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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W10
管理番号 1386391 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-12 
確定日 2022-06-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第6355568号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6355568号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第6355568号商標(以下「本件商標」という。)は、「ADINIZER」の欧文字を標準文字で表してなり、令和2年9月29日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同3年2月5日に登録査定、同月24日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、「Adinizer」の文字からなり(以下「引用商標」という。)、申立人が商品「脂肪組織を微細化・均質化・フィルタリングするためのキット」等に使用するものである。
なお、申立人は、韓国における「Adinizer」の文字からなる商標の商標権者であり、これは韓国商標登録第40−1504791号として、2018年(平成30年)11月1日登録出願、「脂肪吸引装置(参考訳)」等を含む第10類の商品を指定商品として、2019年(令和元年)7月30日に登録されたものである(甲2、甲3)。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号について
申立人は、韓国における「Adinizer」の文字からなる商標の商標権者である(甲2、甲3)。
申立人がCEOを務める韓国企業(BSL CO.,LTD、BSLカンパニーリミテッド。以下「BSL社」という。甲4、甲5)は、数々の国際的な医療展示会において、引用商標を使用した商品を出品してきた(甲4)。
「Adinizer」は脂肪組織を微細化・均質化・フィルタリングするためのキット等について商標として使用され(甲6、甲7)、2017年に特許を取得し、200以上の臨床試験と400以上の臨床分析が行われている優れた技術である(甲7)。例えば、2020年1月30日ないし2月1日にパリで開催されたIMCAS(International Master Course On Aging skin、世界皮膚老化会議)のIMCAS World Congress 2020(甲8)において、BSL社はスポンサーリストに掲載され(甲9)、BSL社のプロフィールのページでは引用商標が使用されている(甲10)。
このような積極的なプロモーションの結果、商標「Adinizer」は、日本のみならず、世界的に需要者(医師等の医療従事者や医療機器の販売者等)の間に広く認識されている商標となっており(甲4、甲8〜甲10)、個人輸入代行サイトにおいても本件商標の出願日前に製造された、引用商標を使用した商品が取り扱われている(甲11)。
本件商標の商標権者の代表取締役であるA氏(甲12)は、申立人がCEOを務めるBSL社の「Adinizer」製品に関心を持ち、「Adinizer」製品が既に日本で流通しているか否か、代理店によって代理されているか否かについて関心を持っている旨、及び商標権者が医療装置の輸入のライセンスを有しており、規制当局の承認を受けることができる旨を2019年9月9日に申立人側の関係者にEメールで連絡し、その後のEメールにおけるやりとりにおいて、BSL社の「Adinizer」製品について独占的な販売権を取得することを希望している旨を伝え、品質を確認するため等の理由により「Adinizer」製品を購入している(甲5、甲13〜甲15)。
その後、本件商標の商標権者は、申立人及びBSL社の承諾を受けることなく、本件商標について出願し、登録を受けた(甲1)。
A氏は、本件商標の商標登録後に、申立人に対し、本件商標権者が日本において、本件商標のみならず、BSL社が使用していた商標「ARAT」及び「MEST」(甲7)についても商標登録を取得していることを伝え、これらの商標登録に対する侵害については法的措置をとる旨の警告を行っている(甲16〜甲18)。
また、本件商標権者が過去に行った登録出願に関し、他人の周知商標と同一又は類似の商標を不正の目的をもって使用するものである旨の拒絶理由通知書に対し、応答なく拒絶査定となっている(甲19〜甲26)。
A氏による上記の警告、及びBSL社が使用していた本件商標、「ARAT」及び「MEST」の3商標についての出願の状況からも、本件商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に該当することが明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
引用商標は、本件商標の出願日前には、申立人又は申立人がCEOを務める韓国企業BSL社の商標として広く一般に知られるものとなっており(甲4、甲8〜甲11)、本件商標の指定商品は、引用商標が使用されている商品と同一又は類似するものである。
本件商標の指定商品は、第10類「医療用機械器具」であり、特定の市場においてのみ流通する商品であって、取引形態が特殊な商品といえる。
したがって、需要者である医師等の医療従事者や医療機器の販売者等に広く知られていれば、周知性があると判断されるべきものである。
よって、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似する商標であって、その商品と同一又は類似する商品について使用をするものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標「ADINIZER」と引用商標「Adinizer」とは極めて類似性が高く、ほぼ同一である。
