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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1386388 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-11 
確定日 2022-04-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第6328633号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6328633号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6328633商標(以下「本件商標」という。)は、「Findbetter」の文字を標準文字で表してなり、令和元年9月19日に登録出願、第9類「3D眼鏡,音声・映像受信機,バッテリーチャージャー,コンピュータ,スマートフォン用のカバー,電子書籍リーダー,小型電子翻訳機,眼鏡,スマートフォン用保護フィルム,スマートフォン,手首固定型のスマートフォン,測量器具,身体装着式携帯情報端末,電線」及び第14類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同2年11月30日に登録査定、同年12月14日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、引用する商標(以下、まとめていうときは「引用商標」という。)は、以下のとおりである。
(1)国際登録第1483491号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:Find
国際登録出願日:2019年(平成31年)1月15日
指定商品及び指定役務:日本国を指定する国際登録において指定された第9類及び第35類に属する商品及び役務
(2)国際登録第1436022号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:Find X
国際登録出願日:2018年(平成30年)8月9日
優先権主張:2018年4月13日(China)
設定登録日:令和2年12月4日
指定商品:第9類「Computer software, recorded; data processing apparatus; interactive touch screen terminals; chronographs [time recording apparatus]; facsimile machines; body fat scales for household use; measures; intercommunication apparatus; cell phones; smartphones; covers for smartphones; protective films adapted for smartphones; selfie sticks for use with cell phones; DVD players; headphones; cameras [photography]; selfie sticks [hand-held monopods]; USB cables; materials for electricity mains [wires, cables]; electrical adapters; batteries, electric; rechargeable batteries; personal digital assistants in the shape of watch; smartphone software applications, downloadable; smart rings; facial recognition apparatus; biometric scanners; neon signs; wireless speakers; learning machine; virtual reality headsets; electronic chips; touch screens; eyeglasses.」
なお、引用商標1に係る国際商標登録出願は、現在、審査に係属中であり、引用商標2に係る商標権は、現に有効に存続している。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定商品中、第9類「全指定商品」について商標法第8条第1項、同法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第52号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第8条第1項について
ア 本件商標と引用商標1の類否について
本件商標は、その構成から、「見つける、発見する」等の語義を有する英語「Find」の語と、「Good」の比較級であって、質などがより良いことを意味する品質表示の「better」の語を組み合わせてなるものと容易に理解することができる。すなわち、本件商標の「better」の文字は、品質を表示する語であることから、自他商品の識別標識としての機能が極めて弱い語であるといえ、本件商標は、語頭に表された「Find」の文字部分が強く印象づけられる。
そうすると、本件商標が称呼される場合には、構成全体より「ファインドベター」の称呼が生じるほか、「Find」の文字部分より「ファインド」の称呼が生じ、また、該文字部分より「見つける、発見する」程の観念が生じるといえる。
他方、引用商標1は、「Find」の文字を横書きに表してなり、その構成文字に相応して「ファインド」の称呼及び「見つける、発見する」程の観念が生じる。
してみれば、本件商標と引用商標1とは、欧文字「Find」を共通にし、当該語が単独で商標として機能し得るから、両商標は外観上相紛れるおそれのある類似の商標と考えるのが相当である。
