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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W05
管理番号 1384522 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-08-26 
確定日 2022-05-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6401381号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6401381号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6401381号商標(以下「本件商標」という。)は、「清
風ショット」の文字を標準文字で表してなり、令和2年10月28日に登録
出願、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を含む第5類及び第3
0類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同3年5月26
日に登録査定され、同年6月11日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおり
であり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権
も現に有効に存続しているものである。
(1)国際登録第893313号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 BREEZHALER
指定商品 第5類及び第10類に属する国際登録に基づく商標権に係る
商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日 2006年(平成18年)8月18日
優先権主張 2006年(平成18年)8月7日Switzerland
設定登録日 平成19年8月3日
(2)登録第5219636号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 ブリーズヘラー(標準文字)
指定商品 第10類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成20年11月28日
設定登録日 平成21年4月3日
なお、申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとし
て引用商標1を、同項第15号に該当するとして引用商標1及び引用商標2
を引用している。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定商品中、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」(以下「申立商品」という場合がある。)について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標
本件商標は、「清風」の漢字及び「ショット」の片仮名を標準文字で表し
てなるものである(甲1)。
(2)引用商標
引用商標1は「BREEZHALER」の欧文字からなり、引用商標2は
「ブリーズヘラー」の片仮名を標準文字で表してなるものである(甲2、甲
3)。
(3)引用商標が広く知られていること
申立人は、スイスを拠点とするヘルスケアの世界的なリーディングカンパ
ニーであり、医薬品の開発・製造販売を行っている。申立人の商品は世界中
で8億人以上の人々に行き渡り、平成30年には519億ドルの純売上高を
達成した(甲4)。
慢性閉塞性肺疾患(以下「COPD」という。)を含む呼吸器疾患は、申
立人が特に注力してきた分野である。気管支拡張剤の開発の一環として、申
立人はCOPD治療薬として、「オンブレス吸入用カプセル150μg」(
以下「オンブレス」という。)、「シーブリ吸入用カプセル50μg」(以
下「シーブリ」という。)及び「ウルティブロ吸入用カプセル」(以下「ウ
ルティブロ」という。)を開発した。これらの治療薬は、「ブリーズヘラー
(Breezhaler)」という名称の専用の吸入器を用いて吸入するも
のであり(甲5〜甲7)、吸入器自体や薬剤の包装箱には、薬剤の名称と併
せて、引用商標1と類似の「Breezhaler」の商標と引用商標2と
ほぼ同一の「ブリーズヘラー」の商標が[R]マーク(異議決定注:「[R
]」は○の中に「R」の記号。以下同じ。)とともに付されている(甲8〜
甲13)。基本的には、ブリーズヘラーはこれらの薬剤と一緒に販売されて
いる。それに加えて、ブリーズヘラーの使用方法が薬剤に同梱された患者指
導箋に掲載されており、そこでも「ブリーズヘラー」の商標が[R]マーク
とともに表示されている(甲14〜甲16)。また、「ブリーズヘラー」の
商標は患者向医薬品ガイドにも[R]マークとともに表示されている(甲1
7〜甲19)。ブリーズヘラーの販売開始以来、引用商標は吸入器に継続し
て多くの場面で使用されてきており、以下に述べる活動を通して、申立人の
吸入器を示す商標として日本において広く知られるに至っている。
ア 日本における売上げ
オンブレスは、平成23年9月に販売が開始された(甲5)。オンブレス
の平成26年度から令和元年度までの薬価ベースでの売上高は、毎年24.