イ BSL社による積極的なプロモーションの結果、商標「Adinizer」は、日本のみならず、世界的に需要者(医師等の医療従事者や医療機器の販売者等)の間に広く認識されている商標となっている(甲4、甲8〜甲11)。
ウ 引用商標は、「Adipose−tissue」(脂肪組織)の「Adi」及び「micronizer」(超微粉砕機)の「nizer」に由来する造語である(甲10)。
エ 引用商標の使用商品である、脂肪組織を微細化・均質化・サイズ調整・フィルタリングするためのキット(甲6、甲7)等は、本件商標「ADINIZER」の指定商品である第10類「医療用機械器具」に相当し、同一といえ、極めて関連性が高い。
オ 本件商標の指定商品である第10類「医療用機械器具」の需要者と、引用商標の使用商品である第10類「医療用機械器具」(脂肪組織を微細化・均質化・サイズ調整・フィルタリングするためのキット)(甲6、甲7)等の需要者は共通性があり、また、特定の市場においてのみ流通する商品であって、取引形態が特殊な商品といえる。
カ 引用商標は外国においても著名であり、「Adinizer」製品はBSL社の製品として広く認識されており(甲4、甲8〜甲10)、個人輸入代行サイトにおいても本件商標の出願日前に製造された、引用商標を使用した商品が取扱われている(甲11)。
上記アないしカを考慮すると、本件商標は、申立人及び申立人がCEOを務めるBSL社の業務に係る商品であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある場合のみならず、申立人及び申立人がCEOを務めるBSL社と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品等であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
ア 本件商標と引用商標とは極めて類似性が高く、ほぼ同一である。
イ 引用商標は、日本のみならず、世界的に需要者(医師等の医療従事者や医療機器の販売者等)の間に広く認識されている商標となっている(甲4、甲8〜甲11)。
ウ 引用商標は、造語である(甲10)。
エ 本件商標権者は、BSL社の「Adinizer」製品(甲6、甲7)に関心を持ち、「Adinizer」製品が既に日本で流通しているか否か、代理店によって代理されているか否かについて関心を持っている旨、及び本件商標権者が医療装置の輸入のライセンスを有しており、規制当局の承認を受けることができる旨を2019年9月9日に申立人側の関係者にEメールで連絡し、その後のEメールにおけるやりとりにおいて、BSL社の「Adinizer」製品について独占的な販売権を取得することを希望している旨を伝え、品質を確認するため等の理由により「Adinizer」製品を購入している(甲5、甲13〜甲15)。
オ 本件商標権者は、本件商標の商標登録後に、申立人に対し、本件商標権者が日本において、本件商標のみならず、BSL社が使用していた商標「ARAT」及び「MEST」(甲7)についても商標登録を取得していることを伝え、これらの商標登録に対する侵害については法的措置をとる旨の警告を行っている(甲16〜甲18)。
カ 本件商標は不正の目的をもってなされたことが明らかである。
キ 引用商標「Adinizer」は外国においても著名であり、「Adinizer」製品はBSL社の製品として広く認識されており(甲4、甲8〜甲10)、個人輸入代行サイトにおいても本件商標の出願日前に製造された、引用商標を使用した商品が取扱われている(甲11)ことから、商標権者が本件商標を使用した場合、BSL社の使用により引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を棄損させるおそれがある。
上記アないしキから、本件商標は、申立人及び申立人がCEOを務めるBSL社の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

4 当審における取消理由
当審において、令和4年2月21日付けの取消理由通知書によって、商標権者に対し、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する旨の取消理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

5 本件商標権者の意見
上記4の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べていない。

6 当審の判断
(1)申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人及び申立人が使用する商標について
(ア)申立人の主張によれば、申立人はBSL社のCEO(最高経営責任者)である。また、「Adinizer」の文字からなる商標(韓国商標登録番号 40−1504791)の商標権者でもある(甲2、甲3)。
(イ)BSL社が2019年2月28日及び2020年4月17日に作成した各パンフレットには、引用商標を表示した「脂肪組織を微細化・均質化・フィルタリングするためのキット」等の商品が掲載された(甲6、甲7)。
(ウ)2020年1月30日ないし同年2月1日には、世界皮膚老化会議(IMCAS)がパリで開催されたところ、世界皮膚老化会議(IMCAS)のウェブサイトに掲載されているスポンサーリストによれば、BSL社は、319社あるスポンサーのうちの一社として掲載されており、同ウェブサイトのBSL社のプロフィールのページには、「Product/Device」(製品/デバイス)の欄に、「Adinizer」がデバイスとして挙げられており、「Adinizer」は、「Adipose−tissue micronizer」(「Adipose−tissue」(脂肪組織)「micronizer」(超微粉砕機))の、「Adi」部分と「nizer」部分とを組み合わせた語であることが記載されている(甲8〜甲10)。
