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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W033545
管理番号 1386399 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-08-10 
確定日 2022-07-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6394631号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6394631号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6394631号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、令和元年12月3日に登録出願、第3類「スキンケア用化粧水,スキンケア用乳液,スキンケア用美容液,スキンケア用クリーム及びスキンケア用ローション,目元用のクリーム及びジェル,スキンケア用化粧品,化粧品,スキンケア用のせっけん類,せっけん類,歯磨き,香料,薫料」、第35類「スキンケア用化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,通信販売による商品の売買契約の取次ぎ,インターネットウェブサイトにおけるショッピングモールを介した商品の売買契約の媒介,その他の商品の売買契約の媒介・取次ぎ・代理,通信販売に関する事務の代行・取次ぎ,通信販売のカタログによる広告,その他の広告,通信販売による商品の購入に関する指導・助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供」及び第45類「衣装の選定,ファッションに関する指導・助言又は相談,ファッション情報の提供」を指定商品及び指定役務として、同3年4月21日に登録査定され、同年5月27日に設定登録されたものである。

2 引用商標等
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、次のとおりである。
(1)ア 登録第4297137号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ELLE」の欧文字を横書きしてなり、平成10年3月11日に登録出願、「せっけん類,化粧品」を含む第3類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同11年7月23日に設定登録されたものである。
イ 登録第3011452号商標(以下「引用商標2」という。)は、「ELLE」の欧文字を横書きしてなり、平成4年6月4日に登録出願、第35類「広告,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,新聞の予約購読の取次」を指定役務として、同6年11月30日に設定登録されたものである。
ウ 登録第5443818号商標(以下「引用商標3」という。)は、「ELLE」の文字を標準文字で表してなり、平成20年11月7日に登録出願、「雑誌」、「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第9類、第16類、第35類、第38類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同23年10月14日に設定登録されたものである。
(2)「ELLE」の欧文字からなる商標(以下「申立人商標」という。)
申立人の主張の全趣旨から、申立人が、同人の業務に係るファッション関連及び各種生活関連の商品及び役務を表示するものとして、我が国における需要者の間で広く知られるに至っていたとするものである。
なお、引用商標1ないし3に係る商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。また、以下、引用商標1ないし3をまとめていうときは「引用商標」といい、引用商標及び申立人商標をまとめていうときは「引用商標等」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第72号証(但し、甲第62号証、甲第65号証の19及び甲第65号証の24は欠番である。)を提出した(枝番号を含む。なお、特に断らない限り、証拠番号には枝番号を含む。)。
(1)申立人及びその商標「ELLE(エル)」について
申立人は、フランス最大の複合企業体Lagardere SCA(ラガルデール)の傘下で、女性向けファッション雑誌「ELLE(エル)」を始め各種雑誌を発行し、同時にファッション関連商品及び化粧品・せっけん類など各種生活用品の製造販売や紹介を行う企業である(甲3)。
「ELLE(エル)」は、1945(昭和20)年に、フランスの女性向けファッション雑誌のために、Helene Gorden Lazareff(エレーヌ ゴードン ラザレフ)氏により独自に採択された標章である(甲3)。
