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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W30
管理番号 1386393 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-28 
確定日 2022-07-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第6372876号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6372876号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6372876号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成31年4月9日に登録出願、別掲2のとおり、第29類、第30類及び第43類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和3年3月24日に登録査定され、同年4月5日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,氷,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,香辛料,コーヒー豆,穀物の加工品,チョコレートスプレッド,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,調理済みの米飯,調理済みのカレーライス,調理済みのカツレツ入りカレーライス,ハヤシライス,オムライス,即席菓子のもと,パスタソース,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用グルテン,食用粉類」(以下「申立商品」という。)について、商標法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
(1)具体的理由
本件商標は、不定形の赤色地にやや小さめの「GRILL」の文字を上段に、大きめの「SwiSS」の文字を下段に白抜きで表してなるものである。
ア このうち「GRILL」は、例えば、「コトバンク、グリル」に引用された小学館・デジタル大辞泉(株式会社小学館)「グリル」は「(ア)肉や魚の焼き網。また、それで焼いた料理。(イ)「grill room」からホテルなどの、洋風の一品料理などを供する軽食堂。」と説明されている(甲1)。
すなわち、申立商品との関係においては、その商品の製造の方法若しくは場所、又は販売場所を示すものである。
イ 次に、「SwiSS」の文字列は、地理的名称の「スイス連邦」を表したものと認識される(甲2、甲3)。
スイス連邦(以下「スイス」という。)は観光国として知られるところであるが、下記(ア)ないし(ウ)のウェブサイトでも紹介されているように、古くからチョコレートなどの菓子類を始めとする食品の産地、販売地として広く知られている。それ故に、それらの多くが日本国内に輸入・販売されている(甲4〜甲6)。
(ア)ウェブサイト「TRAVEL STAR」内のページ「スイスの人気お土産ランキング!有名チョコレートや雑貨などおすすめ商品を厳選!」において、「スイスのおすすめ人気お土産ランキング2は、お菓子の「マンデルベーリ」です。グラッツというお菓子店で、人気がありくまの形をしたかわいい焼お菓子です。」などと記載されている(甲4)。
(イ)ウェブサイト「macaroni」内の「おでかけ 外食ジャンル スイーツ(カフェスイーツ)スイスの有名チョコレートブランド6選。老舗の味や日本で買える人気の品まで」において、「スイスはチョコレート大国!」、「リンツは世界120か国以上で愛されているチョコレートブランドですので、日本にも関東甲信越地方を中心に店舗がたくさんあります。また、成城石井やカルディなどの輸入食品を扱っているお店などでも、リンツのチョコレートを購入することが可能です。もちろんオンラインショッピングでの購入もできますよ。」、「チューリッヒの工場から毎週空輸で送られてくるチョコレートは、日本でも本場のチョコレートをそのまま味わえます。」などと記載されている(甲5)。
(ウ)ウェブサイト「トラベルjp」内の「スイスのお土産はチョコレートでいかが?おすすめのチョコブランド8選」において、「世界有数のチョコレート大国スイス。」、「日本で最も有名なスイスのチョコレートと言えば、恐らく「リンツ(Lindt)」ではないでしょうか。」などと記載されている(甲6)。
ウ ところで、パリ条約第9条では商標・商号の不法付着の取締について定め、同10条は下記のように定めている。
第10条 原産地等の虚偽表示の取締「(1)前条の規定は、産品の原産地又は生産者、製造者若しくは販売人に関し直接又は間接に虚偽の表示が行われている場合についても適用する。(2)(1)の産品の生産、製造又は販売に従事する生産者、製造者又は販売人であって、原産地として偽って表示されている土地、その土地の所在する地方、原産国と偽って表示されている国又は原産地の虚偽の表示が行われている国に住所を有する者は、自然人であるか法人であるかを問わず、すべての場合において利害関係人と認められる。」
また、TRIPS協定(Agreement on Trade−Related Aspects of Intellectual Property Rights)第22条において、商品の確立した品質、社会的評価その他の特性がその生産地の地理的な要素に主として由来する場合の生産地を特定する地理的表示を、知的財産権として保護することが規定されている(甲7)。これらを受けて、我が国では不正競争防止法第2条第1項第20号(旧第13号)は、商品等の原産地について誤認を生じさせるような表示をする行為を「不正競争」と定義して、その行為の差止請求権、損害賠償請求権などについて定めている。そうして、商標法第4条第1項第16号ではそのような商標の登録を禁じている。
そして、国家名は、商品や役務に使用された場合、その性質上生産地や販売地、役務の提供地を示すものであり、その商品や役務の特性がその地と深い関係を有する場合には、それらの品質や質をも表示することとなるものである。それ故、化粧品等についての商標「Hollywood\ハリウッド」、「コート(被服)」についての「SANYO SCOTCH\サンヨースコッチ」、時計についての「SWISSTEX」などは商品の品質において誤認を生ずるおそれがあるものとされる(甲8〜甲10)。