次に、両商標から生じる称呼を比較すると、本件商標の構成全体から生じる「ファインドベター」の称呼はやや冗長であり、また、「better」の文字部分は自他商品識別力が弱く、語頭に配された「Find」の文字部分が強く印象づけられることからすれば、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際においては、構成文字全体から「ファインドベター」の称呼が生じるほか、「ファインド」の称呼も生じるといえる。
そうすると、本件商標と引用商標1は、「ファインド」の称呼を共通にし、称呼上も相紛れるおそれのある類似の商標と考えるのが相当である。
また、観念についてみても、本件商標は「Find」の文字部分が強く印象づけられることからすれば、該文字部分より「見つける、発見する」程の観念が生じるといえ、本件商標と引用商標1は「見つける、発見する」程の観念を共通にし、観念上も相紛れるおそれのある類似の商標と考えるのが相当である。
イ 指定商品の類否について
本件商標の指定商品中、第9類「スマートフォン用のカバー,スマートフォン用保護フィルム,スマートフォン,手首固定型のスマートフォン,身体装着式携帯情報端末,コンピュータ,測量器具」は、引用商標1の指定商品中に同一又は類似する商品が包含されている。
ウ 以上より、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても引用商標1と相紛れるおそれのある類似の商標であることは明らかであり、また、本件商標は、引用商標1の指定商品中の第9類の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものである。
そして、引用商標1の先願権発生日は、その国際登録の基礎となる中国商標の登録出願日であるところ、本件商標の登録出願日は、令和元年9月19日であり、引用商標1の後願にあたる。
したがって、本件商標は、商標法第8条第1項の規定に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人について
申立人は、中華人民共和国に所在し、「OPPO」の名称で知られているスマートフォン市場における大手企業である。2003年(平成15年)に設立され、2008年(平成20年)に携帯電話事業、2011年(平成23年)にスマートフォンの事業に参入しスマートフォンの製造・販売を行っており、40以上の国や地域の市場をカバーする世界的企業である(甲4〜甲7)。申立人が提供するスマートフォンは特に、若者を中心として流行の自撮り機能を強化した端末として著名性を獲得し、2016年には世界シェア4位の地位を占め、世界的なスマートフォンブランドとして認知されるに至っている。米国の調査会社「IDC」の調査によると、申立人のスマートフォンの出荷台数及び市場シェアは、2016年第1四半期に1,850万台 5.5% 世界第4位、2017年第3四半期に3,060万台 8.1% 世界第4位、2018年第3四半期に2,990万台 8.4% 世界第5位、2019年第4四半期に3,060万台 8.3% 世界第5位、2020年第4四半期に3,380万台 8.8% 世界第4位を記録している(甲8〜甲10)。
また、中国における申立人のスマートフォンの国内市場シェアについてみると、2020年第4四半期で17%、国内第2位の地位を占め、2021年の1月には国内市場でシェア首位に立った(甲11、甲12)。
イ 中国における「Find」シリーズ商標の著名性について
申立人は、2011年にスマートフォン事業に参入して以来、継続して「Find」をブランドとするシリーズの商品を中国において販売し(甲5)、2011年6月に「Find X903」をリリースした。この初代「Find」シリーズのプロモーションとして、ハリウッドのスーパースター、レオナルド・ディカプリオを起用してコマーシャルフィルム「Find Me」を制作した(甲13〜甲15)。このコマーシャルフィルムは、中国中央電視台のCCTV−2、CCTV−6、CCTV−5、湖南電視台、東方電視台、江蘇電視台、浙江電視台、国内外の多くのウェブサイトやブログに掲載され、センセーショナルな効果をもたらした。かかるコマーシャルフィルムの出演者からすれば、その広告宣伝費は相当の額であることは明らかである。
2012年3月には、新たなスマートフォン「Find3」が発売された(甲16)。
また、上記したコマーシャルフィルム「Find Me」に続くコマーシャルフィルムとして、国際的な広告会社Leo Burnett社と協力し、レオナルド・ディカプリオが出演する「Find More」を発表した(甲17)。
2012年12月には、スマートフォン「Find5」がリリースされた(甲18、甲19)。「Find5」シリーズは、その優れたデザインにより、デザイン界のオスカーとも呼ばれるiFデザインアワードを受賞した(甲20)。
2014年3月には、申立人のフラッグシップモデルとして、2Kディスプレイ搭載としては当時の世界最小サイズとなる「Find7」を発表した(甲21)。「Find7」は、世界最速かつ最も安全な急速充電技術「VOOC」、5000万画素の高画質技術、5.5インチ2Kスクリーンを搭載した。申立人によるこの急速充電技術の開発は、「Made in China」(中国製)のイメージを「Created in China」(中国で開発)へと変えるものであった。
2018年6月には、申立人はスマートフォン「Find X」を、パリのルーブル美術館や中国において発表した(甲22、甲23)。サッカーのスター選手ネイマール氏を起用し、広く宣伝広告を行った(甲24、甲25)。中国のマイクロブログ「微博」における「FIND X2」及び「FIND X3」に関する掲載記事の閲覧回数は、それぞれ18億9千万回、18億7千万回にも上る(甲26、甲27)。