雑誌「ELLE(エル)」は、衣料品・身の回り品・化粧品・家具・食器等の多種多様な商品、とりわけ世界的に有名なファッションブランドの商品に関する記事を多数掲載する女性向けファッション雑誌であり、フランスでは第二次世界大戦前から発行されてきたところ、現在では、日本を含む世界46か国において、ライセンス契約又は合弁事業を通じて雑誌「ELLE(エル)」が発行されている。そして、雑誌「ELLE(エル)」に掲載されるファッションは、現代感覚にあふれた「ELLE(エル)」誌独自の特徴を有していることから、「ELLE(エル)」ファッションと呼ばれ、全世界の女性の間で広く支持を得ている(甲4、甲5)。
(2)商標「ELLE(エル)」の著名性について
ア 日本における商標「ELLE(エル)」の継続的使用
申立人は、日本においても、1970(昭和45)年から半世紀に亘り、「ELLE(エル)」を、一貫して自らの業務に係るファッション関連及び各種生活関連の商品・役務を示すものとして、継続的に使用してきた(甲6〜甲12、甲53)。
「ELLE(エル)」誌は、世界のファッション業界の中心地であるフランスで発行され世界各国へ輸出されたものであり、日本でも、上記のとおり1970(昭和45)年以来、半世紀の長期に亘り、幅広く衣料品・身の回り品・化粧品・家具・食器等のファション関連商品の紹介・広告を掲載してきた「ELLE(エル)」誌を通じて、「ELLE(エル)」が、申立人の業務に係る商品・役務を示すブランドとして、本件商標の出願日よりはるか以前から実際に使用され、わが国の需要者の間で広く知られるに至っていたことは明らかである。
イ 商標「ELLE(エル)」を付して販売される商品
申立人は、「ELLE(エル)」ファッションの普及を図るため、「ELLE(エル)」ブランドを用いたファッション関連商品及び化粧品・せっけん類など各種生活用品をライセンシーに商品化させるといった活動も積極的に行い、雑誌「ELLE」においても、「ELLE(エル)」を付したファッション関連商品及び化粧品・せっけん類など各種生活用品等の広告を掲載し、「ELLE(エル)」ブランドの広告宣伝・製造販売及び普及に継続的に努めている(甲6、甲13〜44、甲52〜54、甲56、甲57、甲61、甲63〜72)。
申立人商標「ELLE(エル)」を付した商品は日常生活のあらゆる分野に及んでおり、それ故、「ELLE(エル)」は、各種商品の需要者、つまり若い女性のみならず、男性・子供・孫を持つ男女を含む老若男女幅広い世代に広く知られているということができる。
したがって、申立人商標「ELLE(エル)」は、本件商標の出願日より以前から、衣料品・履物等を始めとするファッション関連商品及び化粧品・せっけん類など各種生活用品の取引者・需要者の間で、「ELLE(エル)」といえば申立人の業務に係る商品・役務を容易に想起させるものとして、広く知られるに至っており、その状態が本件商標の登録査定時においても継続していたことは明らかである。
ウ 商標「ELLE(エル)」の著名性を認めた審決等について
さらに、その著名性は、特許庁においても顕著な事実である(甲45〜甲49、甲58)。
そして、申立人の所有する登録第1978527号の商標「ELLE」を基本商標として、防護標章の登録が認められ(甲50)、特許電子図書館の「日本国周知・著名商標検索」リストにも掲載されている(甲51)。
エ 小括
以上述べた事実、審決における認定及び防護標章登録から、申立人商標「ELLE(エル)」が、本件商標の出願日前から、すでに衣料品・履物等を始めとするファッション関連商品及び化粧品・せっけん類など各種生活用品の分野において周知著名となっており、その状態が本件商標の登録査定時においても継続していたことは、客観的に明らかである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
本件商標の図形部分は、「ELLA」の文字と同色の黄土色で表され、英大文字の「E」のような文字が当該図形の円の部分の内部に表されているように見えるものの、当該図形部分からは、特定の称呼や観念が生じえないから、本件商標の構成中の「ELLA」の文字が独立した自他商品等識別標識として十分に機能するものである。加えて、当該文字部分からのみ称呼・観念が生じることを考慮すると、本件商標の構成中、強く支配的な印象を有するものであることは明白であるから、当該文字部分を抽出し、申立人の保有する引用商標と比較することが許されるべきものである。
イ 引用商標について
引用商標は、いずれも「ELLE」の英文字で構成されており、「ELLE」はフランス語で、「彼女」「(女性名詞をうけて)それ」という意味を有する(甲59)。加えて、引用商標もしくは「ELLE」ブランドを知る需要者・取引者であれば、上述した引用商標の著名性を考慮し、指定商品との関係において、「ファッションブランドのELLE」という観念が生じる。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)観念上の類似
本件商標の構成中の「ELLA」の文字部分は、「彼女」「(女性名詞を受けて、前置詞格で)それ」「(まれに)聖母マリア」といった意味を有するスペイン語の単語である(甲60)。
一方、引用商標は、いずれも「ELLE」の英文字で構成されており、「ELLE」はフランス語で、「彼女」「(女性名詞をうけて)それ」という意味を有する(甲59)。
したがって、本件商標の構成中の「ELLA」の文字部分は、引用商標と同一の観念を生ずるものである。
(イ)称呼上の類似
