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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0344
管理番号 1384510 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-08 
確定日 2022-04-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第6366978号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6366978号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6366978号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,令和2年10月23日に登録出願,第3類「化粧品,せっけん類,香料,薫料」及び第44類「美容,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与」を指定商品及び指定役務として,同3年3月3日に登録査定され,同月22日に設定登録されたものである。

2 引用標章
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する標章は,「off−White」(大文字及び小文字の異なるものを含む。)及び「オフ−ホワイト」(「−」がないもの及び他の記号で表されたものを含む。)の文字及び記号からなり(以下,これらをあわせて「引用標章」という。),申立人が同人の略称として著名であって,同人の商標として需要者,取引者に広く知られているとするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第8号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。
(1)本件商標について
本件商標は,外観について,上段に欧文字とハイフンの記号を横書きした「off−white」を配置し,中段に「HAIR SALON」の欧文字を内包した帯状の図形を配置し,下段に「OSAKA」の文字を配置した結合商標であり(甲1,甲2),称呼について,前記外観から「オフホワイトヘアサロンオオサカ」,「オフホワイト」,「ヘアーサロン」,「オオサカ」の称呼が生じ,観念について,色彩としての「オフホワイト色」が「わずかに灰色や黄身を帯びた白色」であるところ,「off−white」の欧文字から「わずかに灰色や黄身を帯びた白色(オフホワイト色)」程度の観念が生じ,「HAIR SALON」の欧文字から「ヘアーサロン」又は「美容院」程度の観念が生じ,「OSAKA」の欧文字から地理的名称としての「大阪」程度の観念が生じる。
(2)標章「off−White」について
ア 申立人の代表者兼ファッションデザイナーであるヴァージル・アブロー氏(以下「代表者」という。)は,2013年に申立人を設立して,現在に至るまで代表者を務めている(甲3〜甲5)。申立人は,代表者が創作した被服,履物,身飾品,かばん類,袋物等の商品を生産し,これらの商品に「off−White」の商標を付して世界各国において譲渡している。申立人は,これまでに,リーバイス,ナイキ,リモワ等の著名商標の商標権者とのコラボレーション商品に「off−White」の商標を使用した。代表者は,ルイ・ヴィトンのディレクターに指名され,日本国のデザイナーやクリエーターとの繋がりも深く,日本国内の需要者及び取引者において著名なファッションデザイナーであり,代表者が代表者兼ファッションデザイナーを務める申立人は,代表者と共に日本国内の需要者及び取引者において著名である(甲6,甲7)。
イ 甲第8号証の代表者のインタビュー記事では,申立人の商品が紹介され,申立人の商品を著名人が着用したことにより,申立人が需要者及び取引者に広く知られていること,申立人の商品が短期間で完売したことが記載されている。
甲第9号証の代表者の紹介記事には,代表者が2012年に申立人の事業をスタートしたこと,申立人の商品が需要者及び取引者に注目されていること,また,申立人は2016年の春夏向けの被服に関して,リーバイスとのコラボレーション商品を発表したことが記載されている。
甲第10号証には,申立人が,2017年の春夏のパリ・コレクションに商品を出展したことが記載されている。パリ・コレクションは,被服等の新作発表会として世界的に著名なファッションショーであり,これに出展する者は,需要者又は取引者において著名である者である。
甲第11号証及び甲第12号証には,申立人の商品,代表者の紹介記事が記載されている。
甲第13号証には,申立人の商品の小売を行う店舗が,東京都南青山5丁目に開店すると記載されている。同店舗は平成28年7月9日に開店し,現在も営業を継続している。甲第14号証には,申立人が商品を小売する店舗が,東京都南青山5丁目に設けられていると記載されており,多数の需要者がクチコミ評価や写真を掲載し,店舗が混雑する時間帯も記載されている。
甲第15号証には,申立人の商品を販売する店舗が伊勢丹新宿本店メンズ館に開店すると記載されている。同店舗は平成31年3月16日に開店し,現在も営業を継続している。甲第16号証には,申立人の商品を販売する店舗が,伊勢丹新宿店メンズ館に設けられていると記載されている。伊勢丹新宿店は,日本全国の百貨店の中でも売上高が大きい著名百貨店である。
甲第17号証には,申立人の商品の小売を行う店舗が,宮城県,東京都,神奈川県,茨城県,新潟県,長野県,愛知県,滋賀県,大阪府,兵庫県,広島県,福岡県,熊本県の13都府県に所在していると記載されている。
甲第18号証は,申立人が日本国内の需要者に向けて宣伝広告を行うインスタグラムのフォロワーが,約22万人であることが記載されている。これは,約22万人の需要者又は取引者が,申立人の商品に関する記事及び写真に関心を有し,日常的に閲覧していることを表している。