以上のとおり、「Find」シリーズは、スマートフォンの分野において世界シェア第4位、中国の国内シェア第1位又は2位の地位を占める申立人が提供するスマートフォンのフラッグシップ・ブランドであり、中国においては、著名人を起用して広く宣伝広告がなされてきたものである。
ウ 我が国における「FIND X」商標の著名性について
申立人の商品は、我が国においては、申立人の日本法人オウガ・ジャパン株式会社(以下「オウガ・ジャパン社」という。)により販売されている(甲28)。我が国においては、申立人の商品のフラッグシップモデルとして、「Find X」を名称とするスマートフォンが2018年11月より販売され(甲29、甲30)、大手の携帯キャリア事業者のみならず、大手電機店、ECサイト等において広く販売されてきた(甲31〜甲36)。これまでに「Find X」、「Find X2 Pro」が販売され、さらに、2021年7月以降、「Find X3 Pro」の販売が予定されている(甲28、甲37〜甲39)。
申立人の「Find X」は、申立人の商品のハイエンドモデルであり、カメラや高速充電、操作性等の機能のみならず、そのデザイン性も高く評価され、2020年11月にはGOOD DESIGN AWARD2020にて、グッドデザイン賞を受賞した(甲40)。また、「Find X」は、通常はカメラが隠れており、スマホ上部をスライドさせて撮影できるユニークさや、カメラ機能、デザイン等が、2018年の発売当初からメディアやSNSで取り上げられることも多く、申立人の「Find X」の注目度が高いことを示している(甲29、甲37、甲38、甲41〜甲43)。さらに、申立人の「Find X」をレビューした動画も多数アップロードされており、その再生回数は20万回を下らない(甲44、甲45)。
以上からすれば、引用商標2は、オウガ・ジャパン社が提供する申立人の商品を表示するものとして、本願商標の登録出願日及び登録査定日の時点でも、我が国における取引者、需要者の間に相当程度広く認識されていることは明白である。
エ 出所の混同について
本件商標は、上記(1)のとおり、その構成中「better」の語は品質を表示する語であることから、自他商品の識別標識としての機能が極めて弱い語であるといえ、よって、本件商標は語頭に表わされた「Find」の文字部分が強く印象づけられる。
我が国においては、申立人の引用商標2「Find X」がスマートフォンの分野において広く知られており、申立人の商品以外に「Find」を商品名の一部に使用するスマートフォンのブランドは確認されない(甲46)。
さらに、申立人が、「Find」の文字を語頭に有するスマートフォンのシリーズ商品を10年にわたり中国を始めとし世界的に販売してきたことが我が国においても報道、紹介されてきた実情があり(甲7、甲12、甲16、甲21〜甲23、甲25)、また、本件商標の指定商品は「スマートフォン」等であり申立人の業務に係る商品と一致している。
してみれば、引用商標2と同様の構成である「Find」の文字を語頭に有する本件商標を、その指定商品「スマートフォン」等に使用した場合は、あたかも申立人のブランドの一つであるかの如く誤信されるおそれがある。
以上を考慮すれば、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)による本件商標の使用により、申立人商品が想起される可能性が高いことは明らかであり、その場合には、あたかも、本件商標権者が申立人と何らかの関連を有する者であるかの如く誤認混同されるおそれがあると考えるのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
ア 申立人は「Find」シリーズの商標を使用したスマートフォンを2011年より中国において販売開始し、以降、「Find」を語頭に有する、「Find X903」、「Find3」、「Find5」、「Find7」及び「Find X」といったシリーズ商品を販売してきた。
そして、申立人の「Find」シリーズ商品は、ハリウッドスターやスポーツ選手を起用した宣伝広告が広く行われ(甲13〜甲15、甲17、甲24、甲25、甲47)、また、中国のマイクロブログ「微博」における「FIND X2」及び「Find X3」に関する掲載記事の閲覧回数は、18億回を上回る(甲26、甲27)。さらに、申立人の世界的シェアは、2016年以降世界4位又は5位、中国においてもそのシェアは1位又は2位の地位にあり(甲7〜甲12)、申立人の商品の中でも、ハイエンドモデルである「Find」のシリーズに申立人が注力してきたことは上述のとおりである(甲12)。
また、申立人は、2013年7月14日付で中国において登録された商標登録第8383866号「FIND」(第9類)を有し(甲48)、さらに、中国において「Find」シリーズの商標が適切に保護されるように、第9類の商品について、登録商標を有している(甲49〜甲52)。
以上からすれば、申立人の商標「Find」が、スマートフォンの分野において、本件商標が登録出願された以前から、少なくとも中国における需要者、取引者に、申立人の業務に係る商品の出所表示として広く知られていたことは明白である。
イ 本件商標は、上記(1)のとおり、本件商標が称呼される場合には、構成全体より「ファインドベター」の称呼が生じるほか、「Find」の文字部分より「ファインド」の称呼が生じ、また「見つける、発見する」程の観念が生じるといえる。
また、「Find」の語は申立人のスマートフォンの出所表示として、中国国内において広く認識されていることから、本件商標は語頭に表された「Find」の文字部分が強く印象づけられる。そうすると、本件商標が称呼される場合には、構成全体より「ファインドベター」の称呼が生じるほか、「Find」の文字部分より「ファインド」の称呼が生じ、また「見つける、発見する」程の観念が生じるといえる。引用商標1を始めとする中国における申立人の著名商標「Find」からは、その構成に相応して「ファインド」の称呼及び「見つける、発見する」程の観念が生じる。
よって、本件商標は、申立人の商標「Find」と称呼及び観念において同一であるといえるから、本件商標は申立人の商標「Find」に類似する。