引用商標は、いずれも「ELLE」の英文字で構成されており、「エル」の称呼が生じる。これに対し、本件商標の構成中、独立した出所識別標識として強く支配的な印象を与える「ELLA」の文字部分からは、「エラ」の称呼が生じる。本件商標の称呼「エラ」は、引用商標の称呼「エル」と、末尾の音が1音相違するものの、相違する音の子音がともにラ行で、母音の違いは、「ア」と「ウ」である。加えて、本件商標は、引用商標と同様に、語頭の「エ」の音にアクセントが置かれるため、本件商標が称呼され、聴覚されるときに需要者にあたえる称呼の全体的印象が、互いに紛らわしいことから、本件商標の称呼は、引用商標と類似する。
(ウ)外観上の類似
引用商標は、いずれも「ELLE」の英文字で構成される商標である。これに対し、本件商標の構成中、独立した出所識別標識として強く支配的な印象を与える「ELLA」の文字部分とは、末尾の「A」を除き、その綴りが共通することから、外観上類似する。
エ 指定商品の類似性について
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品・役務と同一又は類似である。
オ 小括
以上より、本件商標に係る全ての指定商品は、引用商標に係る一部の指定商品・指定役務と同一又は類似する。加えて、本件商標は、称呼・観念・外観のいずれの観点からも引用商標と同一又は類似するものであるため、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
ア 商標の類似性
本件商標の「ELLA」の文字部分は、独立して識別標識として十分に機能するものであるとともに、外観・称呼・観念のいずれの観点においても、引用商標と同一又は類似である。
イ 本件商標の指定商品・役務と申立人保有の引用商標に係る指定商品等との関連性並びに商品の取引者・需要者の共通性
本件商標に係る指定商品・役務は、引用商標に係る一部の指定商品・指定役務と同一又は類似である。よって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品・指定役務の関連性は極めて高いとともに、本件商標に係る指定商品・役務と引用商標に係る一部の指定商品・指定役務の需要者・取引者は共通する。
本件商標に係る第45類の指定役務「衣装の選定,ファッションに関する指導・助言又は相談,ファッション情報の提供」は、引用商標に係る指定商品・役務と形式的には非類似の商品であると解するが、引用商標1に係る指定商品「化粧品」「せっけん類」は、ファッション関連商品であり、その主な需要者は、ファッションに関心の高い一般消費者である点で共通する。加えて、申立人の発行する女性向けファッション雑誌「ELLE」を始め各種雑誌においては、衣料品・身の回り品・化粧品(せっけん類を含む)・家具店食器等のファッション関連商品などを紹介する記事を多数掲載しており、ファッションに関心の高い一般消費者をその読者としている。
さらには、申立人は、1964(昭和39)年以降、「ELLE(エル)」ファッションの普及を図るため、「ELLE(エル)」ブランドを用いたファッション関連商品及び化粧品・せっけん類等各種生活用品をライセンシーに商品化させるといった活動も積極的に行い、本件商標の登録出願時及び登録査定時においても、継続して、複数のライセンシーを通じて、商標「ELLE(エル)」を付したファッション関連商品の製造・販売を永年にわたり継続して行うとともに、その広告を行っている(甲13〜20、甲22〜43、甲52〜54)。実際、本件商標に係る指定商品のうち「化粧品」「せっけん類」についても、申立人のライセンシーが、商標「ELLE(エル)」の使用許諾を得た上で、製造・販売及びその広告を行っている。
してみれば、本件商標の第45類の指定役務と引用商標1に係る第3類の「化粧品,せっけん類」とは、相当な部分において取引者・需要者を共通にするといえるから、関連性を有する商品であるといえる。
ウ 出所混同のおそれ
引用商標「ELLE」の著名性は、上記において既述のとおりである。また、本件商標の指定商品・指定役務の取引者層・需要者層と申立人の業務に係る商品・役務の取引者層・需要者層は共通しているから、本件商標の指定商品・指定役務の取引者・需要者が、引用商標及び申立人がその商標を付して提供している商品・役務を知っている可能性は極めて高い。
そして、本件商標は、既述のとおり、取引者・需要者において、世界的に著名な引用商標を容易に想起・連想させる類似の商標である。したがって、本件商標がその指定商品・指定役務について使用された場合、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標から、これと類似する著名な商標である引用商標を容易に想起・認識し、申立人又はこれに関連する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同して認識するおそれは高いというべきである。
エ 引用商標に化体した信用を害されるおそれ
本件商標の登録が維持されると、申立人と何ら関係のない者により、引用商標と類似する商標、すなわち本件商標が自由に使用されてしまうことになる。その結果として、劣悪な品質の商品・役務が引用商標と類似する商標によって提供されるという事態が生じ得ることも否定できない。
このような事態が生じた場合、申立人が永年にわたり多大な努力を費やして培ってきた「ELLE(エル)」のブランドイメージが著しく毀損され、申立人が多大な損害を被ることは明白である。