甲第19号証は,申立人が店舗だけでなく,ウェブサイトにおいても商品の小売を行っていることを表している。このウェブサイトは,日本国内からの注文を受け付けており,日本国への商品の発送を行っている。
ウ 上記ア及びイのとおりの実情に加え,甲第8号証ないし甲第17号証の発行日,掲載日などから,「off−White」は,平成27年12月12日から現在まで,申立人の略称として著名であり,申立人の商標として需要者及び取引者に広く知られている。
(3)商標法第4条第1項第8号について
ア 本件商標は申立人の略称を含むものであるかについて
申立人「off−white LLC(オフ−ホワイト エルエルシー)」は,アメリカ合衆国イリノイ州の法律に基づいて設立された法人である(甲3)。ここで,「LLC(エルエルシー)」の文字は,「Limited Liability Company」を省略して表したものであり,アメリカ合衆国の法律に基づいて設立された有限責任会社であることを意味する。そのため,「off−white」及び「オフ−ホワイト」の文字は,組織形態を意味する「LLC(エルエルシー)」の文字を省略した申立人の略称である。
本件商標と申立人の略称を対比すると,本件商標は,外観について,上段に欧文字とハイフンの記号を横書きした「off−white」を配置しているため,申立人の略称を含む商標である。
イ 申立人の略称の著名性について
上記(2)のとおり,「off−White」は,平成27年12月12日から現在まで,すなわち,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の略称として著名である。
ウ 小括
以上により,本件商標は,申立人の著名な略称を含むものであり,申立人は,本件商標の商標権者が本件商標について商標登録を受けることを承諾していない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第15号について
ア 「off−White」の周知性について
上記(2)ウのとおり,「off−White」は,平成27年12月12日から現在まで,すなわち,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の商標として需要者及び取引者に広く知られている。
イ 本件商標と引用標章との類似性について
甲第7号証ないし甲第19号証には,「オフ−ホワイト」「オフホワイト」「オフ・ホワイト」「off−white」「Off−White」「OFF WHITE」「OFF−WHITE」の商標(引用標章)が記載されている。称呼について,これら商標から生じる称呼は,「オフホワイト」である。観念について,色彩としての「オフホワイト色」が「わずかに灰色や黄みを帯びた白色」であるところ,これら商標から生じる観念は,「わずかに灰色や黄みを帯びた白色(オフホワイト色)」程度の観念が生じる。
一方,本件商標は,上記(1)のとおり「オフホワイト」の称呼及び「わずかに灰色や黄みを帯びた白色(オフホワイト色)」程度の観念が生じる。
したがって,本件商標は,これらの商標と同一の称呼と観念が生じる類似商標である。
ウ 商品又は役務の関連性,主たる需要者について
本件商標の指定商品及び指定役務は,第3類「化粧品,せっけん類,香料,薫料」及び第44類「美容,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与」である。
甲第7号証ないし甲第19号証には,申立人の商品として,第18類「かばん類,袋物」,第25類「被服,履物」が記載されている。特に,申立人の商品の小売価格は高額であるため,申立人の商品の主たる需要者は,ファッションに高い関心を有する需要者である。そして,ファッションに高い関心を有する需要者は,これらの商品と共に化粧品等や髪型にも高い関心を有しており,化粧品等や髪型もファッションの一部として認識している。したがって,申立人の商品の主たる需要者は,本件商標の主たる需要者と共通する。また,申立人の商品と本件商標の指定商品及び指定役務は,類似商品役務審査基準においては非類似の商品及び役務であるが,需要者が共通する関連性の高い商品及び役務である。
エ その他
甲第20号証は,申立人が,本件商標の登録出願日までに,「オフホワイト」の称呼を有する14件の商標について商標登録出願をして,13件について商標登録を受けていることを表している。また,申立人の商品及び代表者が,需要者に広く知られている事実から(甲6〜甲19),本件商標の商標権者が偶然に独自に本件商標を選択したとは考えられない。
オ 小括
以上の事実を総合的に判断すると,本件商標の指定商品又は指定役務への使用は,その需要者及び取引者に対して,申立人の商品を連想させて,商品又は役務の出所について混同を生じさせるものである。また,申立人及び代表者の業務に関係する商品又は役務であると広義の混同を生じさせるものである。さらに,申立人の顧客吸引力へのただ乗りや,希釈化を招くものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用標章の周知,著名性について
申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,申立人の名称は「Off−White LLC」であって,その略称が「Off−White」であり,その代表者が「Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー)」氏であること(甲3),引用標章を使用した商品「被服,靴等」(以下「申立人商品」という。)は,我が国において,遅くとも2016年頃から販売され,同商品の正規取扱店は2019年2月頃において東京都南青山,伊勢丹新宿本店メンズ館など全国で約30店舗あること(甲13,甲17ほか),申立人商品は2017年春夏パリ・コレクションに出展されたこと(甲10)及び申立人及び申立人のブランドを「off−White」(大文字及び小文字の異なるものを含む。)及び「オフ−ホワイト」(「−」がないもの及び他の記号で表されたものを含む。)として紹介等するインターネット記事や雑誌があること(甲4,甲5,甲7〜甲18)が認められる。
