使用許諾条項が含まれていたと推察するが、契約が解消された2010年以降もB&B LPの承諾なしに、法人の名称に「バブコックアンドブラウン」の表示を、また、その英語表記中に「BABCOCK & BROWN」の表示を継続して使用し、今日に至っている。
(2)申立人について
申立人は、B&B LPの元コーポレートファイナンス・アドバイザリーの統括責任者によって2014年に米国デラウェア州に設立された法人であり(甲3)、投資銀行業、フィナンシャルコンサルティング等を目的としている。また、申立人は、アメリカ合衆国において、商標登録第5643846号「BABCOCK & BROWN」(第36類)及び同第5769928号「BABCOCK & BROWN」(第36類)を所有している(甲4〜甲5)。
(3)商標法第4条第1項第11号
本件商標と引用商標を比較すると、本件商標の構成中「バブコックアンドブラウン」部分が、引用商標の全体構成の片仮名表記であることは客観的に明らかであり、相違するのは、冒頭の漢字「野村」及び末尾の「株式会社」の有無の点にある。
しかも、相違点である漢字「野村」が我が国においてありふれた氏姓であること、及び、末尾の漢字「株式会社」が我が国における法人種別の一つを表示したものであることは、本件指定役務の需要者、取引者にとって、容易に認識、理解できるところであって、これらは、それぞれ独立しては自他役務識別力を有しないものである。
他方、本件商標における「バブコックアンドブラウン」と引用商標「BABCOCK & BROWN」の部分は、本件指定役務との関係上、極めて強い支配的な印象を与える部分である。
したがって、本件商標は、その構成中、「バブコックアンドブラウン」部分が極めて強く支配的な印象を与えるものであり、当該片仮名部分を欧文字で表した引用商標に類似するものである。
なお、本件商標は、商号商標であるから、その構成中の「株式会社」以外の構成要素が一連一体となった要部である、との見方があるかも知れない。
しかし、かかる構成要素である「野村バブコックアンドブラウン」は、14文字からなるものであって極めて冗長であるばかりでなく、「野村」の部分は日本のありふれた氏姓の一つであるのに対し、「バブコックアンドブラウン」部分は、「バブコック」が、極めて印象的な音感、音調を有する構成であることから、「バブコックアンドブラウン」部分が「野村」の部分から分離して、独立して識別力を発揮し得るものであることは、経験則上、明らかである。
ましてや、引用商標が有効に存続しているにも拘らず、引用商標と同一の表音文字を含み、その部分が極めて支配的な印象を与える本件商標が引用商標と併存して登録された場合、これに接する需要者、取引者は、それが申立人との間で、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあることは必至である。したがって、本件商標は、引用商標に類似する。
また、本件指定役務中、第36類の指定役務は、引用商標に係る指定役務に類似する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第19号
本件商標権者は、昭和61(1986)年3月3日、野村グループと米国のリース・ファイナンス分野でトップクラスのB&B LPとの合弁会社として設立された法人であるが、1998年に、B&B LPとの資本提携、2010年に商標の使用許諾を含む全ての協力関係を解消した。しかし、B&B LPの承諾なしに、その後も、法人の名称に「バブコックアンドブラウン」の表示を、また、その英語表記中に「BABCOCK & BROWN」の表示を、継続して使用し、今日に至っているものである。
通常、設立に当たり、出資会社の名称を商号に一部に使用した合弁会社(外国資本と国内資本との共同出資で設立され、共同で経営される会社)の名称は、その資本提携が解消された場合は、当該出資会社の名称の使用を止め、新たな名称に変更することは、当然のことである。何となれば、当該出資会社の一の承諾なしにその名称を当該出資会社の他の一が継続使用することは、当該出資会社の一の名称に化体した業務上の信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りすることになってしまうだけでなく、私法上、権利の行使や義務の履行にあたり、社会生活を営む者として、相手方の信頼や期待を裏切らないように誠意をもって行動することを求める法理たる信義則に反するからである。
したがって、本件商標権者が、その名称中に「BABCOCK & BROWN」及びその片仮名表記である「バブコックアンドブラウン」を無断で継続使用している事実、さらには、これを商標として登録し、独占的に使用せんとする行為は、商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」を有しているものであるといわざるを得ない。
そして、元来、本件商標権者自ら「米国のリース・ファイナンス分野でトップクラス」と認め、今なおそのウェブサイトにおいて表示している事実、そして、何より自己の名称中に「バブコックアンドブラウン」の片仮名を使用している事実は、「BABCOCK & BROWN」は、同号にいう「外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当するものである。
さらに、特許庁編「商標審査基準」に規定されているとおり「需要者の間に広く認識されている」他人の商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、その他人の商標と類似するものと判断されるものであるから、本件商標が、B&B LPの商標「BABCOCK & BROWN」及びその片仮名表記「バブコックアンドブラウン」に類似すると判断されるべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
申立人の提出に係る証拠及び主張によれば、本件商標権者は、1986年に野村グループと米国のリース・ファイナンスのバブコック・アンド・ブラウン社との合弁会社として設立された法人であり、航空機等の大型物件の国際リース取引の組成等を行っている(甲2)。
申立人は、我が国及び外国における申立人の業務に係る役務についての引用商標を使用した提供実績及び広告宣伝の回数や広告宣伝費の額など、引用商標の周知性を判断し得る具体的な証拠を提出していない。