オ 小括
上述の事情及び引用商標の著名性を総合的に勘案すれば、需要者・取引者に対し、引用商標が与える印象は非常に強く、そのために生じる連想作用等により、本件商標が、申立人の業務に係る商品・役務であると誤認し、その商品・役務の需要者・取引者が商品の出所について混同するおそれがあるのみならず、申立人又は申立人と経済的・組織的に関連するものにより提供される商品・役務であるかのような誤認を生じさせ、結果として商品の出所に混同を生じさせるおそれがあることは明白であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標等の周知著名性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、女性向けファッション雑誌「ELLE」を始め各種雑誌を発行し、ファッション関連商品及び各種生活用品などの製造販売や紹介を行うフランスの企業である(甲3)。
(イ)我が国においては、昭和57年(1982年)に雑誌「ELLE」の日本版として雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」が発行されて以後、月刊誌として本件商標の登録出願時頃まで発行されている(甲7〜9、甲52、甲56)。
(ウ)雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」は、主にファッション・美容・ライフスタイル関連記事を取り扱い、近年の発行部数は約10万部であった他、同「ELLE DECOR(エル・デコ)」はインテリア・建築・デザイン関連の記事を、同「ELLE gourmet(エル・グルメ)」は食(食材・キッチン用品・国内外のショップ及びレストラン等)に関わる記事を、同「ELLE meriage(エル・マリアージュ)」は結婚情報(ドレス・リング・ヘアメイク・結婚式場等)に関連する記事を主に取り扱い、発行部数は、それぞれ、約7万部、約6万部、約7万部であった(甲9〜12、甲55)。上記雑誌の表紙の上部には、申立人商標「ELLE」が表示されている(甲7、甲9〜12、甲52ほか)。
(エ)我が国において、申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者(以下、ライセンシーを含め「申立人ら」という。)は、遅くとも昭和62年(1987年)頃から本件商標の登録出願時及び登録査定時に至るまで、被服、アクセサリー、バッグなどのファッション関連商品や化粧用具、せっけん類などの生活用品など、多種の商品を販売しており、それらの商品や広告の多くには申立人商標が表示されている(甲13〜20、甲22〜43、甲52〜54ほか)。
申立人のライセンシーの数は、2015年(平成27年)から2018年(平成30年)に30社前後で推移し、2019年(平成31年、令和元年)に24社であることなどがうかがえ(甲21、甲61、甲66〜69)、その品目として、各種の衣服、アクセサリー、バッグ、化粧雑貨、せっけんなどが挙げられている(甲21)。
そして、「ELLE」の文字を含む標章にかかるライセンス商品(被服、靴、せっけんなど)の売上げは、平成29年(2017年)に40数億円などである(甲65ほか。但し、甲65の19及び同24は欠番。)。
イ 上記アからすれば、申立人商標は、申立人の発行する雑誌及び申立人らが被服などのファッション関連商品や生活用品などの商品について使用する商標として、本件商標の登録出願時には、既に我が国において需要者の間に広く認識されていたものといえ、その状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたというのが相当である。
また、「ELLE」の欧文字からなる引用商標1及び3は、申立人商標が使用される上記商品及びこれに係る役務(雑誌、被服などのファッション関連商品や生活用品などの商品及び当該商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供)の限度において、申立人商標と同様に需要者の間に広く認識されていたものといえる。
しかしながら、引用商標2は、それがその指定役務について使用されていることが確認できないから、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、図形部分と文字部分とは、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいい難く、視覚的に分離して観察されるものであり、図形部分と文字部分を常に一体として把握すべき特段の事情も認められない。
そして、本件商標の図形部分からは特定の称呼及び観念は生じない一方、「ELLA」の文字部分は、「彼女」の意味を有するスペイン語であるとしても、我が国において親しまれた語ではないから、特定の意味合いを認識させない造語を表したものと理解されるものであり、これよりは特定の観念を生ずるものとはいえず、また、そのつづりからすれば英語読み風に発音されるのが自然であるから「エラ」の称呼を生ずるものである。
してみれば、本件商標は、「エラ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものというべきである。
イ 引用商標
