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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W44
管理番号 1384341 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-28 
確定日 2022-04-06 
事件の表示 商願2020−28126拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,「時間湯」の文字を標準文字で表してなり,第44類「入浴施設の提供,健康管理に関する指導及び助言」を指定役務として,令和2年3月13日に登録出願されたものである。
本願は,令和2年8月17日付けで拒絶理由の通知がされ,同3年1月21日に意見書が提出されたが,同年2月25日付けで拒絶査定がされたものであり,これに対して同年5月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『熱めの湯に短時間の入浴を繰り返す入浴法』ほどの意味合いで使用されている『時間湯』の文字を標準文字で書してなるものであるから,これをその指定役務中,『時間湯(熱めの湯に短時間の入浴を繰り返す入浴法)を行う入浴施設の提供,時間湯(熱めの湯に短時間の入浴を繰り返す入浴法)による健康管理に関する指導及び助言』に使用しても,単に役務の質,提供の方法を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は,「時間湯」の文字を標準文字で表してなるところ,該文字は,「熱い湯をかきまわして短い時間を限って入浴することをくり返す湯治法。草津温泉のものなどが名高い。」の意味を有する語(「国語大辞典(新装版)」株式会社小学館発行)である。
そして,原審で示した証拠(別掲(1)〜(3))に加え,別掲(4)ないし(15)に示すインターネット情報や新聞記事によれば,「時間湯」は,「熱い湯に短時間の入浴を繰り返す入浴法」ほどの意味合いをもって群馬県草津温泉を主とした温泉施設において提供がなされ,また複数の団体によって時間湯に関する情報発信等の活動がなされていると共に,各種主要なメディアによって温泉施設が実施(提供)する入浴法として紹介がなされている実情がうかがえる。
以上よりすれば,「時間湯」の文字は,「熱い湯に短時間の入浴を繰り返す入浴法」ほどの意味合いを認識,理解させるものということができる。
そうすると,「時間湯」の文字よりなる本願商標を,その指定役務について使用をしても,これに接する取引者,需要者は,上記入浴法を行う入浴施設の提供であることや,上記入浴法による健康管理に関する指導及び助言であること,すなわち役務の質(内容)等を表したものであると理解するにとどまるというべきである。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,上記入浴法に関連しない役務である等「時間湯」の文字に相応しない役務について使用をするときは,役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,「時間湯」の文字からは様々な意味合いが想起されるため,その意味合いは抽象的であるから,役務の内容を具体的に理解することは困難である,また,そもそも一地方で行われている入浴方法であるから日本全国に知られていると判断することは妥当でない旨主張する。
しかしながら,「時間湯」の文字は,上記(1)のとおり,国語大辞典に掲載されていることに加え,「時間湯」に関して,草津町の観光協会をはじめとした複数の団体によるインターネットを介しての情報発信等がなされ,新聞記事としても取り上げられ,さらに全国的なテレビ番組での紹介等がなされていることからすれば,本願指定役務の分野において,その需要者,取引者に,特定の入浴法としてその内容が認識,理解されているものということができる。
イ 請求人は,請求人が時間湯についてまとめた書籍を発行する等,「時間湯」に係る活動を行っており,「時間湯」は請求人が行っている活動と関連付けられる一種の商標であると認識されるべき旨主張する。
しかしながら,別掲のとおり,「時間湯」は,請求人以外の複数の団体が情報提供を行っており,またその内容も請求人に係る特定のものとしてではなく,古くから伝わる入浴法の一種としての紹介である。そして,別掲から「時間湯」が少なくとも100年以上前から行われてきたものと認められることからしても,請求人による活動のみに関連した語とは認識されないというべきである。
ウ 請求人は,入浴者に入浴指導をする「湯長」の制度は廃止されるようになったこと,日本国内の一般の取引者又は需要者が「時間湯」の具体的な意味合いを認識できないことから,指定役務中の「健康管理に関する指導及び助言」の役務の特徴等を表すものではない旨主張する。