1億円ないし14.3億円、合計で105.6億円にのぼり、同期間中に処
方されたカプセル数の総計は約7400万カプセルであった(甲20〜甲2
5)。
シーブリは、平成24年11月に販売が開始された(甲6)。シーブリの
同期間の同売上高は、毎年10.9億円ないし5.9億円、合計で48.2
億円にのぼり、同期間中に処方されたカプセル数の総計は約2400万カプ
セルであった(甲20〜甲25)。
ウルティブロは、平成25年11月に販売が開始された(甲7)。ウルテ
ィブロの同期間の同売上高は、毎年20.3億円ないし58.4億円、合計
で304.8億円にのぼり、同期間中に処方されたカプセル数の総計は約9
300万カプセルであった(甲20〜甲25)。
これら3種の治療薬の同期間の売上げ合計は約450億円に上り、同期間
中に処方されたカプセル数は約2億カプセルになった。特に、ウルティブロ
は平成27年度から令和元年度まで気管支拡張剤約90種の中で常に上位1
0位に入っていた。
ブリーズヘラーは基本的には薬剤と一緒に販売され、引用商標は吸入器自
体のほか、包装箱や患者向けの各種書面上でも使用されてきた(甲8〜甲1
9)。ブリーズヘラーは約30日で交換することが推奨されているため(甲
5〜甲7、甲14〜甲19)、ブリーズヘラーを使用する患者は定期的に新
しいブリーズヘラーヘ取り換えていると考えられる。このような状況におい
ては、上記の治療薬についての売上高及び処方されたカプセル数は、治療薬
それ自体だけでなく引用商標がいかに多くの需要者の目に触れてきたのかも
示すものである。
イ 広告・宣伝等
オンブレス、シーブリ及びウルティブロが日本で販売開始されて以来、申
立人はこれらの治療薬の販売促進に注力し、オンブレスについては平成26
年から令和元年まで約1億3600万円、シーブリについては平成26年か
ら平成30年まで約1億6700万円、ウルティブロについては平成26年
から令和2年まで約38億円を広告宣伝費用として費やした(甲26)。
オンブレス、シーブリ及びウルティブロを含む医療用医薬品の広告につい
ては、厚生労働省の医薬品等適正広告基準によって、医療従事者を対象とし
たものに限定されていることから、医療機関や医療従事者に対する広告宣伝
がより重要となり、医療用医薬品の広告は患者を含む一般消費者を対象とし
ているものではない。なお、オンブレス、シーブリ及びウルティブロの広告
の例(甲27)には引用商標が使用されている。
さらに、ブリーズヘラーは、平成24年にはそのデザインについてグッド
デザイン賞を受賞している(甲28)。このことからは、ブリーズヘラーの
名称は、医療従事者以外の一般の人々にもそのデザインとともにある程度認
知されるに至っていたということがわかる。
なお、ブリーズヘラーは、オンブレス等のほか、日本においては令和2年
8月に販売が開始された申立人の治療薬アテキュラ吸入用カプセル及びエナ
ジア吸入用カプセルの吸入器としても使用されている(甲29、甲30)。
ウ 小括
以上から、引用商標は、医療従事者及び患者からなる需要者の間で広く認識されていたといえ、申立人が製造販売する吸入器を示す商標として周知性を獲得するに至っていた。
(4)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標と引用商標1とが類似すること
本件商標中「ショット」の部分は、発砲のほか注射や薬の一服を意味する
英単語「shot」を指すものであり、平易な単語であるため需要者は通常
そのように理解する(甲31)。特に、当該単語が薬剤に使用された場合に
は、注射や薬の量を指すものと理解されることになり、また実際にも、「シ
ョット」の語はそのような商品の特徴を示すものとして薬剤に使用されるこ
とはよくある(甲32)。
そうすると、本件商標中「ショット」の部分は、申立商品との関係では識
別力を欠く。その一方で、「清風」の部分については、当該語は既成語では
あるものの、薬剤に関する限りでは、商品に関する特定の特徴等を想起させ
るものではなく、単に「風」や「そよ風」といった概念を想起させるに留ま
るものであるから、記述的とは解されない。
したがって、本件商標中「清風」の部分のみを抽出して他の商標と類否判
断することが可能である。
一方、引用商標1は「BREEZHALER」の欧文字からなる。「HA
LER」の部分については、指定商品に「inhalers(吸入器)」が
含まれるところ、英単語「inhaler」は医療従事者にとっては「吸入
器」を意味する語として容易に理解されるものである(甲33)。さらに、
患者においても、患者向けのウェブサイト等を通して治療薬に関する詳細な
説明に触れることは可能であるから、医療従事者だけでなくCOPDの患者
にとっても英単語「inhaler」は相当程度馴染みのある語であると考
えられる(甲34)。また、「inhaler」や「haler」の語は、
吸入器の製品名として語尾に用いられることが多い語でもある(甲35、甲
36)。このことは、第10類「吸入器」を指定商品に含み、「inhal
er(インヘイラー、インヘイラー)」又は「haler(ヘラー、ヘイラ