引用商標1及び2は、それぞれ「ELLE」の欧文字をセリフ体の書体で横書きしてなり、また、引用商標3は「ELLE」の欧文字を標準文字で表してなるものであるところ、そのつづりからすれば英語読み風に発音されるのが自然であるから、その構成文字に相応して「エル」の称呼を生じるものである。また、上記(1)イのとおり、「ELLE」の文字からなる引用商標1及び3は、申立人商標「ELLE」が使用される商品及びこれに係る役務の限度において、需要者の間に広く認識されているものであることからすれば、引用商標1及び3からは、当該商品及び役務との関係において「(ブランドとしての)ELLE」の観念を生じるものであり、引用商標2は、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないから、特定の意味合いを認識させない造語を表したものと理解されるものであり、これよりは特定の観念を生ずるものとはいえない。なお、申立人主張のように、「ELLE」の文字が「彼女」の意味を有するフランス語であるとしても、我が国において当該意味をもって親しまれた語とはいえないから、引用商標から当該観念を生ずるものとはいえない。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の外観を比較すると、全体の外観構成においては、図形の有無という顕著な差異があり、文字部分の比較においても、いずれも4文字と構成文字数が少ないものであるから、4文字目における「A」と「E」の文字の字形の差異を有することにより十分区別することができるため、外観上互いに紛れるおそれはない。
また、本件商標から生じる「エラ」の称呼と引用商標から生じる「エル」の称呼とを比較すると、両称呼は語尾において「ラ」と「ル」の音の差異を有するところ、両音は、いずれもラ行音に属するものの、母音である「a」と「u」とでは、その調音方法を異にするものであるから、共に2音の短い音構成からなる両称呼に与える影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語感が異なり、互いに聴別し得るというのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標は特定の観念が生じないものであるところ、引用商標1及び3は、「(ブランドとしての)ELLE」の観念を生じる場合があり、引用商標2は特定の観念が生じないものであるから、両商標は、観念上、相紛らわしいものとはいえないか比較することができないものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、観念において相紛れるおそれがないか比較できないものであり、外観及び称呼において明確に区別できるものであるから、外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。なお、ほかに、両商標の間で商品及び役務の出所の混同を生じるおそれがあるとみるべき特段の事情は見いだし得ない。そうすると、両商標は、互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、引用商標に類似しない商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務の類否について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
前記(1)イのとおり、申立人商標は、申立人の発行する雑誌及び申立人らが被服などのファッション関連商品や生活用品などの商品について使用する商標として、需要者の間に広く認識されているものであり、また、引用商標には、申立人商標が使用される上記商品及びこれに係る役務の限度において、需要者の間に広く認識されているものを含むとしても、本件商標は、引用商標とは、上記(2)のとおり、類似しない別異の商標と認められるものであり、引用商標と同じ文字綴りからなる申立人商標とも類似しない別異の商標といえる。
そうすると、商標権者が本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すれば、引用商標等を連想又は想起しないものであって、その商品及び役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同法第4条第1項の規定に違反してなされたものとはいえないものであり、他に同法43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲 本件商標(色彩は原本参照。)



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異議決定日 2022-06-29 
出願番号 2019151740 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W033545)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 板谷 玲子
齋藤 貴博
登録日 2021-05-27 
登録番号 6394631 
権利者 フォーサイテック株式会社
商標の称呼 エラ、エッラ 
代理人 稲垣 朋子 
代理人 竹中 陽輔 
代理人 達野 大輔 
代理人 中山 真理子 

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