また、申立人が、米国及び我が国で商標登録しているとしても、米国などの外国及び我が国における周知・著名性を直接裏付けるものではなく、商標登録の事実のみによって引用商標の周知・著名性を認めることはできないし、そのことから直ちに米国などの外国及び我が国において引用商標が、一般需要者にどの程度認識されるに至ったかはうかがい知ることはできない。
そうすると、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る役務を表示するものとして、米国などの外国又は我が国において、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、「野村バブコックアンドブラウン株式会社」の文字を標準文字で表してなるところ、該構成からは全体として商号を表したものと理解される。
そして、その構成中の「株式会社」の文字部分は、一般に当該会社の組織種別を表示するに止まり、それ自体は役務の識別機能を有しないか若しくは識別機能の極めて弱い部分とされるから、当該文字部分を除いた他の構成部分をもって、役務の識別標識と捉え、「野村バブコックアンドブラウン」の文字部分より生ずる称呼等をもって取引に当たる場合も決して少なくないというのが取引の実情に照らし相当である。
また、「野村バブコックアンドブラウン」の構成中の「野村」の文字部分については、ありふれた氏姓の一つを想起させる場合があるとしても、商号を表すものと認識させる本件商標の構成からすれば、「野村」の文字を捨象するとはいえず、「野村バブコックアンドブラウン」を一体のものとして把握するというのが相当である。そして、その構成全体から生じる「ノムラバブコックアンドブラウン」の称呼も、やや冗長といえるとしても、よどみなく一連に称呼できるものである。
そうすると、「野村バブコックアンドブラウン」の文字部分は、まとまりよく一体的な構成であって、「野村」の文字部分を省略して取引に資されるとはいい難いこと及びその構成文字のいずれかが強く支配的な印象を有するとすべき特段の事情も見いだせないことから、商号の略称であると認識し把握されるとみるのが自然である。
そして、ほかに構成中の「バブコックアンドブラウン」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ノムラバブコックアンドブラウンカブシキガイシャ」の称呼を生じる他、「株式会社」の文字以外の部分に相応して「ノムラバブコックアンドブラウン」の称呼をも生じるというのが相当であり、本件商標の構成全体からは、「「野村バブコックアンドブラウン」という名称の株式会社」という観念が生じる。また、「株式会社」の部分を除いた「野村バブコックアンドブラウン」の部分からは、特定の観念は生じない。
イ 引用商標
引用商標は、「BABCOCK & BROWN」の欧文字及び記号を横書きしてなるところ、その構成中に半文字程度の空白を有しているとしても、構成各文字等は同じ書体、同じ大きさで表され一連にまとまり良く構成されており、いずれかの文字部分が、看者の注意を引きやすい構成ではなく、外観上一体的に看取されるものである。
そして、当該構成文字は、辞書等に載録された成語とは認められず、また、特定の意味合いを想起させるものとして一般に知られているということもできないものであるから、これより特定の観念は生じない。
したがって、引用商標は、その構成文字部分全体から、「バブコックアンドブラウン」の一連の称呼を生ずるものであって、特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は、外観において、その構成に照らし文字構成に明らかな差異があるから、外観上、明確に区別し得るものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「ノムラバブコックアンドブラウンカブシキガイシャ」及び「ノムラバブコックアンドブラウン」の称呼と引用商標から生じる「バブコックアンドブラウン」の称呼とは、その音数及び音構成において顕著な差異を有するものであるから、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。
そして、観念については、本件商標は、その商標全体から、「野村バブコックアンドブラウンという名称の株式会社」という観念を生じるか、「株式会社」を除く部分において、特定の観念が生じないものであるのに対し、引用商標は、特定の観念を生じないから、本件商標及び引用商標の観念は互いに紛れないか、又は、比較することができないものである。
してみれば、本件商標と引用商標は、観念において、互いに紛れるおそれがないか、又は比較することができないものであり、外観及び称呼において明確に区別できるものであるから、両者の外観、観念及び称呼によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であるというのが相当である。
その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、引用商標に類似しない商標であるから、両商標の指定役務の類否について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであり、また、本件商標と引用商標とは上記(2)のとおり、類似しない商標である。
そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する要件を欠くものであるから、不正の目的について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものということはできない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、本件登録異議の申立てに係る指定役務について、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-06-23 
出願番号 2020063461 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W36)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 馬場 秀敏
板谷 玲子
登録日 2021-05-31 
登録番号 6395792 
権利者 野村バブコックアンドブラウン株式会社
商標の称呼 ノムラバブコックアンドブラウン、ノムラバブコック、ノムラ、バブコックアンドブラウン、バブコック、ブラウン 
代理人 古関 宏 

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