これを本件商標についてみると、目立つ態様で「SwiSS」の文字を表しており、それ自体スイスを示すのであり、ことさらに赤い地色に白抜きして表した態様は、スイスの国旗の図柄と共通であり、これらより、需要者をしてスイスを直観させるものと言わざるを得ない。
そうすると、本件商標を申立商品について使用すると、それらの商品があたかもスイスにおいて製造され、販売されたものであるかのように誤認を生ずることは必至である。
エ なお、商標権者は、本件商標の審査過程において、昭和22年に東京都中央区銀座において「グリルスイス」の名で西洋料理店の業務を開始し、平成14年頃に「銀座スイス」に変更したと述べた上、本件商標を、少なくとも同3年以来、令和2年に至るまで継続して使用した結果、日本全国で周知、著名となった旨主張している。
しかし、このような使用は、「かつカレー」を中心とした「飲食物の提供」の範囲におけるものであって、東京都中央区銀座の地においてなされたにすぎないから、周辺以外の地域において、また少なくとも飲食料品の製造又は販売について、本件商標において周知性が獲得されたとは俄かに信じがたいといわざるを得ない。
そもそも本件商標は、先に述べたようにその生産地、販売地がスイスであることを表示するものであるから、その使用自体が、不正競争防止法第2条第1項第20号(旧第13号)に該当する行為であり、その使用事実をもってして周知性を獲得したと主張するのは不当である。
(2)結び
以上より、本件商標をその指定商品(決定注:「申立商品」の誤記と認める。)に使用するときは、商品の生産地、販売地について誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号の規定に該当するものであったにも関らず商標登録されたものであり、同法第43条の2第1号の規定により取消されるべきである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、別掲1のとおり、赤色地で4辺が波形の長方形(以下「図形部分」という。)内に「GRILL」及び「SwiSS」(「S」の文字は大文字で表されている。)の文字を二段で白抜きで表した構成からなるところ、「GRILL」の文字は、「肉や魚の焼き網。また、それで焼いた料理」等の意味(甲1)を、「SwiSS」の文字は、国名の「スイス連邦」を意味する「Swiss」を認識、理解するものである(甲2、甲3)。
そうすると、「GRILL」及び「SwiSS」の文字は、申立商品との関係においては、共に商品の出所識別標識としての機能は弱いというべきであり、両語間に軽重の差はない。
さらに、「GRILL」及び「SwiSS」の各文字は、上記した意味合いを有するとしても、これらを組み合わせた文字からは、称呼については「グリルスイス」の称呼を生じ、観念については特定の観念を生ずるものではなく一種の造語を表したものとみるのが相当であって、「SwiSS」の文字が申立商品の具体的な品質を表示するものとはいえない。
また、図形部分は、特定の称呼及び観念を生じない。
してみれば、本件商標は、図形部分内にまとまりよく文字を配置した構成よりなり、当該文字部分は一連一体の造語を表してなると看取できるものであって、本件商標の構成中の「SwiSS」の文字が、申立商品の品質(生産地、販売地等)を表したものであると認識することはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
(2)申立人の主張について
申立人は、本件商標は、「SwiSS」の文字が、産地、販売地を表すものであるから、その使用自体が、不正競争防止法第2条第1項第20号に該当すると主張する。
しかしながら、本件商標は、「SwiSS」の文字が、申立商品の品質(生産地、販売地等)を表したものといえないことは上記のとおりであるから、申立人の主張は採用することはできない。
(3)小活
以上によれば、本件商標をその指定商品及び指定役務中、申立商品に使用した場合であっても、その取引者、需要者は、商品の品質(生産地、販売地等)を表したものであると認識することはなく、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものではなく、その指定商品及び指定役務中、申立商品についての登録は、同項の規定に違反してされたものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
別掲
別掲1 本件商標(色彩は、原本を参照。)


別掲2 本件商標の指定商品及び指定役務
第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,ハンバーグステーキ,ポークカツレツ,ビーフカツレツ,ビーフステーキ,コロッケ,エビフライ,メンチカツ,加工野菜及び加工果実,野菜サラダ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」
第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,氷,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,香辛料,コーヒー豆,穀物の加工品,チョコレートスプレッド,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,調理済みの米飯,調理済みのカレーライス,調理済みのカツレツ入りカレーライス,ハヤシライス,オムライス,即席菓子のもと,パスタソース,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用グルテン,食用粉類」
第43類「飲食物の提供」

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-06-29 
出願番号 2019049456 
審決分類 T 1 652・ 272- Y (W30)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 小俣 克巳
板谷 玲子
登録日 2021-04-05 
登録番号 6372876 
権利者 株式会社銀座スイス
商標の称呼 グリルスイス、グリル 
代理人 中田 和博 
代理人 前川 素子 
代理人 中 大介 
代理人 青島 恵美 
代理人 神蔵 初夏子 
代理人 青木 博通 
代理人 富所 英子 
代理人 片山 礼介 
代理人 鈴木 薫 

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