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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1385396 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-03 
確定日 2021-08-30 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1461467号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1461467号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1461467号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2019年2月22日に国際商標登録出願、第9類「Covers for smartphones; headphones; copper wire, insulated; chargers for electric batteries; batteries, electric; power banks [rechargeable electric batteries]; computer keyboards; magnetic data media; mouse [computer peripheral]; protective films adapted for mobile phone.」を指定商品として、令和2年6月3日に登録査定され、同年7月31日に設定登録されたものである。
第2 申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり、以下、これらをまとめて「引用商標」という。また、引用商標1ないし引用商標5は、現に有効に存続しているものである。
1 登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 「MONSTER」(標準文字)
指定商品 第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成22年7月8日
設定登録日 平成22年12月24日
2 登録第5057229号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品 第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成18年6月9日
設定登録日 平成19年6月22日
3 登録第5393681号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 「MONSTER ENERGY」(標準文字)
指定商品 第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成22年7月8日
設定登録日 平成23年2月25日
4 登録第6148588号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定商品 第9類、第12類、第14類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成30年11月7日
優先権主張 2018年(平成30年)5月8日 オーストラリア連邦
設定登録日 令和元年5月31日
5 登録第5788676号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 「MONSTER ENERGY」(標準文字)
指定商品 第9類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成26年12月25日
設定登録日 平成27年8月28日
6 申立人の全趣旨から、合議体が引用商標と認めたもの
「モンスター」の片仮名からなる商標(以下「引用商標6」という。)
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第457号証(枝番号を含む。)及び別紙1ないし別紙9を提出した。
1 申立人の使用に係る「MONSTER」(以下「申立人商標」という場合がある。)、その表音「モンスター」、「MONSTER」の頭文字「M」をベースとしたモンスターの爪を象った図柄(以下、「爪の図柄」という。甲328)、並びに爪の図柄と「MONSTER」及び「ENERGY」から構成されるロゴマーク(以下、これらをまとめて「申立人商標等」という場合がある。)の周知性について
(1)申立人商標と取扱い商品
ア 申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、創業以降、アルコールを含有しない飲料、すなわち、炭酸飲料、フルーツジュース、エネルギー補給用飲料等の様々な飲料製品の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事していたが、2015年(平成27年)6月からはエネルギー補給飲料(エナジードリンク)の事業に注力している(甲2、甲58)。
イ 申立人商標等は、申立人が2002年(平成14年)に創設した「MONSTER」なるエナジードリンクのブランドの製品シリーズの出所識別標識としてブランド創設時から現在に至るまでの長年にわたり継続して使用されているものであり、同ブランドのエナジードリンク(以下「MONSTERエナジードリンク」という。)は、2002年(平成14年)に米国で最初に販売を開始後、日本では2012年(平成24年)5月から販売を開始し、現在では日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。申立人は2002年(平成14年)以降、現在まで継続して、MONSTERエナジードリンクには一貫して 「MONSTER」の文字を基調とする個別商品名が採用されており、各々の個別製品の包装容器には、爪の図柄を顕著に表示し、さらに、特徴的な書体で大きく表示した「MONSTER」の文字(甲416)を独立してみる者の目を惹きつける態様で顕著に表示している(別紙1、別紙2)。
このように、「MONSTER」の文字に他の語を結合する方法で命名された個別製品名と「MONSTER」の文字を顕著に表示した包装容器を使用したMONSTERエナジードリンク事業の成功は、経済界でも高い評価を受けている(甲2〜甲33、甲51〜甲58、甲391〜甲393)。
ウ 2012年5月以降に、我が国において販売されたMONSTERエナジードリンク(リニューアル製品及び季節限定製品を含む。以下「本件申立人商品」という。)は次のとおりである(別紙1)。
(ア)「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー 缶355ml)」(甲7、甲14)、「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー ボトル缶473ml)」(甲353〜甲356)