しかしながら,申立人及び申立人商品を紹介等する記事はさほど多いとはいえないし,申立人商品を申立人ではなく申立人の代表者に関連付けて紹介等するもの(甲5〜甲7,甲9など)も少なくない。また,引用標章については,我が国における周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,申立人商品の売上高,市場シェア並びに広告宣伝の方法及び回数など取引状況を具体的に示す証拠は見いだすことはできず,我が国における客観的な使用事実に基づいて,引用標章の使用状況を把握することができないから,本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用標章の周知性の程度を推し量ることはできない。さらに,「Off−White」が申立人の略称として著名であると認めるに足りる証拠も見いだせない。
そうすると,申立人の略称が「Off−White」であり,申立人商品が我が国において,遅くとも2016年頃から販売されていることなどが認められるものの,申立人商品に使用される引用標章及び申立人の略称としての「Off−White」は,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているもの及び申立人の略称として著名なものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は,別掲のとおり上段に「Off−White」の欧文字を配してなるものであるから,その構成中に「Off−White」の文字を有するものといえる。
しかしながら,「Off−White」は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の略称として著名なものと認められないものである。
そうすると,本件商標は,その構成中に「Off−White」の文字を含むとしても,本件商標を申立人の略称を含むものと認識し,把握されることはなく,他人の著名な略称を含む商標であるとは認められない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用標章の類否
(ア)本件商標
本件商標は,別掲のとおり上段に「Off−White」の欧文字を配し,中段に「HAIR SALON」の欧文字を,上段の文字の下部を覆うように描いたリボン状の図形内に表し,下段に「OSAKA」の欧文字を配してなるものであり,その構成文字に相応して,「オフホワイトヘアサロンオーサカ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
そして,本件商標は,その構成態様に加え,下段の「OSAKA」の文字が商品の産地,販売地,役務の提供場所を表したものと認識させ,出所識別標識としての称呼,観念が生じないものであることをあわせ考慮すれば,上段及び中段の「Off−White」及び「HAIR SALON」の文字に相応して,「オフホワイトヘアサロン」の称呼も生じるものと判断するのが相当であり,該文字からは特定の観念を生じない。
(イ)引用標章
引用標章は,上記2のとおり「off−White」の欧文字及び記号(大文字及び小文字の異なるものを含む。)又は「オフ−ホワイト」の片仮名及び記号(記号が異なるものを含む。)からなるものであるから,これらの構成文字に相応し,いずれも「オフホワイト」の称呼を生じるものである。
そして,観念については,引用標章の構成文字から「オフホワイト(色)」ほどの漠然とした意味合いを想起し得るものである。
(ウ)本件商標と引用標章の比較
本件商標と引用標章の類否を検討すると,両者の外観は,上記(ア)及び(イ)のとおり,構成態様が明らかに異なるものであるから,外観上判然と区別できるものである。
次に,本件商標から生じる「オフホワイトヘアサロンオーサカ」及び「オフホワイトヘアサロン」の称呼と引用標章から生じる「オフホワイト」の称呼とを比較すると,両者は後半部における「ヘアサロンオーサカ」又は「ヘアサロン」の音の有無という顕著な差異を有するところ,この差異が両称呼全体の語調・語感に及ぼす影響は大きいから,両者をそれぞれ一連に称呼しても,相紛れるおそれのないものである。
さらに,観念においては,本件商標は特定の観念を生じるものではないのに対し,引用標章は「オフホワイト(色)」ほどの漠然とした意味合いを想起し得るものであるから,観念上相紛れるおそれはない。
そうすると,本件商標と引用標章は,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似のものであって,別異のものというべきものである。
イ 混同のおそれ
上記アのとおり,本件商標と引用標章は,相紛れるおそれのない非類似のものであって,別異のものというべきものであり,また,上記(1)のとおり,引用標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても,取引者,需要者をして引用標章を連想又は想起させることはなく,その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他,本件商標が,商品又は役務の出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。


別掲

別掲(本件商標)


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異議決定日 2022-04-20 
出願番号 2020131340 
審決分類 T 1 651・ 23- Y (W0344)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 大森 友子
須田 亮一
登録日 2021-03-22 
登録番号 6366978 
権利者 株式会社L&Bホールディングス
商標の称呼 オフホワイトヘアーサロンオーサカ、オフホワイト、ヘアーサロンオーサカ、ヘアーサロン 
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所 

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