• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W05
管理番号 1386256 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-17 
確定日 2022-06-09 
事件の表示 商願2020− 60979拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 手続の経緯
本願は、令和2年5月15日の登録出願であって、同年10月22日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月4日に意見書が提出されたが、同3年2月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願商標
本願商標は、「汗ムレかゆみ」の文字を標準文字で表してなり、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。),医療用試験紙,医療用油紙,医療用接着テープ,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,綿棒,歯科用材料,おむつ,おむつカバー,はえ取り紙,防虫紙,乳幼児用粉乳,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。),人工受精用精液」を指定商品として、登録出願されたものである。

3 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、「汗ムレかゆみ」の文字を標準文字で表してなるところ、「汗むれによるかゆみ」ほどの意味合いを容易に認識させるものである。
そして、本願の指定商品を取り扱う業界において、汗むれによるかゆみを医薬の対象とする医薬品が一般に製造・販売されている実情が認められる。 そうすると、本願商標をその指定商品中「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」に使用しても、これに接する取引者、需用者は、「汗むれによるかゆみに対する薬剤(農薬に当たるものを除く。)」であると認識するにすぎないから、本願商標は、商品の品質、効能を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

4 当審おける証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権により証拠調べをした結果、別掲に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、令和3年11月29日付け証拠調べ通知書をもって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。

5 職権調べ通知に対する請求人の意見(要旨)
請求人は、上記4の職権調べ通知書に対し、令和4年1月11日に意見書を提出し、要旨以下のように主張した。
(1)「汗ムレかゆみ」の文字は、それと近似する構成の既成語が存在しない、不自然な語法に基づく造語であって、当該文字を認識するに際して既成語からの類推が行えないことから、自然にその意味合いが理解されるようなものとはいえない。
(2)「汗ムレかゆみ」の文字は、現に使用されておらず、いずれも、「汗ムレ」及び「かゆみ」の語が、個別に、それぞれ別の語を伴ったり文章中で使用されたりしているにすぎない。また、「汗ムレかゆみ」の文字は、本願指定商品との関係で、その特性を表示記述するものとして、取引に際して必要適切な表示とはいえない。
(3)過去の審判事件おける具体的な事実及びその評価手法のうち、それらに共通して見られるものが本願商標についても適用されるべきであって、それらに共通して見られる判断基準等を無視し、それと整合し得ない判断を行うことは、平等原則及び信義則に照らし、許されない。