(イ)「MONSTER KHAOS(モンスターカオス 缶355ml)」(甲7、甲14、甲128)
(ウ)「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ 缶355ml)」(甲10、甲15、甲253)
(エ)「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3 ワンウェイびん150ml)」(甲59、甲61、甲127)、「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3 缶160ml)」(甲361)
(オ)「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー 缶250ml)」(甲60、甲62)
(カ)「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ 缶355ml)」(甲101〜甲103)
(キ)「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ缶355ml)」(甲256、甲257、甲263、甲264)
(ク)平野歩夢コラボ缶 「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー スペシャルデザイン缶355ml)」及び「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ スペシャルデザイン缶355ml)」(甲291)
(ケ)「MONSTER CUBA LIBRE(モンスターキューバリブレ 缶355ml)」(甲323、甲324)
(コ)「MONSTER PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ 缶355ml)」(甲353、甲357〜甲360)
(2)広告及び販売促進活動
申立人によるMONSTERエナジードリンクの広告及び販売促進活動は、国際的に活躍する多数の有名アスリート・チーム及びイベントに対するスポンサー活動を中核として、ウェブサイト及びプレスリリースによる広告、本件申立人商品サンプルの配布、大手コンビニエンスストアやイベント主催者と提携した大規模な販売キャンペーン(景品・賞品のプレゼントを含む)、スポーツイベント等の開催、契約アスリート等の動画・画像の公開、MONSTERブランドのライ センス商品の開発及び販売、ビデオゲーム会社と提携したMONSTERブランドを使用したビデオゲームの開発及び共同販売促進活動の実施など極めて多彩な内容である。こうした広告宣伝活動は、「MONSTER」の文字(特徴的な書体で表示したものを含む。)、爪の図柄と特徴的な書体で表示した 「MONSTER」の文字と活字体で表示した「ENERGY」の文字からなるロゴマーク、「MONSTER ENERGY」の文字(以下、これらを併せて 「MONSTERブランドマーク」という。)を使用して、本件商標の登録出願日前から継続的かつ頻繁に全国規模で実施されている(別紙3〜別紙7)。また、申立人はMONSTERエナジードリンクの需要者に人気が高いエクストリーム分野を中心にスポンサー活動を行い、さらに、ウェブサイト及びソーシャルメディアのアカウントを創設して、MONSTERブランドを強くアピールするための効果的な広告を実施している(別紙9)。
(3)ライセンスによる申立人商標の使用
申立人は、2002年(平成14年)から、ブレスレット、ラベルピン、キーホルダー、Tシャツ、スウェットシャツ、帽子、レーシングジャケット、手袋などのアパレル製品、運動用ヘルメット、バッグ類、ステッカー、傘、ビデオゲームなどの「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品はライセンシー等を通じてネットショッピングサイトでも販売されているほか、申立人がスポンサー参加するスポーツイベント等の会場で販売したり、イベント来場者に無料配布したり、本件申立人商品の販売キャンペーンの応募者・当選者に景品・商品として配布することもしている(甲 92、甲93、甲98〜甲100、甲144、甲145、甲148〜甲151、甲153、甲156、別紙7)。
これらのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された模倣品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169〜甲224、別紙8)。
(4)世界における商標出願及び登録
申立人は、MONSTERブランドマークについて引用商標をはじめとして、国内外において多数の商標登録を取得し(甲432〜甲451)、爪の図柄について米国で著作権登録も取得している(甲452、甲453)。
(5)申立人のMONSTERエナジードリンクの国内市場占有率など
第三者による市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によれば、2013年(平成25年)時点で申立人のMONSTERエナジードリンクの 国内市場占有率は既に25%を超えており、ブランド認知度も第2位であったことが明らかである。それ以降も着実に売上げを伸ばし、男子若年層を中心とした従来の主要需要者層に止まらず、女性層にも知名度、人気を拡大しており、また、MONSTERエナジードリンクは市場で「モンスター」と称され、「MONSTER」又は「モンスター」の表記で認知されている(甲311〜甲322、甲383〜甲385、甲391〜甲393 ほか)。
(6)小括
以上の事柄に照らせば、申立人商標等は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)本件商標は、黒塗りの長方形の中に白抜きで表示したデザイン文字の「M」及び「S」並びに「monsterskin」の文字から構成されるものであり、英文字「M」をデザインした爪の図柄と「MONSTER」及び「ENERGY」の文字から構成される申立人の使用に係るロゴマーク(引用商標2及び 4)と外観の印象が類似し、出所識別標識として近似した印象を看者に与える。
また、本件商標の構成中「monsterskin」の文字部分は、その表音「モンスター(monster)」(甲454、甲455)及び「スキン(skin)」(甲456、甲457)が外来語として一般に親しまれていることから「monster」と「skin」の2語からなるものと容易に認識、理解されるものである。さらに、「monsterskin」の文字部分は、「MONSTER(monster)」の文字、「モンスター」の音(称呼)、「モンスター」の観念を包含する点で、引用商標1ないし引用商標5の文字部分並びにMONSTERエナジードリンクの製品名(別紙1)と一致し、外観、称呼及び観念が類似する。加えて、「monsterskin」の文字部分は、「MONSTER」に他の語を結合する方法によって構成されている。よって、本件商標は、申立人商標等、引用商標及びMONSTERエナジードリンク商標と類似性の程度が極めて高い。