しかしながら,たとえ「湯長」の制度が廃止されるようになったとしても,「時間湯」が特定の入浴法として認識,理解されるものであることは上記(1)のとおりであり,また,一般に入浴法は,マッサージ効果,神経痛や腰痛等の改善効果等の様々な効果があることが知られており,健康管理と関連性の深いものであることからすれば,本願商標を,その指定役務中,「健康管理に関する指導及び助言」について使用をしても,これに接する取引者,需要者は,「熱い湯に短時間の入浴を繰り返す入浴法」による「健康管理に関する指導及び助言」であること,すなわち役務の質等を認識するにとどまるというべきである。
エ 請求人は,過去の判決,登録例を挙げて本願商標も登録すべき旨主張する。
しかしながら,登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるか否かの判断は,当該商標の構成態様や指定役務の取引の実情等に基づいて,個別具体的に判断されるべきものである。
そして,請求人が挙げる登録例等は,本願商標とは構成態様や指定役務の取引実情等が異なるものであるから,当該登録例等の存在によって,上記(1)の判断が左右されるものではない。
オ したがって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

別掲 インターネット情報及び新聞記事情報における「時間湯」の文字の使用状況やメディアでの紹介状況等
(1)「コトバンク」のウェブサイト
「時間湯(じかんゆ)」について,「精選版 日本国語大辞典『時間湯』の解説」の見出しの下,「熱い湯をかきまわして短い時間を限って入浴することをくり返す湯治法。草津温泉のものなどが名高い。」との記載があります。
https://kotobank.jp/word/%E6%99%82%E9%96%93%E6%B9%AF-2045179
(2)「『お熱い湯は好き?』〜関東近郊温泉施設情報サイト」のウェブサイト
「入浴スタイル一覧表」の見出しの下,「時間湯 熱めの湯に短時間の入浴を何回も繰り返す入浴法。体に対する強い刺激で、慢性病を治すという荒治療。」との記載があります。
http://www001.upp.so-net.ne.jp/onsen/onsen/style.htm
(※2020年8月17日最終閲覧)
(3)「MATCHA − 訪日外国人観光客向けWebマガジン」のウェブサイト
「【栃木県】江戸時代から続く人気の温泉地・那須温泉〜アクセス、日帰り温泉、旅館情報など〜」の見出しの下,「那須温泉(鹿の湯)西暦630年に開湯したと言われる、那須でもっとも古い温泉。お湯の温度が熱いために、ひしゃくで頭にお湯をかける『かぶり湯』と、浸かって休むを繰り返す『時間湯』と呼ばれる独自の入浴法が伝えられてきました。」との記載があります。
https://matcha-jp.com/jp/3980
(4)「日本温泉協会/温泉名人」のウェブサイトにおいて,「入浴方法のいろいろ」の見出しの下,「1全身浴(略)(1)半座位浴(略)「1」(審決注:「1」は丸付き数字。)高温浴・・・・/高温の温泉(43°C以上)に短時間入浴する方法です。群馬県・草津温泉の『時間湯』が有名です。」の記載がある(https://www.spa.or.jp/onsen/524/)。
(5)一般社団法人草津温泉観光協会が運営する「湯LOVE草津/草津温泉ポータルサイト」のウェブサイトにおいて,「時間湯」の見出しの下,「江戸時代から受継がれた、強酸性の高温泉入浴法による体質改善(略)■手順/1.湯もみ 2〜30分/2.手桶により頭に3〜40杯の湯をかぶる。/3.湯長の号令で一斉に入湯。3分間/4.同じく号令で一斉にでる。/これを1日4回繰り返します。」の記載がある(https://www.kusatsu-onsen.ne.jp/onsen/meito/manners.php)。
(6)「草津温泉時間湯オフィシャルサイト」のウェブサイトにおいて,「時間湯 入湯方法」の見出しの下,「神棚に参拝」,「湯もみ」,「かぶり湯」,「3分間 入浴」の各項目で入浴方法についての説明が記載されている(http://www.jikanyu.net/jikan.html)ほか,「湯長 ごあいさつ」の見出しの下,「最近、注目されている毒だしや計画的湯治などは、時間湯では百年も前から行われてきたことでした。」の記載がある(http://jikanyu.net/yutyou-aisatsu.html)。
(7)「草津温泉時間湯保存会」のウェブサイトにおいて,「時間湯保存会について」の見出しの下,「戦後、丑湯祭りを起源とする草津湯まつり(現在の草津温泉感謝祭)の開催や交通機関・スキー場の施設整備など観光化を進めるなかで集客を考える町側に、時間湯存続の貴重さと重要性を伝えるため、時間湯に来ていた湯治客の方と旅館の主が協力して時間湯保存会を作りました。時間湯保存会の設立の時期は明記された文献は見つかっておりませんが、(略)遅くとも昭和30年前後には始まっていたといえます。」の記載がある(http://jikanyuhozonkai.org/about.html)。