6 当審の判断
(1)本願商標について
本願商標は、「汗ムレかゆみ」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「汗」の文字は「温度刺激により汗腺から排出される分泌液。」を、「かゆみ」の文字は「かゆい感覚。主として皮膚・粘膜の痛点の弱い刺激によって生ずる感覚。」の意味を有する平易な語(いずれも「広辞苑第7版」)である。そして、「ムレ」の片仮名については、「ムレ」を表音とする語は複数存在するものの、「汗」(温度刺激により汗腺から排出される分泌液。)との関係を考慮すると、「熱気がこもり、蒸し暑く感ずる。」の意味(前掲書)を有する「蒸れ」の語を片仮名表記したものと把握されるとみるのが自然である。
また、原審及び当審において示した使用例(別掲)のとおり、薬剤業界においては、「汗ムレ(蒸れ。以下同じ。)」あるいは「汗」及び「ムレ」が、肌トラブルの原因であることを表示していたり、また、「かゆみ」が「汗ムレ」あるいは「汗」及び「ムレ」による肌トラブルの治療薬の効能・効果として表示されている実情がある。
そうすると、本願商標は、「汗ムレ」という原因を表す文字と「かゆみ」という症状を表す文字とを単に一連に表示したものと認識、理解させるというのが相当である。
以上から、本願商標をその指定商品中の「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」に使用したときは、これに接する需要者には「汗ムレ(蒸れ)によるかゆみに効く薬剤(農薬に当たるものを除く。)」の意味合いを認識、理解させるにとどまり、単に商品の品質、効能を表示するにすぎないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、その指定商品中の「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について使用したときは、商品の品質、効能を普通に用いられる方法で表示するにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、「汗ムレかゆみ」の文字は、不自然な語法に基づく造語であり、また、これに近似する構成の既成語が存在しないから、「汗ムレかゆみ」を認識するに際して類推が行えず、自然にその意味合いが理解されるようなものではない。そして、「汗ムレかゆみ」の文字は、現実に使用されておらず、また、本願の指定商品との関係で、その特性を表示するものとして取引に際して必要適切な表示とはいえない旨主張する。
しかしながら、別掲のとおり、薬剤業界において、「汗ムレ」が、肌トラブルの原因であるとする表示や「汗ムレ」による肌トラブルの治療薬の効能・効果として「かゆみ」が表示されている実情からすれば、「汗ムレかゆみ」の文字は、上記(1)のとおり、「汗ムレ」という原因を表す文字と「かゆみ」という症状を表す文字を単に一連に表示したものと認識、理解されるとみるのが自然であり、「汗ムレかゆみ」の文字(表示)の語法が適切であるか否かにかかわらず、「薬剤」との関係からは、当該文字が「汗ムレ(蒸れ)によるかゆみに効く薬剤」の意味合い、すなわち、本願商標が、商品の品質、効能を表したものと容易に認識し得るというべきである。
さらに、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であるか否かは、本願商標が、その指定商品との関係で商品の品質を記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標の取引者又は需要者によって本願商標がその指定商品に使用された場合に、商品の品質、効能等を表示するものと一般に認識されるものであれば足りるものであるところ、上記(1)のとおり、本願商標をその指定商品中の「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」に使用したときは、「汗ムレ(蒸れ)によるかゆみに効く薬剤」の意味合い、すなわち、商品の品質を表示するものと容易に認識されるものである。
そして、「汗ムレかゆみ」の文字自体が現実に使用されていないことをもって、本件の判断が左右されるものではない。
イ 請求人は、過去の審決例を挙げて、それらの評価手法を本願商標についても適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、これらは、本件商標とは構成文字が異なるものであって、かつ、具体的事案の判断においては、過去の審決例における評価手法等に拘束されることなく、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と取引の実情に応じて個別に判断されるべきであるから、これらの事例の存在によって、上記(1)の認定判断が左右されるものではない。
ウ したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲(証拠調べ通知書で示した事実)
1 「汗ムレ」あるいは「汗」及び「ムレ」(「むれ」以下同じ。)が、肌トラブルの原因であるとして表示している事実
(1)株式会社池田模範堂のウェブサイトにおいて、以下の記載がある。
ア 「肌トラブル情報館」において「陰部のかゆみ(男性)の症状・原因」の見出しの下、「男性のデリケートエリア(陰部・陰のう周辺部)は・・・汗、ムレ、スレ、雑菌などかゆみを引き起こす刺激が多く発生する場所です。」及び「陰部掻痒症」の説明として、「主として汗、ムレ、下着とのスレ、乾燥などの原因によってかゆみが起こります。」の記載がある。
https://www.ikedamohando.co.jp/jyouhoukan/delicatearea-skin/male-delicatearea-itch.html
イ 「デリケアエムズブランドサイト」において、「夏の汗・ムレ/股間のかゆみに!」の記載及び「こんなかゆみにデリケアエムズ!」の項目において、「汗をかくとかゆくなる」「ムレるとかゆくなる」の記載、「デリケートエリアに起きやすい疾患」の項目における「CASE.2 汗・ムレ・スレによるかゆみ[間擦疹等]」「汗、ムレ、下着のスレなどにより股間がかゆくなります。」の記載、さらに、「どうして股間はかゆくなる?」の項目における「汗腺が発達しているうえ下着などに覆われているため、汗・ムレや下着とのスレ、雑菌の繁殖など、夏場はかゆみを引き起こす刺激が多く発生します。」の記載がある。
https://www.ikedamohando.co.jp/delicare_ms/index.html
(2)ゼリア新薬工業株式会社のウェブサイトにおいて、以下の記載がある。
ア 2020年6月24日付けニュースリリースにおける「お肌の早期回復を考えた弱酸性のかゆみ止めクリーム『プレバリン(R)(「R」の丸囲み文字、以下同じ。)マイケア』(第2類医薬品)新発売のお知らせ」において、「お肌がやわらかいデリケートな部分は, 汗やむれ, 肌着や衣類などのこすれ等が原因となり、ちょっとした刺激でもかゆみが出たり、赤くなったりすることがあります。」の記載並びに商品の包装箱側面に「かゆみ・かぶれ」及び「こんなかゆみに 汗ムレ/下着のスレ/あせも/顔の赤み」と表示された画像が掲載されている。
https://www.zeria.co.jp/media/news_release20200624.pdf