ー)」が語尾に付く商標出願及び登録が数多くあることからも明らかである
(甲37、甲38)。このような事情に基づけば、COPD治療薬やその吸
入器を多く目にする機会のある医療従事者及び患者といった需要者は、「○
○haler」という名称の「haler」の部分が「吸入器」を意味して
いるということを経験則によって理解するのである。
よって、「HALER」の部分は吸入器及び薬剤との関係では識別力を欠く。
これに対して、「BREEZ」の部分は、「breeze(そよ風)」の語と比較すると、語尾の「e」の有無が異なるのみで、いずれも同様に発音されることから、「breeze(そよ風)」に酷似しているといえる。
以上より、本件商標中「清風」の部分と引用商標1中「BREEZ」の部
分とを比較すると、要部である「清風」の部分が引用商標1の要部である「
BREEZ」すなわち「そよ風」と酷似する部分と観念が共通することにな
り、これにより商品の出所について混同を招くおそれがある。
したがって、本件商標は、引用商標1と観念において類似し、申立商品に
使用された場合、引用商標1と出所の混同を生じさせるおそれがあり、たと
え称呼及び外観が異なるとしても、引用商標1と類似する。
また、指定商品については、いずれも「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」又は「Pharmaceutical preparations」を指定するものであるから、同一である。
イ 小括
以上より、本件商標は引用商標1と類似し、その指定商品も互いに同一である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 本件商標と引用商標の類似性
上記(4)のとおり、「そよ風(breeze)」の観念において共通す
るという点を踏まえれば、本件商標と引用商標1との類似性は高い。
引用商標2については、引用商標1と同様に、「ブリーズ」と「ヘラー」
の2部分から構成され、需要者は「ヘラー」の部分を吸入器を指すものと通
常理解する(甲33〜甲38)。
これに対して、「ブリーズ」の部分はそよ風を意味する英単語「breeze」を指すものと理解され、需要者は当該部分を見て当該英単語を想起する。
そうすると、「ヘラー」の部分は識別力を欠くのに対して、「ブリーズ」
の部分のみが抽出され他の商標と類否判断されることになる。そこで、本件
商標中「清風」の部分と引用商標2中「ブリーズ」の部分を比較すると、要
部である「清風」の部分が引用商標2の要部である「ブリーズ」すなわち「
そよ風」を意味する部分と観念が共通することになり、これにより商品の出
所について混同を招くおそれがある。
したがって、本件商標と引用商標との間には高い類似性がある。
イ 引用商標が広く知られていること及び特徴
上記(3)のとおり、引用商標は本件商標の登録出願時点においてすでに
広く知られるに至っており、現在においても、申立人の商品である吸入器を
示すものとして広く認識されている。
ウ 商品間の関連性、需要者の共通性及び取引の実情
吸入器は薬剤を服用するための器具であるから、申立商品と吸入器及びそ
の他の医療用機械器具とは同じ範囲の需要者を対象として、同じ業者によっ
て、病気を治療するという同じ目的で製造販売されるものである。薬剤の製
造業者、対象及び使用目的が吸入器のそれと共通するものであることを踏ま
えれば、薬剤へ本件商標が使用された場合、吸入器との関係で出所の混同を
生じさせるおそれがある。
また、需要者の共通性について、申立商品は「薬剤(農薬に当たるものを
除く。)」であり、医師や薬剤師といった医療従事者及び患者が需要者とな
る。それと同様に、申立人の吸入器「ブリーズヘラー」の需要者も医療従事
者及び患者である。
よって、本件商標と引用商標(決定注:「申立商品と引用商標の指定商品」の誤記と認める。)は需要者を共通にする。
エ 小括
上記の事情を考え併せると、本件商標を申立商品に使用した場合、引用商
標が需要者の間で広く知られるに至っていることに鑑みれば、本件商標に接
した者は、本件商標から引用商標を連想し、申立商品と引用商標が使用され
る商品とが同一であることも踏まえれば、商品の出所について混同するおそ
れがあり、又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者によ
る商品であると誤認して商品の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「清風ショット」の文字を標準文字で表し
てなり、該文字に相応し「セイフウショット」の称呼を生じ、特定の観念を
生じないものである。
イ 引用商標1
引用商標1は、上記2(1)のとおり、「BREEZHALER」の欧文
字を横書きしてなり、該文字に相応し「ブリーズヘラー」の称呼を生じ、特
定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1との類否を検討すると、外観において、本件商標の構成文字である「清風ショット」と引用商標1の構成文字である「BREEZHALER」とは、両者の構成文字が明らかに異なり、明確に区別できるものである。