(2)本件商標の指定商品は引用商標5の指定商品と同一又は類似である。さらに、本件指定商品は一般消費者向けライセンスと同一又は類似のもの、あるいは需要者を共通にする関連性が高いものである。また、一般消費者を需要者に含む本件商標の指定商品の通常の需要者の注意力の程度はさほど高いものとはいえない。
(3)申立人商標等は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていた。
(4)よって、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接した需要者は、申立人商標等、さらには申立人を直観し、申立人又は申立人と経済的若しくは組織的関係を有する者の取り扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生ずるおそれがある。また、本件商標の使用は、申立人商標等の出所識別力希釈化するものであり、また、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料株式会社を通じて2012年(平成24年)5月にエナジードリンク 「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」の販売を開始し、その販売量は同年9月には累計100万箱を超え、12月には累計157万箱となった(甲7〜甲9)。
イ 申立人は、我が国において2013年(平成25年)5月に「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼ ロ)」(甲10、甲15)、2014年(平成26年)8月に「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジー M3)」(甲59、甲61)、同 年10月に「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー)」(甲60、甲62)、2015年(平成27年)7月に「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ)」(甲101〜甲103)、2017年(平成29年)6月に「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ)」(甲256、甲257、甲263、甲264)、2018年(平成30年)4月に「MONSTER CUBA−LIBRE(モンスターキューバリブレ)」(甲323、甲324)、2019年(平成31年)4月に「MONSTER PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ)」(甲353、甲357〜甲360)の販売を開始し、製品によってはリニューアルしたりコラボ缶の製品を販売した(甲127、甲128、甲253、甲291、甲353〜甲356、甲361)(以下、これら商品と上記アの商品をまとめて「申立人商品」という。)。
ウ 申立人商品のうち、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」(2016年(平成28年)5月から)、「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER ENERGY ULTRA」、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」及び「MONSTER PIPELINE PUNCH」の容器には、別掲4のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下「別掲4商標」という。)又はこれと共に爪の図柄が表示されている(甲7、甲10、甲59、甲101、甲130、甲257〜甲 263、甲357 ほか)。
また、「MONSTER COFFEE」の容器にはその中央に別掲4商標の上段のデザイン化された「MONSTER」の文字部分(以下、この文字部分を 「MONSTERロゴ」という。)と「COFFEE+ENERGY」の文字が2段に表示され、「MONSTER CUBA−LIBRE」の容器には、「MONSTERロゴ」が表示されており、さらに、これらの文字と共に爪の図柄も表示されている(甲60、甲324 ほか)。
エ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、別掲4商標又はこれと共に爪の図柄を表示している(甲73〜甲80、甲82 ほか)。
オ 我が国において、別掲4商標又はこれと共に爪の図柄が表示されたステッカー、衣類、帽子、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲48、甲98 ほか)。
カ 平成25年7月以降、我が国の税関において、申立人の商標権(国際登録第1048069号など)を侵害する疑いがある貨物(帽子、ショートパンツ、Tシャツなど)が多数発見されている(甲169〜甲224、別紙8)。
キ JMR生活総合研究所による消費者調査 No.196「エナジードリンク(2014年(平成26年)7月版)」によれば、ブランド認知率の1位は 「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であった(甲311)。また、同消費者調査 No.232「エナジードリンク(2016年(平成28年)8月版)」でも、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」であり、2位は「モンスターエナジー」であったと推認できる(甲312)。
ク 有限会社飲料総研の調査によれば、我が国における2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)。
ケ ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年(平成26年)4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTER ENERGY」であった(甲319)。
コ JMR生活総合研究所による消費者調査データ No.269「エナジードリンク(2018年(平成30年)5月版)」には、「モンスター、レッドブ ル、リアルゴールド 寡占化すすむエナジードリンク市場」のタイトルのもと、「今回の調査では、『リアルゴールド(日本・コカコーラ)』『レッドブル・エ ナジードリンク(レッドブル・ジャパン)・・・』『モンスターエナジー(アサヒ飲料)』の3ブランドがほとんどの項目で上位3位を独占した。」の記載があ る。
(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02−drink/mranking269.html)
また、同消費者調査データ No.293「エナジー(2019年(令和元年)5月版)」には、「リアルゴールド、レッドブル、モンスターエナジー。3強上位独占」のタイトルのもと、「エナジードリンクの市場は、2桁の伸びの後に、2016年(平成28年)は対前年比5%増、2017年(平成29年)は同じく8%増とやや落ち着いたものの、依然として成長を続けている。」の記載がある。
