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審決分類 審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない W03141825
管理番号 1385282 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-22 
確定日 2022-05-18 
事件の表示 商願2019− 23948拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 手続の経緯
本願は,平成31年2月13日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年3月16日付け :拒絶理由通知書
令和2年4月20日 :意見書の提出
令和2年11月12日付け:拒絶査定
令和3年2月22日 :審判請求書の提出

2 本願商標
本願商標は,「ヨウジヤマモト」の文字を標準文字で表してなり,第3類「化粧品,せっけん類,歯磨き,口臭用消臭剤,香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛」,第14類「宝飾品,貴金属,キーホルダー,身飾品,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」,第18類「かばん類,袋物,かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,革ひも」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,登録出願されたものである。

3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,「ヨウジヤマモト」の文字を標準文字で表してなるところ,我が国においては,例えば,パスポートやクレジットカードなどに本人の氏名がローマ字表記される場合,「名」,「氏」の順で表記することが広く行われているから,本願商標に接する取引者,需要者は,「ヤマモト(氏)ヨウジ(名)」と読む「人の氏名」の片仮名表記として客観的に把握するものというのが相当であり,本願商標は,「人の氏名」を含む商標であると認められる。そして,出願人とは他人であると認められる「ヤマモトヨウジ」と読む氏名の者が,承諾書を提出した「山本耀司」氏(以下「当該山本耀司氏」という。)以外にも存在し,かつ,その者の承諾を得ているものとは認められない。したがって,本願商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第8号の趣旨
ア 商標法第4条第1項第8号は,「他人の氏名・・・を含む商標」と規定するものであり,当該「氏名」の表記方法に特段限定を付すものではない。また,同号の趣旨は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがないという人格的利益を保護することにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁,最高裁平成16年(行ヒ)第343号同17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁参照)
イ 商標法4条1項8号の趣旨は,・・・自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがないという人格的利益を保護することにある。そして,同号は,その規定上,雅号,芸名,筆名,略称については,「著名な雅号,芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称」として,著名なものを含む商標のみを不登録とする一方で,「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称」については,著名又は周知なものであることを要するとはしていない。また,同号は,人格的利益の侵害のおそれがあることそれ自体を要件として規定するものでもない。したがって,同号の趣旨やその規定ぶりからすると,同号の「他人の氏名」が,著名性・希少性を有するものに限られるとは解し難く,また,「他人の氏名」を含む商標である以上,当該商標がブランドとして一定の周知性を有するといったことは,考慮する必要がないというべきである。(知財高裁平成31年(行ケ)10037号)
(2)商標法第4条第1項第8号該当性について
本願商標は,「ヨウジヤマモト」の文字を標準文字で表してなるところ,我が国においては,例えば,パスポートやクレジットカードなどに,ローマ字表記で,所持者の氏名を表記する場合には,「名」,「姓」の順で表記されているものが少なくないことからすると,氏名を「名」,「姓」の順で表記すること自体は格別特異な態様とはいえない。
また,別掲のインターネット情報によれば,人の氏名や読みを表す際に片仮名で「姓」と「名」の間に空白を配することなく一連に表示することも一般に行われているといえる。
さらに,「ヤマモト」と読む姓氏(「山本」「山元」等)及び「ヨウジ」と読む名(「洋二」「洋司」等)は,日本人にとってありふれた氏又は名であって,原審において説示のとおり,「ヤマモトヨウジ」と読まれる「山本洋二」,「山本洋司」等という氏名の者が多数存在している。
以上からすると,本願商標は,「ヤマモト(姓)ヨウジ(名)」を読みとする人の氏名を「名」,「姓」の順に片仮名表記したものとして,客観的に把握されるものである。
加えて,請求人と原審において示した氏名を「ヤマモトヨウジ」とする者とは他人であると認められるから,本願商標は,その構成中に他人の氏名を含むものといわなければならず,かつ,少なくとも当該山本耀司氏以外の,上記他人の承諾を得たものとも認められない。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は「商標法第4条第1項第8号の趣旨が第三者の人格権の保護であるとしても,他者の氏名でもあるファッションデザイナーの氏名を一律に商標登録できないことにするとファッションデザイナーのブランド選択の幅を狭めることになるなどの,商標登録が拒絶されることによって請求人が受ける不利益等についても十分に考慮した上で,同法の目的である産業の発展への寄与又は需要者の利益の保護の観点とのバランスが考慮されるべきである。また,本願商標はその指定商品の分野においては,当該山本耀司氏のブランドとして一定の著名性を得ているものであり,本願の指定商品に使用されても,当該山本耀司氏となんらかの関係があると認識することはあっても,同じ読みの氏名を持つ他人となんらかの関係があると認識されるとは考えられないものであるから,当該他人が,それを不快とし人格権を毀損されたものであると感じることはない。」旨を主張している。
しかしながら,本願商標は,上記(2)のとおり,「ヤマモト(姓)ヨウジ(名)」を読みとする人の氏名を「名」,「姓」の順に片仮名表記したものと認識されるもの,すなわち,人の氏名を指し示すものとして客観的に認識されるものであって,本願商標はその構成中に他人の氏名を含むものであるから,仮に本願商標をその指定商品に使用したときに当該山本耀司氏以外の者との関連が認識されないとしても,上記(1)アに照らせば,当該山本耀司氏以外の氏名を「ヤマモトヨウジ」とする者の承諾を得ることなくこれを商標登録することは,当該者の人格的利益を害することになる。
また,商標法第4条第1項第8号該当性の判断において,上記(1)イのとおり,本願商標の周知性は考慮する必要がないと解釈すべきである。
したがって,請求人の主張は採用できない。
イ 請求人は,請求人以外のファッションデザイナーの氏名を含む商標が商標登録されている例や, “Yohji Yamamoto”の文字を含む商標登録がある事実を挙げ,本願商標も登録されるべき旨を主張しているが,請求人の挙げる登録例は,いずれも本願商標とは構成・態様が異なり事案を異にするものであるから,これらの存在が,上記(2)の認定・判断を左右するものではない。
したがって,請求人の主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

別掲 人の氏名や読みを表す際に片仮名で「姓」と「名」の間に空白を配することなく一連に表示する例(下線は合議体による。)


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-03-08 
結審通知日 2022-03-14 
審決日 2022-03-29 
出願番号 2019023948 
審決分類 T 1 8・ 23- Z (W03141825)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 大森 友子
須田 亮一
商標の称呼 ヨウジヤマモト、ヤマモトヨウジ 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 前田 大輔 
代理人 小西 富雅 
代理人 中村 知公 

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