次に、称呼において、本件商標から生じる「セイフウショット」の称呼と引用商標1から生じる「ブリーズヘラー」の称呼とは、両者の構成音が明らかに異なり、明瞭に聴別できるものである。
さらに、観念において、本件商標と引用商標1は、共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標1は、観念において比較できないとして
も、外観において明確に区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別できるものであるから相紛れるおそれはながなく、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標1が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 申立人の主張について
申立人は、本件商標「清風ショット」から「清風」の文字部分を、引用商
標1「BREEZHALER」から「BREEZ」の文字部分をそれぞれ分
離抽出し、両商標は称呼及び外観が異なるとしても「そよ風」の観念を共通
にする類似の商標である旨主張している。
しかしながら、申立人提出の証拠によれば、薬剤について「ショット」の
文字を用いているものがあること(甲32)、商標の語尾の文字が「HAL
ER(haler)」であって、吸入器を指定商品に含む登録商標が存在す
ること(甲38)は認められるものの、本件商標「清風ショット」及び引用
商標1「BREEZHALER」の構成文字は、いずれも同書、同大、等間隔でまとまりよく一体に表され、それらから生じる称呼「セイフウショット」及び「ブリーズヘラー」は無理なく一連に称呼し得るものであるから、かかる外観及び称呼からすれば、両商標に接する取引者、需要者をして、いずれも構成文字全体が一体不可分のものとして認識、把握させるものと判断するのが相当である。
さらに、本件商標及び引用商標1は、それらの構成中「清風」及び「BR
EEZ」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討すべきとする事情は見
いだせない。
したがって、申立人のかかる主張は、その前提において採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1は非類似の商標であるから、申立商
品と引用商標1の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標
第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性について
(ア)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人は、我が国に
おいて慢性閉塞性肺疾患治療薬として「オンブレス」を平成23年9月、「
シーブリ」を平成24年11月、「ウルティブロ」を平成25年11月に販
売を開始したこと(甲5〜甲7。以下、これらをまとめて「申立人治療薬」
という。)、申立人治療薬は「ブリーズヘラー」という名称の吸入器を用い
て吸入するものであり、当該吸入器は申立人治療薬の包装箱に同梱され取引
されていること(甲5〜甲7、甲9、甲11、甲13)、申立人治療薬の包
装箱、医薬品インタビューフォーム、申立人治療薬に同梱される患者指導箋
、患者向医薬品ガイド及び吸入器本体などに「ブリーズヘラー」の文字が吸
入器を表すものとして用いられていること(甲5〜甲19、甲27)、ブリ
ーズヘラーは申立人治療薬のほか令和2年8月に販売が開始された治療薬「
アテキュラ吸入用カプセル」「エナジア吸入用カプセル」の吸入器としても
使用されていること(甲29、甲30)、及びブリーズヘラーは平成24年
にグッドデザイン賞を受賞したこと(甲28)などが認められる。
しかしながら、申立人は申立人治療薬の処方カプセル数、薬価ベースの売
上高について主張、立証しているものの(甲20〜甲25)、申立人の提出
する証拠を見ても吸入器「ブリーズヘラー」は、単独で販売されておらず、
当該吸入器の具体的販売数量、医療用吸入器全体に係る販売割合等を示す証
左も見いだせない。
(イ)上記(ア)のとおり、申立人治療薬が平成23年9月から販売されて
以降、現在まで約10年の期間、吸入器「ブリーズヘラー」が申立人治療薬
の包装箱に同梱されて取引され、申立人治療薬の包装箱、吸入器本体などに
「ブリーズヘラー」の文字が用いられていることなどが認められることから
すれば、吸入器「ブリーズヘラー」は医師や薬剤師、呼吸器疾患に係る患者
などの需要者の間にある程度知られているといえるとしても、その販売実績
を示す証左は見いだせないから、吸入器「ブリーズヘラー」及びそれに使用
されている「ブリーズヘラー」の文字は、申立人の業務に係る商品として及