イ 「マスクやアルコールによる肌トラブルに−ゼリア新薬の肌ケアシリーズ−」において、「プレバリン(R)マイケア」の商品に関し、「お肌がやわらかいデリケートな部分は、汗やムレ、マスクによるこすれ等が原因で、少しの刺激でもかゆみが出たり、赤くなったりすることがあります。」の記載及び「▼こんなかゆみに▼」として「汗ムレ」等の記載がある。さらに、「汗」や「ムレ・こすれ」が「かゆみ」や「炎症」の原因であることを表したとされるイメージ図が掲載されている。
https://www.zeria.co.jp/hadacare/
(3)ロート製薬株式会社の「メンソレータム(R)フレディ(R)」のブランドサイトにおいて、「デリケート部位のかゆみ・かぶれを治す治療薬」の見出しの下、「よくある女性の悩み、このような症状に」の項目において、「下着やストッキングなど汗ムレによるかぶれ・かゆみ」の記載がある。
https://jp.rohto.com/flady/product/
(4)興和株式会社のウェブサイトの製品情報「レスタミンコーワパウダークリーム」において、商品の包装箱に「【汗ムレなどによるかゆみ、かぶれ】」と表示された画像が掲載されている。
https://hc.kowa.co.jp/otc/17435

(5)佐藤製薬株式会社のウェブサイトにおいて、以下の記載がある。
ア 平成31年4月付けニュースリリースにおける「デリケートな部分のかゆみ・かぶれにアプローチする医薬品『エンペキュア(TM)』新発売」において、「バイエル薬品株式会社の調査では、5割以上の女性が1年以内にデリケートエリアのかゆみなどに悩まされていると回答。原因別には生理用品や下着擦れ、汗・ムレによるかゆみ、かぶれが多く、・・・」の記載がある。
https://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2019/190403/
イ 「エンペキュア」のブランドサイトにおいて、「汗・ムレ・乾燥でかゆい!」及び「生理用品、汗・ムレ、下着などデリケートな部分のかゆみ・かぶれに」の記載がある。
https://www.empecid.jp/itch/
ウ 「エンペキュア」の「製品概要」において、「生理用品、汗・ムレ、下着などが原因のかゆみ・かぶれに」の見出しの下、「エンペキュアは生理用品や下着、汗・ムレによる、デリケートな部分のかゆみ・かぶれに、すばやくアプローチする医薬品です。」の記載及び「こんなかゆみに、エンぺキュア」の項目において、「デリケートエリアの汗・ムレによるかゆみ・かぶれ」の記載がある。
https://www.empecid.jp/itch/products/

2 「汗ムレ」あるいは「汗」及び「ムレ」による肌トラブル治療薬において、効能・効果として「かゆみ」が表示されている事実
(1)株式会社池田模範堂のウェブサイトにおける上記1(1)イの「デリケアエムズ」の商品情報(商品詳細)において、「効能」欄に「かゆみ、かぶれ、ただれ、しっしん、皮ふ炎、じんましん、あせも、虫さされ、しもやけ」の記載がある。
https://www.ikedamohando.co.jp/products/delicatearea/delicare_m.html
(2)ゼリア新薬工業株式会社のウェブサイトにおける2020年6月24日付け『プレバリン(R)マイケア』のニュースリリースにおいて、「お肌がやわらかいデリケートな部分は、汗やむれ、肌着や衣類などのこすれ等が原因となり、ちょっとした刺激でもかゆみが出たり、赤くなったりすることがあります。」及び「製品概要」の「効能・効果」欄に「かゆみ、かぶれ、ただれ、あせも、湿疹、皮膚炎、しもやけ、虫さされ、じんましん」の記載がある。
https://www.zeria.co.jp/media/news_release20200624.pdf
(3)ロート製薬株式会社のウェブサイトにおける上記1(3)の「メンソレータム フレディ メディカルクリームn」の商品情報において、「効能・効果」欄に「かゆみ、かぶれ、皮フ炎、湿疹、ただれ、じんましん、あせも、虫さされ、しもやけ」の記載がある。
https://jp.rohto.com/flady/cream/
(4)興和株式会社のウェブサイトにおける上記1(4)の「レスタミンコーワパウダークリーム」の商品情報において、「こんな症状にオススメ」として「あせも/かぶれ/湿疹/かゆみ/皮膚炎」の記載及び「仕様」の「効能・効果」欄に「あせも、かぶれ、湿疹、かゆみ、ただれ、皮膚炎、しもやけ、虫さされ、じんましん」の記載がある。
https://hc.kowa.co.jp/otc/17435
(5)佐藤製薬株式会社のウェブサイトにおける上記1(5)の「エンペキュア」の製品概要において、「効能」欄に「かゆみ、かぶれ、湿疹、皮膚炎、じんましん、あせも、ただれ、虫さされ、しもやけ」の記載がある。
https://www.empecid.jp/itch/products/


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-03-29 
結審通知日 2022-04-05 
審決日 2022-04-19 
出願番号 2020060979 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W05)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 大森 友子
水落 洋
商標の称呼 アセムレカユミ 
代理人 杉村 光嗣 
代理人 藤本 一 
代理人 杉村 憲司 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