(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02−drink/mranking293.html)
サ 申立人及びアサヒ飲料株式会社は、本件商標の登録出願の日前から、申立人商品のキャンペーンに係るニュースリリース、ポスターなどで申立人商品を 「モンスター」と表示しているものが見受けられ、また、両社以外のウェブページにおける当該キャンペーンについてのポスターやその他の記事においても 「MONSTER」及び「モンスター」の文字が表示されているところ、当該ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等には、申立人商品の画像又は別掲4商標若しくは「モンスターエナジー」の文字と共に爪の図柄が表示又は掲載されている(甲69、甲71、甲79、甲101〜甲103、甲111、甲113、 甲115、甲118、甲119、甲124 ほか)。
(2)上記(1)のとおり、申立人は、我が国において、2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び 「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後現在まで、計9種の申立人商品を販売するとともに、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じ、申立人商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数 は240万ケースで第2位であったこと、申立人商品の認知度が2014年(平成26年)において、その数値は31%と47.6%と差異はあるものの、いずれの調査でも第2位であったことが認められ、2016年(平成28年)の認知度はその数値は不明であるものの2位であったと推認できることに加え、 2018年(平成30年)及び2019年(令和元年)の調査において、いずれも申立人商品はエナジードリンクで3強の一つとされ、また、エナジードリンクの市場は2017年(平成29年)において成長を続けているとされていることを併せみれば、申立人商品は、本件商標の国際商標登録出願の日(2019年 (平成31年)2月22日)前から、登録査定日(2020年(令和2年)6月3日)においても、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
そして、申立人商品は、そのほとんどの容器の中央に、「MONSTER ENERGY」の文字が別掲4のとおりの態様で表示されていること、常にこれと共に爪の図柄が表示されていること、さらに、ニュースリリース、各種記事などにおいて「MONSTER ENERGY」「モンスターエナジー」と表示され、「モンスターエナジー」と称されていることから、「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字並びに別掲4のとおりの態様に爪の図柄を加えた態様は、いずれも本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人及びアサヒ飲料株式会社の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといえる。
そうすると、「MONSTER ENERGY」の文字からなる引用商標3、また、別掲4のとおりの態様に爪の図柄を加えた態様からなる引用商標2は、いずれも指定商品中にエナジードリンクを含むものであるから、申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、その需要者の間に広く認識されているものというべきである。
しかしながら、申立人商品の広告宣伝は、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じて行われているものの、老若男女を問わず幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じたものとはいえないばかりか、我が国における申立人商品の清涼飲料に対する市場占有率等も確認することができないこと等を総合的に判断すると、申立人商品は、幅広い需要者層を有する一般的な清涼飲料の分野においてまでも、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
また、申立人商品は、その容器に「MONSTER」及び「ENERGY」の各文字が比較的近接して表示されているものがほとんどであり、MONSTERロゴのみが表示されている商品についての出荷数、シェア等の販売実績は確認できない。
さらに、「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字は、ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等において、申立人又は申立人商品の略称とし て表示又は掲載が見受けられるとしても、常に申立人商品又は「モンスターエナジー」若しくは別掲4商標の文字と共に表示又は掲載されていることからすれ ば、これに接する需要者は、そこに表示又は掲載された「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字を、申立人商品(「モンスターエナジー」)の一連 の名称として使用されていることを前提に、申立人商品(「モンスターエナジー」)を指称する文字として理解するというべきである。
そうすると、申立人商品又は「モンスターエナジー」の文字若しくは別掲4商標と関連なく表示されている「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字までもが、需要者において申立人商品を表示するものと理解されるとはいい難い。
したがって、「MONSTER」の文字からなる引用商標1及び「モンスター」の文字からなる引用商標6は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
さらに、引用商標4は、別掲3のとおりの態様(別掲4商標に爪の図柄を加えた態様)から、引用商標5は、「MONSTER ENERGY」の文字から、 それぞれなるところ、これらの引用各商標は、指定商品中にエナジードリンクを含まず、かつ、それらが使用された指定商品についての販売実績及び取引実績が確認できないものであるから、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人は、引用商標との関係で、出所の混同を生ずるおそれがある旨主張していると認められるので、以下検討する。
ア 本件商標と引用商標の類似性の程度