(8)2021年9月11日付け東京読売新聞朝刊の27頁には,「草津の浴場 名称変更 町議会で可決 『時間湯』続く2か所=群馬」の見出しの下,「草津町議会は10日、草津温泉の伝統的な入浴法『時間湯』が続く2か所の町営共同浴場の名称を変更する条例改正案について賛成多数で可決した。10月からの名称は貸し切り専用浴場が『伝統湯地蔵』、無料浴場が『伝統湯千代』となる。湯治が目的とされる時間湯は、町営共同浴場の『地蔵の湯』と『千代の湯』で続いてきたが、町は2年前に指導役の『湯長』を廃止するとともに、利用者の安全面を考慮して設定湯温を下げるなどしてきた。」の記載がある。
(9)2018年4月26日付け日本経済新聞地方経済面北関東の41頁には,「『地蔵の湯』に観光誘客、群馬・草津町、浴場や広場刷新。」の見出しの下,「群馬県草津町は温泉街の共同浴場『地蔵の湯』を新たな集客拠点にするため、今年度から4年間で総額3億〜4億円を投じ、周辺の開発に乗り出す。(略)決められた手順と時間に従って入浴する江戸時代以来の伝統的な温泉療法である『時間湯』が体験できることで知られる。」の記載がある。
(10)2018年2月23日付け産経新聞東京朝刊の15頁には,「【旬のおでかけ】群馬県草津町 風評被害に負けずイベント満載」の見出しの下,「日本三名泉に挙げられる天下の名湯、草津温泉。毎分3万リットル以上という自然湧出量は日本一。強酸性の泉質は古くから『万病に吉』とうたわれ、湯治客に愛されてきました。『時間湯』と呼ばれる草津温泉の伝統的な入浴法は、今でも千代の湯という共同浴場で体験が可能です。」の記載がある。
(11)2019年2月23日付け毎日新聞夕刊の5頁には,「ワイド視聴室:ロンブー淳のお宝温泉じゃーにー 入浴にとどまらぬ多様な魅力」の見出しの下,「◇ロンブー淳のお宝温泉じゃーにー TBS系=24日午後4時/ロンドンブーツ1号2号の田村淳、FUJIWARAの藤本敏史と原西孝幸、元サッカー女子日本代表の丸山桂里奈が、長野や群馬の温泉を巡る紀行番組。(略)一方、群馬の草津温泉では、江戸時代から続く入浴法『時間湯』を体験。源泉掛け流しで50度近い熱湯に入るための方法で、大きな板で湯を混ぜる『湯もみ』をして温度を下げた後、体に少しずつ湯をかけ慣らし入浴する。腰痛や関節痛などに効くとされるが、それでもかなり熱く、3分間しか続けて入れない。」の記載がある。
(12)「NHK」のウェブサイトにおける「みちしる/新日本風土記」を紹介するページにおいて,「草津温泉 時間湯」の見出しの下,「温泉の自然湧出量で日本一を誇る草津。癒しや娯楽の観光地として賑わう一方、温泉に秘めた力に希望を託す人々を受け入れてきました。草津伝統の入浴法、『時間湯』を紹介します。/(この動画は、2012年に放送されたものです。)」の記載と共に,動画で時間湯を紹介している(https://www2.nhk.or.jp/archives/michi/cgi/detail.cgi?dasID=D0004990301_00000)。
(13)「TVTOKYO BSテレ東」のウェブサイトにおける「出没!アド街ック天国」を紹介するページにおいて,「草津温泉」の見出しの下,「2004年11月27日(土)放送」,「16位 時間湯/120年以上続く伝統の湯治法です。48度のお湯に、3分間、1日4回、110日、3年入ります。現在は、地蔵の湯と千代の湯で時間湯が行われています。」の記載がある(https://www.tv-tokyo.co.jp/adomachi/backnumber/20041127/33922.html)。
(14)「TV出た蔵」のウェブサイトにおいて,「2013年3月24日放送 8:00‐8:25 NHK総合/小さな旅/もてなし ぽかぽか 〜群馬県 草津町〜」の見出しの下,「時間湯/草津には時間湯という入浴法が残っており48度という熱い湯に浸かる。地元の医師と連携して管理する責任者を湯長と呼び、現在は32代湯長の井田剛文さんが担当している。成分が薄まらないよう水でなく板でかき混ぜる湯もみで温度を下げている。時間湯には年間3000人がやってくる。」の記載がある(https://datazoo.jp/tv/%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%AA%E6%97%85/631458)。
(15)「TVTOKYO」のウェブサイトにおける「旅グルメ」を紹介するページにおいて,「時間湯 千代の湯(草津温泉)」の見出しの下,「江戸時代から草津温泉で行われてきた入浴法『時間湯』を体験できる温泉。」,「2014年5月11日放送」の記載がある(https://www.tv-tokyo.co.jp/travel/entry/bwFC4/25926/)。



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-01-25 
結審通知日 2022-01-31 
審決日 2022-02-17 
出願番号 2020028126 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W44)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 板谷 玲子
茂木 祐輔
商標の称呼 ジカントー、ジカンユ 
代理人 淡路 里美 
代理人 五味 和泰 
代理人 渡辺 貴康 

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