ウ 本件商標権者は、申立人が所在する中国の広東省に所在し、また、本件商標の指定商品は申立人の業務にかかる商品と密接な関係を有することからすれば、「Find」シリーズ商標が申立人のスマートフォンの出所表示として中国において広く知られていることや、申立人が「Find Me」(甲13、甲15)や「Find More」(甲17、甲47)をタイトルとする、ハリウッドスターを起用したコマーシャルフィルムを制作したことを知らないはずはない。本件商標は、申立人の中国における著名商標「Find」に識別力の弱い「Better」の語を付加した構成からなり、著名な申立人の商標「Find」をそのまま包含したものである。
また、申立人は、コマーシャルフィルムに「Find More」を使用しており、その動画再生回数は、「YouTube」に掲載された動画だけでも650万回を越えるものである(甲17、甲18)。
申立人が使用する「Find More」は、「Find」の語に「much,many」の比較級である「More」を組み合わせた構成であるところ、この構成と同様に、「Find」の語に品質を表す比較級「better」を組み合わせた商標「Findbetter」が本件商標として採用されていることからすれば、その構成が偶然に一致したとは考え難く、本件商標は、申立人のブランドの持つ顧客吸引力を利用し、不当に利益を上げることを目的として出願された商標であることが容易に推認できる。
以上よりすれば、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標に該当し、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)「Find」シリーズ商標及び引用商標2の周知性について
ア 申立人の提出に係る甲各号証及び申立人の主張によれば、以下のとおりである。
申立人は、2003年(平成15年)に設立された中国広東省に本部をおく電気機器メーカーであって、2011年(平成23年)にスマートフォン市場に参入し、スマートフォンの製造・販売を行っている(甲5、甲6)。
そして、申立人のスマートフォン(以下「申立人商品」という場合がある。)は、2017年ないし2020年において、約3,000万台の出荷台数であり、世界的な市場シェアは8%台(世界第4位)であり(甲8〜甲10)、中国においては、2021年1月に国内シェアが首位となった(甲12)。
申立人は、中国において、「Find」をブランドとするスマートフォンとして、2011年6月に「Find X903」、2012年に「Find3」及び「Find5」、2014年に「Find7」、2018年に「FindX」などを発売し、これらは「Find」シリーズなどと称されていることがうかがえ、また、2011年6月には、ハリウッドの俳優を起用したコマーシャルが制作されたこと、「Find X」の広告には世界的なサッカー選手を起用したことが認められる(甲12〜甲25)。
我が国において、申立人商品は、正規代理店(オウガ・ジャパン社)から、2018年11月より「Find X」(甲29〜甲31、甲33〜甲36)、2020年7月より「Find X2 Pro」が発売(甲37、甲38)されたこと、また、2020年11月には、申立人商品の「Find X」が、グッドデザイン賞を受賞したこと(甲40)が認められる。
しかしながら、上記商品の販売数、売上額など商品の販売実績、すなわち「Find」シリーズ商標及び引用商標2を使用した申立人商品の販売実績を示す主張はなく、その証左は見いだせない。
イ 上記アのとおり、申立人は、2011年(平成23年)以来スマートフォンの製造・販売を行い、中国において「Find」の文字を冠した「Find」シリーズと称する申立人商品を発売するなど、申立人商品に「Find」を冠する商標(「Find」シリーズ商標)を使用していること、また、我が国においては、申立人は代理店を通じて2018年より申立人商品に「Find X」(引用商標2)を使用した商品を発売していることが認められるものの、「Find」シリーズ商標及び引用商標2(これらを以下「申立人使用商標」という。)を使用した申立人商品に係る販売実績を示す証左は見いだせないから、申立人使用商標は、申立人の業務に係る商品「スマートフォン」を表示するものとして、我が国又は中国など外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
さらに、申立人使用商標を使用した申立人商品に関する、我が国又は中国など外国における広告の状況(広告宣伝費、広告宣伝時期、広告宣伝期間、広告宣伝回数)及び市場シェアは不明である。
そうすると、申立人使用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は中国など外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
(2)商標法第8条第1項該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、上記1のとおり、「Findbetter」の文字を、同書、同大、等間隔で表され、かつ、語頭の「F」を大文字にし、それに続く文字を小文字にしていることから、外観上まとまりよく一体的に構成されており、その構成文字に相応して生じる「ファインドベター」の称呼も、格別冗長でなく、無理なく一気に称呼し得るというべきである。
また、本件商標の構成文字は、辞書等に掲載が認められないものであるから、一種の造語と考えるのが相当であり、特定の観念は生じない。
なお、申立人は、本件商標の構成中「better」の文字部分は品質を表示する語であり、自他商品の識別標識としての機能が極めて弱い語である旨主張しているが、該文字が本件商標の指定商品の品質を表示する語である事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ファインドベター」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標1について