(ア)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、黒塗りの長方形の中に幾何図形及び「mOnSTErSKIn」の欧文字を、それぞれ白抜きで表してなるところ、図形部分と文字部分とは、視覚上分離して看取される上に、図形部分は、何かを特徴的に表したものというよりは、むしろ幾何図形として把握されるとみるのが自然であるから、両者は観念的な結びつきもないというべきであり、本件商標に接する取引者、需要者は、これより文字部分のみをもって、取引に資する場合もあるといえる。
そして、「monster」は「怪物、化け物」(甲454、甲455)の意味を、「skin」の文字は「肌」(甲456、甲457)の意味を、それぞれ有する一般に親しまれた語であるから、これらの文字を結合させたと認められる「mOnSTErSKIn」の文字部分から「怪物の肌、化け物の肌」ほどの意味合いを容易に理解させ、これより生じる「モンスタースキン」の称呼もよどみなく一連に称呼できるものである。
さらに、本件商標は、その構成中「mOnSTEr」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるとか、それ以外の文字部分が、指定商品との関係において、出所識別標識としての機能を果たし得ないとみるべき事情は見いだせない。
そうすると、本件商標中、「mOnSTErSKIn」の文字部分は、その全体から生じる観念、称呼及び上記事情から、少なくとも文字部分全体をもって一体不可分のものとして認識、把握されるというべきである。
したがって、本件商標は、「モンスタースキン」のみの称呼、「怪物の肌、化け物の肌」ほどの観念を生じるものの、「モンスター」の称呼及び「怪物、化け物」の観念は生じない。
(イ)引用商標
引用商標1及び引用商標6は、「MONSTER」又は「モンスター」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「モンスター」の称呼及び「怪物、化け物」の観念を生じる。
また、引用商標2及び引用商標4は、別掲2及び3の構成からなるところ、爪の図柄と文字部分を分離し看取する場合もあることから、これより文字部分を捉えて、「モンスターエナジー」の称呼及び「怪物の力、化け物の力」の観念を生じる。
さらに、引用商標3及び引用商標5は、「MONSTER ENERGY」の文字よりなるところ、その構成文字に相応して「モンスターエナジー」の称呼及び「怪物の力、化け物の力」の観念を生じる。
(ウ)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標1及び引用商標6は、「SKIn」の文字及び図形の有無の差異から外観において相違し、称呼においては「スキン」の有無の差異を有し、観念においては異なった観念を生じるものであるから区別することができる。
また、本件商標と引用商標2及び引用商標4は、「SKIn」及び「ENERGY」の各文字の有無の差異がある上に、図形が異なることから外観において相違し、称呼においては「スキン」及び「エナジー」の有無の差異を有し、観念においては異なった観念を生じるものであるから区別することができる。
さらに、本件商標と引用商標3及び引用商標5は、「SKIn」及び「ENERGY」の文字並びに図形の有無の差異を有することから外観において相違し、称呼においては「スキン」及び「エナジー」の有無の差異を有し、観念においては異なった観念を生じるものであるから区別することができる。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において相違することから判然と区別することができ、称呼においてはそれぞれの音の有無といった差異を有することから明瞭に聴別することができ、観念において区別することができることから相紛れるおそれはないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、別異の商標というべきである。
イ 本件商標の指定商品と申立人商品との関連性
本件商標の指定商品は、主にスマートフォンやコンピュータ機器に使用される商品であるから、申立人商品「エナジードリンク」とは、取扱い事業者、用途、目的、需要者等が明らかに異なるものであり、その関連性は低いというべきである。
ウ 出所混同のおそれ
上記1(2)のとおり、引用商標2及び引用商標3は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、その需要者の間に広く認識されているものと認めることはできるとしても、それ以外の商品の需要者の間で広く認識されているものと認めることはできないし、引用商標1及び引用商標4ないし引用商標6は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の取引者、需要者において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、上記アのとおり、本件商標は引用商標とは別異の商標であり、さらに上記イのとおり、本件商標の指定商品と申立人商品との関連性は低いものである。
そして、これらを踏まえて、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
この他に、申立人のいずれの主張を検討しても、本件商標が引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(2)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、別掲1のとおり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本件商標は、上記2のとおり、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものである。
その他に、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。
そうすると、本件商標は、引用商標の出所表示力を希釈化するとか、その名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用するものとはいえず、また、他に商標権者が本件商標をその指定商品に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
令和 3年 8月12日
別掲 別掲1 本件商標

別掲2 引用商標2

別掲3 引用商標4(色彩は原本参照)

別掲4 申立人の商品の容器に表示されている商標

異議決定日 2021-08-12 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W09)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 岩崎 安子
板谷 玲子
登録日 2019-02-22 
権利者 GUANGZHOU NAIMOSHI ELECTRONIC TECHNOLOGY CO., LTD.
商標の称呼 エムエス、モンスタースキン 
代理人 柳田 征史 

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