び当該商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、「breezhaler(BREEZHALER)」の文字が確認
できる証左は2件のみ(甲11、甲13)であるから、該文字は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
したがって、「BREEZHALER」の文字からなる引用商標1及び「
ブリーズヘラー」の文字からなる引用商標2は、いずれも申立人の業務に係
る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
イ 本件商標と引用商標との類似性の程度について
(ア)本件商標
本件商標は、上記(1)アのとおり、「清風ショット」の文字を標準文字
で表してなり、「セイフウショット」の称呼を生じ、特定の観念を生じない
ものである。
(イ)引用商標
A 引用商標1は、上記(1)イのとおり、「BREEZHALER」の欧文字を横書きしてなり、「ブリーズヘラー」の称呼を生じ、特定の観念を
生じないものである。
B 引用商標2は、上記2(2)のとおり、「ブリーズヘラー」の片仮名を標準文字で表してなり、該文字に相応し「ブリーズヘラー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(ウ)本件商標と引用商標との類似性の程度について
A 本件商標と引用商標1との類似性の程度について
本件商標と引用商標1とは、上記(1)ウのとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は低いものといえる。
B 本件商標と引用商標2との類似性の程度について
本件商標と引用商標2との類否を検討すると、外観において、本件商標の構成文字である「清風ショット」と引用商標1の構成文字である「ブリーズヘラー」とは、両者の構成文字が明らかに異なり、明確に区別できるものである。
次に、称呼において、本件商標から生じる「セイフウショット」の称呼と引用商標2から生じる「ブリーズヘラー」の称呼とは、両者の構成音が明らかに異なり、明瞭に聴別できるものである。
さらに、観念において、本件商標と引用商標2は、共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標2は、観念において比較することができないとしても、外観において明確に区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別できるものであるから相紛れるおそれがなく、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は低いものといえる。
ウ 混同のおそれ
上記アのとおり、引用商標は、いずれも申立人の業務に係る商品を表示す
るものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであ
り、上記イ(ウ)のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれを申立商品について使用しても
、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商
品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を
有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同
を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情
は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものと
いえない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の指定商品中、登録異議の申立てに係る指定商品
についての登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれ
にも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当する
というべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により
、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-04-25 
出願番号 2020133730 
審決分類 T 1 652・ 1- Y (W05)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 大森 友子
小俣 克巳
登録日 2021-06-11 
登録番号 6401381 
権利者 ロート製薬株式会社
商標の称呼 セーフーショット 
代理人 窪田 英一郎 
代理人 本阿弥 友子 
代理人 竹内 耕三 

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