引用商標1は、上記2のとおり、「Find」の文字を書してなるところ、その構成文字に相応して「ファインド」の称呼を生じ、「発見、見つける」程の観念を生じるというべきである。
ウ 本件商標と引用商標1の類否について
本件商標と引用商標1とを比較するに、まず、外観においては、これらは、「Find」の文字を共通にするとしても、本件商標と引用商標1とは、その後に続く「better」の文字の有無に差異を有するものであるから、その構成文字及び構成文字数を異にし、外観上、十分に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「ファインドベター」の称呼と、引用商標1から生じる「ファインド」の称呼を比較すると、前半における「ファインド」の音を共通にするとしても、「ベター」の音の有無に差異を有するから、これらを一連に称呼したときは、聞き誤るおそれはなく、称呼上、明瞭に聴別できるというべきである。
さらに、観念においては、引用商標1からは、「発見、見つける」程の観念が生じるから、特定の観念が生じない本件商標とは、観念上、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観において十分に区別でき、称呼において明瞭に聴別でき、観念において相紛れるおそれはないから、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相違し、これらを総合的に考察すれば互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1とは、非類似の商標であるから、両商標の指定商品の類否について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第8条第1項に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 申立人使用商標の周知性
申立人使用商標は、上記(1)のとおり、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
イ 本件商標と申立人使用商標の類似性の程度
本件商標は、上記(2)アのとおり、「Findbetter」の文字を書してなるところ、その構成文字より「ファインドベター」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
また、申立人使用商標のうち「Find」シリーズ商標は、「Find」の文字及び「Find」の文字部分を要部とするところ、その構成文字に相応して「ファインド」の称呼を生じ、「発見、見つける」程の観念を生じるものである。
さらに、引用商標2は、「Find X」の欧文字を書してなるところ、その構成中「X」の欧文字は、商品の記号、符号の一類型として認識するとみるのが相当であるから、自他商品識別力が弱い部分であって、「Find」の文字部分が要部として捉えて、商取引に当たる場合も少なくないといえる。
そうすると、引用商標2は、構成文字全体から生じる「ファインドエックス」の称呼のほか、要部である「Find」の文字部分に相応して「ファインド」の称呼を生じ、「発見、見つける」程の観念を生じるというべきである。
してみると、申立人使用商標は、いずれも「ファインド」の称呼を生じ、「発見、見つける」程の観念を生じるものである。
したがって、申立人使用商標は、引用商標1とその構成を同じくするものであるから、本件商標と申立人使用商標とは上記(2)ウにおいてした本件商標と引用商標1との認定、判断と同様に非類似の商標であるといえるから、その類似性の程度は低いといえる。
ウ 商品及び需要者等の共通性
本件商標の指定商品は、上記1のとおり、スマートフォン及びその関連商品を含み、一方、申立人使用商標は、申立人商品であるスマートフォンに使用するものであるから、両商品は、同一又は類似の商品であり、その需要者において共通するものである。
エ 小括
上記アないしウを総合してみれば、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、申立人使用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人(他人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じるおそれはないとするのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
申立人使用商標は、上記(1)のとおり、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は中国など外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
また、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、登録異議の申立てに係る指定商品について、商標法第8条1項並びに同法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
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異議決定日 2022-02-02 
出願番号 2019123424 
審決分類 T 1 652・ 4- Y (W09)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 榎本 政実
豊田 純一
登録日 2020-12-14 
登録番号 6328633 
権利者 深▲せん▼市零負正貿易有限公司
商標の称呼 ファインドベター 
代理人 横川 聡子 
代理人 城山 康文 
代理人 北口 貴大 
代理人 岩瀬 吉和 

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