(エ)個人輸入代行サイト「Bidbuy Japan」において、「脂肪移植のための脂肪マイクロナイザー Adinizer」が出品されたところ(出品日は不明。)、その商品の外装には、「Adinizer」はBSL社が製造者であって、2019年5月27日に製造されたものである旨表示されている(甲11)。
イ 本件商標権者と申立人の関係について
(ア)2019年9月9日から同年12月1日の間、本件商標権者の代表取締役であるA氏(甲12)は、BSL社の担当者とEメールを通じて以下aないしc等のやりとりをし(甲5)、また、2019年11月28日にBSL社は「Adinizer」製品をA氏へ発送した(甲13〜甲15)。
a 2019年9月9日付けのメールにおいて、A氏は、BSL社の担当者に、BSL社の「Adinizer」製品が既に日本で流通しているか、代理店は既に決まっているかという点に関心がある旨及びA氏が所有する会社が医療機器の輸入のライセンスを有しており、規制当局の承認を受けることができる旨を連絡した。
b 2019年9月30日付けのメールにおいて、BSL社の担当者は、A氏に対し、試験使用のためにキットを購入することを勧め、A氏がそれを試して確信をもってから独占的販売権に関して話合うという考えに同意する旨伝えた。
c 2019年12月1日付けのメールにおいて、A氏は、BSL社の担当者に独占的な販売権等について検討したい旨を伝えている。
(イ)本件商標「ADINIZER」は、2020年(令和2年)9月29日に出願された(甲1)。
(ウ)2021年1月28日に、A氏は、BSL社の担当者に対し、本件商標権者が日本において、本件商標等について商標登録を取得していることを伝え、これらの商標登録に対する侵害についての法的措置をとる旨の警告を行った(甲16)。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標は、商標登録を受けることができない旨規定しているところ、同規定の趣旨からすれば、(a)当該商標の構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字、図形である場合など、その商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、(b)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(c)当該商標ないしその使用が特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反するものである場合がこの規定に該当することは明らかであるが、それ以外にも、(d)特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も、この規定に該当すると解するのが相当である(東京高等裁判所平成16年(行ケ)第7号、平成16年12月21日判決参照)。
そこで、本件についてみると、本件商標は、前記1のとおり、「ADINIZER」の欧文字を標準文字で表してなるのに対し、引用商標は、前記2のとおり、「Adinizer」の欧文字からなるものであり、本件商標と引用商標とは、語頭の「A」以外の文字に、大文字と小文字の差異を有するものの、その差異は、微差にすぎず、両者はつづりを同じくするものである。
そうすると、本件商標は、引用商標と近似する構成文字からなるものといわなければならない。
また、本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品は、前記1及び2のとおり、いずれも医療用の機械器具である。
さらに、BSL社は、上記(1)アのとおり、本件商標の登録出願前から、引用商標を「脂肪組織を微細化・均質化・フィルタリングするためのキット」等の商品について使用していた。
一方、本件商標権者の代表取締役であるA氏は、上記(1)イのとおり、2019年9月9日からEメールにおけるやりとりにおいて、BSL社の「Adinizer」製品について独占的な販売権を取得することを希望している旨を伝えるとともに、試験使用のためのキットを購入したものであるから、引用商標の存在を認知していたことは明らかである。
その後、本件商標権者は、2020年9月29日に本件商標を登録出願し、2021年1月28日には、A氏は申立人に対し、商標権侵害について法的措置をとる旨の警告を行っている。
以上からすると、本件商標権者は、申立人と一定の取引関係にあり、その取引関係において、引用商標が本件商標の登録出願前から申立人によって商品「脂肪組織を微細化・均質化・フィルタリングするためのキット」等に使用されていたことを認知していながら、引用商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、これと近似する本件商標を申立人の承諾を得ずに登録出願をし、登録を得たものであるから、本件商標権者は、引用商標を剽窃したものといわざるを得ない。
そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることは、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-05-19 
出願番号 2020120353 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W10)
最終処分 06   取消
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 小林 裕子
小松 里美
登録日 2021-02-24 
登録番号 6355568 
権利者 ジェイ・ヒューイット株式会社
商標の称呼 アディナイザー、アディニゼル 
代理人 恩田 誠 
代理人 恩田 博宣 

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